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鬼平軍曹の魔石ガトリング無双  作者: しょぼんスライム


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第12話 軍曹、魔石ガトリング砲を修理する

王城から脱出した鬼平たちは、夜明け前の王都を南へ進んでいた。


 王国軍と教会の追手が、すでに街の各所を捜索している。


 王都の門は閉じられていたが、ラウルが騎士団の通行証を使い、南側の小門を開けさせた。


 門番は鬼平の姿を見ると、露骨に顔を引きつらせた。


 両手に持っているのは、二挺の壊れた魔石ガトリング砲。


 右の砲身は曲がり、左の銃架には大きな亀裂が入っている。


 どちらも撃てない。


 だが、片手二百キロを超える重量は健在だった。


「その武器は、まだ使えるのか?」


 門番が恐る恐る尋ねる。


「使える」


「撃てるのか?」


「今は撃てない」


「では、何に使う?」


 鬼平は右手のガトリング砲を持ち上げた。


 門番が一歩後退する。


「殴る」


 門番は、それ以上何も聞かなかった。


 王都を出ると、街道脇に幌付きの荷馬車が停まっていた。


 荷台には、鬼平の部下たちと、修理用の資材が積まれている。


 日野、高瀬、佐久間の三人は、簡易治療を受けながら荷台に座っていた。


 元の世界から転移してきた兵士たちは、互いに身を寄せている。


 彼らは異世界へ来てから一度も、安心して眠れていない。


 鬼平は全員の顔を確認した。


 人数は十二人。


 負傷者は五人。


 重傷者は二人。


 弾薬は、元の世界から持ち込まれたものが少量。


 食料は三日分。


 水は一日半分。


 そして、魔石ガトリング砲は二挺とも故障。


「軍曹」


 高瀬が呼びかけた。


「王都から逃げてきたばかりなのに、もう作戦会議ですか?」


「戦場では、逃げた後に数える」


 鬼平は荷台に地図を広げた。


「王都へ戻る道は使えねえ。教会と王国軍が封鎖する」


 ラウルが地図を覗き込んだ。


「西へ向かえば、獣人連邦の領域へ入れる。王国軍も簡単には手を出せない」


「東は?」


「魔王領へ続いている。人族の兵士が入れば、敵と見なされる」


「南は」


「海です」


 リーゼが答えた。


「ただし、南の港には教会の監視所があります」


 鬼平は地図上の西側を指で叩いた。


「西へ行く」


「獣人連邦へ逃げるのですか?」


「逃げるんじゃねえ」


 鬼平は壊れた右のガトリング砲を見た。


「武器を直す」


「修理できる場所があるのですか?」


「ノアがいる」


 鉱山の魔石鍛冶師、ノア・クレイヴ。


 鬼平のガトリング砲を改修し、黒魔石の扱い方を研究していた男だ。


 ノアなら、この壊れた兵器を再び撃てるようにできるかもしれない。


 問題は、鉱山へ戻る道が教会に監視されていることだった。


「鉱山は王都の南東です」


 リーゼが言った。


「教会が最初に封鎖するでしょう」


「だから西へ行く」


「西へ行ってから、鉱山へ向かうのですか?」


「ああ。追手を引きつける」


 ラウルが鬼平を見た。


「貴様は、王都から逃げるだけでなく、わざと遠回りをするつもりか」


「教会はオレを追う」


「その間に、別の場所へ移動する?」


「兵士なら、敵の目を動かす」


 ラウルはしばらく黙った。


 やがて、地図上の西側へ視線を落とした。


「獣人連邦の首都、ヴァルナには古代魔導兵器の修理工房がある。そこなら、兵器の修復と魔石の補給ができる可能性がある」


「知っているのか」


「王国騎士団の情報網を甘く見るな」


「なら、そこへ行く」


「ただし、獣人連邦は人族を信用していない。特に王国軍を嫌っている」


「オレは王国軍じゃねえ」


 ラウルが苦笑した。


「貴様は、王国騎士団の馬車に乗っている」


「借りているだけだ」


「その理屈で通るといいな」


 荷馬車は西へ向かって走り始めた。


 鬼平は御者台に座り、壊れたガトリング砲を荷台の上で固定する作業をしていた。


 撃てない武器でも、移動中に転がれば人が潰れる。


 重量兵器の運搬には、固定具が必要だった。


 鬼平は縄の結び目を確認し、荷台の板を叩いて強度を確かめる。


「軍曹、休んでください」


 日野が言った。


「負傷者に言われたくねえ」


「軍曹も負傷しています」


「動ける」


「それは、休まなくていい理由にはなりません」


 鬼平は返事をしなかった。


 右肩が痛い。


 左手の指先は痺れている。


 脇腹の傷は治癒魔法で塞がっているが、内部には鈍い痛みが残っていた。


 それでも、目を閉じる気にはなれない。


 王都から追手が来る。


 部下を狙う者がいる。


 黒竜は元の世界へつながる門を知っている。


 敵は多い。


 武器は壊れている。


 だからこそ、休む前にやることがある。


 鬼平は左のガトリング砲の接続部を開いた。


 内部の魔石は割れていたが、完全に砕けてはいない。


 砲身の回転機構には異物が詰まり、冷却管の一部が歪んでいる。


 弾薬を撃てない理由を、鬼平は一つずつ確認した。


「直せそうですか?」


 リーゼが隣から覗き込んだ。


「左は直せる」


「右は?」


「右も直す」


「違いを聞いているのですが」


「撃てるまで直す」


 鬼平は工具を取り出した。


 異世界の兵器に、現代の工具は完全には合わない。


 それでも、ボルトを緩め、砲身の歪みを確認し、破損した部品を外していく。


 リーゼは作業を見ながら、魔法で金属の状態を調べていた。


「右の砲身は、魔力の流路が潰れています」


「通せるか」


「魔法で補修すれば可能です。ただし、出力を上げると再び破損するでしょう」


「出力を上げなきゃ、ドラゴンには届かねえ」


「黒竜と戦うつもりですか?」


「戦う」


「今の状態で?」


「今のままじゃねえ」


 鬼平は砲身を外した。


「直す」


 部下たちは、その言葉を聞いて黙り込んだ。


 元の世界で鬼平が「直す」と言った時、それは必ず実行を意味した。


 銃器が壊れていれば直す。


 車両が動かなければ直す。


 通信が途絶えれば、線をつなぐ。


 直らない場合は、別の方法を考える。


 鬼平にとって、故障は終わりではない。


 次の手段を探すための情報だった。


 昼過ぎ、街道の前方に倒木が見えた。


 ラウルが手を上げ、馬車を止める。


「待ち伏せだ」


 鬼平は即座に荷台から降りた。


 周囲の森を確認する。


 鳥の声がない。


 風が止まっている。


 倒木の向こうに、人の気配が複数ある。


「数は?」


 ラウルが尋ねた。


「二十以上」


「教会か?」


「分からん」


 鬼平は右のガトリング砲を持ち上げた。


 撃てない。


 だが、戦える。


「負傷者は荷台の中央へ。日野、高瀬、佐久間は護衛」


「軍曹は?」


「前に出る」


 森の中から声がした。


「鬼平玄蔵! 王都反逆罪により、貴様らを拘束する!」


 姿を現したのは、王国軍の兵士たちだった。


 先頭にいるのは、赤いマントを着た男。


 王国の紋章を身に着けている。


「俺は王国軍南部方面隊、グレン大佐だ。貴様らの身柄を確保する」


 ラウルが前へ出た。


「グレン大佐、私は王国騎士団のラウル・グランツだ。これは正規の護送任務だ」


「ラウル、貴様は王国命令に背いた。武器を捨てろ」


「命令書はあるのか?」


「王都からの口頭命令だ」


「正式な命令書がなければ、拘束には応じられない」


 グレン大佐は鬼平を睨んだ。


「異世界人をかばうか。教会は、貴様らを反逆者として扱うぞ」


「教会の命令を受けるのは、王国軍ではない」


「黙れ!」


 大佐が手を上げた。


 兵士たちが魔石銃を構える。


 鬼平は兵士の配置を見た。


 正面に十五人。


 森の左右に弓兵。


 背後に魔導師が三人。


 だが、殺気が弱い。


 本気で攻撃するつもりなら、もっと近づいている。


 彼らは鬼平を捕らえたいのだ。


「生け捕りか」


 鬼平が呟いた。


「何?」


 大佐が聞き返す。


「撃つな。殺すな。そう命令されている」


 鬼平は部下へ向き直った。


「全員、動くな」


 高瀬が驚いた。


「降伏するんですか?」


「違う」


 鬼平は壊れたガトリング砲を握り直した。


「弾を使わずに突破する」


「弾を使わない?」


「壊れている」


「それは知っています」


 鬼平は兵士たちへ歩き出した。


 グレン大佐が叫ぶ。


「止まれ!」


 鬼平は止まらない。


「警告する! 武器を置け!」


 鬼平は右のガトリング砲を持ち上げた。


 兵士たちの槍が震える。


「撃てない」


 鬼平は言った。


「だが、殴れる」


 兵士たちが一斉に踏み込んだ。


 鬼平は砲架を横に振った。


 先頭の盾兵が、盾ごと吹き飛ぶ。


 続く兵士の槍を砲身で受け、柄をへし折る。


 左のガトリング砲を肩から下ろし、地面へ叩きつける。


 衝撃で兵士たちの足元が揺れ、隊列が崩れた。


 鬼平は一人ずつ殴るのではない。


 隊列を壊し、動けなくし、武器を捨てさせる。


 戦場の基本だった。


「魔法を使え!」


 グレン大佐が叫ぶ。


 後方の魔導師たちが、拘束魔法を展開する。


 青い鎖が鬼平の両足へ絡みついた。


 鬼平は右のガトリング砲を地面へ突き立て、身体を支えた。


 鎖を引きずりながら、前へ進む。


「なぜ動ける!」


 魔導師が叫ぶ。


「足が止まるまで、歩く」


 鬼平は左の砲架を振り上げた。


 魔導師へ向かって投げる。


 重量兵器が地面を削りながら飛び、魔法陣の中心へ突き刺さった。


 拘束魔法が崩れる。


 兵士たちは恐怖で後退した。


 グレン大佐が剣を抜き、鬼平へ迫る。


「貴様、王国軍を舐めるな!」


 鬼平は砲身で剣を受け止めた。


 大佐の腕力は強い。


 だが、武器の重量が違う。


 鬼平は剣を押し返し、砲架を大佐の胸へ叩き込んだ。


 大佐の身体が地面を転がる。


 鬼平はその剣を拾い上げ、遠くへ投げた。


「死にたくなければ、立つな」


 大佐は咳き込みながら鬼平を見た。


「なぜ殺さない……」


「王国軍だからだ」


「教会の敵だろう!」


「教会と軍は違う」


 鬼平は周囲の兵士たちを見た。


「命令に従っているだけの兵士を、無駄に殺す理由はない」


 ラウルが鬼平の隣へ立った。


「聞いたな。武器を捨てろ。これ以上戦えば、貴様らの負けだ」


 兵士たちは、ゆっくりと武器を置いた。


 グレン大佐も抵抗をやめた。


「教会は、貴様らを逃がさない」


「追ってくるなら、撃つ」


「武器は壊れているだろう」


 鬼平は壊れたガトリング砲を見た。


「直す」


 大佐は、鬼平の目を見て黙った。


 追手を拘束し、彼らの食料と魔石を回収した。


 鬼平は奪った魔石を一つずつ確認する。


 粗悪品が多い。


 ガトリング砲の動力には使えない。


 だが、冷却魔法や照明には使える。


「魔石を取るのですか?」


 リーゼが尋ねた。


「必要だ」


「それは王国軍の物です」


「戦場で置いていった物は、拾った側が使う」


「それは軍の規則ですか?」


「オレの規則だ」


 夕方、荷馬車は森の中へ入った。


 街道を外れ、追跡を避けるための古い林道を進む。


 鬼平は荷台の上で、ガトリング砲の修理を続けていた。


 ノアがいないため、作業は遅い。


 リーゼが魔力管を補修し、高瀬と日野が現代の工具を使って砲身を固定する。


 佐久間は魔導装具の残骸から、使えそうな制御部品を外していた。


「その部品を使うのか」


 鬼平が尋ねる。


「俺の装具に使われていた制御核の一部です。魔力を安定させる機能があります」


「武器に組み込めるか」


「分かりません。ただ、普通の魔石よりは相性がいいはずです」


「試す」


 佐久間が部品を差し出した。


 鬼平は左のガトリング砲の接続部へ取り付けた。


 リーゼが補助魔法を使う。


 魔石が弱く光った。


 砲身が、わずかに回転する。


「動いた」


 日野が声を上げる。


「射撃できるか?」


 鬼平は引き金を握った。


 魔力弾が一発だけ、空へ飛んだ。


 遠くの木の枝を吹き飛ばす。


 全員が黙った。


 鬼平は砲身を確認した。


「左は、短時間なら撃てる」


「一発だけですか?」


「今はな」


 鬼平は右のガトリング砲を見た。


 右は、まだ完全に沈黙している。


「右は?」


「右は、部品が足りません」


 リーゼが答えた。


「砲身も交換しなければいけません」


「何が必要だ」


「古代金属。高純度の黒魔石。竜の鱗。あと、竜脈に耐える冷却管です」


 鬼平はしばらく黙った。


「竜の鱗は、どこにある」


「竜域へ行かないと、手に入らないでしょう」


「なら、竜域へ行く」


 高瀬が思わず笑った。


「修理のためにドラゴンの巣へ行くんですか?」


「武器を直すためだ」


「それ、普通は逆ですよ。ドラゴンを倒すために武器を直すんです」


「どっちでもいい」


 鬼平は砲身を固定した。


 その時、森の奥から低い咆哮が響いた。


 馬が暴れ、荷車が止まる。


 鬼平は即座に右のガトリング砲を掴んだ。


 撃てない。


 だが、武器として構える。


 森の闇から、巨大な獣が現れた。


 黒い毛皮。


 四本の脚。


 額に一本の角。


 その背後には、同じ獣が十体以上いる。


 ラウルが剣を抜いた。


「魔獣の群れだ」


 リーゼが杖を構える。


「この数では、馬車を守りきれません!」


 鬼平は獣の動きを見た。


 群れは馬車を囲もうとしている。


 しかし、先頭の個体だけが他より大きい。


 指揮個体だ。


 鬼平は左のガトリング砲を構えた。


 魔石残量は少ない。


 発射できるのは数発だけ。


 鬼平は一発目を撃った。


 魔力弾が先頭個体の角を撃ち砕く。


 獣が怯み、群れの動きが止まる。


 鬼平は二発目を撃たなかった。


「走れ」


 御者へ命じる。


 馬車が動き出す。


 群れが追いつこうとする。


 鬼平は荷台から飛び降り、壊れた右のガトリング砲を両手で構えた。


「軍曹!」


 高瀬が叫ぶ。


「撃てる弾は、あと何発ですか!」


「一発か二発」


「では、どうするんですか!」


 鬼平は迫る魔獣へ向かって歩いた。


「一発撃つ」


 左の砲身が回転する。


 最後の魔力弾が、群れの前方へ着弾した。


 土煙が上がり、魔獣たちの視界を塞ぐ。


 鬼平は煙の中へ踏み込んだ。


 右の撃てないガトリング砲を振り上げる。


 先頭の魔獣へ、砲架を叩きつけた。


 骨が砕け、獣が倒れる。


 二体目が飛びかかってくる。


 鬼平は砲身で受け止め、そのまま横へ投げ飛ばした。


 三体目には、左のガトリング砲を直接ぶつける。


 発射機構は沈黙したが、重量は健在だ。


 魔獣が地面を転がる。


 鬼平は両手のガトリング砲を交互に振るった。


 撃てない。


 だから、殴る。


 殴れない距離の敵だけ、残った魔力弾で撃つ。


 弾と鉄塊を使い分け、鬼平は魔獣の群れを押し返していく。


 やがて、群れは逃げ始めた。


 鬼平は追わなかった。


 弾薬がない。


 負傷者もいる。


 追撃する理由はなかった。


 鬼平は荷馬車へ戻った。


 右手のガトリング砲の砲身には、魔獣の血が付着している。


 リーゼがそれを見て、顔をしかめた。


「……修理する前に、洗わないといけませんね」


「竜の鱗よりは安い」


 高瀬が笑い、日野も小さく笑った。


 佐久間だけは、右のガトリング砲を見つめていた。


「軍曹」


「何だ」


「俺の魔導装具の部品を、もっと使ってください」


「お前が壊れる」


「もう、あれに使われるつもりはありません」


 佐久間は拳を握った。


「なら、自分の意思で使います」


 鬼平は佐久間を見た。


 しばらく黙った後、短く答える。


「分かった」


 夜、森の中で小さな火を囲んだ。


 部下たちは交代で眠り、ラウルの騎士が見張りにつく。


 鬼平は眠らず、壊れたガトリング砲を整備していた。


 右の砲身に、佐久間の制御部品を仮組みする。


 リーゼが魔力を流す。


 魔石は一度だけ明滅した。


 砲身が、ほんの少し回転する。


 しかし、すぐに止まった。


「まだ足りません」


「竜の鱗か」


「はい。竜の鱗は魔力を受け流し、兵器の内部を守る素材です」


「黒竜から取る」


「黒竜と戦って、生きて帰れる前提で話していますね」


「生きて帰る」


 鬼平は砲身を見た。


 右のガトリング砲は撃てない。


 だが、完全に死んではいない。


 左も、数発なら撃てる。


 部下たちは生きている。


 王都から逃げた。


 教会は敵。


 王国も敵になりかけている。


 黒竜は元の世界の戦場へ迫っている。


 やることは多い。


 鬼平は立ち上がった。


「明日、西へ進む」


 リーゼが顔を上げた。


「獣人連邦へ?」


「修理工房へ行く」


「その後は?」


「竜域へ行く」


 鬼平は空を見上げた。


 森の木々の隙間から、星空が見える。


 その向こうに、黒竜がいる。


 そして、元の世界には鬼平の部下たちが戻った。


 まだ戦いは終わっていない。


 むしろ、ここからが本番だった。


「弾を作る」


 鬼平は静かに言った。


「砲を直す」


 右手のガトリング砲を握る。


「竜を撃つ」


 その時、森の遠くで狼煙が上がった。


 赤い煙が、夜空へ伸びていく。


 ラウルが立ち上がる。


「王国軍の信号だ」


「追手か」


「恐らく」


 鬼平は壊れたガトリング砲を担いだ。


 撃てない武器を、戦場へ持っていく。


 それはもう、鬼平にとって当然のことだった。


「荷馬車を動かせ」


「戦うのですか?」


 リーゼが尋ねる。


「いや」


 鬼平は赤い狼煙を見た。


「今度は、追手を利用する」


「何をするつもりですか?」


「王国軍に、教会の敵を教える」


 鬼平は、遠くの暗闇を見据えた。


「敵の敵は、味方になることがある」


 左のガトリング砲が、かすかに音を立てた。


 撃てないはずの砲身が、一度だけ回転する。


 赤い魔石が、夜の森で小さく輝いた。


 鬼平は口元をわずかに上げた。


「修理開始だ」


 魔石ガトリング砲を両手に持つ鬼平軍曹は、西の獣人連邦へ向けて歩き出した。


 その背後から、王国軍の追跡部隊が迫っていた。

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