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ジャサント邸に滞在している4日は本当に疲れた。
いつき達の言うようにどのように対応しても泣かれるのだ。彼女にしてみれば自分が何をやっても私が文句を言ってくると、そう受け取れるらしい。
その日の夕食後お茶を飲んでいる時、「先程は申し訳ございませんでした。明日はもう準備が終わっているかと思いますので、次に何か予定を立てていただけていたら是非ご一緒させてください」
「そんな!私は急な対応もできない愚か者とバカにしているのですか!?酷いです!」と言って泣いて食堂を飛び出して行く。
また、「遠乗りに出かけるのなら是非ご一緒させてください」と言えば「私とベル様が馬に一緒に乗るのを邪魔したいのですか?!」と大声で泣き叫びながら部屋に戻って行く。
その度に使用人さん達が鋭い目付きで私を一瞥して離れていく。
本当に精神的にガリガリと削られていく。会話もまともに成立せずに勝手に考えを決めつけられてどうしろと?
この4日間邸中の人達の目は侮蔑に満ちていて針の筵だった。
ジャサント邸を出発する時は心底ホッとした。
ベルトラン·オクサリス。ユベール殿下の側近の彼はこの騒動でも何も語らず静観している。一切関与しないつもりなのだろう。
同じ馬車に乗っているからジャサント嬢の話を出して良いものか悩む。
「レイさん、マリーはいつもは物分かりの良い子なんだ。今回は少し暴走していたが是非仲良くしてほしい」
「ユベール殿下、私ごときが意見を言って良いのかわかりませんが言わせてください」
こんなチャンスは滅多にない。オクサリス様は気になるが話をしよう。
「ああ」
「私は王族に嫁ぐつもりはありません。きっとジャサント嬢は私が王太子妃の座を狙っていると思い気分が良くないのだと思います。誰かと旦那様を共有するのは考えられないですし、結婚するなら私だけを愛して欲しいと思います。女性はそのような考え方が多いのではないでしょうか?ですので、彼女はユベール殿下と私が常に行動を共にするのも本音では嫌なのでは?
ジャサント嬢の気持ちを考えて次回からユベール殿下が一緒についてきてくださる必要はないと思います」
ユベール殿下の目を見て真剣な表情で話す。
「それはレイさんの意見でしょうが、王家としては誰かが男児を産んでくれないと困るのです。だから妃側なり妾なり必要なんですよ。まあ、政略的な問題もありますが。妃同士のトラブルはそもそもユベール殿下の管轄にない。レイさんが自力で解決すべきものだ」
今までの沈黙を破ってオクサリス様が告げてくる。
「ですから、ユベール殿下の妃や側妃、ましてや妾になりたいとは微塵も思ってないのです!」
「そこにあなたの意見など入る筈もない。王家で決めた事に否と言うのですか?」
今までの穏やかな微笑みを消してオクサリス様が冷たく睨む。
怖い……どうしたら良いの?ユベール殿下はいつもの笑みを崩さないまま聞いている。折角の勇気が萎んでいく。下を向き、拳をギュッと膝の上で握る。
「ねぇ、それってさ脅迫?レイが居なくなって困るのはそっちだよ?レイは僕達がいるからこの国なんていつでも出ていけるよ?」
「元は平民風情を王太子の側に置いて何不自由無く生活させてやろうと言うのに何が不満なんですか?そもそも貴女は一緒に来た三人からの評価は最低だったではないですか。出来損ないでしたっけ?あの三人はそもそもオーラが違った。素晴らしい人物だった。どんな卑怯な手を使ったのか知りませんが、ミキ殿の力を奪ったのでしょう?愛し子とは思えない程陰気な人ではないですか。本当に愛し子だとしたら精霊の見る目を疑いますね。それを拾って国で保護して貰ったのに失礼な奴等だな」
恍惚とした表情で美姫達を語る。今までの笑顔が嘘のように鬼の形相で最後は吐き捨てるように言われ目に膜が張る。
ダメ泣くな。溢れないで…
「あっそ、国としてはそんな考えだったんだね」
いつきも吐き捨てるように呟く。
何とか涙は溢れずに済んだが顔は上げられない。嫌な雰囲気の中、馬車は進む。いつきの背後にどす黒い靄が見えるのは私だけなんだろうか。
(いつきありがと。大丈夫だからそんなに怒らないで)
(この国の奴等は狂ってる!レイと僕らで土地を豊かにしてやってるんだよ。本当に精霊に対して敬意が無い)
(呆れちゃうね。この国もう精霊居なくていいよ)
(ほんっと頭にくるっ!何この人!ユベール殿下も否定しないってバかなの?)
(みんなに嫌な思いさせちゃったね?ごめん)
((レイが謝る必要どこにもない~!))
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