第三章 無垢なる悪魔
俺は昨日、不老不死になった。
それを試す術がないのが残念だが。
「健一〜。ご飯よ〜。」
「は〜い。」
俺は、母に呼ばれリビングへと向かう。
──────────
「そういえば、昨日なんか楽しげな歌が聞こえてたけど、最近の流行りの曲か何か?」
「え?」
「ちゃんと勉強もしなさいね。」
昨日の歌というのは、パンドラの歌の事だろうか。
パンドラの声は他の人にも聞こえるということか。
食事を終え、自分の部屋へと戻る。
「『あ!おかえり!ケーちん!! 見て見て!彼シャツ~。』」
部屋では、パンドラが俺の高校の制服を着て、遊んでいた。
「返してくれ!」
俺は、「『いや~ん。』」とふざけているパンドラから制服を奪い取り、その後彼女に言う。
「そういえば、お前の声って、箱を持ってない人にも分かるんだな。」
「『そうだよ~。』」
「なら、外ではなるべく姿を見せず、俺に話しかけないで貰えるか?」
パンドラは少し考えて言う。
「『う~ん。ちょっと寂しいけど~。それがケーちんの望みならいいよ。外で会えなくなるだけと、『パン』ちゃんの価値がなくなるのを選ぶとしたら、断然前の方がいいもん。』」
パンドラはそういうと、自らの箱に触れ、その箱から漏れだす光の中へと消えていく。
──────────
昼休み、俺は再びため息をつく。
俺は再び、いじめをしている奴を止めることが出来なかった。してるいじめは、お金を取るという犯罪レベルの事なのだが、皆あいつが怖くて何も言えないのだ。
俺は昼休みに、校舎裏でパンドラを呼ぶ。
「『あれ~?お外じゃあまり話したくないんじゃなかった?いいの?』」
首をかしげるパンドラに俺は頷く。
「ああ。そんなことより、1つ願いを聞いてくれないか?」
「『うん?な~に?』」
「いつもいじめをしている、一のいじめを、やめさせたいんだ。なんとかならないかな?」
俺の言葉に、パンドラは頷いき小さな箱を取り出す。
「『おっけ~。じゃあ、この箱に触れてね!』」
俺がそれに触れると、また、視界が一瞬だけ青く染まる。
パンドラを箱へ帰し、午後の授業の準備をしようと、教室に戻る途中。階段の方から甲高い悲鳴が聞こえた。
俺が階段に向かうと、そこには、別クラスの翔と、一が階段の下で倒れていた。
──────────
詳しい話を聞くと、一は、階段から転んだ翔とぶつかり、そのまま2人とも会談の下に落ちたらしい。2人は入院をすることになった。
俺は放課後、すぐに家に帰ると、パンドラを呼びだした。
「おい!今回の事故。もしかしてお前がやったんじゃないだろうな!」
俺が怒鳴って詰め寄るが、パンドラはそんなこと気にせず答えた。
「『そうだよ~。だって、怪我して入院したらいじめなんて出来ないでしょ?』」
パンドラが笑顔で言った後、彼女は悩むように胸の前で腕を組む。
「『でも、おかしいなぁ。『パン』ちゃんがお呪いを掛けたのって、ハジっちだけのはずなんだけどなぁ。もしかしたら、『パン』ちゃんの仲間が関係してたのかな?』」
「お前、仲間がいるのか?」
俺の疑問に、パンドラは笑顔で返した。
「『うん。いるよ~。皆が『パン』ちゃんみたいに、何でもかなえられるわけじゃないけどね。それぞれが、それぞれの特技を使って、皆の望みを叶えているんだ。』」
パンドラの笑顔を見ると、全く悪意なんてないのだろう。だが、彼女と、その仲間は、一のいじめを無くす為だけに、彼を入院させたんだ。
彼女達には、まともな善悪の区別がないのかもしれない。




