56
お読みいただきありがとうございます。
王都に近づくにつれ街の中を誰かを探すように歩き回る人が目につくようになる。
美姫と王子は男女2人連れ、女が黒髪黒目、男は濃い茶色に藍色の目という情報を流しているようだ。もっぱら男女二人連れの人達が馬車や馬を止められチェックされている。
自警団らしい人達がチェックしているので団長の顔もバレてない。私もフード付きのマントを購入し羽織って、髪はリボンで前に落ちないようにして隠している。前提が男女2人連れなので、今のところ馬を止められても家族と答えると通して貰える。
王子達が私と団長を捕まえようと包囲網を張っているのが明らかになってくる。
「この街を過ぎたらあと2泊もすれば寮まで戻れるだろう。王都に近づくにつれて騎士団が検問しているかもしれない。そうなるとどうしても俺の顔を知ってる奴らには誤魔化せなくなってしまうから、この後は野宿で我慢してくれ」
「うん、しょーがないよね。この街でお菓子とチーズをいっぱい買ってくれる?お父さん?」
「ああ、買ってやる。レイも何かあれば言ってくれ」
「はい。遠慮なく言います」
食糧を買い込み、早々に街を出る。なるべく目立たないように主要な道から外れて進む。
「馬車を借りて、団長が御者をするってどうですか?馬車の中は私といつきの2人になるから検問で引っ掛かる可能性が低くなりませんか?」
「まあ、そうだな。馬での移動も流石に疲れたよな」
「馬車も楽しそうだね!」
いつきは目をキラキラさせて見つめてくる。
「騎士団の検問はまだ先かな?ここから近い街に寄ってみよう」
「はい!」
実を言うと流石に疲れている。寮を出てからずっと馬での移動が続いているから、それなりに馬に乗れているとは思う。だが、所詮日本の馬術などには縁の無い普通の高校を卒業した?(日本では行方不明になっちゃったから卒業できてないのかな?)年齢で運動部に入っていた訳でもないのだ。普段と全然違う筋肉を使ってずっと馬の上でいつきを落とさないようにと緊張しているのだ、疲れない訳がない。
馬車もスプリングが効いていなくてお尻が痛くなるとは聞いているから不安はあるが、流石に違う体勢で過ごしたい。
我が儘なのは分かっているが出来れば馬車での移動に変えたい。
午後3時位だろうか、近くの街に入る。あまり大きな街ではないので、すぐに馬車を貸してくれるお店を見つけられた。
二頭立てのうちの一頭を団長の馬に変えて貰い、御者さんも馬車を返しに来れないと考えてお願いした。
王都に近くなったら、団長が御者さんと代わり馬車を走らせる予定だ。
夜は河原に馬車を止めて野宿する。食糧も買ってきてあるので特にやる事もない。木を拾い集めて火をおこし焚き火をする。
日本では見た事もない満点の星空の下、御者さんに聞こえないように不安を吐露する。
「例え捕まらなくても、その後どうするんですか?」
「レイが愛し子だと証明すれば良いだろ」
「どうやって?」
「陛下の前で木を急成長させてみるのはどうだ?」
「それで認めて貰えるんですかね?」
「レイが愛し子は当然なんだけど、偽者を偽者だって証明しなくちゃダメだよ」
い、いつきさん?良い笑顔でおめめが笑って無いです……
「レイと偽者に皆の前で対決させちゃおうよ!」
「対決?」
「そう、思い切り恥をかかせてあげよう?その前に王様に会わないとだね。何とかしてね?お父さん。頼りにしてるよ?」
うわっ、出た!お父さん………
「とにかく僕が世界樹の精霊って王様に名乗るから、そこまで連れて行くのは団長が責任持って頑張ってよ?」
「お、おう。上手く行くかは自信無いが、いつきを陛下に謁見させればいいんだな?」
「そっ、よろしくね?」
ブクマ、評価ありがとうございます。




