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貴族の噂

「あなたが、新しく入った執事さんですか。」



「!!……びっくりした。そうだけど、あなたは?」


 背後からやってきたのは、小柄でまだスーツを着慣れていないような少年だった。




「僕は、マイドロス家の長男、ノアと言います。よろしく。あなたの名前は?」



「私の事はエドガーとお呼び下さい。」



「わかりました。家の中を案内するので、着いてきて下さい。」



 見た目は子供だが、子供とは思えないほど口調が丁寧で、貴族の教育が垣間見える。


「……”あの噂”聞きました?」


「噂……って?」


「いや、知らないならいいのですが…」



 そう言って、ノアは門をくぐり豪邸に足を踏み入れる。その背中はどこか寂しく、まるで何かを悲しんでいるようだった。



(やべ、下調べするの忘れてた。ここらで一番偉いってだけで応募したけど、なんか裏がありそうで怖いな。)



 ノアの後ろをついていくと、ところどころで他の使用人達とすれ違う。周りは自然豊かな山地であったが、この豪邸内は商店街のように人が点在している。




「ここは交通の要所なので、田舎の割に栄えてるんですよ。だからこそ人手が必要で、結果配属されたのは、商人の対応です。主に………」




 案内というか、ほぼ役職の説明ばかりで、俺の仕事場まで一直線に向かっている様子だった。



「あの……噂って何なんですか?」


 俺がそう切り出すと、ノアが一瞬止まり、表情こそ変えないものの、動揺した様子で振り向く。




「ここらで”盗賊”出るようになったんですよ。商人になりすまして金を取る輩で、あなたが対応する事になるかも知れません。」




 親切に教えてはくれたが、この程度でノアが”噂”に気をかけるのかは謎だ。多分、”嘘"だろう。もしかしたら、何か裏がありそうでならない。




 裏門から豪邸を抜け、仕事場に着くと、既に5、6人の使用人達が商人の対応をしている。



「じゃあ、後はこの人達に…」


 そう言って、ノアは行ってしまった。



 あの様子を見るに、まずは第三者の商人からここについての情報を聞き出した方が良さそうである。






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