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鬼平軍曹の魔石ガトリング無双  作者: しょぼんスライム


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第38話 軍曹、凍土の竜骨城へ進む

赤砂海を離れると、風の温度が急速に下がっていった。


 砂漠の熱気を含んでいた魔導車の車体が、白い霜に覆われていく。


 前方には、雪と氷に閉ざされた大地が広がっていた。


 竜域北東部の凍土。


 その中心に、古代竜の骨で築かれた城がある。


 凍土の竜骨城。


 第五の門は、その城の地下に眠っている。


 鬼平は右の《雷鱗砲》を膝の上に置いていた。


 砂漠で吸収した魔力がまだ砲身の内部に残り、青い鱗の間から白い蒸気が上がっている。


 ノアが砲身に触れ、すぐに手を引っ込めた。


「熱い。外気は凍っているのに、内部はまだ砂漠の魔力を抱えている」


「冷やせるか」


「凍土の魔力を使う。ただし、急に冷やすと砲身が割れる」


「ゆっくり冷やす」


「貴様がそれを守れるならな」


 鬼平は魔導車の窓から外を見た。


 雪原の向こうに、黒い城壁が見える。


 竜の肋骨を何本も組み合わせた城壁。


 頭蓋骨を利用した門塔。


 城の上空には、巨大な氷の雲が渦巻いている。


 雲の中で、青白い雷が光った。


 凍土の竜骨城は、王国軍に占拠されていた。


「城壁の上に魔導砲」


 セレナが遠眼鏡を下ろした。


「数は十二基。周囲には氷の魔導兵もいます」


 リーゼが魔力の流れを読む。


「第五の門が、すでに起動を始めています。城の地下から、凍土全体へ魔力が流れています」


「門を止める」


 鬼平は《雷鱗砲》を持ち上げた。


 砲身の蒸気が、白い雲となって漂う。


「その前に、砲を冷やせ」


 ノアが言った。


「撃つ」


「今撃てば、内部の魔力が暴走する」


「撃てるか」


「数発だけなら」


「十分だ」


 城門の上から、王国軍の声が響いた。


「異界の軍曹! 砂漠の門を破壊した罪を償え!」


 王国軍の魔導砲が一斉に旋回する。


 赤い光弾が雪原を飛んできた。


 鬼平は左のガトリング砲を構えた。


 白い弾幕が光弾を撃ち落とす。


 右の《雷鱗砲》は、まだ構えない。


 砲身の内部に残った砂の魔力が、冷たい空気へ触れて激しく震えている。


「まずは左で行く」


 鬼平は魔導砲へ照準を合わせた。


 城壁上の砲身を一基ずつ撃ち抜く。


 王国軍の砲台が沈黙し、雪の上へ落ちていく。


 しかし、城壁の上から氷の槍が無数に飛んできた。


 獣人兵が盾を構える。


 氷の槍が盾へ突き刺さり、兵士たちを押し戻した。


「氷の魔導兵が来ます!」


 高瀬が叫んだ。


 城門が開き、白い装甲の魔導兵が雪原へ出てくる。


 腕は氷の刃。


 足元には氷の魔力輪。


 兵士たちは雪上を滑るように進んでくる。


 鬼平は左のガトリング砲を撃った。


 弾丸が氷の装甲へ当たる。


 表面が削れるが、すぐに再生する。


 右の《雷鱗砲》が、冷却途中のまま青い光を放った。


「数発だけだ!」


 ノアが叫ぶ。


 鬼平は引き金を引いた。


 雷鱗砲から青い弾丸が飛び、氷の魔導兵の魔力輪を撃ち抜いた。


 魔導兵の足元から氷が消え、動きが止まる。


 二発目。


 別の兵士の胸部接続を切断する。


 三発目。


 城門の氷結術式を撃ち抜く。


 右の砲身から、鋭い音が響いた。


 ノアが顔をしかめる。


「そこで止めろ!」


 鬼平は射撃を止めた。


 右の砲身には細い亀裂が一本走っていた。


「冷やす」


 リーゼが凍土の魔力を砲へ流し込む。


 青い鱗が淡く光り、砲身の熱が少しずつ下がっていく。


 グラウ将軍率いる獣人兵が氷の魔導兵へ突入した。


 左のガトリング砲が敵の氷刃を削り、兵士たちが止めを刺さずに拘束していく。


 鬼平たちは城門へ近づいた。


 門塔の頭蓋骨には、王国軍の魔力管が何本も接続されている。


 鬼平は右の砲の照準を門塔へ向けた。


 砂の魔力が残る砲身へ、凍土の魔力が流れ込む。


 熱と冷気が衝突し、砲身が白い蒸気を吐いた。


「まだ撃てる」


「一発だけにしろ」


 ノアが叫んだ。


 鬼平は右の砲を門塔の基部へ向けた。


 雷鱗砲の弾丸が、王国軍の魔力管を一本だけ切断する。


 門塔の頭蓋が揺れ、城門の氷結術式が弱まった。


 グラウ将軍が斧を振り下ろし、城門を破壊する。


 鬼平たちは竜骨城の内部へ突入した。


 城内は極端に静かだった。


 壁には氷漬けになった竜の骨が並んでいる。


 骨の間に、青い魔石が埋め込まれていた。


 魔石から伸びた管が、地下へ向かっている。


「竜脈を吸っています」


 リーゼが言った。


「城全体が、第五の門の装置です」


 鬼平は左のガトリング砲で、壁の魔石を撃った。


 魔石を破壊せず、魔力管の接続だけを削る。


 一本目の管が切れた。


 城内の氷がわずかに溶ける。


 しかし、天井から氷の竜が落ちてきた。


 竜の身体は透明で、内部に青い炎が灯っている。


 王国軍が作った氷竜兵器だった。


 氷竜は口を開き、凍結の息を吐いた。


 鬼平は左の砲を撃ちながら後退する。


 弾丸が氷竜の顔へ当たるが、表面で凍りつく。


 右の《雷鱗砲》を構える。


 砲身はまだ冷却途中だ。


 しかし、氷竜の胸部には、魔力炉と頭部を繋ぐ赤い接続線が見えていた。


 鬼平は一発だけ撃った。


 雷鱗砲の弾丸が氷竜の胸部接続を断つ。


 氷竜の息が止まった。


 鬼平は右の砲架を振り、氷竜の顎へ叩き込んだ。


 氷の頭部が割れる。


「撃てなくても、殴る!」


 高瀬が後方から叫んだ。


「冷却中でも殴れるんですね!」


 氷竜の身体が崩れ、透明な氷の塊となった。


 その内部から、小さな竜の魂が現れる。


『寒い』


『眠い』


 鬼平は魂を見た。


「門へ行く」


 魂は、地下を指すように揺れた。


 鬼平たちは城の地下階段を下りた。


 階段の両側には、氷漬けの竜が並んでいる。


 幼い竜。


 翼を傷つけられた竜。


 王国軍の拘束具を付けた竜。


 すべてが氷の中で眠っている。


 階段の最下部には、巨大な竜骨の扉があった。


 扉の中央には、凍った門の紋章が刻まれている。


 鬼平が近づくと、右の《雷鱗砲》の魔石が反応した。


 砲身の熱が、扉の氷を少しずつ溶かしていく。


「門が開く前に、竜たちを解放する」


 鬼平が言った。


「この竜たちは、王国軍が門の燃料にしているようです」


 リーゼが答える。


「先に接続を切る」


 鬼平は壁の魔力管へ左の砲を向けた。


 弾丸が氷を削り、管の接続部を露出させる。


 右の砲で一つずつ切断する。


 管が切れるたび、凍った竜の身体に光が戻る。


 しかし、城の奥から王国軍の声が響いた。


「竜を解放させるな!」


 教会の魔導師と、氷の鎧を着た騎士が現れる。


 騎士の手には、凍った竜の角で作られた槍があった。


「この城は、第五の門を守るために作られた」


 騎士が言った。


「竜の魂は、門を開くための力だ」


「道具にする」


「死んだ竜に意思などない!」


 鬼平は左のガトリング砲を構えた。


「ある」


 白い弾幕が騎士の槍を撃ち砕く。


 騎士が氷の剣を作り、鬼平へ突進する。


 鬼平は右の砲架で剣を受け止めた。


 氷の剣が砲身へ食い込み、青い鱗が凍りつく。


 鬼平は左の砲で騎士の膝を撃った。


 騎士が片膝をつく。


 右の砲架を振り、胸部の氷装甲へ叩き込む。


 氷が砕け、魔力管が露出した。


 右の雷鱗砲で接続を切る。


 騎士の身体から氷の魔力が消えた。


 鬼平は教会の魔導師へ銃口を向けた。


 魔導師は竜の骨を盾にする。


 左の砲で盾を削る。


 右の砲で盾と魔導師の接続を断つ。


 魔導師が倒れた。


 竜骨の扉が、ゆっくりと開く。


 その奥に、第五の門があった。


 門は氷の輪でできている。


 中心には白い闇が広がっていた。


 門の周囲には、凍った竜たちの魂が鎖で繋がれている。


 その中心に、巨大な氷竜の姿が浮かんでいた。


『凍土を、眠らせよ』


『炎を消せ』


『侵入者を、凍らせろ』


 三つの声が重なった。


 氷竜の身体が門から現れる。


 竜の鱗は白く、翼は氷の結晶でできている。


 胸部には王国軍の魔力核が埋め込まれていた。


 鬼平は右の砲を構えた。


 しかし、砲身の熱と凍土の魔力が拮抗している。


 照準線が安定しない。


「右の砲は、あと数発が限界です」


 ノアが言った。


「左で削る」


 鬼平は左のガトリング砲を撃った。


 白い弾丸が氷竜の翼へ当たり、表面を削る。


 氷竜は凍結の息を吐いた。


 床が瞬時に凍り、鬼平の足元まで氷が迫る。


 右の《雷鱗砲》を地面へ向けて撃つ。


 雷を帯びた弾丸が氷を砕き、足場を作る。


 氷竜が巨大な爪を振り下ろした。


 鬼平は右の砲架で受け止めた。


 爪の冷気が砲身へ流れ込む。


 熱を持っていた砲身が、急速に冷えていく。


 ノアが叫んだ。


「冷却が急すぎる!」


 鬼平は砲架を押し返し、氷竜の爪を横へ弾いた。


 左の砲で翼の付け根を撃つ。


 氷竜がよろめく。


 右の砲に、胸部魔力核と門を繋ぐ接続線が浮かび上がった。


「接続を切る」


 鬼平は右の砲を構えた。


 一発。


 氷竜の胸部から、門へ伸びる魔力が弱まった。


 二発目。


 王国軍の魔力核が大きく揺れる。


 氷竜の身体から、凍った竜の魂が一つ解放された。


『熱い』


『帰りたい』


 鬼平は三発目の照準を、魔力核ではなく固定具へ合わせた。


 固定具を撃てば、氷竜から核を外せる。


 しかし、固定具の背後には第五の門がある。


 撃ち方を間違えれば、門が暴走する。


 リーゼが叫んだ。


「門の魔力が一度下がります! 今です!」


 鬼平は引き金を引いた。


 三発目の弾丸が、固定具の接続を切った。


 氷竜の胸部魔力核が浮き上がる。


 門へ流れていた魔力が止まった。


 しかし、氷竜の身体が崩れ始める。


『我が、消える』


「消えない」


 鬼平は浮いた魔力核を右手で掴んだ。


 冷気が腕を包み、手袋が凍りつく。


 鬼平は核を門の中心へ押し戻した。


「竜域へ戻る」


『王国の核を、どうする』


「切る」


 鬼平は左のガトリング砲を魔力核へ向けた。


 核そのものではなく、王国軍の命令紋章を撃つ。


 白い弾丸が紋章を削る。


 右の雷鱗砲で、核と王国軍の魔力接続を切る。


 黒い紋章が砕けた。


 氷竜の目から、赤い光が消える。


 白い光が戻った。


『縛りが、消えた』


 門の周囲にいた凍った魂たちが、次々と動き始める。


 氷の鎖が一つずつ外れていく。


 王国軍の魔力管が切れ、竜の魂が門の中心へ集まった。


 その時、地下城全体が揺れた。


 門の奥から、巨大な氷の腕が伸びてくる。


 凍土の外から、王国軍が別の門を強制起動させていたのだ。


 門の奥に、巨大な白い竜の骸が浮かぶ。


『凍土は、我らのもの』


『炎を持つ者を、凍らせる』


 古い骸竜が、門を押し広げようとする。


 氷竜が鬼平の前へ出た。


『あれは、門の外の亡骸だ』


『縛られた竜の魂を喰らい、凍土を広げる』


 鬼平は二挺のガトリング砲を構えた。


 左の砲は撃てる。


 右の砲は、冷却されたが三発分の負荷を受けている。


 しかし、雷鱗砲身は凍土の魔力を吸収し、青白い光を帯びていた。


「門を閉じる」


 鬼平は左の砲で骸竜の腕を削った。


 右の砲で、腕と門を繋ぐ接続を断つ。


 骸竜の腕が門の外へ戻った。


 しかし、もう一方の腕が伸びてくる。


 セレナが弓を放ち、骸竜の目を射抜く。


 グラウ将軍が獣人兵とともに門の周囲へ突入し、王国軍の魔導師を押し返す。


 鬼平は門の三つの制御柱へ照準を合わせた。


 左で氷の装甲を削る。


 右で接続を切る。


 一つ目。


 二つ目。


 第三の柱へ撃とうとした時、骸竜が頭部を門から押し出した。


 巨大な顎が鬼平へ迫る。


 鬼平は右の砲を盾にした。


 顎が砲身へ噛みつく。


 砲身の青い鱗がきしむ。


 鬼平は左のガトリング砲を骸竜の上顎へ向けた。


 至近距離で連射する。


 骨が砕け、顎が開いた。


 右の砲架を骸竜の頭部へ叩き込む。


「撃てなくても、殴る!」


 骸竜が後ろへ引いた。


 鬼平は第三の制御柱へ右の砲を向けた。


 雷鱗砲身が凍土の魔力を一気に吸収する。


 砲身が青白く輝いた。


 弾丸が制御柱を貫き、門の接続を断つ。


 第五の門が閉じ始める。


 骸竜は門の縁を掴んだまま、凍土へ向かって吠えた。


『凍らせる』


『すべてを、眠らせる』


 鬼平は二挺のガトリング砲を構えた。


 左の砲で骸竜の骨を削り、右の砲で門との接続を切る。


 骸竜の腕が一本、門の向こうへ引き戻される。


 もう一本の腕が残る。


 鬼平は右の砲身を骸竜の手へ押し当てた。


 接続線が、砲身のすぐ目の前に浮かぶ。


 鬼平は引き金を引いた。


 一発の青白い弾丸が、最後の接続を断つ。


 骸竜は門の向こうへ引き戻された。


 第五の門が完全に閉鎖された。


 凍土の竜骨城に、静けさが戻る。


 氷の中に閉じ込められていた竜たちが、次々と光へ変わっていく。


 白い竜の魂が、古い城の天井を抜け、凍土の空へ昇っていく。


 鬼平は右の《雷鱗砲》を見た。


 砲身は凍っているが、亀裂はない。


 ノアが近づき、砲身を確認した。


「凍土の魔力で、砲身の内側が安定した」


「撃てるか」


「撃てる。雷、砂、氷。三つの魔力を循環できる」


「名前は」


 高瀬が尋ねた。


 ノアは少し考えた。


「もう《雷鱗砲》でいい」


「変わらないんですね」


「名前より、撃てることが重要だ」


 鬼平は砲を持ち上げた。


 青い鱗の間を、雷と氷の光が同時に走る。


「撃てる」


 凍土の竜骨城の外では、王国軍の残党が白旗を掲げていた。


 城の地下を守っていた氷騎士も、武器を捨てている。


 グラウ将軍が捕虜を集めていると、ひとりの王国兵が鬼平へ近づいた。


「第六の門が、すでに王都地下で開き始めている」


 リーゼが顔を上げた。


「第六の門は、王都の地下にあるはずです」


「王国軍は、凍土の門を失う前に、王都の門を起動させた」


 兵士は震える声で続けた。


「王都地下には、教会の最高司祭が残した主制御核があります。第六の門が開けば、王城の第七の門と連動する」


 ヴァルグリムが低く唸った。


『残り二つの門が繋がれば、古竜の心臓へ直接道が開く』


 鬼平は凍土の竜骨城の奥を見た。


 第五の門は閉じた。


 だが、王都地下では第六の門が開き始めている。


 そして、その先には王国の王城にある第七の門がある。


「王都へ行く」


 グラウ将軍が尋ねた。


「王国の中枢へ戻るのか」


「ああ」


 ノアが右の砲を見た。


「王都地下は、前に一度戦った場所だ」


「今度は、門を閉じる」


 鬼平は二挺のガトリング砲を担いだ。


 左の砲は白い光。


 右の《雷鱗砲》は、雷と砂と氷を帯びている。


 凍土の竜骨城の上空で、解放された竜の魂が白い雪となって降り始めた。


 鬼平たちは、王都地下へ続く帰還門を開く。


 門の向こうには、かつて制圧した王城の地下区画が見えていた。


 そこでは、赤い光が脈打っている。


 第六の門が、すでに起動していた。


 鬼平軍曹は二挺のガトリング砲を構え、王都地下への門をくぐった。

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