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鬼平軍曹の魔石ガトリング無双  作者: しょぼんスライム


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第28話 軍曹、三時間の防衛戦を戦う

王国軍本隊の魔導砲が、一斉に火を噴いた。


 平原の向こうから放たれた赤い光弾が、黒城塞の城壁へ押し寄せる。


 光弾が着弾するたび、黒い城壁が震えた。


 元の世界の兵士たちは、城壁の内側で対砲撃用の装甲板を展開する。


 獣人兵は盾を構え、竜騎士たちは負傷した異形竜の治療区画を守っていた。


 黒城塞の上空には、まだ竜域へ繋がる門が浮かんでいる。


 門の向こうでは、黒竜ヴァルグリムがこちらを見ていた。


『刻印の兵士よ。三時間を耐えられるか』


 鬼平は二挺の魔石ガトリング砲を構えた。


 左の砲は赤い魔石。


 右の砲は青黒い魔石。


 新機構《ツイン・ガトリング・リレー》が、低い音を立てて回転している。


「三時間、守る」


『その砲でか』


「この砲で」


 鬼平は遠くの王国軍を見た。


 赤い旗の下に、盾兵、魔石銃兵、魔導師、竜騎士、大型魔導兵器が並んでいる。


 数は一万以上。


 黒城塞の防衛兵力は、その十分の一にも満たない。


 通常なら、勝負にならない兵力差だった。


 しかし、城塞の城壁は高く、王国軍は平原を進まなければならない。


 鬼平のガトリング砲は、その平原全体を射程に収めていた。


「第一防衛線、発砲準備!」


 元の世界の指揮官が無線へ命じる。


 装甲車の機関銃。


 遠距離砲。


 獣人兵の弓と魔石銃。


 城壁上の魔導砲。


 すべてが王国軍へ向いた。


 しかし、王国軍の先頭には巨大な魔法障壁が展開されている。


 数千人の魔導師が力を合わせ、平原を覆うような光の壁を作っていた。


「障壁、接近!」


 セレナが叫んだ。


「敵の後方に、魔導砲が二十基あります!」


「鬼平軍曹、どうする?」


 元の世界の指揮官が尋ねる。


 鬼平は左のガトリング砲を構えた。


 右の砲も構える。


「先に砲を撃つ」


「敵の障壁が厚すぎます。通常弾では届かない可能性が――」


「交互に撃つ」


 鬼平は左の引き金を引いた。


 赤い魔力弾が平原を走る。


 続いて、右の引き金。


 青黒い魔力弾が、その間を縫うように飛んでいく。


 左、右、左、右。


 二つの砲が切れ目なく弾幕を作り出した。


 通常弾の連射とは違う。


 赤と青黒の弾丸が交互に障壁へ当たり、同じ場所へ衝撃を重ねていく。


 魔法障壁に、細い亀裂が走った。


「障壁が削れています!」


 リーゼが叫んだ。


「左右の魔力が交互に違う波長で当たっている!」


「続ける」


 鬼平は撃ち続けた。


 左の砲が赤い弾幕を吐く。


 右の砲が青黒い弾幕を重ねる。


 砲身は過熱しない。


 魔力流量計も安全圏を保っている。


 《ツイン・ガトリング・リレー》が、初めて実戦で力を発揮した。


 王国軍の障壁が、中央から崩壊する。


「今です!」


 リーゼが叫んだ。


 元の世界の遠距離砲が発射される。


 砲弾が崩れた障壁の隙間へ飛び込み、王国軍の先頭部隊を吹き飛ばした。


 獣人兵の矢と魔石銃が、障壁の向こうへ流れ込む。


 王国軍の進軍が止まった。


 しかし、後方の魔導砲が前へ出てくる。


 二十基の魔導砲が、城塞へ向けて旋回した。


「魔導砲、発射準備!」


 敵の指揮官が叫んだ。


 鬼平は照準を変えた。


 魔導砲を直接撃つのではなく、砲台へ魔力を送る供給管を狙う。


 しかし、供給管は王国軍の盾兵に守られている。


 さらに、砲台の間に竜騎士が飛び回っている。


 鬼平は左のガトリング砲を竜騎士へ向けた。


 通常弾を連射する。


 竜騎士が魔力盾を展開した。


 赤い弾丸が盾へ当たり、火花が散る。


 右のガトリング砲が続けて撃つ。


 青黒い弾丸が魔力盾の同じ箇所へ集中する。


 盾が砕けた。


 竜騎士が驚いて高度を上げる。


 鬼平は竜本体ではなく、騎士の鞍と魔力接続具を撃った。


 騎士が竜の背から落下する。


 異形竜は自由を取り戻し、戦場の外へ飛んでいった。


「竜は撃たないのですか?」


 セレナが尋ねた。


「騎士だけで十分だ」


「敵の竜を逃がすのですね」


「使われているだけだ」


 セレナは一瞬、鬼平を見た。


 それから弓を構え、別の竜騎士の魔力装具を射抜いた。


 竜は空へ逃げ、騎士だけが落ちる。


「了解しました」


 王国軍の魔導砲が発射された。


 赤い光弾が城壁へ飛来する。


 鬼平は二挺のガトリング砲を頭上へ向けた。


 左、右、左、右。


 弾幕が光弾を一つずつ撃ち落とす。


 光弾が空中で爆発し、黒い煙を残す。


「軍曹、敵の魔導砲が多すぎます!」


 高瀬が叫んだ。


「一度に全部は無理です!」


「供給管を撃つ」


 鬼平は城壁から身を乗り出した。


 平原の後方にある魔導砲の配置を見た。


 二十基の魔導砲。


 供給管は五本の主幹へ集約されている。


 主幹の位置を見抜くには、魔力の流れを見る必要がある。


 リーゼが指を伸ばした。


「右から二列目、三基の後ろに太い流れがあります!」


 鬼平はそこへ照準を合わせた。


 敵兵が盾を並べる。


 鬼平は左のガトリング砲で盾の上部を撃ち、盾兵の視界を奪う。


 右の砲で地面へ向けて連射し、土煙を上げる。


 敵の視界が塞がった。


 土煙の中へ弾幕を送り、供給管の固定具だけを撃ち抜く。


 一本目の主幹が外れた。


 三基の魔導砲が沈黙する。


 二本目。


 四基が止まる。


 三本目。


 さらに五基。


 王国軍の後方から、次々と魔導砲が沈黙していく。


「魔導砲が撃てません!」


 王国軍の指揮官が叫んだ。


 鬼平は四本目の主幹へ照準を合わせた。


 その前に、巨大な光の槍が飛んできた。


 王国軍の大魔導師が、山のような魔力を集めている。


「危険な魔力反応です!」


 リーゼが叫んだ。


「城壁ごと破壊するつもりです!」


 鬼平は光の槍へ銃口を向けた。


 赤と青黒の弾幕が、光の槍へ集中する。


 通常弾が次々と弾かれる。


 右の砲弾が光の槍の表面へ食い込み、軌道をわずかに逸らす。


 しかし、完全には止まらない。


 鬼平はハイテンションスキルの発動を感じた。


 左の魔石が白く輝き始める。


 無限の弾幕を使えば、光の槍を破壊できる。


 だが、三時間の防衛戦は始まったばかりだ。


 今ここで使えば、身体への負荷が大きい。


「鬼平さん!」


 リーゼが叫んだ。


「発動させるなら、短時間で!」


 鬼平は右のガトリング砲を左の砲へ近づけた。


 連動機構の魔力が、二挺の間を流れる。


 《ツイン・ガトリング・リレー》の出力が上がった。


 左の砲が撃つ。


 右の砲が撃つ。


 左。


 右。


 交互の弾幕が、光の槍の中心へ集中する。


 赤と青黒の魔力が重なり、光の槍の表面に亀裂が走った。


 鬼平はさらに出力を上げる。


「この《ピー》がァッ!」


 第一の暴言。


 左の弾幕が光の槍を押し返す。


「オレの城塞に触るんじゃねえ、この《ピー》が!」


 第二の暴言。


 右の砲が続けて弾丸を吐き出す。


 光の槍が空中で砕けた。


 無数の光片が平原へ降り注ぐ。


 王国軍の大魔導師が後退した。


 鬼平の左の魔石は白く輝いている。


 ハイテンションスキルは、完全には発動していない。


 通常の連動出力を限界まで上げただけだった。


 ノアが叫んだ。


「今のは、ハイテンションスキルではないな!」


「使っていない」


「使わずに、あの出力を出したのか!」


「二挺で撃った」


 王国軍の第一波が、城塞の外壁へ到達した。


 梯子が立てられ、盾兵が城壁を登り始める。


 鬼平は二挺のガトリング砲を近距離へ向けた。


 左で梯子の固定具を撃つ。


 右で登ってきた盾兵の盾を撃つ。


 梯子が倒れ、敵兵が地面へ落ちる。


 別の梯子が城壁へ掛かった。


 鬼平は右の砲架を振り、梯子ごと敵兵を叩き落とす。


「撃てなくても殴れる、だったな」


 高瀬が笑った。


「撃てるが、殴る」


 鬼平は答えた。


 城壁の反対側では、王国軍の魔導兵が壁を登ってきた。


 獣人兵が盾で受け止めるが、敵の数が多い。


 グラウ将軍が自ら前へ出て、魔導兵の槍を斧で弾き飛ばした。


 鬼平は左のガトリング砲を反対側へ向けた。


 弾幕が敵の装備を削り、獣人兵の反撃を支える。


 右の砲が続き、敵の盾が次々に砕ける。


「左壁、敵を押し返した!」


 グラウ将軍が叫んだ。


「こちらも持ちこたえている!」


 時計が一時間経過を示した。


 王国軍は、まだ平原に広がっている。


 敵の第一波は防いだ。


 しかし、後方から新たな魔導兵器が運び込まれていた。


 巨大な四足歩行兵器。


 竜の骨を外装に使い、背中に魔導砲を三基載せている。


「新型魔導兵器です!」


 リーゼが叫んだ。


「竜骨装甲で、通常弾が通りません!」


 鬼平は右の砲を見た。


 対竜弾は残り一発。


 今の右の砲身では、対竜弾を撃てば壊れる可能性が高い。


 だが、四足歩行兵器は城塞へ迫っている。


 通常弾では、装甲を削り切る前に砲撃される。


「右の対竜弾を使う」


 ノアが叫んだ。


「まだ一発残っているが、撃てば砲身が壊れる!」


「装甲の弱点は」


 リーゼが探る。


「背中の魔導砲と、四本の脚を繋ぐ魔力中枢です!」


「狙う」


 鬼平は右のガトリング砲を構えた。


 四足歩行兵器の胸部には巨大な魔石。


 しかし、そこを撃てば爆発する可能性がある。


 背中の魔導砲を支える中枢を狙う。


 対竜弾なら、竜骨装甲を貫ける。


 四足歩行兵器が魔導砲を城壁へ向けた。


 鬼平は照準を合わせた。


 敵兵器の脚が動く。


 背中が揺れる。


 対竜弾の発射には、狭い時間しかない。


 鬼平は一度、左のガトリング砲を撃った。


 弾丸が兵器の前脚へ当たり、足を止める。


 右の砲を構える。


 背中の中枢が見えた。


 鬼平は引き金を引いた。


 一発の対竜弾が放たれる。


 竜骨装甲を貫き、魔力中枢へ命中。


 四足歩行兵器の脚が止まった。


 背中の魔導砲が一基、二基、三基と沈黙する。


 兵器がその場へ倒れた。


 右の砲身に、深い亀裂が走った。


 ノアが頭を抱える。


「対竜弾機構、また破損だ!」


「通常弾は撃てるか」


「撃てる。だが、もう対竜弾は無理だ」


「十分だ」


 鬼平は右の砲を構え直した。


 王国軍の竜騎士が一斉に上空へ上がる。


 十体以上の竜が、黒城塞へ向かってくる。


 セレナと弓兵が迎撃するが、数が多い。


 鬼平は二挺のガトリング砲を空へ向けた。


 左、右、左、右。


 弾幕が竜騎士の魔力装具を狙う。


 竜を傷つけず、騎士の鞍と接続具だけを撃つ。


 一人。


 二人。


 三人。


 竜騎士が落下し、竜たちは空の外へ逃げていく。


 だが、一体の巨大な赤竜が、鬼平へ向かって急降下した。


 その背中には、王国軍の将軍が乗っている。


 赤竜の口から炎が噴き出す。


 城壁上が炎に包まれた。


 鬼平は右のガトリング砲を盾にした。


 砲身が炎を受け、亀裂が広がる。


 鬼平の腕が熱に焼かれる。


 左のガトリング砲で赤竜の顔を狙う。


 通常弾が鱗へ当たるが、分厚い装甲に弾かれた。


 右の砲は対竜弾を失っている。


 鬼平は砲架を握り直した。


 赤竜が城壁へ着地する。


 足元の石が砕ける。


 竜将軍が魔力剣を構えた。


「異界の兵士よ! 王国の軍勢に抗うとは愚かな!」


 鬼平は右のガトリング砲を持ち上げた。


「竜を使って、戦場へ来る奴が言うな」


 竜将軍が斬りかかる。


 鬼平は右の砲身で剣を受け止めた。


 左のガトリング砲を竜将軍の鞍へ向ける。


 短い連射。


 魔力接続具が砕けた。


 竜将軍がバランスを崩す。


 赤竜が鬼平へ噛みつこうとした。


 鬼平は右の砲架を竜の鼻先へ叩き込んだ。


 赤竜が頭を振り、後退する。


「撃てなくても、殴れる!」


 第三の暴言。


 鬼平は右の砲身を竜将軍の鎧へ叩き込んだ。


 鎧がへこみ、竜将軍が城壁の外へ落ちる。


 赤竜は怒り、再び炎を吐こうとした。


 鬼平は左のガトリング砲を赤竜の口元へ向けた。


 炎が放たれる前に、口の中へ通常弾を撃ち込む。


 赤竜が苦しみ、翼を広げる。


 鬼平は竜の首へ銃口を向けた。


 しかし、引き金を引かなかった。


 竜は敵の命令で戦っているだけだ。


 鬼平は赤竜の翼の付け根へ弾幕を撃ち、魔力装具を破壊した。


 赤竜は自由になり、空へ飛び去った。


 セレナが竜を見送った。


「また、竜を生かした」


「敵じゃない」


 王国軍の進軍が、二時間目に入った。


 平原には、破壊された魔導兵器と倒れた兵士が広がっている。


 それでも王国軍の数は減らない。


 新たな部隊が前進してくる。


 黒城塞の城壁にも、損傷が増えていた。


 鬼平の左の砲は撃てる。


 右の砲は通常弾だけなら使える。


 魔石弾の補給が、ようやく届いた。


 元の世界の兵士たちが、魔石を加工した弾丸を運んでくる。


 ノアが弾薬箱を開けた。


「即席の魔石弾だ。威力は通常弾の半分。だが、数はある」


「どれだけ」


「三百発」


「少ない」


「三百発を一人で撃つな!」


 鬼平は弾薬箱を見た。


 左と右で交互に撃てば、三百発でも戦場の要所を止められる。


 ハイテンションスキルを使えば、弾薬は無限になる。


 だが、今はまだ使わない。


 三時間のうち、残り一時間。


 ここまで通常射撃で耐えた。


「弾を分ける」


 鬼平が言った。


「左右に半分ずつ」


「魔石弾を、右にも使うのか」


「交互に撃つ」


「威力が足りないぞ」


「数で押す」


 王国軍が最後の総攻撃を開始した。


 地上から無数の兵士が突撃。


 空から竜騎士。


 後方から魔導砲。


 魔導師の大規模術式が、黒城塞を包もうとしている。


 鬼平は二挺のガトリング砲を構えた。


 左の赤い弾丸。


 右の青黒い魔石弾。


 交互に撃つ。


 弾幕が敵の先頭を削り、竜騎士の接続具を破壊し、魔導師の杖を折る。


 敵の数が多い。


 それでも、一歩も城壁へ近づけない。


「この《ピー》がァッ!」


 第四の暴言。


 鬼平は左右の砲を交互に撃ち続けた。


「オレの部下を、勝手に通すんじゃねえ!」


 第五の暴言。


 弾幕が一段と強くなる。


 ハイテンションスキルが、発動した。


 左の砲の弾が減らない。


 右の砲の魔石弾も、撃ち続ける限り補充されていく。


 《ツイン・ガトリング・リレー》が、無限弾幕の力を得た。


 赤と青黒の弾丸が、王国軍の前線を押し戻す。


 魔導砲が沈黙する。


 竜騎士が空から落ちる。


 盾兵の列が崩れる。


 鬼平は左右の砲を止めなかった。


「撃ち続けるぞ、この《ピー》どもが!」


 第六の暴言。


 左右の砲身は、交互に冷却されている。


 壊れない。


 弾は尽きない。


 しかし、鬼平の身体へ魔力負荷が集中する。


 腕の筋肉が震え、視界が白くなる。


 リーゼが叫んだ。


「鬼平さん、スキルの出力を下げてください!」


「まだだ」


「あと一時間あります!」


「敵がいる」


「このままでは身体が持ちません!」


 鬼平は前方を見た。


 王国軍の本隊が、最後の巨大魔導兵器を押し出している。


 それは、城塞の門よりも大きい。


 竜の頭部を模した砲身。


 四本の脚。


 背中に巨大な魔石炉。


 王国軍の総旗艦とも言うべき、超大型魔導兵器だった。


 その砲口が黒城塞へ向く。


「軍曹、あれは城壁ごと撃ち抜く兵器です!」


 リーゼが叫んだ。


「魔力炉が巨大すぎる。通常の攻撃では止まりません!」


 鬼平は両手のガトリング砲を見た。


 ハイテンションスキルは発動中。


 弾は尽きない。


 砲身も壊れない。


 だが、身体が限界に近づいている。


 超大型魔導兵器の魔力炉を撃つには、左右の砲の出力を限界まで上げる必要がある。


 それでも、まだ一時間を守らなければならない。


 鬼平は魔導兵器の背中にある魔力炉を見た。


 巨大な装甲。


 四本の冷却管。


 炉の周囲に、王国軍の守備隊。


 弱点はある。


 だが、城壁からは距離がある。


 鬼平は右の砲を見た。


 対竜弾は使えない。


 通常弾しかない。


 それでも、ハイテンションスキルの無限弾幕なら装甲を削れる。


「オレが行く」


 鬼平が言った。


「魔導兵器の背中へ行く」


 日野が驚く。


「一人で敵陣へ?」


「二挺で行く」


 高瀬が続く。


「城壁の防衛は?」


「グラウ将軍に任せる」


 グラウ将軍が頷いた。


「任せろ。貴様が戻るまで、城壁は落とさない」


 鬼平は城壁から飛び降りた。


 左のガトリング砲と右のガトリング砲を両手に持つ。


 ハイテンションスキルの弾幕を撃ちながら、敵陣へ向かって走る。


 赤と青黒の弾丸が、鬼平の進路を作る。


 王国軍の兵士たちが倒れ、盾が砕け、魔導師の術式が消える。


 鬼平は魔導兵器の正面へ到達した。


 巨体が、鬼平を踏み潰そうと脚を振り下ろす。


 鬼平は右の砲架を地面へ叩きつけ、身体を横へ飛ばした。


 脚が地面へ落ち、土煙が上がる。


 鬼平は左の砲で脚部の関節を撃った。


 魔導兵器が片膝をつく。


 鬼平は右の砲を背中へ向けた。


 弾幕が冷却管へ集中する。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 冷却管が破裂し、魔力炉の装甲が開いた。


 鬼平は魔力炉の中心へ、左右の砲を同時に向けた。


「オレの城塞に近づくんじゃねえ!」


 第七の暴言。


 赤と青黒の無限弾幕が、魔力炉へ集中する。


 装甲が剥がれ、内部の魔石が露出した。


 魔力炉が暴走を始める。


 リーゼが無線で叫ぶ。


「炉を撃ちすぎると爆発します!」


「分かっている」


 鬼平は射撃を続けながら、魔力炉の周囲へ弾丸を当てていく。


 炉そのものではなく、固定具を破壊する。


 魔力炉が装甲の中で浮き上がった。


 鬼平は右のガトリング砲を持ち上げ、炉の下部へ砲架を叩き込む。


 巨大な魔石炉が、装甲から外れた。


 魔導兵器の出力が落ちる。


 鬼平は両手のガトリング砲で、炉へ繋がる魔力線を撃ち抜いた。


 魔力線が一本ずつ切れ、魔導兵器が停止する。


 王国軍の総旗艦が、平原へ崩れ落ちた。


 鬼平はその上へ立った。


 ハイテンションスキルは、まだ続いている。


 しかし、王国軍の総攻撃が止まった。


 魔導砲は沈黙。


 竜騎士は撤退。


 歩兵は後退を始めている。


 グラウ将軍から通信が入る。


『鬼平、敵が退いている。城壁は守った』


「あと何分だ」


『作戦開始から二時間五十分』


 残り十分。


 鬼平はハイテンションスキルを止めようとした。


 だが、指が引き金から離れない。


 敵はまだ平原にいる。


 退却しているが、魔導砲を再起動しようとしている部隊もある。


 鬼平は左の砲を敵の魔導砲へ向けた。


「軍曹、もう十分です!」


 リーゼが叫ぶ。


「防衛戦は成功しています!」


「敵の確認」


「撤退しています!」


「魔導砲が残っている」


「撃つ必要はありません!」


 鬼平は敵の魔導砲を見た。


 砲台の周囲に、負傷した兵士がいる。


 撃てば砲台を壊せる。


 しかし、敵兵まで巻き込む可能性がある。


 鬼平の指が、ゆっくりと引き金から離れた。


 左右の砲の回転が止まる。


 白い魔石の光が、赤と青黒へ戻っていく。


 ハイテンションスキルが終了した。


 鬼平は魔導兵器の上で、膝をついた。


 身体中から汗が流れ、腕が震えている。


 リーゼと日野、高瀬が駆け寄った。


「軍曹、三時間の防衛成功です」


 高瀬が言った。


「敵は黒城塞へ入れませんでした」


「門は」


「維持されています」


「竜域へ行く」


 鬼平は立ち上がった。


 両手のガトリング砲を持つ。


 左右の砲身は、まだ熱を持っている。


 しかし、壊れていない。


 黒城塞の上空で、竜域への門が大きく開いた。


 その向こうから、黒竜ヴァルグリムが姿を現す。


『三時間を越えたな』


「ああ」


『竜域へ来い』


 鬼平は城壁の上にいる仲間たちを見た。


 元の世界の兵士。


 獣人兵。


 救出された兵士たち。


 治療を終えた異形竜。


 誰もが、門の向こうを見ている。


「全員、準備しろ」


 鬼平が言った。


「竜域へ戻る」


 黒城塞の防衛戦は終わった。


 王国軍本隊は退却し、門は守られた。


 しかし、異世界側にはまだ教会と王国の本隊が残っている。


 そして竜域では、ヴァルグリムたちが鬼平を待っている。


 鬼平は二挺のガトリング砲を構えた。


 左が赤く輝く。


 右が青黒く輝く。


 今度は、砲を直すためではない。


 竜域の仲間を守るために戻る。


 鬼平軍曹は、二挺のガトリング砲とともに、竜域への門をくぐった。

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