22話 アーリオ・オーリオ
次回東京編最終回
10月12日
「ここは病院だぜ。殺し合いしたいなら、俺が退院した後な」
俺はあの戦いの後にぶっ倒れて入院していた。全身精密検査の末、全治一ヶ月の大怪我ってことが判明した。だからこうして昨日からベッドの上で眠っていた。そしたら二人の大男が入室して来やがった。最悪なタイミングで。
「キモがすわってんなァアッ!。目の前に青鬼以上の脅威が居んのによぉオオ」
「うるさいぞ、唐暮勿牙。一体何のようだ?」
唐暮勿牙は今回の騒動で、青鬼と協力して俺に攻撃を仕掛けてきた、純血の赤鬼だ。今の俺でも届くか分からない実力を持つ。なんかデカくて強い奴だ。
てか隣の奴もデカつよの気配。
「いやはや、データを取る為、怪しまれないためとは言え、多少荒技を使った点を謝罪しようと思ってな」
もはやキャラ作りもする気ないし。あの威圧的な三下喋りは演技だと思っていたが、ここまで違和感があるとは。
「その言い方、端から味方でしたなんて聞こえるぜ」
流石にコイツがこっち側だったら、それを隠してたおっさんを本気でぶん殴る。必ず、てか、それ関係なくここまであやふやな任務を押し付けたこともあとで怒る。
「お前たちはどの立場なんだ?」
「そうだな、名乗るのは問題ないな。俺はアメリカ合衆国大統領直属・妖気法特殊作戦部隊、コードネームはKENTだ。要はスパイだ」
おお、おう。中々形相な肩書きだな。おっかない。そりゃあつえぇよ、だって大統領直属だもの。弱いはずがない、こうなるとアメリカはとても分厚い層を持っているな。
「そっちのアンタは?アメリカ人だから日本語喋れないとか?Can you speak Japanese?」
少し煽る様に声をかけると、その男はこちらに拳を伸ばしてきた。その拳からは三本の鉤爪が某ウルヴァリンが如くこちらに伸びている。その刃は俺の喉元で止まり、少しでも動けば殺すという意思表示に思えた。怖い。
「馬鹿にするな。少しくらいなら話せる。俺はアメリカ軍妖気法部隊五怪人所属、コードネームはモンスターだ」
「コイツはお前と青鬼の戦闘をスナイパーライフルで監視してたんだよ。主にお前の肉体の確認だがな。それと軌道修正要因」
「軌道修正だァどういうことだ?」
「それはなぁ「俺が説明する。貴様らが無様に青鬼に敗北、またはその他のアクシデントが起こった場合に青鬼、またはアクシデントそのものを射殺するものだ」
「なんだよ日本語ペラペラじゃねぇか」
「完璧ではない。ここ数日で覚えたからな」
「フゥン。そりゃあ凄い」
「話は変えるが。山門健、いくつか悲しい報告がある」
唐暮はベッド脇の椅子に座った。その横でモンスターさんもどっかから椅子を持ってきて座り込んだ。
「悲しいお知らせってのは?」
部屋全体の空気が重くなるのをその場で感じた。空間自体を唐暮の所有物が如く作り替えた。
「一つは俺たちは今日でアメリカへ帰国する」
「まぁ、もうスパイってのはバレたなら、ここに居られ無いって事だろ?それぐらい流れで分かる。他は?」
「ああっ次だが、お前のその右腕、それは俺に治せない。切断して義腕に変える必要がある。そして、今後腕に炎を灯す技も使うことは出来ないだろうな」
それはあまりに衝撃的な内容であった。俺の右腕がもう元には戻らない。確かに闘いの熱に浮かれて、妖気を喰らう炎を出し続けたのは認める。それがおそらく妖気とは別の原理の再生能力すら焼き尽くしたというのか?当初の予想よりもより恐ろしい力なのかもしれない。
「分かった。まだだが一番デカいのがまだあるんだろ?」
「そうだな。単刀直入に言うと、アメリカと鬼達は和平が成立した。アメリカとの戦争は終わった」
「ッ!?」
「そして、俺以上の怪物どもが戦地から帰ってくる。奴らはお前らの全滅をもって今回の戦争を完全に終わらせる気だ」
「お前以上の怪物だ、、と」
唐暮は俺の見識上、今までで一番強い個だ。それ以上の個に俺たちは勝てるのか?
「ああ、その名も高鬼序列十位。数多いる鬼の軍で最強の名を冠している連中だ。まさしく怪物だ」
「影村のおっさんには伝えとく。ありがとう」
「だが案ずるな、俺の見立てだとお前は怪物いや、それ以上になる素質、才能があると俺は見てる」
「ありがとうな」
世辞でもそれは嬉しい。だが、分かる。俺もまだ唐暮の領域にも、隣の奴の領域にも届いていない。小さな存在だと。
コレからは自分の殻を破る戦いになる。
「それじゃあ、俺たちは本格的にここから立ち去る。生きていたらまた会おう。ハッピィでな」
「さらばだ」
こうして俺と彼らの密談は終わった。窓から外を眺める。俺は来る激戦に目を向けるのだった。
「こうして快晴な空を観れるのもコレが最後かもな」
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アメリカ合衆国ホワイトハウス
ヴェイル=ヴェール・M・ハウルドマン。アメリカ合衆国46代大統領。
彼は執務室で静かに仕事をこなしていた。そんな彼の机の上には聖書とコーランが置かれている。
側近が次々と資料を渡していく中、一人の男が報告の為に現れた。
「ハウルドマン大統領。ただいまKENTより報告が、現在任務を終え帰国するようです」
KENTは数年前からアメリカに属していたエージェントだった。しばらく鬼の情報を探るために潜り込ませていたが、この度の戦争をきっかけにあちらの情報を得るために帰国させることにしたのだ。そのために『怪人』を二人も送り込んだ。
「そうか、それで例の物の所在は?」
潜入の大きな目的は日本になると思われるある秘宝の捜索。それはかつてはアメリカが保有していたが何者かによって盗まれてしまった。なぜそれが日本にあるかは謎。
「影村寿雄が保有しているとのことです」
「やはりか」
そう言って大統領は席を立ち、専用のボックスに保管されている杖の方まで歩いた。
「この『独立の杖』は常に正しい道を我々に示してくれる」
四体の黄金蛇が絡み合い出来ている杖。成り立つ成分はこの世には無いもので、破壊はおろか破片すら採取できない。あらゆる科学者が答えを求めても分からなかった。蛇の頭部は黒く濁り、瞳は空洞になっている。蛇の中心の橙色の宝石が更にこの杖の芸術的価値を高めている。だが、この杖は高価が全てでは無い。
杖は所有者をより幸福な未来へ導く力を持つ。これによってアメリカはイギリスからの独立を果たしたという伝説もある。
箱から杖を取り出し、力強くそれを握る。
「影村寿雄を殺せ。そして、書物を回収しろ。それが杖の導くより良き未来へ」
アメリカから力を盗んだのだ。死だけの罰で済むのなら軽い方だ。秘宝を全て手にしたあかつきには、アメリカは全てを支配し、より良い未来に君臨する。
「はっ!直ちに暗殺部隊を日本へ派遣します」
「それで良い。マールボロも送れ、ついで裏切り者も処刑しろ。
杖に支配されたこの国は、今の世界に君臨する。
色々な設定開示は次回します。




