鬼ぼんじゅーる編12
僕らは日が昇ると共に家に着いた。結局ほとんど寝ずに過ごしてしまった。
別に少しくらい寝なくても平気だけど、寝るに越したことはないから少し寝たいな。
そう思いながら玄関へ春門と一緒に行くと、玄関を開けた先に毛布にくるまり寝ているりっちゃんがいた。薄い紅茶色のまつげを持つ目は伏せられその姿は見目が整っているだけあり人形のようだった。
夜、僕らがいないことに気が付いたのかな。それで玄関で待っていてくれたとか?
春門はそんなりっちゃんに静かに近寄る。
「こんなところで寝ていたら風邪をひく」
そう厳しい中に優しさのある声色で声をかけるけど、りっちゃんの眠りは深いようだ。
春門は息を吐くと、りっちゃんを横抱きにした。
「春門お兄さん?」
「三門を部屋に連れて行く」
けれど、抱え上げられたのにはさすがのりっちゃんも気が付いたらしい。目をゆっくりと開けると瞬きをして自分の状態を理解して降りようと暴れた。
「兄さん!降ろして」
「起きたのか」
春門は静かに暴れるりっちゃんを見つめるけど、りっちゃんの訴えを聞きながらも降ろさないまま廊下を歩いた。
「だいたいどこにいってたんだよ。起きたらモフフはいないし、兄さんの車もなかったから兄さんにメールしても返事はなかったし」
「仕事だ。メールは見ていなかった」
春門は器用に胸ポケットから携帯を取り出すとパカリと開き確認した。
そして一つ頷くとまたポケットに携帯を戻した。
「起こすと悪いから家族には黙って出てたが、モフフくんに見つかり同行して貰っていた。心配をかけてすまない」
「別に、いいけど。仕事お疲れ様」
りっちゃんはそうぎこちなく言った。
寝起きでつい兄を責めてしまったけど、頭が起きてきたのだろう。混乱しながらも恥ずかしそうに労った。
とはいえ僕は春門の足元にいるから抱き上げられているりっちゃんの顔が見えないので、今りっちゃんはどんな表情をしているのか分からない。声での判断だ。
それに、りっちゃん僕に気が付いてなさそうだ。まありっちゃんは抱えられてるから僕が視えないしね。
「りっちゃんただいま」
だから僕はりっちゃんにそう声をかけると。
「モフフ!?いたのか」
やはりりっちゃんは僕の存在に気が付いていなかったらしい。
再び降ろしてくれと暴れ始めたので階段の手前で今度こそ春門はりっちゃんを降ろした。
やっと見えたりっちゃんの顔は真っ赤だ。僕に見られていたことが恥ずかしかったらしい。うむ。
「三門」
「なに?」
「三門に次期当主という重荷を課せることを私は申し訳なく思っている。私の当主としての能力が足りないばかりに。すまない」
「別に……モフフお前言ったのか」
すぐにりっちゃんは察して僕を視降ろした。さすがりっちゃん賢いけど。
「僕は次の当主がりっちゃんに選ばれて春門お兄さんはどう思うか聞いて、その春門の答えをそのままりっちゃんに伝えてって言っただけだよ」
だからりっちゃんのことは言ってないし。勝手に墓穴掘ってるけど。
りっちゃんの言葉に眉を寄せた春門は気が付いたらしい。
「三門は何か悩みがあるのか?」
「!?ないよ」
「言いたくないのなら構わないが。もし悩むことがあるなら言いなさい。私はどんなことでも聞くつもりだ」
春門はしっかりとりっちゃんの瞳を見つめて言う。
まっすぐなその瞳にはりっちゃんへの思いやりがある。
さすが二人の兄なだけあり春門は良い人だ。
「……分かった。相談があったら兄さんに聞いてもらうよ」
りっちゃんは視線に耐えられなかったのか反らしながら言うと春門は頷いた。
「いつでもおいで」
そう優しく言うと春門はりっちゃんの少し髪のはねた頭にポンと手を置き「二人ともおやすみ」と言い二階へ上がっていった。
りっちゃんはその場に立ち尽くし、僕はそんなりっちゃんの足元でりっちゃんを見上げていたけどりっちゃんが自分の部屋に向かって行ったので僕もついていった。
時計を見るとまだ一時間くらいは眠れそうだった。
僕はりっちゃんと布団に入ると、りっちゃんは晩春の寒い中玄関で眠っていたためか体が冷たかった。
だからりっちゃんへくっつけば、少ししてりっちゃんは僕の体に腕をまわし僕を抱きしめた。
寒いのか寝ぼけているのか。
いつでも抜け出せるくらいに優しいものだったから僕はそのままにりっちゃんの胸に頭を埋めた。
やっぱり今日の戦いは疲れた。さすが菊衛門の娘さんだ。強い。
それに、起きたばかりだと体がうまく動かないね




