なんて最悪な転生なんだ!
望みを叶えるために、必ずしも大きな努力が必要なわけではない。
世の中には、物事の流れに身を任せているだけで、問題が勝手に解決してしまう人もいる。
一方で、ほんの些細なことを手に入れるために、持てる力のすべてを尽くさなければならない人もいる。
では、もし誰かが、君たちの代わりに問題を引き受けてくれると言ったら、どうだろう?
「私に任せてください。すべて解決します」
素晴らしいと思わないか?
特に、問題に立ち向かうよりも、できるだけ避けて通りたいタイプの人間にとっては。
自分で頭を悩ませて解決策を探す必要なんてあるだろうか?
他人にその面倒を押しつけられるのなら、そうすればいいじゃないか!
俺にできることは、ただ座ってのんびりしながら、問題が解決するのを待つことだけ!
ああ、なんて理想的な人生なんだ!
……
うん、さすがに少し大げさだったかもしれない。
だが、俺はこの考え方を心の底から信じていた。
だからこそ、頭の中に突然現れた正体不明の存在が助けてくれると言っただけで、迷うことなくそいつを信頼してしまったのだ。
もちろん、そのせいで後悔することになるなんて、思ってもいなかった。
まあ、その話はひとまず置いておこう。
あの出来事から六十日が経った今、俺はというと……生きたまま焼き殺すつもりなのではないかと思うほどの太陽の下で、荷車を引いていた。
暖かいと言えばいいのだろうか?
いや、「灼熱」という言葉のほうがふさわしい。
気温は五十度を超えているんじゃないか!?
……まあ、少し大げさかもしれないが、俺は今、じわじわと焼かれているような気分なんだ!
そんな太陽の下で一時間も荷車を引き続け、ようやくパン屋の前にたどり着いた。
すると、店の中から一人の男が出てきた。
五十歳はとうに超えていそうな年齢で、長い白ひげを生やしている。人付き合いに慣れていることがうかがえる顔つきだった。
男は俺を見ると、笑顔を浮かべた。
「すっかりこの仕事にも慣れたようだな、ヴィン!」
あはははは! そう見えるか、ジジイ!
……じゃなくて、尊敬すべきご主人様!
「だが、口の利き方はまだまだ直す必要がありそうだな、ヴィン」
「あははは! すみません、すみません! どうも年寄り相手だと、いろいろと問題が起きてしまうみたいで! どうか大目に見てください、パン屋さん!」
「はははは! 気持ちはわかるぞ。マサトには、まだまだこき使われているようだからな」
そう言って、男は俺の後ろにある荷車を指さした。
「荷車にある小麦粉の袋を二十袋、店の中に運んでくれるか?」
……
くそっ! 自分で運べ!
これが、俺が真っ先に口にしたかった言葉だった。
だが、俺の雇用契約では、どれほどそうしたくても、客にそんな態度を取ることは禁止されている。
だから、俺にできることは一つしかなかった。
笑顔を浮かべることだ。
「はぁぁい!」
太陽が容赦なく頭上から熱を浴びせ続け、汗が全身を覆う中、俺は荷車から小麦粉の袋を一つずつパン屋の中へ運び始めた。
一袋、また一袋……。
なんて素晴らしい人生なんだ!
……
ところで、なぜ俺がヴィンと呼ばれているのか。
なぜ灼熱の太陽の下で荷車を引いているのか。
そして、どうしてこんな悲惨な状況に陥ってしまったのか。
そんな疑問を抱いている人もいるかもしれない。
はああ……。
どこから話せばいいんだろう?
この六十日間、本当にいろいろなことがあった。
だが、まずはあの日まで時間を巻き戻そう。
そう……ついに自分の問題を解決してくれる存在を見つけたと思った、あの日だ。
ガイドの初任務が始まった日。
そして、この話のタイトルが示すとおり、その任務が失敗に終わった日である。
---
六十日前――
「告:より適切な解決策が見つかりました」
その瞬間、俺を引きずっていた二人の老人が足を止めた。
俺は地面に座り込んでいた。
周囲には、俺のことを損失と厄介事の塊としか見ていないらしい二人の男がいる。
正直なところ、二人の言い分もまったく理解できないわけではなかった。
俺は宿屋の部屋の床を壊したし、マサトの荷車も壊してしまった。馬だって無事では済まなかった。
だが……。
だからといって、俺を奴隷として売ったり、臓器を売りさばいたりしてもいいのか!?
この世界には、そういうことを禁止する法律はないのか!?
アサミが不機嫌そうな顔で俺を見た。
「何を言っているんだ、小僧? そもそも、俺たちがお前の意見なんて聞いたか?」
待て! 俺は何も言ってないぞ!
俺は心の中で叫んだ。
だが、問題は、その声を聞けるのが俺一人しかいないことだった。
どういうことだ!?
俺は本当に頭がおかしくなり始めたのか!?
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない!
そのとき、マサトが俺に近づき、じっと観察し始めた。
さっきまでの俺とは違い、今の俺はずいぶんと落ち着いていた。
無闇に動き回ることもなければ、二人の言葉にいちいち反論しようとすることもない。
もちろん、急に俺が理性的になったわけではない。
俺の体の中で、別の誰かが主導権を握っているからだ!
マサトは眉をひそめ、それからアサミのほうを向いた。
「おい、アサミ。本当にこいつの舌を切らなくてもいいのか?」
さらに、真剣な口調で続けた。
「確かに、それじゃ売値は下がるだろう。だが、少なくとも、これ以上面倒を起こされずに済む。文句ばかり言って反抗する奴隷を買いたがる奴なんて、そうそういないだろうしな」
くそジジイ! 俺の舌を切る話なんかするな!
ほかに考えることはないのかよ!?
だが、俺の体は地面に座ったまま、何事もないかのように静かにしていた。
ガイド! それとも何でもいい、今すぐ何かしてくれ!
「告:利用可能なデータを分析し、適切な対応を特定しています」
……
このガラクタ!
俺を簿記の授業でも受けているような気分にさせるな!
今の状況とデータだの適切な対応だのに、何の関係があるんだよ!?
いいから、さっさと何とかしてくれ!
その一方で、アサミは俺の体に巻きついた鎖を引っ張りながら言った。
「ほら、さっさと片づけよう。こいつを売って、こいつが引き起こした損失を補填するんだ。この一件で宿屋の仕事に支障が出るのはごめんだからな」
「ああ、お前の言うとおりだ」
マサトはそう答え、扉のほうへ歩き出した。
「このまま放っておくわけにもいかないからな」
背筋に冷たいものが走った。
一瞬、冗談を言う余裕も、皮肉を口にする余裕もなくなった。
二人は本気で話していたのだ。
ただ俺を怖がらせようとしているわけではない。
しかも、ここから逃げ出せそうな道も見当たらなかった。
俺は二人の間に閉じ込められ、自分の体さえ自由に動かせない。
本当に奴隷として売られてしまうのか?
それとも、もっとひどいことになるのか?
「告:状況の分析が完了しました。適切な解決策を特定しました」
……
やっとか!
だが、俺が喜ぶよりも先に、俺の体から声が発せられた。
その声は、驚くほど落ち着いていた。
いつも俺が見せているような動揺は、微塵も感じられない。
「状況を分析した結果、私を奴隷として売却しても、お二人に十分な利益はもたらされないと判断しました」
……
沈黙が訪れた。
アサミもマサトも動きを止め、俺の体を凝視していた。
俺の体は二人のほうを向くこともなく、頭を動かそうともしなかった。
ただ、いつもとは少し違う声が、まるで単純な計算問題について話しているかのような落ち着いた口調で、俺の口から出てきただけだった。
一方、俺はというと……。
驚きのあまり目を見開いていた。
おおおお! ついに動いてくれたか!
さすがは俺の素晴らしい相棒だ!
だが、アサミはどうやら、その言葉が気に入らなかったらしい。
「どういう意味だ、小僧!? 奴隷の市場価格がどれくらいか、お前はわかっているのか!?」
おいおい! もう少し落ち着いて話せないのか!?
せっかく安心しかけていたところなんだから、邪魔をしないでくれ!
ガイドはアサミの口調にも動じることなく、俺の声で答えた。
「この地域について入手できる情報を考慮すると、人間を奴隷として売却しても、二人が被った損失を補填できるだけの金額を得られるとは限りません」
アサミは顔をしかめた。
「どうしてそんな結論になる?」
「奴隷の価格は、種族、身体能力、魔法能力、従事できる仕事、そして市場での需要など、複数の要因によって決まります」
ガイドは続けた。
「肉体労働に従事させるため、優れた身体能力を持つ奴隷を求める購入者もいます。一方で、さまざまな分野で利用できる魔法能力に注目する購入者もいます」
マサトはゆっくりと頷いた。
「それはそうだが、だからといって、お前を売っても利益が出ないとは限らないだろう」
「私の売却によって利益が得られないと言っているわけではありません。ただし、入手可能な情報を考慮すると、高額で売却できる可能性は低いと考えられます」
……
ふむ……。
なるほど。
一応、筋は通っている。
だが、待て!
どうしてだろう……。
この会話、どう考えても俺にとって嫌な方向へ進んでいる気がするんだが!?
ガイドは分析を続けた。
「さらに、この地域の奴隷市場は規模が大きくなく、主に権力や影響力を持つ者たちを対象としているようです。購入者が見つかった場合でも、奴隷の種族や技能、購入によって得られる利益が重視されます」
そして、こう付け加えた。
「入手可能な情報によると、この地域で売りに出されている奴隷の約九十パーセントは人間です。残りの約十パーセントを、その他の種族が占めています」
わずかに間を置いて、ガイドは続けた。
「それらの種族の中には、希少性や特別な能力を持つことから、より高い価値を持つものも存在する可能性があります。一方、この地域で大多数を占める人間については、一人を売却したからといって、高額な利益が得られるとは限りません」
「特に、ほかの人間と差別化できる能力を持たない場合、その可能性はさらに低くなります。現時点で、私にはほかの人間と区別できるような特別な能力が確認されていないため、私を購入するために高額を支払おうとする買い手が現れる可能性は低いと考えられます」
……
部屋の中が静まり返った。
アサミは動かなかった。
マサトも何も言わなかった。
そして、体の中からその話を聞いていた俺も、何も言えなかった。
こ、これは……勝利と呼んでもいいんじゃないか!?
ガイド! お前、本当にすごいじゃないか!
まさか、こんなにあっさり二人を説得できるなんて思わなかったぞ!
今まで、俺はお前のことをただの頭の中の幻覚だと思っていたが、どうやら本当に存在していたらしい!
ああ、なんて安心できるんだ!
ついに、俺の問題を解決してくれる有能な存在を見つけたぞ!
ガイド、今までいったいどこにいたんだ!?
どうして、この奇妙な世界に来たときから姿を現してくれなかったんだ!?
あははははは!
これでようやく、いつもどおり自分の問題を他人に押しつけられるようになるぞ!
……
だが、心の中で喜び続けていた俺は、ふと彼女の言葉を思い返した。
待てよ……。
彼女は、奴隷の価値は能力によって変わると言っていた。
そして、購入者は身体能力や魔法能力を重視するとも言っていた。
……
おい……。
つまり、俺は役立たずだってことか!?
この世界では、俺には役に立つだけの身体能力も魔法能力もないって、そう言いたいのか!?
返事はなかった。
……はあ!?
ガイド!?
返事はない。
あははは……ま、まさか、これも二人を説得するための作戦の一部なんだよな!?
そうだろ!?
……
ガイド、質問しているんだぞ!
返事はなかった。
あははは! ま、まあ、いいさ!
お前の沈黙は、俺の言葉を肯定しているということにしておこう!
そうだ、間違いない!
これも作戦の一部なんだ!
そうだろ!?
……
その頃、アサミはしばらく俺を見つめていたが、やがて口を開いた。
「つまり、お前には特別な技能も能力もないということか?」
ガイドはためらうことなく答えた。
「入手可能な情報によると、現時点で私には目立った魔法能力が確認されていません。また、私の痩せた体格は、強い身体能力を必要とする仕事において、明確な利点にはなりません」
……
ああ……。
やっぱり、本当だったのか……。
俺の心の中で、何かが音を立てて崩れた。
せっかく別の世界に転生したことを確認できたというのに、俺はまたしても、残酷な現実に直面することになった。
俺は……役立たずだったんだ!
くそっ! なんなんだ、この悲惨な転生は!?
最初からやり直させてくれ! この世界から出してくれ!
いったいどこに停止ボタンがあるんだ!?
こんな世界、不公平すぎるだろ!




