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翌日朝食後、クロキュス辺境伯の後について昨日りんごを植えた場所に向かう。
遠目にも大勢の人が集まっているのが見える。
「あんなに大勢集まっているんですね?」
「はい、皆愛し子の力を見たくて集まっているのです」
「レイさんの初めての仕事だから、皆に見てもらわなくちゃ!」
やっぱりこうなるのか。昨日人を集めないでほしいと頼んでおいたけど無駄だったか。まあ、駄目元でお願いしたんだし、覚悟していたんだから腹を括ろう!
見物人に近づくと、思っていた反応ではない。
皆こそこそと近くの人と私をチラチラと見て内緒話をしている。
あまり良く思われてない?
人々の目は明らかに疑いや嫌悪が浮かぶ眼差しだ。
木で作った台の上に誘導されユベール殿下と私といつきが立つ。
「皆、朝から集まってくれてありがとう!今日は精霊の愛し子レイ殿がその力を使いこの地に雨を降らせ土壌を豊かにしてくれる。その力をこの目に焼きつけよう!」
クロキュス辺境伯が挨拶するが、辺りはザワザワしている。
「ほんとにそんな力があるのか?」
見物人の一人が叫ぶ。
「前に来た愛し子はなんもしてくれなかったじゃないか!」
「そうだ!嘘ついて王宮で贅沢してるんだろ!」
「嘘つきは消えろ!」
「精霊は助けてくれないじゃないか!精霊なんていないんだろっ!」
「魔法が少し使える位なんじゃないのか?!」
「何が愛し子だ!どうせまた偽者だ!」
「俺達は騙されないぞ!」
あちこちから怒声が聞こえてくる。
「皆、静かに!愛し子の力は昨日この目で見た!レイ殿は本物の愛し子だ!」
クロキュス辺境伯が大声を出すが、皆の怒声に掻き消されて声は届かない。
ユベール殿下が私の前に立ち、皆からの視線を遮ってくれる。
そっか、美姫が愛し子として少し前に来てるんだもんね。生活が苦しい中で愛し子が雨を降らせてくれるって期待してたのに絶望に突き落とされたんだから、そんな存在信じられないよね。
でも、あの私以外には優しい誰からも好かれる性格の良い美姫なんだからこの領地の人達のこの激しい怒りはなんだろう?美姫なら雨が降らなくても上手くやっていそうだが…
いつきがスカートを引っ張る。
「レイ、話にならないから雨を降らせちゃおう。皆ずぶ濡れにしちゃえばいいよ!頭冷やすのにちょうど良いよ!」
いつきに顔を寄せると物凄く良い笑顔で提案してくる。
確かに、皆が興奮していてこのままじゃ埒が明かない。静観してて暴動でも起きたら大変だ。
「そうだね。雨降らせちゃおう!ウンディーネお願い!」
「レイ、魔力たくさん流しちゃえ!倒れない程度でね」
ああいつきくん、また黒いオーラが背中から……
(レイ、始めるよ!)
(うん)
空に暗雲が立ち込める。
辺り一面、かなり遠くの方まで真っ暗になっている。
ポツポツと雨が落ちてくる。数秒後には大粒の雨が大地を叩きつけるように降ってきた。
人々は呆気にとられ、ずぶ濡れになりながらも天を仰ぐ。
我に返った人々があちこちで歓声をあげ喜びあっている。
「レイさん!」
「ユベール殿下、すみません。あのままでは皆が興奮して危険な状態になるかもしれないと思い勝手に始めてしまいました。ユベール殿下までびしょ濡れにしてしまってごめんなさい」
「いや、それは構わないんだ」
ひび割れた土地に水分が吸収されていく。
遠くの山まで雨雲がかかっているから川の水も増えるはずだ。一緒に土に栄養を与えてもらえるようにみんなにお願いする。
どのくらい雨を降らせていたのだろう?渇ききった大地が充分潤ったようだ。水害が起きてしまったら意味が無い。
(みんな、ありがとう)
魔力を流すのを止める。
雨雲が消えていく。空には大きな虹がかかっていた。
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