俺は誰なんだ…? 途方に暮れる
自分がこの場所にいることに気づいてから、どれくらいの時間が経ったのか分からない。
確かに、太陽は空を移動していた。だが、太陽の位置だけで時間を判断できるほど、俺は詳しくない。
時計なんてものがなかった時代、人々はこうやって時間を知ろうとしていたらしい。
正直、今までそんなことを考えたこともなかった。
面白いものだ。
昔の人々は、限られた道具しか持っていなかった。それでも、現代社会の基礎を築き上げた。今では当たり前になっている技術も、あらゆる発展も、その積み重ねの上にある。
……まあ、どうでもいい話だ!
今、そんなことを考えて何になる?
俺はもう、以前の世界にはいない……おそらくは。
いや、そもそも、そうだと断言できるほどの証拠があるわけでもない。
俺は、この場所で目を覚ましてからずっと頭の中を巡っている問いに立ち返った。
俺は誰なんだ? そして、ここはどこなんだ?
いや、正確には一つじゃなくて、二つの質問だな……。
まあ、どちらも壮大な哲学的問題ということにしておこう!
この世界には、存在の謎を解き明かそうと一生を費やした人々がいる。それでも、決定的な答えにたどり着けなかった人だっている。
それなのに俺は、何の心の準備もないまま、突然そんなことを考えなければならなくなった。
周囲を見回した。
何もない。
あるのは自然だけだ。
いや、正確には、前にも後ろにも、左右にも広がる森。
どこを見ても木々ばかりで、人間の気配はまったくない。
そして、ここでまた、先ほどまでの疑問に負けず劣らず重要な問題が浮かび上がった。
どうやってここから出ればいいんだ?
ほら、分かるだろう?
問題は時間じゃないのかもしれない……方向だ!
どうやら俺は、何もかも哲学的に考え始めているらしい。
たぶん、考えたくない質問から逃げようとしているからだろう。
俺は本当に死んだのか?
正直に言おう。
この可能性について考えるたびに、俺は恐ろしくなる。
俺たちは、いつか死ぬものだと思いながら生きている。
だが、普通に生活している間は、そのことを真剣に考える機会なんて、ほとんどない。
けれど、自分の死がすぐそこまで迫っていると感じたとき、あるいは、すでに死を乗り越えてしまったのかもしれないと思ったとき……話はまったく変わってくる。
人生の最期に、自分が安全な場所で想像していたような感情を抱くとは限らない。
それまで真剣に考えたこともなかった問いを、突然突きつけられるかもしれない。
俺は、自分の人生を正しく生きてきたのだろうか?
本当に、この瞬間を迎える覚悟ができていたのだろうか?
死に直面したとき、これまでの行いや選択に、何か意味はあるのだろうか?
そして、何よりも重要なのは……。
俺が人生でしてきたことは、すべて天国へ導いてくれるのか? それとも、地獄へ向かわせるのか?
……
いや、少し大げさなことを言ってしまったかもしれない。
だが、自分の死という可能性を真剣に考え始めたとき、実際に頭に浮かんだのは、そんなことだった。
時には、何年も考えないようにしてきたことが、ある瞬間に一気に押し寄せてくる。
まるで、俺たちの頭がこう決めたかのように。
『もう先延ばしにはできない。今こそ、すべてに向き合う時間だ』
そして、恐ろしいのは、自分が消えてしまったあとも、世界は何事もなかったかのように回り続けるということだ。
一人いなくなったところで、翌日には太陽が昇り、人々は仕事へ向かい、何も変わらないかのように日常が続いていく。
……恐ろしい考えだろう?
どれだけ平気なふりをしても、死は恐ろしいものだ。
自分の人生が終わり、その先に何が待っているのか、誰にも確かなことは分からないのだから。
それは、人類が存在し始めた頃から向き合ってきた事実の一つだ。
無視してきた人もいれば、理解しようとした人もいる。そして、ある答えを信じ、それを支えに生きてきた人もいる。
だが、俺は……。
自分が死んでいるのかどうかさえ、分からない!
この広大な森を歩き回ってみたが、近くに人がいることを示すものは何一つ見つからなかった。
それが、状況をさらに複雑にしている。
俺は本当に死んだのか?
難しい質問だ。
前の人生で最後に起きたことを考えれば、死んでいる可能性はかなり高い。
だが、どうしても完全には受け入れられない何かがあった。
俺は、周囲のあらゆるものを感じ取ることができる。
木々が揺れる様子。
鳥たちの鳴き声。
体に触れる、暖かな陽の光。
そして、遠くから聞こえてくる川のせせらぎまで。
何よりも……。
俺は、自分自身を感じている。
考えることができる。
物思いにふけることもできる。
恐怖も感じるし、空腹だって感じる。
自由に体を動かすこともできる。
こうしたことを考えると、自分が死んでいるとは思い切れなかった。
だが、それだけで死んでいる可能性を否定できるのか?
分からない。
本当に死んでいて、今起きていることは、俺には理解できない何かの一部なのかもしれない。
あるいは、生きてはいるものの、何らかの方法で知らない場所へ移動してしまったのかもしれない。
仮に後者が正しいとしても、どうやってそんなことが起きたんだ?
そして、どうして体まで変わってしまったんだ?
一つの説明にすがろうとするたびに、新しい疑問が浮かび上がり、その説明を疑わせる。
こうして、一つの扉を閉じるたびに別の扉が開き、その先にはさらに多くの疑問が待ち構えているのだった。
もし俺が生きているのなら、ここはどこなんだ?
どうして俺はここに来た?
どうして体が変わったんだ?
他人にとっては、取るに足らない質問に思えるかもしれない。
だが、俺にとっては違う。
その答えによって、今、自分が生きている現実の正体も、これからどう行動すべきなのかも変わってくるのだから。
では、もし俺が死んでいるのなら……。
今の俺の状況は、一体何を意味するんだ?
俺は天国にいるのか?
だが、俺が知っている天国のイメージには、見知らぬ森の中で、別の体になって目を覚ますなんて状況は含まれていない。
天使はどこだ?
ほかの人々は?
それとも、地獄にいるのか?
もしそうなら、もっと恐ろしい。
こんな場所に永遠に閉じ込められるのだと考えただけで、そんな可能性そのものから逃げ出したくなる。
とはいえ、俺が地獄にいることを裏づけるものも、何一つ見つかっていない。
……
なあ、聞いてくれ。
俺は今、現代哲学者の百科事典に名前を載せられるくらい、十分すぎるほど哲学的なことを考えたんじゃないか?
あははははは!
間違いなく有名になれるぞ!
……
俺は森の真ん中で立ち止まり、周囲の景色を静かに眺めた。
あああ……。
頭をかいた。
こんなに疑問ばかり考えていたら、頭がおかしくなりそうだ。
それでも、俺はどうにか正気を保とうとしていた。
知らない場所で、知らない体になっていて、何が起きているのか尋ねられる相手も一人もいない……。
これだけのことがあれば、誰だっておかしくなりそうじゃないか?
だが、そんなことよりも、もっと気にかかることがあった。
母さんだ。
ホテルを出たとき、俺は心の中で、あとで母さんに電話しようと思っていた。
どうして、あとでいいなんて思ったんだろう。
日本と、俺の故郷であるチュニジアでは時差があったとしても、電話をかけて母さんの声を聞くことくらいできたはずだ。
母さんだって、きっと嫌がったりはしなかっただろう。
電話をかけていれば、少しは気持ちが楽になっていたかもしれない。
あるいは少なくとも、死ぬ前の最後の行動が、大切な人をないがしろにすることではなかったと思えたかもしれない。
俺は一瞬、考えるのをやめた。
どうして、俺はこのことばかり考えているんだ?
もう一度、母さんに電話をかけられるかどうか分からないからか?
それとも、まだ死んだと確かめられてもいないのに、死んだことを事実として受け入れ始めているからか?
それさえも分からなかった。
胸に手を当てた。
胸の奥が痛む。
どれだけ言葉を探しても、うまく表現できない痛みだった。
おそらく、母さんも、ほかの家族も、今頃は俺のことを心配しているだろう。
だが、俺がいなくなってから、どれくらいの時間が経ったのか分からない。
覚えているのは、最後に起きた出来事と、そのあと目を開けたら、この場所にいたということだけだ。
数時間しか経っていないのかもしれない。
数日かもしれない。
それとも、もっと長い時間が過ぎているのだろうか。
あるいは、俺に起きたことは、今想像しているものとはまったく違うのかもしれない。
……だが、もしそうじゃなかったら?
……
突然、腹の中で何かが動いた。
ぐうううう……。
俺は自分の腹を見下ろした。
ああ、そうだった……。
腹が減ったんだ。
これも、俺が自分の死を信じ切れない理由の一つだった。
もし本当に死んでいるのなら、こんなふうに空腹を感じるものなのだろうか?
それに、俺は考えることも、自分の気持ちを言葉にすることもできる。
周囲のものを感じ取れるし、自由に動くことだってできる。
少なくとも、普通に生きている人間が持つ特徴のいくつかは、まだ残っているようだ。
だが、それだけでは何の証明にもならないんだろう?
俺はため息をついた。
今、俺が抱えている問題の中では最も単純なはずの空腹さえ、生きている証拠になるかどうか考えてしまっている。
正直……かなりひどい状態になっている気がする。
だが、生きていようが死んでいようが、俺の胃袋はそんな哲学的な問題に興味がないらしい。
とにかく、食べ物を求めている。
周囲の森を見渡した。
長い間、この場所を歩き回ったが、役に立ちそうなものは何一つ見つからなかった。
正直なところ、ここにとどまり続けるのが、ますます怖くなってきた。
知らない場所。
何に遭遇するかも分からない。
木々の向こうに何があるのかさえ、見当もつかない。
だからこそ、今の俺にできる最も重要なことは、生き延びることだ。
幸い、俺にはまだ記憶がある。
ならば、まずは生き延びることを優先すべきだろう。
……少なくとも、生きているつもりで行動することだ。
ほかの疑問については、あとで考えればいい。
今必要なのは、水と食べ物だ。
そう考えた俺は、川へ戻ることにした。
まずは飲み水を確保して、それから何か食べられるものを捕まえてみよう。
幸いなことに、子供の頃、野外でのサバイバルについて紹介する番組を見たことがあった。
俺は自信ありげに目を細め、記憶に残っていた番組名を思い出した。
「『Man vs. Wild』!」
ぐうううう……。
またしても、腹が鳴った。
まるで、俺のやる気を嘲笑っているかのようだった。
よし。
どうやら、番組で見た知識を実際に試すときが来たらしい。
こうして、俺はこの世界に来てから、初めて本格的な決断を下した。
何としてでも生き延びて、腹を満たせるものを見つける。
なんといっても、昔から言うだろう……。
健全な精神は健全な肉体に宿る!
……いや、強い体と筋肉がどうとかいう話だったか?
まあ、どうでもいい!
重要なのは、この体の中にある頭をしっかり保ち、ここから抜け出すために使うことだ。
ゴホン、ゴホン……。
そう、それでいい!
太陽はさらに地平線へ傾いていた。
それでも、陽の光はまだ俺のところまで届き、今まで経験したことのないような温もりを与えてくれた。
不思議な幸福感が胸に広がった。
これまで経験してきたことも、学んできたことも、すべてはこんな瞬間のためだったのではないか……。
そんな気さえした。
命の危険にさらされている状況で、俺は妙な幸福を感じていた。
……もっとも、自分が本当に生きているのかどうかさえ、分からないのだが。
結局、俺はまだ、哲学的な大問題に何一つ答えを出せていない。
俺は誰なんだ?
どうやってここに来た?
そして、俺は死んでいるのか?
またしても、質問は一つじゃなくて三つだ!
おそらく、この場所にとどまり、周囲で何が起きているのか理解できないままでいる限り、疑問は増え続けるのだろう。
だから俺は、しばらくの間、それらを脇に置いておくことにした。
まずは、腹を満たす。
自信満々にシャツを脱ぎ、ズボンの裾を少し上げた。
そして、森で見つけた材料から作った槍を手に取った。
先端は、できる限り鋭くなるように加工してある。
そう!
これも『Man vs. Wild』で学んだ知識の一つだ!
俺は堂々とした足取りで川に入り、周囲を泳ぐ魚に狙いを定め、槍を突き出し始めた。
俺の投げた槍は、一度も外れなかった!
水滴が引き締まった筋肉を伝って流れ落ちる様子も忘れてはいけない……。
……
……まあ、これは俺が期待していた展開だ。
実際に何が起きたのか、話してやろう。
ぼろぼろになったシャツが濡れないように脱ごうとしたとき、俺は自分の体に気づいた。
筋肉よりも、骨のほうが目立っていたのだ。
それに、今まで気づかなかった痕跡もいくつかあった。
おそらく、あちこちに負った傷の跡だろう。
そのため、俺はシャツを着たままにすることにした。
そして、槍についてだが……。
そもそも、あれを槍と呼んでいいのだろうか?
ただのぼろぼろの木の枝だった。
何かにぶつけただけで、簡単に折れてしまいそうな代物だ!
もちろん、俺には魚を捕まえた経験もなかった。
その結果、どうなったかって?
そう……。
魚に当たるどころか、自分の足ばかりを攻撃する羽目になった!
何度も失敗を繰り返すうちに、足が痛み始め、少し腫れていることにも気づいた。
ああ……くそっ!
だが、一つだけ、さっきの話で嘘をついていないことがある。
水滴が俺の体に降り注いでいたということだ。
ゴホン!
ただし、正確な一撃で水しぶきが上がったからではない。
何度も何度も川で滑って転び、全身ずぶ濡れになったからだ!
そして最後には、水の中に寝そべり、澄み渡る空と素晴らしい太陽を見つめる羽目になった。
「いやあ……あの番組は本当に素晴らしいな!」
あははははは!
……そういえば、少し考えてみて思い出した。
あの冒険家の後ろには、いつもカメラを持って撮影している人がいたはずだ。
つまり、あの番組はすべて仕組まれていたに違いない!
あははははは!
そうだ、間違いない!
視聴者には何かを隠していたんだ!
そして、俺の場合は……。
番組の本当のタイトルは『Wild vs. Man』だったらしい!
そう!
今日の俺の経験を表すなら、それこそがふさわしいタイトルだ!
……
俺はそのまま、水の中に横たわっていた。
……本当に、家に帰りたい。
「ハックション!」
どうやら、風邪をひきそうだ。
……
俺は川から上がり、日差しがよく当たる場所を探した。
そして、草の上に横になった。
地面は暖かかったが、服が濡れていたせいで、風が吹くたびに冷気が骨まで染み込んでくる。
「ハックション!」
ああ……。
本当に風邪をひきそうだ。
なんて素晴らしい一日の始まりなんだ!
俺は澄み渡る空を、長い間見つめていた。
周囲の木々の枝が風に揺れ、川のせせらぎや、水の中で動く魚の音、森の上を飛ぶ鳥たちの声が耳に届いてくる。
そして、陽の光が俺の顔を照らし続けていた。
周囲のすべてが穏やかだった。
……いや、美しいとさえ思えた。
……
……俺は一体、何をしているんだ?
理由は簡単だ。
正直なところ、空を眺め、周囲の自然の音に耳を傾ける以外、何もすることがないからだ。
話し相手は誰もいない。
このあと何をすべきなのかも、まったく分からない。
だから、俺はそのまま空を見つめ続けた。
長い時間が過ぎた……。
いや、実際には、それほど長くなかったのかもしれない。
俺には分からなかった。
「ハックション!」
一つの考えが、頭の中を巡っていた。
正直、それが正しいのかどうか、自信はなかった。
必ずしも馬鹿げているからではない。
ただ、それを考えること自体が、あまりにも現実離れしていたからだ。
俺は暖かな草の上で、手足の指を動かした。
「……俺、別の世界に転移したんじゃないか?」
……
俺は再び黙り込んだ。
当然、こんな質問に答えてくれる人など、どこにもいない。
しばらく空を見つめていると、思わず笑いがこぼれた。
「あははははは! 俺って本当に馬鹿だな!」
別の世界にいるだって?
そんなことがあるはずないだろう!
確かに、以前にもそんな考えが頭をよぎったことはあった。
だが、俺はその可能性を否定していた。
どうしてかって?
俺が話しているのは現実だ。
空想の物語じゃない!
それに、本当に死んだのだとしたら、こんな場所に来るはずがないだろう?
少なくとも、俺の知っている死後の世界のイメージとは、まったく一致しない。
……
それでも、俺は少しずつ、この考えに傾き始めていた。
たぶん、昔の記憶がまだ残っているからだろう。
自分が死んだと思われる瞬間の記憶まで、はっきりと覚えているのだから。
正直、どれだけ考えないようにしても、あの瞬間を思い出すのは恐ろしかった。
胸の奥が、得体の知れない恐怖で満たされる。
あの記憶を思い出したくはなかった。
それでも、考えることをやめられなかった。
だから俺は、自分が今どのような状態にあるのか、いくつかの仮説を立て始めた。
どんな結論にたどり着くとしても、今の自分が置かれている状況を理解する必要があるからだ。
こうして、別の世界に転移したという可能性は、完全には否定できなくなっていた。
とはいえ、やはり信じがたい考えであることに変わりはなかった。
なあ、知っているか?
俺にとって、これはテレビで見たり、漫画や異世界ものの小説で読んだりするだけの話だった。
人間が生み出した空想の物語。
紙や画面を通して、誰かに伝えたい物語を描くために作られたものだ。
……待てよ。
そもそも、異世界ものの物語って、日本人が作ったものが多いんじゃないか?
つまり、俺は日本にいた頃、ほかの人と同じようにアニメを見たり、漫画を読んだりしていた。
もしかして、そうした物語に影響されすぎて、今の状況まで、その物語を通して解釈しようとしているんじゃないか?
……
いや、だからといって、何かが証明されるわけじゃない。
たとえ異世界ものの物語が日本人によって生み出されたとしても、それが現実であることにはならない。
今、俺に起きていることが、そうした物語と本当に同じだという保証もない。
あくまで空想の物語であり、現実の世界でそれが正しいと証明されたわけではないのだから。
……そうだろ?
だが、問題は、俺が今も本当に以前の世界にいるのかどうかさえ分からないことだった。
あははははは!
なんてこった!
死ぬ前に起きた出来事と、これまで見たり読んだりしてきた物語のせいで、俺は今、何の根拠もない空想を使って、自分の現実を説明しようとしている!
……笑える話じゃないか?
……
再び冷たい風が吹き抜けた。
「ハックション!」
俺は鼻をこすり、しばらく黙り込んだ。
それから、少しだけ頭を持ち上げ、自信たっぷりに叫んだ。
「STATUS OPEN!」
……
何も起きなかった。
しばらく待ってみたが、目の前を木の葉が舞っていくだけだった。
「あははははは! そりゃそうだよな!」
あははははは!
まるで、お気に入りの番組を真似する子供みたいじゃないか!
……
俺は再び空を見つめた。
「スキル表示!」
……
「スキル画面!」
……
「魔力!」
……
「ユニークスキル!」
……
「火魔法! 水魔法! 風魔法! 土魔法!」
……
「超能力!」
……
「領域展開!」
……
長い沈黙が流れた。
何も現れなかった。
謎めいた画面もなければ、新しいスキルが発動したと告げる声もない。
小さな魔法の火花一つさえ、現れなかった!
何も……本当に何も起こらなかった。
俺は腕を持ち上げ、太陽の光を遮った。
こんなに簡単にうまくいくはずがないと、最初から分かっていたはずだ。
それでも、人間というものは、時には自分で一歩踏み出し、実際に試してみなければならない。
失敗すると分かっていても、だ。
それで恥ずかしがる必要なんてないだろう?
……
俺は再び自分の手を見つめた。
「うん……どうやら、熱のせいで頭がおかしくなり始めているらしい」
目の端には涙が浮かんでいた。
それでも、顔から笑みが消えることはなかった。
時には、ある経験が、なかなか消えない精神的なダメージを残すこともある。
くそっ……。
この光景は、きっと長い間、俺の記憶に残り続けるだろう!
……
ぐるるるるるる!
腹の中から、長い音が響いた。
俺は両手で目を覆った。
「腹が減った……」
腹が減っていて、道にも迷っている。
自分に何が起きたのかも分からない。
今、周囲で起きていることが、長い夢の中での出来事なのか。
それとも、本当に死んでしまったのか。
どちらにしても、真剣に受け止められる答えは何一つない。
それに、寒い。
風が吹くたびに体が震えるし、体のあちこちが痛む。
その理由も分からない。
傷のせいかもしれない。
魚を捕まえようとして馬鹿な真似をしたせいかもしれない。
あるいは、ほかに何か理由があるのかもしれない。
自分の体のことさえ、もう簡単には理解できなくなっていた。
もしこれがテレビ番組の企画か何かなら、お願いだから、もうやめてくれ!
俺は、これ以上どうにか正気を保つだけでも精一杯なんだ!
「ハックション!」




