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世界樹の隣、土を耕した場所がある。
「あそこに種が植えてある」
「れい、みんなあなたに力を与えるから心配しないで」
世界樹はこの世界で一本しか存在しないのだとか。だから失敗してしまうと世界樹は消え去り、この森を守っていた力が消えてしまい、精霊が魔物や人間の脅威にさらされるようになってしまうのだそうだ。
精霊が安住できる場所って思えば良いのだろう。その場所をを守る為にも必ず成功させなくちゃ!
沢山の精霊が集まってくれている。太陽が傾き始めているが精霊の力があれば大丈夫なのだろう。
大きく息を吸う。大丈夫!成功させる。自分に言い聞かせながら息を吐き出す。
魔力を集めて種を植えた場所に手を翳す。
「流します!」
ゆっくり魔力を流し始める。発芽しますように、大きく育ちますように、先の世界樹の記憶が新しい世界樹に受け継がれますように……
順調に種に魔力が流れていたのだが、精霊達が力を与え始めしばらくすると頭の中に色々な映像が流れ込んできた。
人々が精霊を敬い、儀式を捧げている景色。それに応え精霊が人に力を貸している姿。精霊と人間の交流。大地が枯れ、ウンディーネと昔の愛し子と思われる女の人が各地を回って干からびた大地に雨を降らせ作物が育つ様子。もちろん良い記憶だけではなく、魔物に精霊が襲われる光景。人間同士の争い、戦争で人々が傷つき命を落とす姿までも走馬灯のように頭の中に流れ込んでくる。
傷口の映像や人々の遺体、血の海の光景も一瞬だが見える。日本に生きてきた私にとって、あまりに衝撃的な映像で気持ち悪くなってきた。さらに魔力がどんどん体の中から吸われていき、体が傾いた。
「レイ!」
団長が駆け寄り体を支えてくれる。
「顔が真っ青だ!途中で止められないのか?!」
「……大丈夫。…まだやれる…」
「でもっ!……止めちゃダメなのか?教えてくれ!」
「レイ、これ以上無理しなくていい。止めましょ!」
「……ごめん、…勝手に吸われていくの。…自分じゃ…止められない……」
精霊達も困惑を隠せない。ただ、魔力が流れているからその間は精霊達も力を止めない。魔力が流れている間は成功する可能性があるのだ。精霊達自ら失敗させたいとは勿論思わないだろう。
団長に体を支えられながらひたすら魔力が奪われ流れ出て行くのを耐える。自分ではどうにもできない。意識を保つだけで精一杯だ。団長が支えてくれてなければとっくに膝から崩れ落ちているだろう。
そんな状態がしばらく続き、辺りが白い光に覆われる。
目の前が真っ白になり、それを最後に私は意識を手放した。
次に目を覚ました時、私の腕の中に小さい子供が眠っていて、団長は私を後ろから抱き締めて眠っていた。
「………誰っ」
緑のふわふわした髪の毛をした子。今まで会った事なんて無い。
「何が起こったの?」
「…ううん、…レイ気が付いたか!」
ガバッと団長が起き上がる。
「あっ、この子誰?」
団長に向き合うようにベッドに座る。
「ああ、こいつは世界樹の精霊だ」
「ええー!ウンディーネが姿を現さないって言ってたあの世界樹の?」
「そうだ。気を失ったから知らないのは当たり前なんだが、あの光が落ち着いたら古い世界樹は消えて、新しい世界樹が成長していたんだ。そいつは世界樹の元で光に包まれて浮いてたんだよ」
「???これが普通なの?」
「いや、普通じゃないだろ皆呆然としていたぞ。他の精霊達が抱こうとすると泣き喚くから、試しにレイの隣に寝かせたら落ち着いたんだ。だから隣に居る。しかも赤ん坊だったのが成長してるぞ」
「……何日位寝てたんですか?」
「3日だ」
「そんなに寝ちゃったんですね」
「いや、あんなに危ない状態だったのに良く3日で目覚めたな」
「世界樹の記憶が一気に頭の中に流れ込んできちゃったので船に乗った時みたいに酔ってしまったのと、戦争の記憶もあって…平和な世界で暮らしていたから見慣れないので刺激が強すぎちゃって…」
「…そんな事が……見なくていいなら見たくない景色だったよな。そんなの好き好んで見たく無いさ。怖くなったらいつでも抱き締めてやるからな」
「この世界ではまだまだ争いはあるんですよね?」
「そうだな。レイの居た世界を見てみたいな。…帰りたいか?」
「元の世界でも身寄りは居なかったし、辛い事も多かったけど、生活は元の世界は便利だったな。でも、団長と離れてまでもう戻りたいなんて思わないかも」
恥ずかしくて俯きながら答える。
「レイ……」
団長の顔が近づいてくる。
「レイ目が覚めた?!」
ビクッ!!後ろを振り返ると世界樹の精霊が目を覚ましていた。
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