真面目に働いています
前にも言ったとおり、俺の哲学は実に単純だ。
自分が何か問題を抱えているとき、誰かが現れて「その問題は私が引き受けます」と言ってくれたなら、迷わずそいつに任せる。
そう、それが俺の哲学だった。
正直なところ、俺だけじゃなく、誰だって同じように行動すると思う。
だが、この六十日間に起きたことを考えると、この哲学が本当に正しいのか、少し考え直したほうがいいのかもしれない……。
なぜなら、ご覧のとおり、俺は今、大小さまざまな荷物を積んだ荷車を引き、灼熱の太陽の下で町中を歩き回っているのだから!
これが、いわゆる生計を立てる苦労というやつなのか?
なるほど……想像していたよりも、ずっと大変じゃないか……。
さて、俺はこの素晴らしい新生活を、六十日間ずっと幸せに送ってきたと言えるのだろうか?
あははははは!
いや……。
もしかすると、俺の計算に何か間違いがあったのかもしれない。
そもそも、俺の新生活が始まったのは、きっかり六十日前というわけではない。
森の中で過ごした三日間と、二週間も眠り続けていた期間を計算に入れると、話は複雑な数学の問題のようになってくる。
三に六を掛けて、六十で割る……。
答えを取っておいて、それから未知数Xを探し、さらに二週間の合計から五を引いたものを加える……。
すると、答えは……。
そうそう! どうやら、マイナスになるらしい!
いや、もしかするとプラスかもしれない……。
おそらく、そもそも答えなんて出ないんだろう!
マイナス無限大に向かう負の数かもしれないし、ゼロかもしれないし、まあ、そんな感じの何かだ!
……
こんなときこそ、俺の素晴らしい相棒に頼るべきだろう……。
このガラクタ!
「告:スキル名は『ガイド』です。『ガラクタ』ではありません」
あははははは!
本当に冗談が通じる奴だな!
さて、ガラクタ……じゃなくて、素晴らしいガイドさん。
俺がこの素晴らしい世界に来てから、何日経ったんだ?
「対象者ヴィンの記憶から抽出した記録によると、この世界に到着してから約七十八日が経過しています」
うわああ!
もうそんなに経ったのか!
あっという間じゃないか!
……
俺は、別の野菜店の前で足を止めた。
「おお! 今日は早かったな、ヴィン!」
声のしたほうを振り向く。
「あはははは! この生活にも慣れてきた、というところですかね!」
そう、俺はもう、この日常に慣れ始めていた。
それが恐ろしいくらいに!
俺は荷車から野菜の箱を一つずつ降ろし始めた。
せっかく少し時間があることだし、この機会に、ここまでの出来事を簡単に振り返ってみよう。
さて……。
自分が別の世界に転移したのだと確信してから、俺はこの問題について考えるのを無期限で先送りすることにした。
いくら考えても、論理的な説明を見つけられなかったからだ。
正直に言って、俺には、この世界にどうやって来たのかを考えることよりも、もっと差し迫った問題がある!
それに、いくつか奇妙な出来事を経験したことで、俺が置かれている状況は、あちこちでアニメの撮影をしていて、ちょっとした特殊効果が加えられているだけ……なんてものではないこともわかった。
つまり……。
俺が何を言いたいのか、皆さんならわかりますよね?
あはははは!
とにかく、俺はこの町の宿屋で目を覚ました。
すると、誰かが俺の寝ていた部屋を爆発させたのだ!
その事件が原因で、いろいろと面倒なことが起きた挙げ句、俺は爆発の責任を負わされることになった。
自分がどうやって爆発を引き起こしたのかさえ知らなかったというのに!
おまけに、荷車が壊れ、馬が逃げ出すという事故まで起こしてしまった……。
もちろん、わざとじゃない!
そして、すべてが終わったと思ったら、いつの間にかフルタイムで働かされる羽目になっていた!
正直、このことは少し不安だった。
自分がただのモブキャラにすぎないとわかったうえに、特別な加護も、超常的な力も、ほかの人間と自分を区別できるような特別な才能も、何一つ手に入らなかったのだから……。
こんな役立たずのモブキャラにとって、仕事を見つけることこそが、最大の難関なのかもしれないと悟ったのだ!
あははははは!
自分を笑いものにするのは、少し心が痛む。
だが、俺もだんだん慣れてきた。
他人に笑われる前に、まず自分自身を受け入れろ……なんて言葉があるだろう?
そうそう……。
前の世界では、哲学の授業が大嫌いだった。
何の役にも立たないと思っていたからだ。
だが、どうやら、この世界では少しくらい役に立つこともあるらしい!
……
さて、本題に戻ろう……。
俺は、ろくな経験もなければ、伝説的な血筋も、頼りにできるものも何一つ持っていない、ただのモブキャラだ。
だからこそ、自分が転がり込んだ社会のお荷物になってしまうのではないかと心配していた。
だが、二人の老人のおかげで……。
あはははは!
二人の優しさのおかげで、俺はこの悲惨な人生を生き延びることができたのだ!
最後の荷物を降ろし終えると、俺は再び荷車を引いて道を進んだ。
あっ、そうだ!
もう一つ、皆さんに伝えておかなければならないことがあった。
俺は名前を変えたのだ!
以前の名前は、この世界では少し違和感があるように感じた。
そこで、今の自分の立場にふさわしい新しい名前を選ぶことにしたのだ。
こうして、俺はヴィン・レムスと名乗るようになった!
素晴らしい名前だろう?
……
まあ、それでも、町の人々は俺の名前を聞くと、どこか変なものでも見るような目で見てくるのだが!
正直、この町の住人たちの考え方は理解できない。
人間同士を奴隷という名目で売買すること。
人間の臓器を売りさばくこと。
そして、他人にこんなふうに働くことを強制すること。
それらが当たり前のように行われているんだぞ?
そのうえ、魔法だの、超常的な能力だの、魔物だの、信じられないようなものまで存在している!
こんな世界で、いったい何を基準に「奇妙」だと判断すればいいんだ!?
……
それに、俺の頭の中で話しかけてくる奇妙なスキルの存在も忘れてはいけない。
最初は、自分の頭がおかしくなったのかと思った。
正直、今でも時々そう疑っている。
だが、このガラクタ……。
あれ、何という名前だったっけ?
「対象者ヴィンが所有するユニークスキルの名称は『ガイド』です。ガラクタではありません」
あはははは!
そうそう、思い出した!
すまない、すまない!
どうやら俺には、自分の人生に役立たないものの名前を覚えられないという問題があるらしい!
とにかく、俺はこの、自分のことをユニークスキルだと主張している何かを持っている。
まあ、何と呼ぼうと勝手だが……。
ところが、このスキルには驚くべき秘密がある。
なんと、メンテナンスが必要なのだ!
そう、聞き間違いじゃないぞ!
正直、俺は自分の頭がおかしいのではないかという疑いよりも、こいつの知能に問題があるのではないかと疑い始めている。
というのも、こいつはどうやら、少々欠陥のあるプログラムらしいのだ。
俺が意識を失ったり、眠ったりすると、こいつも活動できなくなり、同じように休眠状態に入ってしまう!
「告:利用可能なデータを分析しましたが、この不具合の主な原因は特定できませんでした」
あははははは!
言い訳しなくていいんだぞ、ガラクタ……じゃなくて、素晴らしいガイドさん!
お前だけが悪いわけじゃない。
もしかすると、プログラマーたちがお前を作っていたとき、少し急ぎすぎたのかもしれないな。
それで、十分にテストもしないまま、俺の端末にインストールしてしまったんだ!
あるいは……。
俺自身が、ただの実験対象だったのかもしれない!
「対象者ヴィンが提示した仮説について、確定的な結論は得られていません。また、この可能性が何を意味するのかについても、現時点では明らかになっていません」
あはははは!
気にするな、気にするな!
頭の悪い記憶を無理に働かせる必要はないぞ!
残っている力を大事にしろ。
そうしないと、俺より先に休眠状態に入ってしまうかもしれないからな!
……
さて、俺の素晴らしいスキルについての紹介も終わったところで、そろそろ本題に戻ろう。
俺がたどり着いたのは、ハーモニーという町だった。
その後、マサトとアサミという二人の老人のもとで働き始め、店から店へと荷物を運び、積み下ろしをするようになった。
どうやら、この町はニヴェルタニア王国の領土内にあるらしい。
この世界の地名は少し変わっているが、まあ、問題ない。
異世界ものの物語では、こういうことにも慣れているからな!
それに、ハーモニーは王国に近い。
場所によっては、王都が見えることさえある。
もちろん、町が王都にぴったり隣接しているわけではない。
その間には距離があるし、以前耳にした、あの目に見えない障壁も存在している。
どうやら、その障壁は王国と周辺地域を守っているらしい。
これで、この素晴らしい世界と、そこで見つけた素敵なものについての簡単な紹介は終わりだ!
……
また本題から脱線してしまった気がする。
そもそも、俺は仕事の話をしていたんだっけ?
正直、忘れてしまった!
だが、さっきも言ったとおり、俺はフルタイムで働いている。
そう、フルタイムだ!
もっと正確に言えば、朝から翌朝まで働いている!
そんなことが可能なのか、と誰かが尋ねるかもしれない。
まあ、この世界では可能だということがわかった。
というより、前の世界の常識では不可能なことが、この世界では可能になるらしい。
この世界は、俺たちの世界とは正反対の論理で動いているんだ!
さて、俺の現在の仕事は、マサトと一緒に荷物を運び、荷車に積み込み、この広い町のあちこちで荷物を降ろすことだ。
そして、何より素晴らしいのは……。
休憩はほとんどない!
食事だって、ろくに与えられない!
そのうえ……。
給料は一切もらえない!
あはははははは!
なんて素晴らしい人生なんだ!
……
太陽はすでに西へと傾き、町のあちこちにゆっくりと夜の闇が広がり始めていた。
俺は町の噴水の前に立っていた。
汗が滝のように流れ、汗と水の区別さえつかなくなりそうだった!
俺は噴水の縁に腰を下ろし、空を見上げた。
星々が一つ、また一つと姿を現し、俺の呼吸も少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「ああ……誰もが一度は憧れるような人生だな!」
本当に……。
そう思わないか?
「おい、ヴィン!」
俺は顔を上げ、声のしたほうを向いた。
そこにいたのは、一日の終わりまでに必ず顔を合わせることになる人物。
いや、もっと正確に言えば、俺を精神的にいたぶる機会を絶対に逃さない人物だった!
男は俺に近づき、空になった荷車を眺めた。
「おお! 今日はずいぶん早く仕事を終えたじゃないか!」
彼は満面の笑みを浮かべ、さらに続けた。
「ということは、ようやくこの町にも馴染んできて、立派な働き者の奴隷になったというわけだな!」
「はははは! ありがとうございます、マサト様……」
そう、この男こそ、俺の新しい雇い主、マサト様である!
本当に優しい人だ。
俺を励まし、元気づけ、褒める機会を決して逃さないのだから!
ああ、なんてありがたいことだろう!
……
「よくやった、よくやった! はははは! この短い期間で、ここまで変わるとは本当に驚きだぞ!」
マサトは俺の肩を叩き、続けた。
「つい昨日のことのようだな。お前は何の役にも立たず、文句ばかり言って、必要な努力もせず、奴隷としてでさえ誰も雇いたがらないような奴だったのに!」
彼は一瞬言葉を切り、それから満面の笑みで付け加えた。
「いつも仕事から逃げようとして、言われたこともまともにやろうとしない、まったく手のかかる小僧だったな!」
……
こいつ、殺してもいいか!?
本気で、いったい何なんだ、この人は!?
褒めすぎだろ!
いや、違う!
褒めるどころか、ありったけの悪口を記憶の中から引っ張り出して、一気にぶつけてきているじゃないか!
人を元気づけるどころか、精神を破壊するつもりなのか!?
……よし、落ち着け、ヴィン。焦るな。
俺は深く息を吸い込み、それから顔を上げて彼を見た。
「このジジ……」
……
こうして、マサト様との素晴らしい一日は終わった!
……ああ、いや、待て!
まだアサミとの夜勤が残っているんだった!
あはははははは!
どうやら、今夜も長い夜になりそうだ……。
その後、マサト様との間に何が起きたのかは、また次回お話ししよう!
あははははは!




