↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/17

幸先の悪い始まり


……さて、どうやら俺は、少々役になりきりすぎてしまったらしい。


あれほど勇ましい叫び声を上げたのだから、このあとには監督たちの拍手と、俺の素晴らしい演技を称賛する言葉が待っているはずだった。


だが……。


どうしてだろう。


何かがおかしい気がする。


どうして、この火の玉の熱が、こんなにも本物らしいんだ!?


おい……ちょっと待て。


これって、ただの特殊効果のはずだろ!?


その次の瞬間、頭の中で奇妙な声が響いた。


「告:危険を検知しました。」


俺は二度、まばたきをした。


……はあ?


今、何か変な声が聞こえなかったか?


「あれれれれれっ!?」


額から流れる汗がますます増え、心臓が今にも胸から飛び出しそうになった。


おい、おい、おい……!


何だ、今の声は!?


どうして、危険がこんなにも現実のものに感じられるんだ!?


そして、次の瞬間……。


ドゴオオオオオン!!!


火の玉が、窓に激突した!


ドゴオオオオオン!!!


建物が激しく揺れた。


赤い閃光が部屋の中へと飛び込み、凄まじい爆発音とともに、木製の窓枠が一部吹き飛んだ。


破片が四方八方へと飛び散り、煙が部屋の中へ流れ込んでくる。


そして、熱風が俺の顔をかすめた。


「うわあああああっ!!!」


俺は後ずさりし、ベッドの陰に身を隠した。


くそおおおおおおおおおおおおお!!!


何をやってるんだ、このバカ野郎!!


……いや、何をやってるんだ、俺は!?


いや、そもそも、こんなことをしたのはお前らだろうが!!


下の方から、男たちの声が聞こえてきた。


さっきまでの口論は、いつの間にか責任のなすりつけ合いへと変わっていた。


「お前、何をしたんだ!?」


「何だと!? 俺のせいにするつもりか!?」


「お前の風のせいで、俺の火球がアサミの宿屋に飛んでいったんだぞ!」


「おい! そもそも、先に仕掛けたのはお前だろうが!」


……


アサミ?


その名前について考える暇はなかった。


窓から吹き飛んだ破片の一部が、建物の下の階へと落ち始めていたからだ。


男たちはその場で固まり、素早く顔を見合わせた。


「……そういえば、今日はギルドから依頼を受けてなかったか?」


「あっ……そうだった!」


片方の男が、何か重大なことを思い出したかのように、自分の拳を手のひらに打ちつけた。


「確か、野ウサギを何匹か狩る依頼だったはずだ!」


「ああ、ああ! 俺もちょうどそれを思い出そうとしていたところだ!」


「ははは! 思い出させてくれてありがとうな!」


「気にするな。俺たちは友達だろ? さっさと行って、ウサギを狩ろうぜ!」


「賛成だ!」


そして二人は、何事もなかったかのように背を向け、その場から足早に立ち去っていった。


……


沈黙が訪れた。


一方、俺はというと、相変わらず破壊された部屋の真ん中に立ち尽くしていた。


もはや窓と呼ぶのも怪しいほど大きな穴を、ただ呆然と見つめていた。


「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」


周囲に立ち込める煙にむせながら、俺は必死に息を整えた。


「はあ……はあ……!」


おい、おい、おい!


いくら何でも、やりすぎじゃないか!?


これも演出の一部なのか!?


それに、俺の生命保険は、こんな事故にも対応してくれるのか!?


向かい側の木の壁には、まだ小さな炎が残っていた。


壊れた窓からは、煙が外へと立ち上っている。


これは、絶対に抗議するべきだ!


たとえ映画の撮影だったとしても、事前に何の説明もなく、俺の命を危険にさらすなんて許されることじゃない!


何の準備もできていない俺に、こんなシーンで一体どう演技しろっていうんだ!?


せめて、アクションシーンに参加することくらい、先に教えておくべきだろうが!


俺は、燃えた木材の残骸や小さな炎を避けながら、慎重に瓦礫の間を進んだ。


そして、窓際へと近づいた。


下の通りには、相変わらず人々が行き交っていた。


だが、あの二人の姿は、すでに人混みの中へと消えていた。


俺は深く息を吸い込み、ありったけの声で叫んだ。


「おおおおおい! この人でなしども! 俺が命懸けのシーンに参加するって、どうして事前に教えてくれなかったんだよ!?」


少し待ってみた。


返事はない。


「おい! 聞こえてるのは分かってるんだぞ!」


周囲を見回した。


カメラはない。


撮影用の照明もない。


それどころか、俺の叫び声に関心を示す人間すら、一人も見当たらなかった。


……はあ?


まさか、まだ撮影を続けているのか?


正直、俺は結構影響を受けやすい性格なんだ。


こういうのは苦手なんだよ!


みんなで仲良く協力して作り上げるのが、映画撮影ってものじゃないのか!?


それなのに、何の説明もなく、もう少しで焼き殺されるところだったんだぞ!


……


そのとき、背後から音が聞こえた。


コツ。


俺はドアの方へ振り向いた。


ドアがゆっくりと開き、そこに一人の男が姿を現した。


白いエプロンを身につけ、短い白髪をしている。


そして、その体は驚くほど筋骨隆々だった。


たくましい腕は、まるで岩さえ砕いてしまいそうなほどだ。


俺は、しばらくその男を見つめた。


……あの筋肉、本物なのか?


いや……。


まさか、この男も撮影スタッフの一人なのか?


男は黙ったまま、俺を見ていた。


それから、壊れた窓へと視線を移した。


床に散らばる瓦礫。


そして、壁に残された火災の痕跡。


沈黙が流れた。


……あっ。


うん。


もしかすると、俺は少し考えてから発言するべきだったのかもしれない。


だが、俺はそうしなかった。


男の方へ向き直ると、怒りを込めて指を突きつけた。


「おい、ジジイ! 俺の許可もなく、どうしてこんな場所に連れてきたんだ!?」


男の表情は変わらなかった。


俺は、さらに自信満々に言葉を続けた。


「それに、俺に相談もせず、勝手に俺の身に起きることを決める権利が、どこにあるんだ!? 訴えてやるからな! そうだ、絶対に訴えてやる! お前はこれから、刑務所の小さな窓越しにしか太陽を見られなくなるんだぞ!」


そうだ! よく言った、ハリール!


俺が簡単に好き勝手される人間じゃないってことを、思い知らせてやれ!


男は拳を握りしめた。


たくましい腕の筋肉が、はっきりと浮かび上がる。


そして、その表情は少しずつ険しくなっていった。


……はあ?


何だ、この妙な感じは?


どうして、あいつは必死に怒りを抑えようとしているように見えるんだ?


だが、俺は引き下がらなかった。


むしろ、さらに顎を上げた。


「さあ、俺にひれ伏して謝れ!」


俺は手で男を指し示した。


「そうだ! お前がするべきことは、それだ!」


さらに、わざとらしく真剣な口調で付け加えた。


「確かに、役者が即興で演技したり、自然に振る舞ったりすれば、シーンの臨場感は増すかもしれない! だが、だからといって、事前に何の説明もなく、本物の危険にさらしていいわけじゃないだろう! 俺だって、こんな体験をするなら、心の準備くらいさせてほしかったんだ!」


そうだ、そうだ……。


まったくもって正論だ!


男は俺の顔をじっと見つめた。


それから、もう一度、壊れた窓と、部屋中に広がる火災の痕跡へと目を向けた。


「お前……この騒ぎを起こしたのは、お前なのか?」


……はあ?


さっき、監督たちに文句を言っていたことについて聞いているのか?


どうやら、うっかり撮影の邪魔をしてしまったらしい。


「そうだ! 俺がやった!」


俺は自信満々にうなずき、さらに不満をぶつけた。


「だが、真面目な話、こんなことをされたら、俺だって怒るに決まってるだろう! そっちだって、さっき俺の命を危険にさらしたじゃないか!? あんなくだらないシーンのせいで、俺はもう少しで生きたまま焼かれるところだったんだぞ!」


男は一瞬、固まった。


「つまり……お前がやったと認めるんだな!?」


……はあ?


どうして、まるで俺がとんでもない罪でも犯したかのような口ぶりなんだ!?


俺は真剣な顔で男を見つめ、それから再び指を突きつけた。


「おい、ジジイ! 悪いのは俺じゃなくて、お前だろ! そもそも、こんな危険なシーンに参加させるなら、最初に説明しておくべきだったんだ! 何の前触れもなく俺の命を危険にさらすなんて、どう考えてもおかしいだろうが!?」


そこで一度言葉を切り、俺は自信満々に顎を上げた。


「さあ、俺に謝れ! ほら、早く!」


沈黙が流れた。


男は俺をじっと見つめていた。


その額には、浮き出た血管がますますはっきりと現れ始めていた。


……おお。


どうやら、本気で怒っているらしい。


だが、問題ない!


俺にだって怒る理由はあるんだ!


男が、ゆっくりと俺に近づいてきた。


一歩……。


そして、もう一歩……。


うーん……。


何だか、妙なことになってきたぞ。


もしかして、俺たちの間に何か誤解があるのか?


いや、そんなはずはない。


この男は撮影の責任者の一人なんだろう?


なら、撮影現場で何が起きているのか、すべて把握していて当然だ。


そうだ、それが合理的な説明だ!


俺は自信たっぷりに微笑み、手を上げて男を制止した。


「よし、よし! もうそれ以上近づかなくていい! その場から謝ってくれれば、許してやることも考えてやろう!」


だが、男は止まらなかった。


ドン!


男の足が床を踏みしめるたび、床板が揺れた。


おお! 足音まで、こんなにリアルなのか!


そして、次の瞬間……。


ミシッ!


俺の足元から、何かが軋む音が聞こえた。


俺の笑顔が消えた。


床を見下ろし、それから白髪の男を見上げる。


……はあ?


木製の床に亀裂が走り始めた。


その亀裂は急速に広がり、俺の足元で床板が大きくたわんでいく。


おい……ちょっと待て。


まさか、これもシーンの一部だって言うんじゃないだろうな!?


答えを考える暇などなかった。


次の瞬間……。


バキバキバキッ!!!


俺の足元の床が、崩れ落ちた!


「くそおおおおおおおおおおおおお!!!」


俺の体は下へと落ちていった。


木片が周囲に飛び散る。


俺は何かにつかまろうと手を伸ばしたが、つかめたのは虚空だけだった。


本当にいい加減にしろよ!


こんな危険なシーンを撮影して、俺の命を危険にさらすつもりなら、最初に説明しておくべきだろうが!


このクソ映画、一体いつになったら終わるんだよ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。