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 30s   作者: リョウゴ
空想錬金と二人一組
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言語の壁



「ただいまー」


「おか、えり」


 ぎこちない返事をしてくれたのは半ば居候として我が家に溶け込んできている青髪の異世界人のメリア。


「おう」


「ごはん、おふろ、ある」


「そっか」


 靴を脱いで、家に上がり込むとメリアはそそくさと隠れてしまう。当然として俺は避けられていた。まあ、言葉をかけてくれるだけ、マシだとは思うが。






「───さてと、どうするか。王貴優成……と秦野さんか……」


 湯船に浸かり、俺はそんなことを呟いた。


 はっきり言って王貴優成の本来の能力からして順当といえばそうかもしれないが、性格面からしてここまで全勝できたということは何か以前とは違うのは確かだ。


 端末で戦闘の様子を見てみたが第一戦はひどかった。王貴が独りで戦おうとして広範囲に攻撃を仕掛け味方の筈の秦野さんに何度も攻撃を当て掛けていた。危うい避け方を繰り返し結果として時間ぎりぎりに、一人相手を弾きだして勝利している。


 動き回る相手だったのが、広範囲を連発する原因とはいえ、もう少しどうにかならなかったのかと思いながら第二戦を見る。今度の相手は動き回らない相手だったのだがそれは堅牢な防御によって凌ごうとするタイプの能力者だったからだ。持ち込んだのであろう大盾を構える相手二人に真っ正面から動く木の奔流が襲い掛かる。その隙に誰の気にも留まらずに悠々と秦野は相手の後ろに歩いて回り込み腕輪から武器たる銃を取り出して、引き金を引く。すると盾が弾かれて木々が三人を押し流した。


 第三戦目。第四戦目。同じように終わっていた。一戦目のような立ち回りのひどさは四戦目にはもう無かった。王貴が加減しているようには全く見えなかった。


 トドメの銃。あれは実弾が込められているわけではない。ただ、銃の引き金を引かれるとカクンと唐突に動作を止めてしまっているのが印象的だった。何をしたのかが、全く分からない。


「だい、じょーぶ?」


 風呂場の扉越しにたどたどしい声が聞こえる。普段より長風呂で上せていないか見に来たのだろうか?


「平気だぞー……っ!?」


 ガチャリ。風呂場の扉が開かれる。その瞬間俺は能力を発動し、一瞬にして腕輪から盾を発動。


「■■!?」


 僅かに開いた扉の向こう側で驚きの声が聞こえた。


「入ってくるな、待って、今出るから少し待って!! あ、何か羽織ってね!!? つか少し風呂場から離れてて!!」


 大慌てで俺は風呂を出た。肝が冷えたわ。まさか(一緒にお風呂入っても)大丈夫? って意味だとは思わなかったでしょうが……。


 因みに遅れて察したようで服を着た後、タオルを巻いて顔を真っ青にしたメリアを目にした。


「……ごめんね」


 よく分からないけどとりあえず謝った。




 メリアがお風呂を上がり、濡れた長めの青髪を一括りにして、赤らめた顔で二言呟いた。


「今日、ふたりいない」


「そうなの?」


「■■……りょ、こう」


 ()()か。じゃあ暫くは帰ってこないかも。メリアはひとりで大丈夫なのか。


「…………」


「…………」


 沈黙。メリアは俺に対してあまり良い思いはないだろう……色々やったのもやられたのも紫野と藍逆だが、それでも良い印象を持たれているとは思えない。俺からは鎧に入っていたせいでいまいち同一視出来ずに、普通? に接していられてはいるが。


 言葉の壁が重すぎた。メリアの語彙は少なく、俺との会話が成り立たない。それが沈黙という結果を生みだしたが、沈黙は更に苦しい空気も連れてきていた。


 翻訳が出来ればいいのに、と考えていたら一言もなく食事を終えてしまった。


 食器を片づけつつ、近くにあった本棚に目が行った。なぜか電子辞書がぽつりと置いてあったからだ。


 手が空いているし、とりあえず翻訳できるか気になったので手に取る。


「………?」


「お、あるじゃないか」


 異世界言語辞典が、英語や中国語などに混ざって存在していた。異世界の言語もこの世界と同じように何種類か存在しているようだ。剣に鎧、杖に弓? 国の名前は武器なのか……ふーん。


「これで多少マシになるか?」


 音声認証もある。こんなのあるなら先に言っておいてくれないかなあ。


「メリア、試しに何か喋ってみて」


「…………? おだんご」


 メリアは首を傾げつつ確かに喋った。日本語。というか何故団子??


「違う違う、日本語じゃなくて向こうの言葉」


 そう言って電子辞書を改めてメリアに向けて寄せる。


「?? ■■■■■■?」

『言う 分からない 何』


「なるほど……?」


 表示された文字列は文章としては完成していないが要するに


 何言ってるのか分からない


 と言うことだろう。これなら会話ができるかもしれないと俺は少し楽しくなっていた。

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