執事
エドガーが執事として就任する前から、実は会議は始まっていた。
15日と11時間、国との交渉は難航を極める。
「なぜ新たに道路を建設するんだ!国と国の中継地として我がマイドロス家栄えてきたのだ。賛成できるか!。」
机を叩いた振動で二人の紅茶は揺れ、スプーンが音を上げて震え出す。
その姿に、周囲の使用人も動揺していた。
だが、ただ一人、国から交渉役として選ばれた新たな中継地の領主候補、ケレニック・アイリスは冷静な目つきでマイドロス家を見つめる。
「これは国からの依頼なんです。了承しないと苦しむのはあなたの方じゃないですか?」
「黙れ。新たな中継地の領主に、マイドロス家ではなく貴様らを選んだのは、明らかにお前の仕業だ。アイリス。」
領主ロニー・マイドロスは、自らの怒りを抑えきれなかった。
だからなのか、物にもぶつけられない思いが、顔にくっきりとした形相として表れている。
それを見たアイリスはため息を吐きながら、ロニーの目を見て話を続ける。
「なんとか了承を得ようと、これまで努力してきましたが、どうやらそちらにその意思は無いようですね。」
怒りの爆発で息切れを起こしたマイドロスの吐息が、一つ一つ音となって聞こえてくる。
「そっちがその気なら、こちらもこちら側のやり方でやらせていただきます。覚悟しておいてください。」
沈着な目の奥には、魂が燃える野望を光らせ、使用人とロニーを一瞥した後、使いの者数名とこの場を後にする。
「くそ……!なんでこんな事に……」
拳を握りしめ、机にうずくまるロニー。これの会議は、マイドロス家とケレニック家にある確かな対立を表していた。
「領主様。ご安心ください。策はもう打ってあります。」
どこからともなく聴こえるその声は、一人の使用人からだった。
「あぁ、”アンドレス”。後は任せたぞ。」
「はい。承知いたしました。」
マイドロス家随一の頭脳派にして、ロニーの右腕と呼ばれた男。アンドレス。彼も、六大貴族を夢見て旅立った、一人の青年だった。




