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「レイさーん!レイさーん!」
自室でこの国の歴史や地図、その土地でとれる作物などの勉強をするために団長やリディさんから本を借りて読んでいた。
大声で呼ばれる声が聞こえて慌ててドアから顔を出すと階下から駆けてくるアイリスさんが見えた。
「あっ、レイさん!すぐに食堂に来て!第2王子様が来てるの!」
「えっ、ユベール殿下がですか?」
「そうなの、このまま一緒に行きましょ!」
「えっ、このままですか?せめて騎士服に着替えていいですか?」
「大丈夫よ、王宮じゃないんだし!急に来たんだから。それに待たせるよりはいいと思うよ」
「そうですね……いつきはどうする?一緒に行く?」
「う~ん、どうしようかな?お菓子はある?」
「何も出さないわけにはいかないから、何かしらあるんじゃない?」
「それじゃ、行こうかな」
「レイさん!」
食堂に入ると名前を呼びながらユベール殿下が向かってくる。
「お待たせいたしました。殿下に「そんなにかしこまらないで!会いたくて来ちゃったのがいけないんだから!」」
挨拶をしようとした私をユベール殿下が遮る。
「はい。……この場所でお話するのでもいいですか?それとももう少し静かな場所にしますか?」
「もう少し静かな場所とはどこになるの?」
「女子棟の一階に談話室があるのでそちらにしようかと…すみません、応接室がなくて」
「うん、ここでいいんじゃないの」
「はい」
「お茶をお持ちします」
アイリスさんが厨房に行き料理長にお菓子とお茶を用意してもらっている。
「レイさん、会えて良かった。急に来てしまって悪かったね。そちらは世界樹の精霊さんでしょうか?噂は聞いています。初めまして、私はユベール·ルピナスです」
「うん、あの失礼な王子様とは違って礼儀正しいね」
「兄がとんでもない事をして申し訳ありませんでした」
「いいんじゃない?捕まったんだから。ちゃんと罪に問われるんでしょ?それにレイを害さなければ興味もないから」
「レイさんは本当に精霊に愛されているんですね」
「そうだね。レイが大人しそうだからって都合良く扱おうなんて思わないでね?レイがダメって言っても僕達にも譲れない事はあるよ」
「はい。私はレイさんを都合良く扱うなんて思ってもいません。ただ、レイさんと純粋に仲良くなりたいだけです」
「ふ~ん」
アイリスさんがお茶を運んでくれる。お菓子はワッフルにジャムが添えたものが一人一皿置かれた。王宮のお茶会の様に一口サイズではなく騎士の皆が満足できるようなボリュームだ。
いつきはすでにナイフとフォークを持ちジャムをたっぷりつけて食べている。
「このジャムってレイが魔力を流す練習をするために植えた無花果のジャム?美味しいね」
「うん、いっぱい収穫できたからジャムを作ってもらったの」
「それじゃ、今度は林檎植えてアップルパイ作ってもらおう!」
「食堂で林檎を使う時、種を貰って植えようね。美味しいアップルパイを作ってもらおう」
「ここが果樹園になるくらいいっぱい果物植えてやりたい!」
「そっ、それならぜひ王宮の一画を使って果樹園を作りませんか?歓迎します!」
ユベール殿下が会話に入ってくる。
「う~ん、ここの人には食べて貰いたいけど、王宮に食べて貰いたい人いないからやらない」
「それではやはりお二人が王宮に生活拠点を移すのがいいんじゃないですか?王宮だったら果樹園を作る広大な土地を確保できますから」
「それは嫌だってレイが言ったよね?」
「ユベール殿下、遠征の事が何か決まったのですか?」
いつきが不穏な空気を纏い始めたので二人の会話を遮る。
「ああ、日程と行程が決まったから早く知らせたくて」
「決まったんですね?」
「これが予定表。荷物は全部母上が指示を出して準備するから何もいらないよ。出発当日はレイさんを迎えに来るから何にも心配しないで」
「…ありがとうございます。できればドレスや宝石は身に着けたくないので、庶民的なワンピースを自分で用意させてください」
「あ~、実は道中、領主の館に泊まる日があるからドレスが必要なんだ」
「えっ、それは……」
貴族の屋敷に泊まるという衝撃にその後の話は上の空で殆ど内容は頭に入って来なかった。
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