第26話 軍曹、竜脈統括官を撃ち抜く
黒城塞の中枢で、三つの転移門が同時に開き始めた。
空間を裂く赤い光が、巨大な魔石核から三方向へ伸びている。
一本は山中の旧門跡へ。
一本は市街地地下へ。
一本は沖合の海上へ。
異世界側の黒城塞と、元の世界の三地点が、竜脈を通じて繋がっていく。
その中央で、竜脈統括官が翼を広げた。
人間の面影はほとんど残っていない。
黒い鱗が法衣を覆い、両腕は竜の爪へ変わっている。
胸部には、巨大な赤い魔石。
そこから伸びた魔力管が、三つの転移門と魔石核へ接続していた。
「門は開く!」
統括官が咆哮した。
「こちら側の軍勢も、貴様の世界の兵器も、すべて我々の支配下に置く!」
鬼平は両手のガトリング砲を構えた。
左の砲はハイテンションスキルで白く輝いている。
右の砲は砲身の一部が割れ、竜鱗が剥がれていた。
対竜弾は残り一発。
通常弾は数発だけ。
その背後には、黒竜の血を利用した帰還門の中枢がある。
撃ち方を間違えれば、元の世界の三つの門が暴走する。
「撃つ場所を選ぶ」
鬼平が言った。
統括官が翼を振った。
竜脈の魔力が黒い嵐となって吹き荒れる。
魔石核の周囲に無数の魔力弾が浮かび、鬼平たちへ飛んできた。
鬼平は左のガトリング砲を撃った。
白い弾幕が魔力弾を一つずつ撃ち落とす。
爆発した魔力が空間を揺らす。
リーゼが叫んだ。
「統括官の胸部魔石を破壊してはいけません! あれを壊すと、三つの門へ魔力が一気に逆流します!」
「分かっている」
「本当に分かっていますか!」
「だから撃たない」
鬼平は統括官の胸ではなく、翼の付け根へ照準を合わせた。
通常弾の弾幕が、黒い翼の魔力接続部を削る。
統括官は翼を畳み、弾丸を避けた。
そのまま鬼平へ突進する。
巨大な爪が振り下ろされた。
鬼平は右のガトリング砲を盾にした。
爪が砲身へ食い込み、竜鱗がさらに剥がれる。
鬼平の足元に亀裂が走る。
統括官の力は、これまでの魔導兵とは桁違いだった。
鬼平は右の砲架を押し返した。
統括官がさらに力を加える。
「人間の武器など、竜脈の力には敵わない!」
「武器だけで戦っているんじゃねえ」
鬼平は左のガトリング砲を統括官の肩へ向けた。
至近距離で連射する。
黒い鱗が砕け、統括官の腕が下がった。
鬼平は右の砲架を振り上げ、統括官の顎へ叩き込む。
竜の巨体が後ろへよろめいた。
「部下と戦っている」
鬼平は踏み込んだ。
左の弾幕で翼の付け根を削り、右の砲架で脚を払う。
統括官が膝をついた。
しかし、胸部の赤い魔石から魔力が噴き出し、黒い翼が再生する。
「無駄だ!」
統括官が笑う。
「我が身体は竜脈そのものだ!」
鬼平は周囲を見た。
胸部魔石から伸びる魔力管は四本。
三本は転移門へ。
一は魔石核へ。
管には、それぞれ逆流防止の弁がついている。
統括官の身体へ魔力を送り込んでいるのは、胸部の魔石ではない。
四本の管の途中にある増幅器だ。
増幅器を止めれば、再生能力を奪える。
しかし、増幅器は統括官の背中にある。
正面からは撃てない。
「日野、高瀬」
鬼平が叫んだ。
「左右から回れ」
「背中を狙うんですか?」
「増幅器を探せ」
日野と高瀬が左右へ散る。
統括官は二人を追おうとした。
鬼平は左のガトリング砲を撃ち、統括官の足元へ弾幕を集中させる。
床が削れ、統括官の進路が塞がる。
「この《ピー》がァッ!」
鬼平の第一の暴言が、中枢部に響いた。
統括官が咆哮する。
黒い魔力の刃が鬼平へ飛んでくる。
鬼平は右のガトリング砲を振り、刃を砲身で受け流した。
右の砲身が大きく歪む。
「軍曹、増幅器を確認!」
日野が叫んだ。
「背中の中央、竜骨の間です!」
「撃てるか!」
「統括官の翼が邪魔です!」
鬼平は右の砲身を見た。
対竜弾は残り一発。
撃てば増幅器を壊せる。
しかし、発射すれば右の砲身も限界を迎える。
その一発を使うべきか。
鬼平は統括官の背後にある増幅器を見た。
左の通常弾では、翼に阻まれる。
右の対竜弾なら、竜骨を貫いて増幅器を破壊できる。
「右で撃つ」
ノアが叫んだ。
「砲身が持たない!」
「一発だけだ」
「撃った後は、右が完全に壊れるぞ!」
「それでも撃つ」
鬼平は右のガトリング砲を構えた。
対竜弾の魔力が砲身へ集まる。
統括官が鬼平へ向き直った。
「その砲で我を撃つか! 撃てば門が崩れるぞ!」
「お前は撃たない」
鬼平は統括官の背後を見た。
「増幅器を撃つ」
統括官が翼を広げた。
増幅器を完全に隠す。
その瞬間、鬼平は左のガトリング砲を撃った。
弾幕が翼の表面へ集中する。
統括官は翼で弾丸を受け止めた。
翼が鬼平の視界を覆う。
鬼平は右の砲を持ち替えた。
砲身を地面へ向け、砲架を床へ叩きつける。
衝撃で鬼平の身体が跳ねた。
左の弾幕を撃ちながら、身体を半回転させる。
翼の下から、増幅器が見えた。
鬼平は右のガトリング砲を撃った。
一発の黒い対竜弾が、竜骨の隙間を通り抜けた。
背中の増幅器へ命中する。
黒い光が弾けた。
統括官の翼が停止する。
再生していた鱗が、次々と剥がれ落ちた。
右の砲身に、亀裂が走る。
竜鱗が砕け、砲口が赤く焼けた。
「右の砲、対竜弾機構が破損!」
ノアが叫んだ。
「もう対竜弾は撃てない!」
「必要ない」
鬼平は右のガトリング砲を握り直した。
「増幅器は壊れた」
統括官は膝をついた。
だが、胸部の魔石はまだ輝いている。
三つの転移門へ送られている魔力も止まっていない。
再生が止まっただけで、竜脈を操る力は残っていた。
「貴様は、門を止められない!」
統括官が両手を広げる。
三つの転移門が、さらに大きく開いた。
元の世界の空に、赤い亀裂が伸びる。
山中、市街地地下、沖合。
それぞれの門から、異世界の軍勢が現れ始めた。
元の世界側の部隊から、緊急通信が入る。
『山中門、敵増援を確認!』
『市街地地下門、魔導兵が再出現!』
『海上門、巨大な竜影を確認!』
鬼平は通信を聞いた。
統括官を倒している間に、門が開ききれば、元の世界が再び戦場になる。
「軍曹、門を閉じるには統括官の魔力管を切る必要があります!」
リーゼが叫んだ。
「しかし、胸部魔石を破壊すると逆流が起きます!」
「胸を撃たない」
鬼平は統括官の身体を見た。
増幅器は破壊した。
残る魔力管は四本。
三本は転移門へ。
一つは魔石核へ。
四本すべてを同時に切れば、魔力の流れは止まる。
左のガトリング砲で三本を狙う。
右の砲は壊れている。
だが、近距離で管を切断できる。
「リーゼ、管の順番を教えろ」
「左から、山中、市街地、海上、そして魔石核です!」
「右の管を切る」
「魔石核への管を?」
「最後に」
鬼平は統括官へ向かって走った。
統括官が爪を振り下ろす。
鬼平は右のガトリング砲で受け止めた。
爪が砲身へ食い込み、右の砲が大きく軋む。
鬼平は左のガトリング砲を統括官の左脇へ向けた。
通常弾で、山中門へ繋がる管を撃つ。
管の外装を削り、接続部だけを破壊する。
一本目が切れた。
山中の門が揺らいだ。
グラウ将軍の声が無線に入る。
『こちら山中! 門の出力が落ちた! 敵増援が止まっている!』
統括官が鬼平を押し倒そうとする。
鬼平は右の砲架を持ち上げ、統括官の腹部へ叩き込んだ。
黒い鱗が砕ける。
左のガトリング砲で二本目の管を撃つ。
市街地地下へ繋がる管が切れた。
『地下門の魔力が低下! こちらで押し返します!』
日野の声が響く。
統括官が黒い炎を吐いた。
鬼平は右の砲を盾にし、炎を受け止めた。
右の砲身が赤く染まる。
砲の内部から、金属の破断音が響いた。
鬼平は左のガトリング砲を三本目の管へ向けた。
海上門へ繋がる管を撃つ。
管の接続部が破裂し、魔力の流れが止まった。
『海上門、出力低下! 竜影が消えました!』
セレナの声が入る。
残るは、魔石核へ繋がる一本。
これを切れば、三つの門は閉じる。
しかし、魔石核への管は統括官の胸部魔石のすぐ下を通っている。
左のガトリング砲で撃てば、胸部魔石へ当たる可能性がある。
右の砲で叩けば、砲身が砕ける。
「右で切る」
鬼平は壊れたガトリング砲を両手で握った。
統括官の爪を押し返す。
胸部魔石の下へ滑り込む。
竜脈管が赤く輝いている。
鬼平は右の砲架を、管の接続部へ叩きつけた。
一撃。
管がへこむ。
二撃。
黒い魔力が噴き出す。
三撃。
接続部が砕けた。
魔石核へ向かっていた魔力が止まる。
三つの転移門が、一斉に縮み始めた。
統括官が叫んだ。
「門を閉じるな!」
鬼平は統括官の腕を右の砲身で押さえた。
左のガトリング砲を、統括官の胸部魔石ではなく、足元の竜脈固定具へ向ける。
連射。
統括官の身体を支えていた魔力の足場が崩れた。
怪物の巨体が膝をつく。
「部下を勝手に使うんじゃねえ、この《ピー》が!」
第二の暴言。
鬼平は右のガトリング砲を振り上げた。
砲架が統括官の顎へ直撃する。
統括官の頭部が跳ね上がった。
さらに左のガトリング砲で、腕の魔力装具を撃ち抜く。
統括官の爪が消えた。
翼が崩れ、黒い鱗が床へ落ちていく。
三つの門が、次々に閉じていく。
元の世界側から、各部隊の報告が届く。
『山中門、閉鎖確認!』
『市街地地下門、閉鎖確認!』
『海上門、完全消失!』
統括官は、まだ動いていた。
胸部魔石だけが、異様な赤い光を放っている。
「門が閉じても、竜脈は我のものだ!」
統括官の胸部魔石に、黒い亀裂が走った。
魔石が暴走し始める。
リーゼが叫んだ。
「胸部魔石が限界です! このままでは中枢全体が爆発します!」
「撃てばいい」
「胸を撃ってはいけません!」
「撃たない」
鬼平は右の壊れたガトリング砲を見た。
砲身は、完全に歪んでいる。
発射はできない。
対竜弾も使えない。
だが、砲架はまだ持てる。
鬼平は統括官の胸部魔石を直接壊さず、その周囲にある魔力吸収用の装甲を右の砲で殴り始めた。
一撃。
二撃。
三撃。
装甲が剥がれ、胸部魔石が露出する。
統括官が爪を振り回した。
鬼平は左のガトリング砲で爪を撃ち落とす。
ハイテンションスキルはまだ続いている。
魔力弾は尽きない。
砲身も壊れない。
鬼平は、胸部魔石を撃たずに周囲だけを撃った。
魔石を固定していた四本の金属枠が砕ける。
胸部魔石が統括官の身体から浮き上がった。
統括官の魔力が急速に弱まる。
「そんな方法で……魔石を外すだと……」
「壊していない」
鬼平は浮かんだ魔石を左手で掴んだ。
魔石は熱く、強い魔力を放っている。
鬼平の刻印が、魔石へ触れた。
赤い光が黒へ変わっていく。
魔石に蓄積された竜脈の魔力が、鬼平の刻印へ流れ込む。
ハイテンションスキルの光が、さらに強くなった。
鬼平の腕に血管が浮かぶ。
身体が、魔力を受け止めきれず震え始める。
「軍曹、離してください!」
リーゼが叫んだ。
「その魔石は、竜脈の核に近い力を持っています!」
「これを使う」
「何に?」
「門を閉じる」
鬼平は魔石を握ったまま、黒城塞の中枢にある魔石核へ歩いた。
統括官が最後の力で立ち上がる。
「返せ! それは教会のものだ!」
「違う」
鬼平は振り返った。
「竜のものだ」
統括官が突進する。
鬼平は右のガトリング砲を振り上げた。
「撃てなくても……」
右の砲架が統括官の胸部へ直撃する。
「殴る!」
第三の暴言。
統括官が魔石核の前へ吹き飛ぶ。
鬼平は左のガトリング砲で、統括官の背後にある魔力固定具を撃ち抜いた。
魔石核から統括官へ伸びていた最後の魔力線が切れた。
統括官の身体が崩れた。
鬼平は握っていた赤黒い魔石を、魔石核の接続部へ押し当てた。
黒竜の血が封じられた魔石が、竜脈の流れを吸い始める。
暴走していた赤い光が、ゆっくりと収束していく。
元の世界へ伸びていた三つの門の残光が、完全に消えた。
黒城塞の中枢に、静けさが戻った。
鬼平は魔石を握ったまま、膝をついた。
左のガトリング砲の回転が止まる。
白い魔石が赤へ戻った。
ハイテンションスキルが終了した。
右のガトリング砲は、砲身が完全に壊れていた。
竜鱗はほとんど剥がれ、砲口は歪んでいる。
ノアが駆け寄った。
「右の砲は、もう撃てない」
「殴れるか」
「……それだけなら、まだ使える」
「十分だ」
リーゼが魔石核を確認する。
「竜脈の流れが安定しています。門は閉じました」
「異世界側の門は」
「すべて停止。元の世界への接続もありません」
鬼平は倒れた統括官を見た。
黒い鱗は消え、人間の姿へ戻っている。
胸部に魔石はない。
教会の最高司祭直属だった男は、意識を失っていた。
日野が統括官を拘束する。
「生きています」
「連れて帰る」
「元の世界へ?」
「ああ。聞くことがある」
中枢の外から、異世界兵たちの声が聞こえた。
城塞の各所で戦闘が止まり始めている。
転移門が閉じたことで、元の世界からの増援も、異世界側からの増援も来られなくなったのだ。
教会軍は孤立した。
グラウ将軍が中枢へ入ってきた。
「城塞の外周を確保した。敵の一部が降伏している」
「竜騎士は」
セレナが続いて入ってくる。
「三体の竜のうち、一体は逃走。二体は負傷して着陸しました。竜騎士は拘束しています」
「竜は生きているか」
「はい」
「殺すな」
鬼平が言った。
「竜を使っていた連中だけを捕まえる」
グラウ将軍は頷いた。
「了解した」
黒城塞の中枢には、異世界と元の世界を繋いでいた装置が残っている。
完全に破壊すれば、安全になる。
しかし、竜域へ戻る道も失われる。
ヴァルグリムや、牙の森の竜たちと再び会うこともできなくなる。
鬼平は魔石核を見た。
「この中枢を使えば、竜域へ戻れるか」
リーゼが調べる。
「門を開くことは可能です。ただし、今の状態では不安定です。竜脈を直接消費する必要があります」
「他の方法は」
「ありません」
ノアが右の壊れたガトリング砲を調べながら言った。
「竜域へ戻るなら、まず右の砲を直す必要がある。次に、対竜弾の材料も必要だ」
「竜の鱗は」
「ほとんど砕けた」
「血は」
「魔石へ流し込んだ」
鬼平は右の砲を見た。
再び撃てなくなった。
しかし、左の砲は撃てる。
右は殴れる。
そして、竜域へ戻る道は残っている。
元の世界の三つの門は閉じた。
だが、黒城塞の中枢は停止しただけで、完全には破壊されていない。
教会の残党もいる。
王国軍の本隊も、異世界のどこかに残っている。
ヴァルグリムたちも、鬼平たちを待っている。
鬼平は倒れた統括官を見下ろした。
「こいつを連れて帰る」
日野と高瀬が統括官を立たせる。
統括官は意識を取り戻し、鬼平を睨んだ。
「なぜ……門を完全に破壊しなかった……」
「帰る道を残した」
「竜域へ戻るつもりか」
「ああ」
「竜の血を得て、また武器を作るつもりか」
「砲を直す」
統括官が笑った。
「竜域の竜たちは、貴様を受け入れない。貴様は人間だ。竜を殺す兵器を持つ者だ」
鬼平は黒竜の血を封じた魔石が置かれた魔石核を見た。
「それでも行く」
中枢の上空で、黒城塞の天井が開いた。
遠くの空に、巨大な黒い影が現れる。
黒竜ヴァルグリムだった。
竜域からこちら側へ渡ったのではない。
門が閉じた後も、黒城塞の上空へ姿を現したのだ。
ヴァルグリムは、竜脈を通じて鬼平へ声を届けた。
『刻印の兵士よ。よく止めた』
鬼平は空を見上げた。
「門を完全に閉じた」
『竜脈は傷ついていない』
「統括官が壊した分は」
『我らが戻す』
「竜域へ戻れるか」
『来るならば、道を作る』
鬼平は壊れた右のガトリング砲を持ち上げた。
「砲を直す」
『また竜を撃つか』
「敵だけを撃つ」
『ならば、竜域の門で待つ』
ヴァルグリムの姿が、黒い雲の向こうへ消えていく。
リーゼが魔石核を見た。
「竜脈との接続が、少しだけ残っています。完全な門ではありませんが、帰還用の通路を作れそうです」
「いつ」
「魔石核の安定化に三日。門を開くには、その後さらに準備が必要です」
「三日か」
鬼平は元の世界側から届いた通信を聞いた。
山中の門は閉鎖。
市街地の門も閉鎖。
海上の門も消滅。
元の世界への侵攻は止まった。
だが、捕虜の救出、教会軍の処理、黒城塞の調査、右のガトリング砲の修理が残っている。
「三日でやる」
ノアが呆れた顔をした。
「三日で何をだ」
「全部」
「また無茶を言っているな」
「時間がない」
「時間を作るのが整備だ」
ノアは壊れた右の砲を見た。
「竜域へ戻るなら、今度は完全な砲身を作る。竜鱗だけではなく、こちらの世界の合金と異世界の古代金属を使う」
「撃てるか」
「撃てるようにする」
「対竜弾は」
「ヴァルグリムに、もう一滴頼め」
鬼平は頷いた。
「頼む」
黒城塞の中枢で、鬼平たちは次の作戦を決めた。
元の世界の三つの門は封鎖した。
教会軍の中枢は制圧した。
竜脈統括官は捕虜となった。
しかし、異世界にはまだ王国軍と教会軍の本隊が残っている。
竜域では、ヴァルグリムたちが待っている。
そして、壊れた右のガトリング砲を完全に修理しなければならない。
鬼平は左のガトリング砲を肩へ担ぎ、右の砲を引きずった。
「帰るぞ」
部下たちが後ろへ続く。
黒い城塞の外では、異世界の竜が空を飛んでいる。
その下で、元の世界の兵士と獣人兵が並んで歩いていた。
二つの世界の軍勢が、初めて同じ方向へ進んでいる。
鬼平軍曹は、壊れた右のガトリング砲を見た。
撃てない。
しかし、まだ終わっていない。
「次は、完全に直す」
左のガトリング砲の魔石が、赤く回転を始めた。
黒城塞の奥で、竜域へ戻るための新たな門が、ゆっくりと準備されていた。




