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鬼平軍曹の魔石ガトリング無双  作者: しょぼんスライム


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第21話 軍曹、竜脈を守って撃つ

竜域の中心部に、魔石ガトリング砲の回転音が響いた。


 鬼平たちの前には、教会と王国軍の混成部隊が展開している。


 その中央には、異世界への帰還門を制御する古代装置。


 装置の周囲には、竜脈から直接魔力を吸い上げる管が何本も接続されていた。


 赤い光が管の中を流れ、魔導装置へ集まっている。


 竜域の中心柱が、脈打つように明滅していた。


「竜脈の吸収が進んでいます」


 リーゼが叫んだ。


「このままでは、竜域全体の魔力が枯れます!」


 鬼平は装置を見た。


 敵の数はおよそ二百。


 中央に教会の黒装束。


 左右に王国軍の盾兵と魔石銃兵。


 後方には大型の魔導砲が三基。


 そして帰還門の周囲に、竜脈を吸い上げる魔力管が十二本。


 撃てば、敵を倒せる。


 だが、竜脈に接続された管へ弾丸が当たれば、竜域全体が暴走する可能性がある。


 左のガトリング砲は撃てる。


 右のガトリング砲は壊れているが、重さは残っている。


「敵だけを撃つ」


 鬼平が言った。


 黒竜ヴァルグリムが、鬼平の隣で翼を広げる。


『竜脈に触れた管を傷つけるな。あれが破裂すれば、帰還門も竜域も消える』


「敵の指揮官は」


『中央の黒衣。人間の王国軍を操っている』


「分かった」


 鬼平は左のガトリング砲を構えた。


 魔石は赤い。


 通常射撃が可能な状態だ。


 教会の黒衣が手を掲げる。


「異界の兵士よ! その兵器を下ろせ!」


 声が魔力で増幅され、空洞全体に響いた。


「貴様らが帰還門を奪えば、竜脈は死ぬ。元の世界へ帰りたいなら、我々に従え!」


 鬼平は黒衣を見た。


「部下を人質にして、帰る道を塞いだのはお前らだ」


「必要な犠牲だ!」


「その言葉は聞き飽きた」


「竜脈を守るために、異界の兵士をこの世界へ残す。それが最善だ!」


「最善かどうかは、こっちで決める」


 黒衣が杖を振った。


 王国軍の魔石銃兵が一斉に射撃する。


 赤い魔力弾が、鬼平たちへ飛んできた。


 鬼平は左のガトリング砲を横に振った。


 弾幕が飛来する魔力弾を次々と撃ち落とす。


 赤い火花が空中で弾ける。


 その隙に、グラウ将軍が獣人兵へ命令を出した。


「左右の盾兵を押し返せ! 竜脈管へ近づけるな!」


 獣人兵が前進し、王国軍と衝突する。


 日野、高瀬、佐久間も魔石銃を構えた。


 負傷は残っている。


 だが、三人とも自分の足で立っている。


「鬼平軍曹、中央への射線を作ります!」


 高瀬が叫んだ。


「左翼、抑えます!」


 日野が続く。


「俺は敵の通信を切ります!」


 佐久間の魔導装具から、黒い魔力が広がった。


 教会軍の通信術式が乱れ、命令が混線する。


 鬼平は中央の黒衣へ照準を向けた。


 だが、黒衣の周囲には竜脈管が密集している。


 直接撃てば、管を巻き込む。


 鬼平はまず、黒衣の足元へ弾丸を撃ち込んだ。


 地面が砕け、黒衣が後退する。


 次に、左右の兵士の武器を撃つ。


 剣が折れ、盾が弾かれ、魔石銃が破裂する。


 敵兵は倒れるが、竜脈管は傷つかない。


 鬼平は一発ごとに照準を変え、敵の戦闘能力だけを奪っていく。


「撃て! 撃ち続けろ!」


 黒衣が叫ぶ。


 大型魔導砲が、鬼平へ向けて旋回した。


 砲口に黒い光が集まる。


「左方から大型砲!」


 セレナが叫んだ。


 鬼平は砲台へ銃口を向けた。


 だが、砲台の背後には竜脈管がある。


 砲台本体を撃てば、弾丸が管へ抜ける可能性がある。


 鬼平は砲身を少し上へ向けた。


 照準は砲台ではなく、砲台を支える床の接続部。


 連射。


 床が削れ、魔導砲の台座が傾いた。


 砲口が空を向き、発射された黒い光が竜域の天井へ飛んで消える。


「一基、無力化」


 鬼平は次の砲台へ照準を移した。


 敵の魔導師が鬼平へ向けて拘束魔法を放つ。


 青い鎖が左腕に絡みついた。


 ガトリング砲の発射が止まる。


 敵兵が一斉に近づいてきた。


 鬼平は左の砲身を地面へ突き立て、右手の壊れたガトリング砲を振り上げた。


 近づいた兵士へ、右の砲架を叩き込む。


 一人。


 二人。


 三人。


 撃てない砲が、接近戦で敵を押し返す。


 鬼平は左腕に絡んだ鎖を、砲身で地面へ押しつぶした。


 術式が砕け、拘束が外れる。


 左のガトリング砲を持ち上げた。


「撃てない武器に近づくな!」


 鬼平は砲架を横薙ぎに振った。


 敵兵がまとめて吹き飛ぶ。


「殴れるからな!」


 教会の黒衣が、魔力管から直接力を吸い上げ始めた。


 黒い法衣の表面に、竜の鱗のような装甲が浮かび上がる。


「竜脈の力を、私の身体へ!」


 黒衣の身体が膨れ上がった。


 背中から黒い翼が生え、腕が竜の爪へ変化する。


 王国兵が恐怖で後退した。


「大司祭補が、竜化している……」


 リーゼが呟く。


「竜の力を人間の身体へ直接流し込んでいるのです!」


 黒衣が咆哮し、鬼平へ突進した。


 鬼平は左のガトリング砲を構え、至近距離で撃つ。


 魔力弾が黒衣の胸部へ当たる。


 黒い鱗が弾丸を弾く。


 黒衣の爪が、鬼平の肩を切り裂いた。


 鬼平は後退しながら、右のガトリング砲を振った。


 砲架が黒衣の腕へ直撃する。


 黒い爪が折れた。


 黒衣が驚愕する。


「その壊れた兵器で、私の竜装甲を破壊しただと!」


「壊れていても、重い」


 鬼平は右の砲を両手で握った。


「重ければ、殴れる」


 黒衣の翼が広がり、空中へ浮かぶ。


 上空から黒い光弾が降り注いだ。


 鬼平は左のガトリング砲で光弾を撃ち落とす。


 しかし、黒衣は光弾に隠れて接近してくる。


 鬼平の背後には、帰還門の制御装置。


 避ければ装置が壊れる。


 鬼平は右のガトリング砲を背後へ突き立て、左の砲を頭上へ向けた。


 黒衣の爪を右の砲身で受け止める。


 衝撃で砲身がさらに潰れた。


 鬼平は左のガトリング砲を黒衣の翼へ向け、連射した。


 黒い翼の付け根が削られる。


 黒衣が空中で体勢を崩した。


 鬼平は右の砲架を振り上げ、落下してきた黒衣を地面へ叩き落とす。


 竜脈の床が割れた。


「この《ピー》がァッ!」


 鬼平の声が竜域に響いた。


 左のガトリング砲の魔石が、赤から白へ変わる。


 ハイテンションスキルが発動した。


 弾薬の残量が、意味を失う。


 砲身の温度が上がらない。


 魔力弾が、通常の数倍の速度で吐き出され始めた。


 鬼平は黒衣の周囲にある竜脈管を避け、黒い装甲だけを撃ち続ける。


「オレの部下を勝手に使うんじゃねえ、この《ピー》が!」


 第二の暴言。


 弾幕が黒衣の翼を完全に破壊した。


 黒衣が地面へ落ちる。


 しかし、黒衣は竜脈管からさらに魔力を吸い上げた。


 黒い装甲が再生する。


「無駄だ! この竜域の力がある限り、私は倒れない!」


 鬼平は黒衣の周囲を見た。


 竜脈管は十二本。


 黒衣の身体へ繋がる管は三本。


 その三本を外せば、再生は止まる。


 だが、管そのものを撃ってはいけない。


 鬼平は管を支える金属枠へ照準を合わせた。


 ハイテンションスキル中の魔力弾なら、細かな制御ができる。


 一本目の枠を撃つ。


 二本目。


 三本目。


 金属枠が外れ、竜脈管が黒衣の身体から離れた。


 黒い装甲の再生が止まる。


 鬼平はさらに撃ち、黒衣の腕と脚を地面へ固定した。


「まだだ!」


 黒衣が叫ぶ。


「私が死ねば、帰還門も壊れる!」


「なら、生かす」


 鬼平は銃口を下げた。


 黒衣が笑う。


「甘いな。私を拘束している間に、王国軍が門を破壊する!」


 鬼平は周囲を見た。


 王国軍はすでに混乱している。


 グラウ将軍率いる獣人兵が、敵の盾兵を押し返している。


 日野と高瀬が魔石銃兵を制圧している。


 佐久間の通信妨害で、教会軍の命令系統は崩壊していた。


 残る敵は、帰還門の正面にいる魔導師たちだけだ。


「日野、高瀬」


 鬼平が通信魔法へ呼びかける。


「門の正面を押さえろ」


「了解!」


「佐久間、制御装置を調べろ」


「俺が触っても大丈夫ですか?」


「壊すな」


「努力します!」


 鬼平は左のガトリング砲を、帰還門の前に立つ魔導師たちへ向けた。


 魔導師たちが結界を張る。


 鬼平は結界そのものではなく、結界を維持する魔石だけを撃った。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 結界が消える。


 魔導師たちは武器を捨てて後退した。


「第三の魔導砲!」


 セレナが叫んだ。


 最後の大型魔導砲が、鬼平へ向けて砲口を開いている。


 その背後には、中心柱から帰還門へ伸びる主幹竜脈管があった。


 砲台を撃てば、主幹管に当たる。


 鬼平は砲台を見た。


 魔力充填が進んでいる。


 撃たれれば、帰還門が破壊される。


 左のガトリング砲なら、砲弾を撃ち落とせる。


 しかし、ハイテンションスキル中の射撃は強すぎる。


 一発でも外せば、竜脈管を傷つける。


 鬼平は砲台の角度を確認した。


 砲口は、わずかに下を向いている。


 なら、砲身を上へ向ければいい。


 撃つのではなく、砲身を動かす。


 鬼平は右のガトリング砲を担いだ。


 壊れた砲を、砲台へ向かって投げる。


 片手二百キロ超の鉄塊が、回転しながら飛んでいく。


 砲架が大型魔導砲の砲身へ直撃した。


 砲口が上へ跳ね上がる。


 直後、黒い光が発射された。


 光弾は中心柱ではなく、竜域の天井へ飛んで消えた。


 魔導砲が沈黙する。


 鬼平は左のガトリング砲を撃ち続けた。


 弾幕が砲台の動力部を破壊する。


 大型魔導砲が崩れた。


 その瞬間、竜域全体が大きく揺れた。


 中心柱の赤い光が乱れる。


 帰還門の輪郭が歪み始めた。


「竜脈が不安定です!」


 リーゼが叫んだ。


「敵を倒すだけでは、もう持ちません!」


 ヴァルグリムが翼を広げた。


『中心柱が傷ついた。竜脈の流れを戻さなければ、門は崩れる』


「どうする」


『刻印の力を中心柱へ流せ』


「オレの力を?」


『貴様の刻印は、竜殺しのためだけのものではない。竜脈へ接続するための鍵でもある』


 鬼平は左のガトリング砲を見た。


 ハイテンションスキルは、まだ続いている。


 魔石は白い。


 弾は尽きない。


 砲身は壊れない。


 だが、鬼平自身の身体は限界に近づいていた。


「オレの魔力を、弾じゃなく竜脈へ流す」


『可能だ』


「それをやれば、撃てなくなるか」


『一時的にな』


「やる」


 鬼平は左のガトリング砲を中心柱へ向けた。


 リーゼが慌てる。


「撃つのですか?」


「撃たない」


 鬼平は引き金から指を離した。


 それでも、白い魔石は光り続ける。


 鬼平の手の甲から、赤い光が伸びた。


 刻印と魔石ガトリング砲、中心柱が一本の魔力線で繋がる。


 鬼平の身体から魔力が抜けていく。


 視界が暗くなった。


 膝が震える。


 それでも、鬼平は砲を離さなかった。


「この《ピー》がァッ……!」


 第三の暴言が、低く漏れた。


 魔力線が太くなる。


 中心柱の乱れた流れが、少しずつ整っていく。


 帰還門の輪郭が戻り始めた。


 しかし、敵の黒衣がまだ生きていた。


 黒い装甲を失いながらも、魔力管へ手を伸ばしている。


「門を渡すものか!」


 黒衣が最後の力で術式を起動した。


 帰還門の周囲に、黒い鎖が現れる。


 門の向こうに、元の世界の景色が映った。


 焼けた山。


 壊れた車両。


 そして、鬼平の部下たちが残した陣地。


 黒衣は門を無理やり開こうとしていた。


 竜脈の流れが再び乱れる。


 鬼平は魔力線を維持したまま、左のガトリング砲を黒衣へ向けた。


 銃口が震える。


 撃てば、中心柱との接続が切れる。


 撃たなければ、黒衣が門を奪う。


 右の砲は壊れている。


 だが、右手は空いていた。


 鬼平は中心柱との接続を左手で維持し、右手で壊れたガトリング砲を掴んだ。


 砲身は潰れている。


 銃架は歪んでいる。


 それでも、重量は残っていた。


 鬼平は黒衣へ歩いた。


 魔力線を保ちながら、片手で二百キロを超える砲を引きずる。


 黒衣が驚いた。


「何をするつもりだ!」


「撃てねえから」


 鬼平は壊れたガトリング砲を振り上げた。


「殴る」


 砲架が黒衣の術式へ直撃する。


 黒い鎖が砕けた。


 二撃目。


 黒衣の杖が折れる。


 三撃目。


 門を歪めていた魔法陣が破壊される。


 黒衣が地面へ崩れ落ちた。


「オレの帰還門を勝手に使うんじゃねえ、この《ピー》が!」


 第四の暴言。


 魔力線が安定し、中心柱の光が赤から金色へ変わった。


 帰還門が完全に開く。


 門の向こうから、風が吹き込んできた。


 元の世界の匂い。


 焼けた土と、油と、火薬の匂い。


 鬼平は一瞬だけ、元の世界へ戻ろうとした。


 だが、部下たちはまだこちら側にいる。


 帰るのは、全員でだ。


「軍曹!」


 日野が叫んだ。


「門が開きました!」


「全員、確認しろ」


 高瀬が門の向こうを覗く。


「元の世界です! 間違いありません!」


 佐久間が制御装置を確認する。


「帰還経路は維持できます! ただし、長くは持ちません!」


 鬼平は黒竜ヴァルグリムを見た。


「部下を帰せる」


『帰還門は開いた。だが、貴様はどうする』


「全員を帰す」


『貴様もか』


「最後に行く」


『貴様が最後に門を越えれば、竜域と異界の接続は切れる』


「それでいい」


『竜脈は守られる』


「部下も帰る」


 ヴァルグリムは、初めて穏やかな声を出した。


『ならば、急げ』


 鬼平たちは、負傷者から順番に帰還門へ向かった。


 獣人兵、部下たち、リーゼ、セレナ、グラウ将軍。


 ノアは最後まで修理資材を抱えている。


「それを持って帰るのか」


 鬼平が尋ねた。


「竜の鱗と牙喰らいの素材だ。貴様の砲を直す」


「元の世界で使えるか」


「魔石があれば使える」


 ノアは帰還門へ進んだ。


「貴様の世界にも、修理工房くらいあるだろう」


「ある」


「なら、そこで直す」


 鬼平は頷いた。


 残るのは鬼平と、黒竜ヴァルグリムだけになった。


 帰還門の向こうに、部下たちが待っている。


 こちら側では、教会軍が倒れ、竜脈の中心柱が安定していた。


 鬼平は二挺のガトリング砲を見た。


 左は撃てるが、魔石が白く輝いたまま。


 右は完全に壊れている。


 それでも、両手に持つ。


「ヴァルグリム」


『何だ』


「竜の血をくれ」


 黒竜が目を細めた。


『最後までそれを求めるか』


「対竜弾を作る」


『我を撃つためか』


「竜脈を傷つける奴を撃つためだ」


『我も含まれるか』


「敵になったら」


 ヴァルグリムは、巨大な爪で自分の胸部を浅く切った。


 黒い血が一滴、空中へ浮かぶ。


 それは小さな魔石の中へ収まり、鬼平の前へ飛んできた。


『一滴だけだ』


「足りるか」


『足りるように使え』


 鬼平は魔石を受け取った。


 内部に黒竜の血が封じられている。


 対竜弾の材料だ。


『貴様が竜域を守る限り、我は貴様を敵としない』


「部下を帰す」


『それを見届ける』


 鬼平は帰還門へ向かった。


 左のガトリング砲を先にくぐらせる。


 次に、右の壊れたガトリング砲を持ち上げる。


 門の境界が揺れた。


 鬼平の身体が、異世界と元の世界の間で引っ張られる。


 竜脈の力が弱まり、門が閉じようとしている。


 鬼平は右の砲架を門の縁へ突き立てた。


 壊れたガトリング砲を楔にして、門を固定する。


「まだ閉じるな」


 元の世界側から、部下たちの声が聞こえた。


「軍曹!」


「鬼平軍曹、急いでください!」


 鬼平は門の向こうへ足を進めた。


 背後で、ヴァルグリムの咆哮が響く。


『刻印の兵士よ。次に会う時、貴様は何を撃つ』


 鬼平は振り返った。


「帰る道を塞ぐ奴を撃つ」


『ならば、また来い』


 鬼平は最後に門を越えた。


 右のガトリング砲が門の縁から外れ、こちら側へ落ちる。


 門が閉じた。


 黒い亀裂が消え、竜域の中心は静けさを取り戻した。


 元の世界側では、鬼平が焼けた山の麓へ着地した。


 周囲には、帰還した部下たちがいる。


 日野、高瀬、佐久間。


 そして、異世界へ召喚されていた兵士たち。


 全員が鬼平を見ていた。


 鬼平は立ち上がり、二挺のガトリング砲を確認した。


 左は撃てる。


 右は壊れている。


 だが、黒竜の血を封じた魔石と、竜の鱗、牙喰らいの素材を手に入れた。


「帰還完了」


 鬼平が言った。


 高瀬が周囲を見た。


「軍曹、ここは本当に元の世界ですか?」


 鬼平は焼けた車両と、見慣れた軍用標識を確認した。


「ああ」


「では、これからどうします?」


 鬼平は遠くの山を見た。


 黒竜の姿は、もう見えない。


 しかし、竜域との門が閉じただけで、戦いが終わったわけではなかった。


 教会の残党。


 王国軍の古代兵器。


 元の世界に残った竜の爪痕。


 そして、修理途中の魔石ガトリング砲。


「砲を直す」


 鬼平は壊れた右のガトリング砲を肩へ担いだ。


「弾を作る」


 黒竜の血が入った魔石を握る。


「教会を止める」


 部下たちが、鬼平の後ろへ並んだ。


「それから?」


 日野が尋ねる。


 鬼平は元の世界の空を見上げた。


「異世界へ戻る」


「また行くんですか?」


「帰還門を完全に閉じる前に、竜域の借りを返す」


 鬼平の左手のガトリング砲が、静かに回転を始めた。


 その魔石は、元の世界の空気を吸って赤く輝いている。


 今度は、弾薬を使って撃つ。


 必要な時だけ、ハイテンションスキルを使う。


 そして、両手のガトリング砲を完全に直す。


 鬼平軍曹は、部下たちとともに焼けた戦場を歩き始めた。


 竜域での戦いは終わった。


 だが、異世界と元の世界を巡る戦争は、ここから始まる。

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