↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼平軍曹の魔石ガトリング無双  作者: しょぼんスライム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/52

第49話 軍曹、最後の門へ突入する

旧市街の中心には、使われなくなった地下駐車場があった。


 入口は崩れた建物の陰に隠れ、地上からは見えない。


 かつては地下鉄の工事基地として使われていた場所だ。


 通信施設、地下鉄跡地、古い下水道、軍用輸送線。


 そのすべてが、この地下駐車場の下へ繋がっていた。


 鬼平たちは、崩れたコンクリートの坂を下りていく。


 左の砲は白い魔石を輝かせ、右の《雷鱗砲》は青い雷をまとっている。


 ノアが地下の地図を確認した。


「この下に、旧市街の地下施設がある。記録上は存在しないことになっている」


「何の施設だ」


「軍用の試験場。通信、電力、兵器、地下輸送を一つにまとめた研究施設だったらしい」


 リーゼが壁へ手を当てる。


「この下から、異世界の魔力が流れています。でも、竜域の魔力とは少し違う」


「違う?」


「この世界の人間が、昔から魔力を使っていたような流れです」


 鬼平は階段の先を見た。


 地下の暗闇から、低い鼓動が聞こえる。


 ドクン。


 ドクン。


 古竜の心臓ではない。


 しかし、これまでの接続点よりも強い。


 最後の門の鼓動だった。


 崩れた階段を下りると、地下施設の入口が現れた。


 鉄扉には古い警告標識がある。


『第零区画・立入禁止』


『試験兵器の封印を解除するな』


 その上から、黒い霧で別の文字が刻まれていた。


『ここから始まった』


 鬼平は右の砲架を構えた。


 ノアが慌てて止める。


「待て。ここは地下深く――」


 鬼平は扉を殴った。


 鉄扉が内側へ倒れ、地下施設の暗い通路が現れる。


 ノアは額を押さえた。


「もう何も言わない」


 通路の壁には、古い研究記録が残っていた。


 魔石の採掘。


 竜脈の解析。


 異世界への通信実験。


 そして、七つの門を作るための設計図。


 リーゼが設計図を見た。


「この世界の人間は、昔から異世界と繋がろうとしていた」


「門は敵が作ったんじゃないのか」


「敵は、この施設の計画を利用したんです」


 奥の壁に、古い映像装置が残っていた。


 黒い画面に、白衣の研究者が映る。


『竜域には膨大な魔力がある』


『それをこちらへ引き込めば、戦争も飢餓も終わる』


『門は兵器ではない。人類を救う道だ』


 映像の後ろには、巨大な魔石装置があった。


 七つの門の原型。


 そして中央に、黒い霧のような影が映り込んでいる。


『接続実験、第一段階を開始』


『未知の意志を確認』


『対話を試みる』


 映像が乱れた。


『声が、こちらの命令を理解している』


『装置が自律的に動いている』


『門を閉じろ』


 研究者の顔が恐怖に歪む。


『違う。これは門ではない』


『向こう側が、こちらへ来るための器だ』


 映像が途切れた。


 地下施設の奥から、黒い霧が流れてくる。


「最初から、門を使っていたのか」


 高瀬が呟いた。


 ヴァルグリムが低く唸る。


『黒きものは、竜域の生まれではない』


『人間が呼び、閉じ込め、そして捨てた意志だ』


 ザルディオンの雷が、地下の天井を一瞬だけ照らした。


『長い間、地中で眠っていた』


『七つの接続点が、目覚めさせた』


 鬼平は二挺の砲を構えた。


「なら、眠らせる」


 通路の先に、古い研究用機械が並んでいる。


 すべての機械に黒い霧が入り込み、兵器として動き始めた。


 試験用の装甲車。


 無人砲台。


 魔石を組み込んだ掘削機。


 地下施設の天井から、機械の腕が次々と伸びてくる。


 鬼平は左のガトリング砲を撃った。


 白い弾幕が装甲車の砲塔を削る。


 右の《雷鱗砲》で、装甲車と地下施設の接続を切断する。


 砲塔が止まった。


 掘削機が巨大なドリルを回転させ、鬼平へ突進する。


 鬼平は右の砲架でドリルを受け止めた。


 火花が散る。


 左の砲で掘削機の動力部を撃つ。


 右の砲で黒い魔力管を切断する。


 掘削機が停止した。


 しかし、地下施設そのものが揺れ始めた。


 壁の奥から、巨大な音が響く。


『上へ行く必要はない』


『ここが、門の中心だ』


 通路の照明が一斉に赤くなる。


 床に、七つの接続線が浮かび上がった。


 これまで閉じた六つの接続点から、残った魔力が最後の門へ集まっている。


 鬼平たちの足元に、黒い霧の円が広がった。


 高瀬が後退する。


「囲まれました!」


 グラウ将軍が斧を構えた。


「囲まれたなら、外へ出るだけだ!」


 黒い霧から兵士が現れた。


 旧軍の制服。


 魔導兵の装甲。


 竜骨の武器。


 これまで戦った敵の姿が混ざっている。


 鬼平は左のガトリング砲を撃った。


 白い弾幕が敵の前列を押し返す。


 右の砲で、敵の接続線を切断する。


 グラウ将軍が斧で道を開き、獣人兵が続く。


 高瀬は元の世界の兵士を指揮し、敵の銃を一つずつ破壊していった。


 リーゼが、壁の奥にある魔力の流れを指示する。


「右の柱です! そこを切れば、敵の再生が止まります!」


 鬼平は右の砲を撃った。


 柱と黒い霧の接続が切れる。


 敵の兵士が砂のように崩れた。


 しかし、床の七つの線がさらに明るくなる。


 最後の門が開こうとしていた。


 地下施設の中央に、巨大な円形の部屋が現れる。


 その中心に、黒い門が浮かんでいた。


 門の向こうは、竜域でも元の世界でもない。


 無数の赤い眼が浮かぶ暗闇。


 その暗闇から、巨大な黒い腕が伸びてきた。


 ヴァルグリムが黒い炎を吐く。


 腕が炎を振り払い、さらに伸びてくる。


 ザルディオンの雷が落ちる。


 腕が一瞬止まった。


 鬼平は左の砲を撃ち、腕の表面を削る。


 右の砲で、腕と門の接続を切る。


 しかし、切断した部分から新しい腕が生えてきた。


「再生が速すぎます!」


 リーゼが叫ぶ。


「この門の向こうに、本体があります!」


 黒い門の奥から、声が響いた。


『我は、呼ばれた』


『我は、閉じ込められた』


『我は、捨てられた』


『我は、ただ帰りたい』


 鬼平は門を見た。


 黒い霧の声は、これまでの敵のような命令ではなかった。


 怒りと孤独が混ざっている。


 ノアが言った。


「こいつは、門を開きたいだけじゃない。元の場所へ帰ろうとしている」


「元の場所は」


 リーゼが答えた。


「分かりません。竜域の外かもしれない。別の世界かもしれない」


 黒い門の奥に、巨大な赤い眼が開いた。


『道を貸せ』


『器を貸せ』


『世界を貸せ』


 鬼平は左右の砲を構えた。


「仲間を道具にした」


『我は、利用しただけだ』


「街を門にした」


『我は、帰りたいだけだ』


「なら、帰る方法を探せ」


『方法がない』


「だから、他の世界を壊すのか」


 黒い霧が大きく揺らいだ。


『我は、壊していない』


『開いているだけだ』


 鬼平は一歩前へ出た。


「開けば壊れる」


『ならば、壊れない世界を作れ』


「無理だ」


『なぜだ』


「仲間がいる」


 鬼平の背後に、ノア、リーゼ、グラウ将軍、高瀬、竜たちが立った。


「壊させない」


 黒い門の奥から、巨大な黒い竜が現れた。


 これまでの黒い竜影とは違う。


 身体全体が霧でできている。


 無数の赤い眼。


 翼の一枚一枚が、閉じた門の形をしている。


 胸部には、七つの接続点を束ねた黒い核があった。


『ならば、力で開く』


 黒い竜が咆哮した。


 地下施設全体に衝撃が走る。


 天井が崩れ、黒い岩と機械が降ってくる。


 鬼平は左の砲を撃って落下物を砕き、右の砲で黒い竜の翼と門の接続を切った。


 翼が一枚消えた。


 しかし、別の翼がすぐに広がる。


 グラウ将軍が黒い竜の足元へ突撃した。


 斧が霧の脚へ食い込む。


 ヴァルグリムとザルディオンが左右から炎と雷を浴びせる。


 黒い竜が二体の竜を弾き飛ばした。


 高瀬が鬼平へ叫ぶ。


「胸の核が本体です!」


 鬼平は黒い竜の胸部を見た。


 七つの接続点が、黒い核へ集まっている。


 これまで閉じた門の魔力を、すべて取り込んでいる。


 普通に撃てば、六つの接続点が再起動する。


 リーゼが叫んだ。


「核を壊すのではなく、七つの接続を同時に切る必要があります!」


「同時か」


「はい。一本でも残れば、そこから再生します!」


 鬼平は二挺の砲を見た。


 二挺だけでは、七つを同時に狙えない。


 しかし、周囲には仲間がいる。


「七つを分ける」


 鬼平は仲間たちへ視線を向けた。


「グラウ、左」


「任せろ!」


「高瀬、右」


「了解!」


「ヴァルグリム、翼」


『焼き切る』


「ザルディオン、上」


『雷を落とす』


「ノア、砲の出力を分ける」


「無茶だ! 左右の砲を七方向へ分けるなんて――」


「できるか」


 ノアは歯を食いしばった。


「やる!」


「リーゼ、線を読む」


「はい!」


 黒い竜が腕を振り下ろす。


 鬼平は左の砲で腕を削り、右の砲架で受け止めた。


 グラウ将軍が脚へ斧を叩き込む。


 高瀬たちが黒い翼の接続点へ射撃を集中する。


 ヴァルグリムの黒い炎が翼を包み、ザルディオンの雷が上部の接続を焼く。


 リーゼが叫んだ。


「左上、二本! 右下、一本! 中心の裏に二本!」


 ノアが砲の魔力を調整する。


「今だ、軍曹!」


 鬼平は左のガトリング砲を撃った。


 白い弾幕が黒い核の左側を削り、二本の接続を露出させる。


 右の《雷鱗砲》が青い弾丸を連射し、右側の接続を切断する。


 高瀬たちの銃弾が、上部の接続を撃ち抜いた。


 グラウ将軍の斧が、脚へ伸びる線を断つ。


 ヴァルグリムの炎が翼の接続を焼き切る。


 ザルディオンの雷が、最後の上部接続を破壊した。


 七つの接続が、同時に切れた。


 黒い核が大きく揺らぐ。


 黒い竜の身体が崩れ始めた。


『なぜ、壊す』


「壊してない」


 鬼平は右の砲を核へ向けた。


「切った」


『同じことだ』


「違う」


 鬼平は最後に残った、核と門を繋ぐ細い線を見た。


 それは接続ではない。


 門の奥へ帰るための、一本の道だった。


 黒い竜は、それだけを残している。


『帰る道を、残せ』


 鬼平は砲口を下ろさなかった。


「他の世界を壊さないなら」


『どうする』


「道を作る」


 ノアが驚く。


「軍曹、何を言っている?」


 リーゼが黒い核を見た。


「接続を切るだけではなく、別の帰還路を作るつもりですか?」


「できるか」


「理論上は……古竜の心臓の光と、元の世界の電力、竜域の竜脈を合わせれば」


 ヴァルグリムが翼を広げた。


『道を作るなら、竜域の力を貸そう』


 ザルディオンの雷が地下施設へ降りる。


『電力も、雷も、道を繋ぐ力になる』


 グラウ将軍が黒い竜を押さえ込む。


「急げ! こいつは長く保たん!」


 鬼平は二挺の砲を構えた。


 左の砲から白い古竜の光を放つ。


 右の《雷鱗砲》から、雷、電力、砂、氷の魔力を流す。


 切断した七つの接続点が、一本の細い帰還路へ変わっていく。


 黒い竜の身体から、黒い霧が少しずつ離れた。


『帰れるのか』


「帰る道は作る」


『なぜ』


「仲間を使わないなら」


 黒い竜の赤い眼が、一つずつ閉じていく。


『理解できない』


「敵じゃないからだ」


 鬼平は最後の線へ照準を合わせた。


 帰還路の向こうに、黒い霧の故郷らしき光が見えている。


 しかし、帰還路は不安定だった。


 鬼平は左の砲で道の外側を固定し、右の砲で門との接続を細く切り分けた。


 黒い竜が、ゆっくりと光の道へ入っていく。


『砲を持つ者』


『お前の名を知りたい』


「鬼平軍曹」


『鬼平軍曹。いつか、返す』


「返さなくていい」


『なぜ』


「撃たなくて済むなら、それでいい」


 黒い竜の最後の一部が、光の道へ消えた。


 帰還路が閉じる。


 地下施設に残った黒い霧は、すべて消えた。


 最後の門も、静かに消滅した。


 鬼平は二挺のガトリング砲を下ろした。


 左の砲は白い光を失い、通常の魔石へ戻っている。


 右の《雷鱗砲》は青い雷を静かに吐き出していた。


 ノアが砲を確認する。


「壊れてはいない。ただし、古竜の光はほとんど残っていない」


「撃てるか」


「撃てる。でも、次に同じことをしたら修理では済まない」


「なら、撃たない」


 高瀬が地下施設の天井を見た。


「門がなくなったのに、まだ鼓動が聞こえます」


 全員が静かになった。


 ドクン。


 ドクン。


 古竜の心臓の音ではない。


 黒い竜の音でもない。


 地下施設のさらに奥。


 最初の実験装置の中から聞こえている。


 リーゼが青ざめた。


「最後の門は、閉じました」


「なら、あの音は何だ」


 鬼平は地下のさらに奥を見た。


 古い研究区画の扉が、ゆっくりと開いていく。


 扉の向こうには、巨大な黒い魔石があった。


 その内部で、新しい赤い眼が開く。


『帰還路を観測した』


『次は、我が道を作る』


 ノアが叫ぶ。


「まだ本体が残っているのか!」


 鬼平は二挺の砲を構えた。


 しかし、リーゼが鬼平の腕を掴んだ。


「待ってください。今の魔石は、門ではありません」


「敵か」


「分かりません。ただ、これまでの黒い霧とは違う」


 魔石の中から、古い研究者の声が流れた。


『最終実験を開始する』


『異世界の生命体との融合を試みる』


『人類は、竜を超える』


 地下施設の奥で、何か巨大なものが目を覚ました。


 壁が裂ける。


 黒い魔石から、白い骨と赤い装甲を持つ人型の影が立ち上がる。


 黒い霧ではない。


 古い人間の意志と、異世界の竜脈を融合させた試験体だった。


 その両腕には、魔石砲が取り付けられている。


 鬼平の二挺のガトリング砲と、よく似た形だった。


 試験体の赤い眼が開く。


『兵器は、人間を超える』


 鬼平は砲を構えた。


「敵だ」


 地下施設の奥で、最後の門が消えた直後に、別の戦いが始まった。


 鬼平軍曹は、二挺の魔石ガトリング砲を握り直した。


 世界を繋ぐ門は閉じた。


 しかし、人間が作った兵器の闇は、まだ終わっていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。