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沈黙が支配する。
皆の視線が集まる中、ツゥーと目を反らしさりげなく仕事を再開する。
「レ.イ.さん」
今回の遠征には行かずに残っていたアベルさんが満面の笑みで呼ぶ。
「は、はい。何ですか?」
「殿下と愛し子殿の服が切り裂かれた、あれは何だったのか説明してもらえますか?」
「いや~、何だったんですかね?世の中不思議な事が起こるものですね?」
「…あれでレイさんが無関係だとは言えないと皆思っていますが、どうでしょう?」
「ねぇ、びっくりですね。私の事を庇ってくれているような気がしましたよね」
「そうだね。誰が見てもレイさんの悪口を聞いて怒って服を切り裂いていたと思うよね?」
「本当ですね。こんな私を助けてくれるなんて貴重な方がいらっしゃるんですねー。感謝です」
「…確かにレイさんが魔法を使っているとは思えなかったんです。魔法の使い方を知っているとも思えないんです。この寮から殆ど出たことが無い人がこの寮で生活している者以外から魔法の使い方を習っているとは思えません。……誰かレイさんに魔法の使い方を教えましたか?」
アベルさんが皆に問い掛ける。
誰も声を発する者はいない。
「ここに居る者にも魔法が使える人間がいます。しかし2人が護衛に囲まれている状態で2人の服だけを狙って魔法を発動させるなんてできないです。
…レイさんにも何が起こったのか分からないのですね?」
「…はい。すみません…」
「この案件は団長が帰ってきてから陛下に報告を上げて貰えるように進言します。殿下と愛し子殿の暴走であって、国の判断で国外追放は出ていません。犯罪者でもないのに追放する必要は全くありませんから。なので皆もその様に考えて行動してください」
「でも、レイが居ると理不尽な仕事を押し付けられるじゃないですか?今回の討伐だってあり得ない位少人数で行かされてる。ここで保護しないだけでもレイは嫌な思いをしないだろうし、俺達も嫌な思いをしなくて済むんじゃないですか?」
周囲の人達も頷く。
そうだよね。私もそう思う。皆にも迷惑かけちゃってるんだよね。こんな時前髪を切ったのを後悔してしまう。少しでも顔を見られないように俯く。
「あの愛し子の言う通りの人物像ですか?レイさんは」
その言葉に皆はアベルさんから目を逸らす。
「いくら愛し子だからってそんな理不尽を許して良いのでしょうか?しかもあの愛し子はレイさんの事を散々悪く言いますがはっきり言います、あれはただの言い掛かりで苛めです。皆には言っていなかったのですが、レイさんが転移に巻き込まれたのは王宮に保護されたあの3人から呼び出しを受けて暴力を振るわれていたからなんですよ。痣も確認しています」
「殿下と愛し子は逆の事を言っていましたよね?」
「それじゃあ、今まで一緒に生活してきたレイさんはそんな人だったんてすね?3人を相手に暴力を振るうような人と感じたのですね?」
「今日の愛し子の態度を見ても、あれが3人でおとなしく暴力を振るわれていたとは到底考えられないです。レイさんは言われるがままでした。それが答えなんじゃないですか?」
リディさんが前に出て来て私を皆の視線から遮ってくれる。
「そうだな」
「あれが本当に精霊から愛されているのか?」
「精霊に不信感を抱きたくなるレベルだったぞ!」
「レイちゃん、ごめんな」
あぁ、ダメだ、アベルさんやリディさんの優しさが苦しい。みんなにも迷惑をかけてしまっているのに…
零れるな、私の涙!
みんなありがとう。本当の事言えなくてごめんなさい。
心の中で呟いた。
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