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12/19

これは本当に誤解だった!


異世界で目を覚ますなんて、まるで夢みたいな話だと思わないか?


奇妙な出来事をきっかけに別の世界へ転移し、目を覚ますと目の前には美少女がいる。


あるいは、何千年もの間、忘れ去られた地下室で君が来るのを待っていた老人がいて、「お前こそが選ばれし者だ」と告げてくる……。


もしくは、王族に召喚され、この世界の勇者として魔王を倒すための壮大な冒険に出ることになる、とか。


まあ、ほかにもいろいろなパターンがあるが、今はそれについて語るつもりはない。


少し考えてみてほしい。


新しい旅。


新しい身分。


謎に満ちた世界。


そして、何が待ち受けているのか分からない未来……。


やがて主人公は有名になり、新しい仲間たちと出会い、幸せな生活を送るようになる。


もちろん、ハーレムも忘れてはいけない!


さまざまなタイプの女の子たちに、超人的な力、そして終わりのない冒険……。


要するに、突然異世界に放り込まれた人間なら、誰もが一度は夢見るような人生というわけだ。


そうだろう?


だが、もし異世界転移が本当に起こる現象だったとしたら?


ある日、見知らぬ世界で目を覚まし、自分の新しい人生が、今まで見てきた物語とはまるで違うものだと気づいたら?


さて……。


この世界で目を覚ましてから、俺はいろいろな目に遭ってきた。


その経験を踏まえて、二つだけ断言できることがある。


一つ目。


俺が最初に思っていたような、あまりにも完成度の高いアニメの撮影などではなかったということ。


そして二つ目。


こちらのほうが重要なのだが……。


俺は、この世界のただのモブキャラだ。


そう、言ってやったぞ!


認めるのは少々つらいが、こればかりは否定しようのない事実だ。


主人公なら、新たな冒険へと旅立ち、超人的な能力に目覚め、仲間を作り、もしかしたら美少女と一人か二人、出会うことだってあるだろう。


では、俺はどうだ?


さて、今の俺の状況を説明しよう。


俺は膝をつき、全身に鎖を巻きつけられ、うつむいたまま床を見つめている。


もちろん、体中に痣までできている!


これはつい最近、あの素晴らしい宿屋で起きた出来事の結果だ。


あそこは本当にひどい場所だった。


今すぐにでも正式な苦情を申し立ててやりたいくらいだ!


ゴホン、ゴホン……。


とにかく、本題に戻ろう。


俺の名はハリール・イブラヒム。


二十三歳。


この宇宙で最も素晴らしい男だ!


ゴホッ、ゴホッ!


もちろん、最もハンサムな男でもある!


俺の前世は、日本で華々しく、そして英雄的な最期を迎えた。


その後、目を覚ますと、そこは見知らぬ世界だった。


しかも、体は以前の自分とは別物。


この体が送ってきた人生の記憶もない。


超人的な力もなければ、誰もが振り返るほどの美貌があるわけでもない。


そして今、俺はというと……。


いつ命を落としてもおかしくない状況で、必死に命乞いをしている!


これが、俺の夢見ていた新しい人生なのか!?


俺が始めるはずだった壮大な冒険はどこへ行った!?


危険に直面しても自信満々で立ち向かえるようになる、超人的な力はどこにあるんだ!?


そして何より……。


どうして俺は、裁判をするための審問の場で鎖につながれているんだ!?


あははははは!


なんて素晴らしい始まりなんだ!


正直、異世界転移を希望する人間には、事前に説明書を配るべきだと思う。


転移の条件、自分に与えられる役割、そして待ち受けている運命。


そういうものを全部、説明しておいてほしい!


そうすれば、新しい人生を受け入れる価値があるかどうか、自分で判断できるじゃないか!


少なくとも、俺なら最初からこの話を断っていたぞ!


……まあ、それはさておき。


今、俺には一つだけ確信していることがある。


俺は異世界のモブキャラだ。


そして、どうやら周囲の状況を理解する暇すら与えられないうちに、次から次へと面倒事に巻き込まれる運命らしい。


くそ……家に帰りたい。


---


はあああ……。


外から差し込む太陽の熱が、ここまで伝わってくるような気がする。


どうしてなのかは分からない!


長い間、膝をついたままでいるせいかもしれないし、緊張のあまり大量の汗をかいているせいかもしれない。


だが、一つだけ確かなことがある。


俺はまるで罪人のような扱いを受けている。


それも、俺自身は、ここまでされるほどの罪を犯したとは思っていないのに!


そもそも、どうして俺はここにいるんだ!?


トイレに行きたい!


シャワーを浴びたい!


この人生を最初からやり直せるボタンが欲しい!


いや、できることなら……。


この異世界から脱出するための非常口はないのか!?


災害に備えて、建物には普通、非常口が設置されているものだろう!?


だったら、今の俺の状況だって、非常口が必要な大災害みたいなものじゃないか!


誰か、ここから出してくれ!


そのとき、俺の思考を遮るように、目の前に立つ男の声が響いた。


「さて……どうやら、この小僧は目を覚ましてからというもの、ずいぶんと問題を起こしてくれたようだな」


俺は少しだけ顔を上げた。


大柄な体。


エプロン。


そして、頭の上で目立つ短い白髪。


そう、アサミだ。


部屋が爆発したあと、俺が謝罪を要求していた相手である!


……いや、あれは感動的なシーンの撮影だったはずだ!


まさか、ここでも会うことになるとは思わなかった。


うーん……。


どうやら、ただの撮影スタッフというわけではなさそうだ。


このシーンでも重要な役を演じているらしい!


なんて素晴らしい演技なんだ!


俺を見つめるあの恐ろしい目つきまで、本物みたいじゃないか!


アサミは隣に立つ男へと顔を向けた。


「お前はどう思う、マサト?」


なるほど、こいつがマサトという名前なのか!


マサト……。


聞き覚えのない名前だが、まあ、どうでもいい。


マサトは怒った声で言った。


「おい、小僧! まともな躾を受けてこなかったのか!? 間違いを犯したら、まず謝るのが筋だろうが!」


……はあ!?


何を言っているんだ、この男は!?


これは台本にある台詞なのか?


それとも、役を忘れて俺に個人的な説教をしているのか!?


俺は長く考える間もなく、何とか返事をしようとした。


「す、すみません、ですが……」


最後まで言い終えることはできなかった。


マサトが恐ろしい目で俺を睨みつけ、そのままアサミへと顔を向けたからだ。


「誰がこいつに発言を許した!?」


……


……はあ?


マサトは、至極真面目な顔で続けた。


「こいつの舌を切り落としてやろうか、アサミ?」


……


おい、おい、おい!


何だ、その物騒な話は!?


どうして、こんなに早く舌を切るなんて話になっているんだよ!?


それに、さっき俺に謝れと言ったのはお前だろうが!


どうして質問に答えただけで、舌を切られなきゃならないんだ!?


俺は全身から汗が噴き出すのを感じた。


正直、この一件が終わったら、ゆっくり風呂に入りたい!


いや、もう二回くらい入っておきたい!


俺は深く息を吸い込み、何とか気持ちを落ち着かせようとした。


落ち着け、ハリール……。


きっと、これもシーンの一部だ。


もしかしたら、俺の即興演技を試しているのかもしれない。


あるいは、演じているキャラクターに、本物の恐怖を感じさせようとしているのだろう。


そうだ!


きっとそうに違いない!


……たぶん。


---


さて、そろそろ俺の運命を決めようとしている審問の場にいる面々を紹介しておこう。


まず一人目は、アサミ。


短い白髪に、巨大な筋肉、そしてエプロンを身につけた男だ。


彼については、もう知っているだろう。


俺が泊まっていた宿屋の主人である。


そして、あれが演技ではなかったとようやく理解したあと、俺は衝撃的な事実を知った。


あの撮影スタッフだと思っていた男は、監督でも俳優でもなかった。


俺が破壊してしまった宿屋の主人だったのだ!


……


ちょっと待て。


つまり、俺は本当にあいつの宿屋を破壊してしまったということか!?


いや、違う、違う!


そういうことじゃない!


俺が言いたいのは、自分がこの男の所有物を破壊した罪で訴えられているなんて、知らなかったということだ!


くそ……。


自分自身に説明しようとするだけで、かえって状況が悪化していくぞ!


そして二人目は、アサミの左側に立っている男、マサトだ。


彼は何者なのか?


そして、どうして俺を八つ裂きにでもしたいかのような顔で、あんなに怒っているのか?


よし、説明しよう。


前回、俺の足元の床が崩れ落ちたとき、俺はただ下の階へ落ちただけではなかった。


……マサトの馬車の上に落ちたのだ!


その馬車は、もちろん衝撃に耐えられず、見事に大破した。


そして、馬車を引いていた馬はというと……。


驚いて逃げ出してしまった!


なるほど。


これなら、マサトが怒っている理由も、ある程度は理解できる。


だが、もしこの事故の責任が誰にあるのかと聞かれたら……。


俺は、マサトにも大きな責任があると思う!


そもそも、どうしてあいつは、今にも崩れそうな宿屋の下に馬車を止めていたんだ!?


あんな場所から離れておくのが当然じゃないのか!?


そうだ、そうだ!


これこそが正しい考え方だ!


……たぶん。


というわけで、審問の場にいる二人の紹介はこれで終わりだ。


たった二人。


アサミとマサト。


この場所は、そんなに人手不足なのか!?


それとも、作品の予算が足りなくて、これ以上の俳優を呼べなかったのか?


……まあ、文句は言うまい。


俺は所詮、モブキャラなのだから。


---


「おい、小僧!」


再びアサミの声が聞こえた。


俺は顔を上げることができず、小さな声で返事をした。


「は、はい、アサミ様……」


「お前がこの宿屋に来てから、もう二週間になる。その間、宿泊料も払わずに寝泊まりしていたな!」


……


二週間!?


アサミはさらに、語気を強めて続けた。


「そして、お前がようやく目を覚ましたその日に、宿屋がぶっ壊れた!」


俺は、さらに深くうつむいた。


なんてドラマチックな展開なんだ!


長い昏睡状態から目を覚ました主人公が、目覚めた途端、自分が泊まっていた場所を破壊した責任を問われる!


何と素晴らしい脚本なんだ!


だが、アサミはまだ話し終えていなかった。


「そのうえ、さっきは何を言っていた!? 俺にひれ伏して謝れと、偉そうに命令していたじゃないか!」


……


俺は唾を飲み込もうとしたが、喉が乾ききっていた。


「す、すみません、アサミ様……」


……いや、ちょっと待て!


「アサミ様、俺は、あの出来事が自分のせいだとは言っていません!」


沈黙が訪れた。


俺の笑顔が凍りつき、突然、場の空気が重くなったように感じられた。


アサミは長い間、俺を見つめていた。


そして……。


「ハハハハハ!」


突然、爆笑した。


……はあ!?


どうして笑っているんだ!?


アサミは目尻を拭い、それからマサトへと顔を向けた。


「そうか、そうか! 女神様に会ったら、自分は悪くないと弁解すればいい!」


……


……はあ?


女神!?


何の女神だ!?


俺は誰に会うことになるんだ!?


俺の笑顔が、ゆっくりと消えていった。


ちょっと待て……。


まさか、俺はこれから死ぬのか!?


本当に殺されるつもりなのか!?


おい、おい!


これはただの裁判シーンじゃなかったのか!?


俺は顔の震えを隠そうと、うつむいた。


くそ……どうすればいいんだ!?


命が懸かっているんだぞ!


死にたくない!


俺はもう一度死んだんだ!


これ以上は勘弁してくれ!


---


そのとき、マサトがアサミへと顔を向けた。


「それで、アサミ。こいつをどうするつもりだ?」


アサミは、どうでもよさそうに肩をすくめた。


「殺したところで、何の得にもならんだろう」


……


おおおお!


その通りだ!


ようやく、まともなことを言う人間が現れた!


俺がモブキャラだとしても、殺すよりマシな解決方法があるはずだ!


だが、アサミは落ち着いた口調で続けた。


「そうだな……。内臓でも売れば、部屋の修理代と、新しい馬車や馬を買う金くらいにはなるかもしれん」


……


おおおおおおおおい!!!


この男、いったい何なんだ!?


筋肉で物を考えているのか!?


どうして謝罪の話から、こんなに早く臓器売買の話になるんだ!?


罰金とか、社会奉仕活動とか、ほかに何か罰はないのか!?


どうして、俺の命があらゆる問題の解決策になっているんだよ!?


マサトは、まるで真剣に検討するかのように首を傾げた。


「確かに儲かるかもしれん。だが、そんなことをして兵士に捕まったら、俺たちにとっても面倒なことになるぞ」


ああ、そうだ!


俺もそう思っていた!


少なくとも、こいつには多少の理性が残っているらしい!


だが、マサトはそこで話を終えなかった。


「臓器を売ったところで、結局は怪しまれないように兵士たちにも利益を分けなきゃならん。そうしなければ、怪しい金を持っているだの、臓器売買をしているだのと疑われるからな!」


……


衝撃。


駄目だ。


こいつら、どちらも一片の理性も持ち合わせていない。


マサトは自信満々に続けた。


「そうなれば、俺たちの手元に残る金では損失を補えん。わざわざ危険を冒す価値はないだろう」


アサミは、ゆっくりとうなずいた。


「確かにそうだな。結局、割に合わん」


そして二人は、同時に俺へと視線を向けた。


背筋に冷たいものが走った。


アサミは、俺を見下すように言った。


「なら、こいつをどうする? 利用できるところが何もないじゃないか!」


……


これって、助かったと思っていいのか?


二人は今、俺には金銭的な価値がないと結論づけたばかりだ!


俺を殺すのも、臓器を売るのも儲からないなら、さすがに解放してくれるだろう!?


希望が、少しずつ胸の中に湧き上がってきた。


そうだ!


俺は大人しくしていればいい!


何も言わず、何もせず、このまま終わるのを待てばいいんだ!


だが、マサトは少し顎をさすり、それから言った。


「うーむ……奴隷として売るのはどうだ? それなら儲かると思わないか?」


……


いやああああああああああ!!!


どうして、こいつらは次から次へと俺の人生を破壊する方法を考えつくんだ!?


不当な裁判を受けているだけでも十分だろうが!


そのうえ、今度は奴隷として売り飛ばすつもりか!?


俺をどうするか決める前に、考えつく限りの罰を全部試すつもりなのか!?


俺は今にも泣き出しそうになった。


頑張れ、ハリール!


今は危険な状況なんだ!


最後まで自分の命を守るために、何とかしろ!


俺は深く息を吸い込み、残された勇気をかき集めようとした。


よし……。


そろそろ頭を使うときだ!


俺は顔を上げ、わざと自信ありげな表情を作って二人を見た。


「あのぉ……。今回のことは全部忘れて、俺を自由にしてもらえませんか?」


二人の会話が止まり、俺に視線が集まった。


俺は唾を飲み込み、慌てて続けた。


「そもそも、俺はただの子供です! 自分で選んだわけでもない場所に突然放り込まれて、周囲で何が起きているのかさえ分からないんです! それに、そもそも、どうして自分がこの宿屋に来たのかすら覚えていないんですよ!」


……


よし!


よく言った、ハリール!


これこそが、筋の通った説明というものだ!


俺は冷静に自分の立場を説明し、二人に理性的に考えてくれるよう頼んでいる!


これなら、きっと分かってくれるはずだ!


---


マサトが、俺の方へと近づいてきた。


俺は、その場で固まった。


マサトはゆっくりと歩み寄り、ついに俺の目の前で立ち止まった。


それから、少し身をかがめて微笑んだ。


その笑顔は穏やかだった。


そのせいか、俺の胸の中に、奇妙な温かさが広がっていった。


おおお……。


もしかして、うまくいったのか!?


マサトは手を伸ばし、優しく俺の頭を撫でた。


……


これは……本当なのか!?


俺は、説得に成功したのか!?


やはり、どんな問題でも、筋の通った言葉を使えば解決できることがあるんだ!


あはははは!


やはり俺は天才だった!


俺は少し顔を上げ、希望を取り戻し始めた。


だが、マサトは相変わらず微笑んでいた。


そしてアサミへと顔を向け、穏やかな口調で言った。


「アサミ、この小僧の舌を切り落としたら、市場での値段に影響すると思うか?」


……


おおおおおおおおい!!!


この男、いったい何なんだ!?


さっきまでの優しい笑顔はどこへ行った!?


どうして、こんなにも穏やかな顔をしているのに、口から出てくる言葉はこんなに恐ろしいんだ!?


アサミは少し顎をさすってから答えた。


「さあな……。だが、最初から口の利けない奴だったと言えば、誰も気づかんだろう」


……


あははははは……。


終わった。


俺の人生は、もう終わりだ!


俺は目を閉じ、叫び出したい衝動を必死にこらえた。


「あははは……。すみません、素晴らしいお話の邪魔をしてしまって」


俺は少し顔を上げ、震える声で付け加えた。


「どうぞ、お二人とも続けてください。どうやら、俺の命なんて、どうでもいいみたいですから……」


頼むから、俺の臓器の話をするのはやめてくれ!


俺はまだここにいるんだぞ!


お前らの話、全部聞こえてるんだからな!


ほかに話題はないのか!?


……


駄目だ。


もう耐えられない。


誰か、どうかこの状況から俺を救い出してくれ!


この惨めな命を救ってくれるのなら、その恩は一生忘れないと誓う!


---


そのとき……。


声が響いた。


「告:現在の状況を解決する方法を検索できます。」


……


俺は、まばたきをした。


……はあ?


周囲を見回そうとした。


そこには、アサミとマサト以外、誰もいなかった。


二人は相変わらず、俺をどう処分するのが最も得かを考えている。


なら……今の声は、どこから聞こえてきたんだ!?


俺は、その場で固まった。


頭の中で、声が聞こえた!?


唾を飲み込む。


おい、おい……。


ついに、俺は本格的に頭がおかしくなったのか!?


脳がとうとう限界を迎え、存在しない声を作り出し始めたとでもいうのか!?


……


だが、そんな考えを自分に言い聞かせる前に、再び声が頭の中に響いた。


「現在の状況を分析しています。」


……


俺の思考が止まった。


……はあ!?


その声は、アサミやマサトが発したものではなかった。


まるで、俺の内側から直接響いてくるかのようだった。


そして、数秒後。


再び声が聞こえた。


「分析が完了しました。」


よし!!!


これは、何かの悪ふざけなのか!?


さらに、声が続いた。


「告:現在の状況から脱出できる可能性が見つかりました。」


……


何を言っているんだ!?


それに、そもそも、お前は誰なんだ!?


俺の問いに答える声はなかった。


代わりに、最後の言葉が響いた。


「追加分析を実行しますか?」


……


おい! 先に俺の質問に答えろ!


だが、声はそれ以上繰り返されなかった。


一方、アサミとマサトは、何事もなかったかのように俺の目の前で話し続けていた。


俺はしばらく二人を見つめ、それから再び、あの正体不明の声について考え始めた。


いったい、何が起きているんだ!?


俺は、本当に頭がおかしくなったのか?


それとも、俺の頭の中には、何か別のものが存在しているのか?


分からない。


何も分からない。


だが、恐怖と混乱の中で、たった一つの言葉が頭に残っていた。


この状況を解決する方法がある。


……


よし……。


声の主が誰なのかも分からない。


どうして俺の頭の中に現れたのかも分からない。


そもそも、本当に存在するものなのかさえ分からない。


だが、もし俺の命を救ってくれるというのなら、助けを拒んでいる余裕などない!


よし!


追加分析を許可する!


頼むから、この窮地から俺を救い出してくれ!

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