↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼平軍曹の魔石ガトリング無双  作者: しょぼんスライム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/52

第31話 軍曹、黒竜の門を撃ち抜く

黒城塞地下の最深区画で、赤黒い転移門が脈打っていた。


 門の縁には、竜の骨が何重にも組み込まれている。


 古竜の骨。


 王国軍が集め、教会が長い年月をかけて加工した禁忌の素材だった。


 門の向こうには、巨大な黒い影がある。


 影はゆっくりと動き、門の縁へ爪をかけた。


 爪の一本だけで、黒城塞の地下柱よりも太い。


 最高司祭は門の前で両手を広げていた。


 白い法衣は黒い血で汚れ、背中には竜の骨を束ねた翼が生えている。


「来たか、鬼平軍曹」


 最高司祭が笑った。


「古竜の心臓へ触れた人間が、再び我々の前へ戻ってくるとはな」


 鬼平は二挺のガトリング砲を構えた。


 左の砲は白い光を帯びている。


 右の砲は青黒い魔石の周囲に、三つの赤い輪が浮かんでいた。


 古竜の心臓から受け取った竜脈の力が、二挺の砲へ流れている。


「門を閉じる」


「閉じる? これは門ではない。新しい世界を生む器だ」


 最高司祭の背後で、黒い竜の影がさらに大きくなる。


「古竜の心臓から力を得た竜王。その力をこの世界へ呼び込めば、王国も教会も必要なくなる」


 リーゼが門の縁を見た。


「違います。あれは竜ではありません」


「何?」


「門の向こうにいるのは、竜の魂を複数束ねた人工生命体です。古竜の骨と竜脈を無理やり接続しています」


 ヴァルグリムが低く唸った。


『竜ではない。死んだ竜の怨念を繋ぎ合わせたものだ』


「怨念を使うのか」


『竜域から奪った魂だ』


 鬼平は右のガトリング砲を握り直した。


「撃つ」


 最高司祭が手を振った。


 黒城塞地下の壁から、教会の魔導兵が次々と現れる。


 黒い装甲。


 竜骨製の盾。


 背中には魔力管。


 先頭の重装兵が槍を構え、鬼平たちへ突進した。


 鬼平は左のガトリング砲を撃った。


 白い弾丸が重装兵の盾へ当たる。


 盾は砕けない。


 右の砲が続けて撃つ。


 青黒い弾丸が盾の同じ場所へ集中し、竜骨の表面に赤い線が走った。


 右の砲に宿った竜脈の力が、盾の魔力を読み取っている。


 鬼平は照準を少し下へずらした。


 盾ではなく、盾を支える魔力管へ弾丸を集中させる。


 魔力管が破裂し、重装兵の動きが止まった。


 鬼平は右の砲架を振り上げた。


 重装兵の胸部へ叩き込む。


 装甲がへこみ、敵が後方へ吹き飛ぶ。


「撃てなくても、殴れる!」


 高瀬が笑った。


「今回は撃てていますけどね!」


「近ければ殴る」


 鬼平の左右から、魔導兵が迫る。


 日野と高瀬が応戦し、獣人兵が盾で敵の攻撃を受け止める。


 セレナは遠距離から魔導兵の魔力装具を射抜いていく。


 グラウ将軍が斧を振り、敵の盾兵を押し返した。


 ヴァルグリムは地下空間へ黒い炎を吐いた。


 炎は兵士ではなく、門の周囲に設置された魔力増幅器だけを焼き払う。


「増幅器を壊しても、門は止まりません!」


 リーゼが叫んだ。


「門の奥に主核があります。あれを閉じなければ、黒竜の召喚は完了します!」


「主核の場所は」


「黒竜の胸部です!」


 門の向こうから、巨大な頭部が現れた。


 竜のようでいて、竜ではない。


 頭には七本の角。


 口には、複数の竜の牙。


 目は三つあり、それぞれが別々の色で輝いている。


 黒い竜が、門から首を伸ばした。


 その咆哮だけで、地下区画の床が割れる。


『我らの魂を返せ』


『我らを縛る者を殺せ』


『この世界を焼け』


 三つの声が重なった。


 最高司祭が両手を上げた。


「目覚めよ、黒竜王バルグザード! 異世界のすべてを喰らえ!」


 黒竜の三つの目が、最高司祭へ向いた。


『命令するな』


 最高司祭の表情が固まった。


『我らは道具ではない』


「違う! 私はお前たちを蘇らせた!」


『魂を縛った』


「力を与えた!」


『力を奪った』


 黒竜が門の骨組みへ爪をかけた。


 転移門が大きく揺れる。


 最高司祭の法衣から、黒い魔力管が伸び、黒竜の胸部へ接続されている。


「門と黒竜の主核は、最高司祭の魔力を経由しています!」


 リーゼが叫んだ。


「司祭を止めれば、召喚を止められます!」


 鬼平は最高司祭へ照準を合わせた。


 しかし、司祭の周囲には黒い竜骨の障壁が展開されている。


 左の通常弾は弾かれる。


 右の砲の新しい力なら、障壁の構造を読み取れる。


 鬼平は右のガトリング砲を撃った。


 青黒い弾丸が障壁へ当たる。


 弾丸は破壊されず、障壁の魔力線に沿って滑った。


 鬼平の視界に、赤い照準線が浮かぶ。


 障壁を維持している三つの魔力結節。


 左肩。


 右脇腹。


 背中の魔力管。


 鬼平は左の砲を左肩へ向けた。


 一発。


 右の砲を右脇腹へ向ける。


 一発。


 最高司祭が障壁を動かし、背中を隠す。


 鬼平は右の砲架を床へ叩きつけた。


 砲身の角度が跳ね上がる。


 右の砲が、司祭の背後へ回り込むように弾丸を撃ち出した。


 青黒い弾丸が、障壁の隙間を通り抜ける。


 背中の魔力管が砕けた。


 最高司祭の障壁が崩壊する。


「なぜだ!」


 最高司祭が叫ぶ。


「その砲は、竜を殺すためのものだろう!」


「敵を撃つ」


「私は敵ではない! 神の使徒だ!」


「部下を道具にした」


 鬼平は左のガトリング砲を構えた。


「竜の魂を縛った」


 最高司祭が魔力剣を作り出し、鬼平へ突進する。


「異世界の兵士を、勝手に召喚した」


 鬼平は右のガトリング砲で魔力剣を受け止めた。


 剣が砲身へ食い込み、火花が散る。


「敵だ」


 左のガトリング砲が、最高司祭の魔力剣を撃ち砕いた。


 右の砲架が、司祭の胸部へ叩き込まれる。


 司祭が門の前へ吹き飛ぶ。


 だが、司祭の胸部には黒い魔石が埋め込まれていた。


 魔石から黒竜へ魔力が流れ続けている。


「胸の魔石を壊せば、黒竜へ魔力が逆流します!」


 リーゼが叫ぶ。


「門全体が暴走する!」


 鬼平は最高司祭の胸部を見た。


 古竜の心臓から受け取った力が、右の照準線を浮かび上がらせる。


 黒い魔石そのものではなく、周囲の固定具が赤く表示された。


「取り外す」


「可能ですか?」


「やる」


 鬼平は左のガトリング砲を短く連射した。


 魔石を固定している四本の金属枠へ、弾丸を集中させる。


 一本目が砕ける。


 最高司祭が魔力の刃を放つ。


 セレナの矢が刃を弾き、グラウ将軍が司祭の前へ立ちはだかる。


 鬼平は二本目を撃つ。


 右の砲が続けて三本目を破壊する。


 最高司祭の魔力が急速に弱まった。


「やめろ! それを外せば、バルグザードは門を破って出てくる!」


「なら、門を閉じる」


 四本目の固定具が砕けた。


 黒い魔石が、最高司祭の胸部から浮き上がる。


 その瞬間、黒竜が門を押し広げた。


 巨大な頭部が、こちら側へ半分以上現れる。


 竜の魂が三つの声で叫んだ。


『自由を』


『炎を』


『復讐を』


 黒い炎が地下区画を満たした。


 鬼平は左のガトリング砲を頭上へ向けた。


 無数の炎の塊を撃ち落とす。


 右の砲が、門の周囲にある竜骨の固定具を撃つ。


 門を構成している骨が一本ずつ砕けていく。


 しかし、門を壊すには、黒竜をこちら側へ通してしまう危険がある。


 ヴァルグリムが黒竜へ向かって飛び出した。


『縛られた竜たちよ! 我の声を聞け!』


 黒竜の三つの目が、ヴァルグリムへ向く。


『黒竜……自由な竜』


『我らは、死んでいる』


『我らの魂は、奪われた』


『ならば、門を破る』


 ヴァルグリムが黒い炎を受け止めた。


 翼が焼け、鱗が剥がれる。


 それでも、ヴァルグリムは退かない。


『自由とは、怒りのままに焼くことではない』


『貴様らを縛った者を倒せ』


『その後は、竜の意思で選べ』


 黒竜の三つの声が重なった。


『我らは、選べるのか』


『魂は、戻るのか』


 ヴァルグリムは鬼平へ振り返った。


『刻印の兵士よ。撃て』


 鬼平は右のガトリング砲を構えた。


 黒竜の胸部に、巨大な黒い主核がある。


 最高司祭の胸から浮いた魔石が、その主核と接続している。


 黒い魔石を撃てば、主核へ破壊の力が流れる。


 しかし、古竜の心臓から得た新たな力なら、魔石を破壊せずに接続だけを切れる可能性がある。


 鬼平は照準を変えた。


 黒い魔石の周囲にある三本の魔力管。


 左のガトリング砲で一つ目。


 右のガトリング砲で二つ目。


 三つ目は、最高司祭の手の中にある。


 司祭が魔石を掴み直した。


「この力は、私のものだ!」


 鬼平は最高司祭へ歩み寄った。


 司祭が黒い魔力を放つ。


 鬼平は右のガトリング砲を盾にし、魔力を受け止めた。


 砲身の赤い輪が輝く。


 右の砲が、攻撃の魔力だけを吸収した。


 鬼平は司祭の目の前まで進んだ。


「この力は」


 右の砲架を司祭の腕へ叩き込む。


「お前のものじゃない」


 司祭の腕が折れ、黒い魔石が床へ落ちる。


 鬼平は左のガトリング砲を魔石へ向けた。


 しかし、撃たない。


 右の砲の青黒い光が、床の魔石を包む。


 古竜の心臓の力が、魔石に繋がった魔力線を読み取る。


 鬼平の視界に、黒竜の主核へ伸びる三本の線が現れた。


 左の砲で一本目。


 右の砲で二本目。


 三本目は、鬼平が右の砲架で魔石を押し潰した。


 魔石は壊れず、最高司祭との接続だけが切れた。


 黒竜の主核が、赤い光を失う。


『縛りが、消えた』


 黒竜の三つの声から、怒りが薄れていく。


『我らは、帰れる』


『竜域へ』


『古竜の心臓へ』


 ヴァルグリムが叫んだ。


『門を閉じる! 今だ!』


 リーゼが魔法陣を展開する。


 セレナとグラウ将軍が、門の周囲の魔導兵を押し返す。


 日野と高瀬が、崩れ始めた地下通路を支える装置を破壊する。


 ノアが鬼平の砲へ魔力管を接続した。


「竜域の力を門へ流せる! 右の砲を使え!」


 鬼平は二挺のガトリング砲を門へ向けた。


「撃つ」


 左の砲が白い弾丸を放つ。


 右の砲が青黒い弾丸を続ける。


 弾丸は門の骨組みを破壊しない。


 門の周囲を巡る魔力だけを切り離していく。


 黒竜の身体が、少しずつ門の向こうへ戻っていく。


『人間よ』


 黒竜の三つの目が、鬼平を見る。


『我らを、撃たなかった』


「敵じゃない」


『ならば、いつか共に戦う』


「敵になったら撃つ」


『その時は、我らも戦う』


 黒竜が門の向こうへ戻った。


 最後に、三つの魂が一つの声になる。


『ありがとう、刻印の兵士』


 転移門が閉じた。


 黒城塞地下に、静けさが戻った。


 床には、黒い魔石が一つ残っている。


 最高司祭は、その前で膝をついていた。


 教会の白い法衣は破れ、魔力は失われている。


 ヴァルグリムは焼けた翼を広げ、鬼平の前へ降りた。


『竜の魂を救った』


「撃っただけだ」


『撃たずに、救った』


 鬼平は二挺のガトリング砲を見た。


 左の砲は白い光を帯びている。


 右の砲には、古竜の心臓と番人から受け取った赤い輪が残っている。


 古竜の力は、敵を破壊するだけではなく、接続を切り、魂を解放することもできた。


 ノアが右の砲を調べる。


「新しい機能がある」


「何だ」


「魔力接続を切断する《竜脈断ち》だ。門、魔導兵器、洗脳装置、竜騎士の拘束具……魔力で繋がっているものを、破壊せずに切り離せる」


「撃てるか」


「使える。ただし、照準は貴様が決める」


「十分だ」


 リーゼが、床に残った黒い魔石を調べていた。


「この魔石は、まだ完全には停止していません」


「使えるか」


「危険です。中には、教会が集めた竜の怨念が残っています」


「戻せるか」


 ヴァルグリムが魔石を見た。


『古竜の心臓へ持ち帰れば、残った魂を解放できるかもしれぬ』


「持って帰る」


 鬼平は黒い魔石を拾い上げた。


 魔石の奥から、小さな声が聞こえる。


『寒い』


『暗い』


『帰りたい』


 鬼平は魔石を布で包んだ。


「竜域へ戻す」


 最高司祭が顔を上げた。


「なぜだ……なぜ、そこまで竜を守る……」


 鬼平は最高司祭を見た。


「守る奴がいるからだ」


「竜は、人間を殺す」


「お前も人間を殺した」


 最高司祭は言葉を失った。


「竜だから、じゃない。敵だから撃つ」


 鬼平は二挺のガトリング砲を担いだ。


「人間でも、竜でも同じだ」


 地下区画の外から、元の世界の指揮官が走ってくる。


「地下門の制圧を確認! 教会兵は降伏しました!」


 グラウ将軍も続いて入ってきた。


「王国軍の残党も武器を捨てた。最高司祭の拘束は?」


「今からだ」


 日野と高瀬が最高司祭へ魔力封じの枷を掛ける。


 教会による黒竜召喚計画は失敗した。


 黒城塞の地下門も閉じた。


 しかし、最高司祭は最後に笑った。


「門は一つではない」


 鬼平が振り返る。


「知っている」


「古竜の心臓を得た貴様なら、もう分かっているだろう。この世界には、まだ七つの門がある」


 リーゼが顔を上げた。


「七つ……?」


「王国が作った門は三つだけではない。教会は、竜域の各地に門の核を埋め込んだ」


 最高司祭が笑う。


「黒城塞の門は、その一つにすぎない」


 ヴァルグリムの目が赤く輝いた。


『竜域に、まだ門がある』


 鬼平は黒い魔石を見た。


 魔石の中から、また小さな声が聞こえる。


『七つ』


『七つの門』


『すべてを閉じろ』


 鬼平は二挺のガトリング砲を構え直した。


「帰る」


 リーゼが尋ねる。


「元の世界へですか?」


「竜域へ」


 ヴァルグリムが翼を広げる。


『七つの門を探す』


「ああ」


 鬼平は黒城塞地下の閉じた門を見た。


 戦いは終わっていない。


 教会の計画は一つ潰しただけ。


 竜域の各地には、まだ七つの門の核が眠っている。


 それらが開けば、二つの世界だけではなく、竜域そのものが戦場になる。


 鬼平は二挺のガトリング砲を担い、仲間たちとともに地下区画を出た。


 右の砲の青黒い魔石に、三つの赤い輪が輝く。


 新たな力《竜脈断ち》。


 それは、撃ち壊すためではなく、縛られたものを解放するための力だった。


 黒城塞の外では、竜域へ戻る門が再び開こうとしている。


 その向こうには、七つの門の位置を示す古い地図が浮かんでいた。


 鬼平軍曹は、地図の最初の地点を見た。


 そこは、かつて王国軍が滅ぼした竜の都だった。


「次は、竜の都へ行く」


 ヴァルグリムが低く咆哮した。


『竜域の失われた都。そこに、最初の門がある』


 鬼平たちは、新たな戦場へ向かって歩き出した。


 黒城塞地下に残った黒い魔石の中で、救われた竜の魂が静かに眠り始めた。


 そして遠く、竜域のどこかで、七つの門の一つが赤く輝いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。