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紅の赤  作者: 青階透
鬼殺し偏東京偏
41/61

21話 東京連続殺人事件簿その十九 解決

今回はお話のおまとめとエピローグその一です。


 10月1日 夜 新宿区


花咲紗由枝(はなさかさゆえ)さんですね?ちょっといいですか?」


 全身黒づくめに覆った男が女性に話しかけていた。どこか雰囲気が怖い。その男は必ず常人ではないと、警官である彼女はそれに気付かないはずがない。


「そういう貴方は?どう見てもまともじゃないわね」


「ええ、『優秀』なもんで。私いや渡志(わたし)は」


 男の名前は青木渡志。この世で最も『優秀』な存在だ。だが、その意味を彼女は知らない。故に尋ねた。


「貴方が殺人鬼?」


「かつてのね」


 男は、約10年前の連続殺人鬼であった。

 この先は語る必要はない。



 ##################



 俺は転んだのか?雨に体温を奪われ、体力もだいぶに消費していた自覚はあるがこんな場面で転ぶとは、自分が情けない。足に力が入らない、起き上がる力も湧かない。


「ここまでか」


 いつかは来ると思っていた。自分に大層な終わりがあるとは初めの日から微塵も思っていなかった。

 もうじき、さっきの応援で呼ばれた警官たちがくる。俺はそうして逮捕されて、裁判に掛けられる。一応の弁護士はつくだろうな。でも、無意味。裁判官は同情してくれないだろう。俺は極刑、しばらく他の囚人を横目に税金で飯を食らって、ゴミとして生きる。何十年かして、絞首台の上。そして、、、終わる。


「はっはっはハハハハハハハハハッ」


 実にくだらない人生だった。人様に迷惑をかけて、全部自分の意思だからと思って、だから自分を自分で守れた。実際は全部手のひらの上でのマリオネット。哀れな雇われピエロだった。笑うしかない。


 コツコツコツっと小さな足音が聞こえる。それは警察か、はたまた死神か。


「お前か」


 どうやら後者だった。その小さな死神は、地面に倒れた低い背から見下している。そして、目線を合わせるようにしゃがんだ。


「猫ちゃん、見つけた」


 その数分後、木伐は遺体となって発見された。



 #############################



 事件が終わった日、その日の朝に一人の老人が首を吊って自殺した。その男性の名前は牧篠衣坂(まきしのころもざか)。かつて青木家に仕えていた使用人だった。

 彼は生前、都内で喫茶店を営んでいた。静かな喫茶は数少ない常連しか通っていなかった。常連の中には、彼の死を悼む声が多く上がった。



 #########



 あれから数日経過した。


 今回の事件、その始まりから顛末までその全貌を書いた捜査資料。


 ことの発端は15年前にまで遡る、当時の一六歳であった青木渡志が起こした、当時の笹未遙(ささみはるか)誘拐殺人事件。ここから始まる連続女児殺害事件は、本事件と密接に関わっている。この事件の犯人、青木渡志は今回の事件の犯人のアリバイ作りに協力していた。また、今回の第一事件の被害者である工板九坂が殺害される様に仕込みをしていたと、後述する青木渡志の日誌にて判明。


 第一事件の犯人は愛染波雨明(あいぜんはうあ)、また二件目、朱会真理(あかえまり)の事件も起こしている。

 この事件の指導者は木伐帆群であり、一件目で彼に掛けられた容疑を晴らす為に起こされた可能性が高い。(実際に我々はそれにかき乱された。)

 一件目の際の愛染波雨明のアリバイは青木渡志が捏造したものだった。証拠として挙げられた喫茶店店主の牧篠衣坂の証言だが、彼がかつて青木渡志の父親、青木継人の秘書、使用人として働いていた過去があり、そこからのつながりで彼が青木渡志に協力した可能性が高い。これによって、捜査に死角ができた。


 以降の事件、三件目から六件目に至るまでは木伐帆群の犯行、これらの証拠は木伐帆群の自宅アパートには残っていなかったが、愛染波雨明所有の倉庫にて発見。血、指紋は拭き取られていたが、それも完全ではなかった。鑑識によって被害者の血液と木伐帆群の指紋を検出。よって容疑が確定、さらに証拠隠蔽の罪で愛染波雨明も起訴。


 問題となったのは七件目だ。被害者はそれぞれの場所で三人、それぞれの被害者は別の犯人に殺害された。この中で木伐帆群の犯行は山門健の事件(実際は死んでいない)。二つ目の事件は青鬼の犯行は黒崎亜流に近づくための犯行だった。残す一つ、花咲紗由枝の事件は未だ犯人は不明。今後の捜査に期待となる。

 これら三件の事件が余計に事件を混乱させた。


 次なる八件目が捜査を大きく動かした。郷田の奮闘により、木伐帆群を容疑者として捜査が大きく進む。しかし、木伐帆群は自宅から逃亡、青木家に逃げ込む(これに関しては偶然である)。そこから、木伐帆群・青鬼の同時逮捕作戦を実行したが、複数人の犠牲者を出して、この作戦は幕を閉じた。この犠牲者の中には木伐帆群も含まれる。


 今回の事件の犯人たちは青鬼を除いた全員が死亡した。だが、事件の全体像が判明したのは確か、警察幹部の記者会見にて、今回の事件が終幕したことを都民に知らせた。


 まだ残っている謎はこれから捜査をしていく所存とのこと。



 #########



 時は進んで12月25日。


 事件解決から二ヶ月ほど経過した。今年の冬は珍しく大雪となり、ホワイトクリスマスを迎えていた。

 私は今回の事件で、彼らに関わった事で公安の特殊な部署に異動することになった。以前よりも仕事が減り、プライベートが増えた結果。自分は暇がある時に、あの事件で亡くなった彼らの墓を訪れている。


 今日も私は足を運んだ。


「こんにちは。吉田さん」


「こんにちは。華恋(かれん)さん、ベルちゃん」


 私が郷田の墓に手を合わせていると、彼女たちがやって来た。

 家族を失った母親と娘。娘はティディベアを大事そうに抱えている。それは彼女の父親が最後に贈った贈り物だ。私はベルちゃんに一瞥して、この場を後にしようと動く。今は家族で過ごしてもらおう。


「主人は、誇れる人でした」


 立ち去ろうとした私に華恋さんは大きな声で呼び止めた。その声に応える権利は私にはない。ただ背を向ける。


「主人は、あなた達、あなたと友達になれて幸せでした!・・・・いつも花を、本当にありがとうございます」


 おかしいな。あの時は涙は出なかった。なのになんでか、急に涙が溢れてきた。

 失われた命は帰ってこない。その短い命の中で私なんかが刻まれて良かったのだろうか?いや、それで良かったのだ。私と彼らは、砕けない友情を結んでいたのだ。

 

「いつかお茶でも行きましょう」


 振り返ってそう告げた。私の顔は涙でひどく崩れていた。それを見て、自分の気持ちが悟られてしまったかもしれない。でも、それでもいい。


「ええ」


 短い返事を聞いて、私は再び背を向けて前に歩き出した。その足は前よりもずっと軽やかだった。


 それでも、今日も仕事はある。だから私はタバコを口に咥えた。


 To be continued

次回 22話 アーリオ・オーリオ


 ペペロンチーノじゃあないよ。

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