表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅の赤  作者: 青階透
鬼殺し偏赤鬼偏
20/61

13話 鬼王・緑鬼


 赤鬼偏のエピローグです。

 


 月下の山

 激しい戦いが終わり、辺りは静まり返っていた。

 

 そんな中、聖書に出てくる悪魔の様な大きな二対の角を持つ、赤鬼よりも大きな体格の鬼がボロボロの俺を見つめている。

 その鬼は緑色の袴を着ており、綺麗な白い髪をセンター分けにしている。


「何者だ。アンタ」


「僕くんは緑鬼。この度は僕くんが鬼王に就任したから、その報告に来たんだよ。ここに居た鬼くん達に。でも、下の洞窟とかを見るに、彼らは皆んな君くん達に退治されたらしいね」


 鬼王、噂に聞く鬼たちのトップか。わざわざご苦労な事だ。鬼たちの本拠地が何処だか知らないが、東北地方では無いのは確かだ。でなければ、鬼側も援軍を用意し易いしだろうし、影村寿雄たちも仲間をより多く配置するはずだ。


「じゃあ、どうする?俺を殺して敵討ちでもするか」


「いや、するつもりはない。言いたくないがコレは戦争なんだ。戦場に平和はない。常に誰かが死神とワルツを踊る。戦いで奏でられる音楽を背後にね。仇をどうとかは曲が終わったらって決まっている」

 

「なら、この場からとっとと失せろ。でないと、アンタの就任祝いと葬式を同時にする羽目になるぜ」


 全身がズキズキ痛み、今にでも気を失いそうだが、気合で耐える。なんなら、鞘にしまった刀を地面に突き刺して身体を支えながらでも、立ち続ける。

 今だけは威勢を張る必要がある。


「いや、それは無理だね。君くんがいくら背伸びしても僕くんには届かない」


 俺は鞘から刀を抜き、構えた。一瞬、身体がふらついたが、足を深く地面に踏み込み、刀の先端を緑鬼に向ける。


「そんな事はやってみなきゃ分からないだろ」


「君くんは初めて誰かを殺したのに、随分と冷静だね。いや、初めてでは無いのかな?」


 その一言で俺の身体から嫌な汗が一斉に噴き出した。


「・・・・・何を言ってるんだ」


「思い出しているんだろ?影村寿雄によって封印されていた最古の記憶も。新たな敵である君についてこちらである程度調べさせてもらった」


「やめろッ!」


 俺は叫び声と共に刀を緑鬼に振りかざしたが、それに応じて緑鬼が右手を閉じた瞬間、緑鬼は姿を消した。


「ッ!どこに消えた」


 すぐに左右を見渡すが、緑鬼の姿はない。一瞬逃げられたかと考えたが、直後に背後から声をかけられた事でその甘すぎる考えを振り払った。


「小学校の頃。君くんのクラスでは君くんを巡るイジメがあったらしいね」


 後ろから声が聞こえてきた。それに咄嗟に振り向いた。 


「そして、それは被害者の女の子くんの死をもって終結した」


 例え、緑鬼が超高速で移動したとしても、その行動が記憶から抜け落ちるという事はあり得るのか?しかも、俺の刀は完全に振り切っている。その記憶も無い。


「君くんはもう疲れているのだろ?影村寿雄がいくら捏造の記憶を植え付けても、能力では、妖気法では干渉できない本能の部分でそのことに対する罪悪感を持ち続けている」


 緑鬼は俺に優しく言葉を掛ける。だが、俺の記憶に眠る禁忌に触れるそれらの言葉は今はハリネズミに抱きつかれたかの様に心を描くグサグサと抉ってくる。


「黙れッ!」


 俺はもう一度刀を緑鬼に振りかざすが、緑鬼はそれを右手の中指と人差し指で簡単に止めて見せた。俺は一気に下げようとするもピクリとも刃は動かない。

 今度は記憶がしっかりとある。


読売陽暮(よみうりひぐれ)。彼女を屋上から突き落としたのは君だと言うことを」


 緑鬼はそのまま、挟んだ指で俺の刀を最も容易くへし折った。鋼鉄を斬っても刃こぼれしなかった刀をこんなにもあっさりと。それと同時に俺の心も完全にへし折られた。


 そのまま脱力感と共に地面に膝をついて倒れた。

 それを言われた事で記憶の底の底から、あの時の感触、声、匂い、姿。その全てが這い上がってきた。


「イジメを無くす最も早い方法は被害者を犠牲にする事。そう考えた君は彼女を殺したのさ。だから、罪悪感に苛まれて、君は彼女の墓参りに律儀に行くのさ」

 

 緑鬼は折った刃先をじっくりと品定めするかの様に観察している。


「赤鬼くんと同じさ。この先の自分の命を得る為、それがこの戦争を終わらせる為だと、本能に刻まれた友情を押し殺して、押し殺して。気付かない様にして、殺した」


 やめろ。やめてくれ。もう黙ってくれよ。


「君くんは僕くんと同じ。目的の為なら他者を蹴落とす事を厭わない。そう言う奴なのさ。そして、その刀はそんな君くんにはとてもじゃないが似合わない。でも、より相応しい持ち主を僕は知っている。だから、もらうよ。それ」


 緑鬼はそう言って俺の持つ折れた刀を取り上げた。そのまま、この場から立ち去ろうと歩き始めた。


「駄目だ。その刀はぁ、この刀は俺が守るって誓ったんだ」


 俺は立ち去ろうとする緑鬼の脚に必死にしがみつき、彼の歩みを止めようとするが、鬼の身体能力を持ってすれば、それは無意味な抵抗に終わる。俺はそのまま、引き摺られていく。やがて、緑鬼は俺の事を強引に引き離し蹴り飛ばした。


 俺はその場で頭を抱えうずくまった。圧倒的恐怖。それに気圧され、立ち上がることもできない。


「赤鬼は貴様の様な愚かな人間に殺されたのか?その行動が、赤鬼に対する愚弄だ。それだけは僕は決して許さない。守りたいモノがあるのなら、ちゃんとその足で立てッ!」


 緑鬼はしゃがみ込み、怯える俺の胸倉を掴み同じ目線まで軽々と持ち上げた。


「この刀が守りたいのなら、最後まで抵抗してみせろッ!」


 そう言って緑鬼は俺を地面に叩きつけた。


「さぁー、立て。立てよ。そして、それを拾え山門健ッ!そして、俺に挑めッ」


 緑鬼は大声で俺に立ち上がる事を促す。更には緑鬼は俺から奪った刀を地面に投げ捨てた。

 

 俺の人生は腐っている。常に誰かを犠牲にする事で、保っているバランスボードだ。けれど、彼らはこんなクソ野郎を生かす為に蹴落として良い存在ではない。命は尊く儚いもの。それを理解している。だから、選択できる俺はその時に最も大切な事の為ならば、愛する者もを殺す事を。

 そして、その選択をしたのならば彼らの思いを俺が引き継ぐ。果たすのだ。マテウスは鬼と人間の完全な平和、角を隠さずとも同じ道を歩める未来の為に戦っていた。それを犠牲にしてここに俺が生きているのなら、俺はそれを果たさなけばならない。


「調子に、乗るなよッ」


 俺は覚悟を決めて拳を地面に付けてから、ゆっくりと立ち上がった。


「さぁー来いッ!」


「嗚呼アァ!」


 俺は目の前に落ちている折れた刀を拾いあげて、緑鬼に斬りかかった。だが、またしても緑鬼は手を閉じるとその場から移動しており、俺は緑鬼の居た場所に居た。俺は直ぐに態勢を立て直し、緑鬼の場所を確認して、攻撃をするがまたしても緑鬼はその場から姿を消した。


「もっと相手の動きをよく見ろ。予測しろ」

 

 現在、今までの緑鬼の言葉で俺の頭の中は集中している。

 俺の中での奴の能力の予想は二つ。

 自身の位置を任意の場所に移す瞬間移動。もう一つは影村寿雄の様な記憶に干渉するもの。可能性としては後者の方が高い。妖気法は物の性質などを変化、干渉する物が基本で、『魔法』や『魔術』の様な便利なものでは無いからである。それに加えて、影村寿雄は能力で人の記憶に干渉できると証明してみせた。ならば、俺が移動したという記憶を消せば、さも緑鬼が瞬間移動した様に見せることが出来る。それに加えて、今までのパターンから分析するに緑鬼は一度にそう遠くには移動できないはず。

 

 だから、緑鬼が移動しそうな位置を予め予測して、攻撃する。これが対処法だ。

 

「捉えたッ!そこだッ」


 またしても緑鬼は手を閉じた。

 だが、今までとは明らかに手応えが違う。


「素晴らしい。君くんはもう僕くんの能力に対応し始めている」


 なんと、緑鬼と俺が同時に移動していた。そして緑鬼の手にはまたしても俺の刃が掴まれている。


「アンタはッ!俺の記憶に干渉して直近の行動の記憶を奪っている。これがお前の能力の正体だッ!」


 俺は緑鬼の顔を睨みつける様に大きく叫んだ。


「凄い理解力だな。君くんの様な将来有望な存在をここで殺すの勿体ないと思う。でも、あえて言おう。その答えに対するこちらからの解答はNOだ」


 緑鬼は軽く言ってのけた。

 現状の俺の持つ妖気法に関する知識を総動員しても、答えが違うと言われた。いや、もしかするとコレがブラフで合っている可能性もある。


「いや、合っているね。俺に答えを当てられるのが怖いんだろ?こんな、妖気法について一年しか触れてきてないガキに」


 俺は緑鬼に煽る様に軽口を叩いてみせた。コレで少しでも動揺をしてくれば、俺の勘が合っていることの証明になる。


「君がそう思うならそうで良い。僕くん自体、ポーカーフェイスが得意ではないとだけ言っておく。でも、案外答えはシンプルなものかもしれない。それを考えながら戦うのが古き良き妖気法使いだ」

 

 まだ緑鬼の口調には余裕が見える。俺のことを完全に下に見ている。見下している。舐めている。


「意味の分からない事を。俺はここでお前を倒してこのクソッたれの戦争を終わらせるッ」


 俺が刀を強く握り構えると、緑鬼は俺の方を向いて何かを見ている。


「いや、気のせいかもしれないな。今の構え昔の知り合いに面影があった。でも、実力が違い過ぎる。忘れてくれ」


「戦闘中にベチャクソと、俺の実力を分からせてやるッ」


 向かって来る俺に対し緑鬼は静にこう言った。


「仕方ないね。審・遊兼時ゲーム・アンド・ウォッチ


 そして、緑鬼は手を前に大きく開きながら突き出した。

 それだけで全身が悪寒と冷汗に襲われた。緑鬼に向かって走り出していた足はピタリと急ブレーキが掛けられたかのように止まり、緑鬼の前に立ち止まってしまった。


「僕くんがこの手を閉じた瞬間。君は死ぬだろう、コレは最終警告だ。刀を差し出せ」


 先程まで会話していた緑鬼とは全く異なる雰囲気とオーラを放出している。身体がガタガタと震えて止まらない。だが、ここで止まったら、止まったら俺が俺で無くなる気がする。


「ウオオオオオオオッ!」


 俺は最後の勇気を振り張り、前と足を進め刀を振り上げた。


「見事」


 緑鬼はそう短く呟き、手を閉じた。

 俺はその光景を見た瞬間、意識が途絶えた。


 何か頭の裏に温かくて柔らかいものが敷かれている。これは枕か?


「おや、起きたようだね?」


 俺はその声を聞いた瞬間に直感的に横に置いてあった刀を手に取り瞬時に抜刀し、その声の主を切り付けたが主は体を後ろに大きく反る事でその攻撃を交わした。


「いきなり何するだい。物騒な」


「ッ!」


 影村寿雄。その人は今回の事件全ての元凶である。俺はマテウスを殺した事を受け入れはした。だが、その非情な判断へ俺を追いやったこの男は許す事ができない。


「落ち着きたまえ。君の考えている事はよく分かる。赤鬼君の事だろ?君は彼を殺した事で、彼と出会っていた過去の記憶を取り戻している」


「アンタが最初から全て話していれば俺に殺される必要はなかった。そもそも、アイツを殺す理由自体俺たちにはなかったのにッ」


 マテウスの思想は究極的に言えば俺たちと同じ。この不毛な闘いを終わらせる事、誰もが戦争をしたい訳がない。つまり彼は俺たちの仲間に引き入れる事ができたかもしれない。


「彼は、()()()()()()()()だった」


 俺の訴えを聞き影村は静かに口を開いた。

 死ぬ定めって何だよ


「彼はワシらの仲間の天山がスパイとして鬼の中で活動させていたが、鬼側のスパイによってその事が相手にバレていたんだ」


「だったら保護すれば良かったじゃないですかッ。それが出来なかったって言うんですか」


「彼は鬼だ。こちら側に入れる事が決して叶わない。それに引き入れたとしても彼は重い病に犯されていた。できたとしても助からない。それを聞いた彼は自分から『君の為の試練』になると申し出たんだよ。ワシはそれに協力したまでさ」


「何でアイツに自己犠牲させたんですか」


 俺は緑鬼に言われた通り、必要とあらば他人を蹴落とす事も厭わない人間だ。でも自己犠牲だけは許せない。それは無意味な事で終わる事が多いからだ。


「彼の瞳は君を信じていた。それだけだよ、彼の記憶を見たが君と彼は短期間で友情を育んだ。そんな君なら鬼と人間の架け橋にになる事を信じていた。その選択を許した」


「そうかよ。なぁ、おっさん。アンタは俺に闘う理由を考えろって言っていたよな。それにするわ。架け橋。もとより緑鬼と話した時に決めてた事だがな」


「緑鬼?何の事だい。君は赤鬼君との戦いの直後に意識を失って琉助君に運ばれてきたんだよ。きっと夢でも見ていたんじゃないかな」


 アレが夢?そんな事があるのか。それを聞いて初めて俺は刀に目線送った。あの戦いで刀は折られた、夢ならば折れていないはずだ。


「ッ!?」


 だが、刀は折れておらず、先端までしっかりと刃があった。いくらこの刀が特殊であっても刀が人知れずに再生するなど聞いた事がない。

 だとすれば、アレは本当に夢であったのだろうか?鮮明に覚えている事に違和感がある。


 ?急にあの時の内容が思い出せなくなってきた。というか、あの時が何かも分からない。何を考えていたんんだ?いや、考えてもいない。急に記憶に靄が掛かったように何も思い出せなくなっ、、、


「そうですか。そう言われると色々と合点がいきますね」


「確かに寝言で誰かと戦っていたようだしね。多分赤鬼君との戦いの激しさが夢にまで影響した証拠だよ」


 そう言っておっさんの手の瞳が瞬きした。


「それよりもだ。君に見せたいものがある。付いて来てくれ」


「でも、俺はアイツとの戦いで身体がボロボロなんですけど。とても歩けるとは」


「君の怪我はワシが治しておいた。完璧にな」


 確かにあの時はものすごく痛かった骨の痛みが今では一切感じられない。でも、おっさんの能力は記憶に干渉するだけじゃ

 まぁ、今は細かい事は気にしにないでおこう。

 布団から上がりおっさんについて行って外に出た。そこでは、多くの村人が集まっていた。

 その中心には、柱に縛り付けらていた荼鬼がいた。


「助けてくれェーーーーッ!」


 荼鬼はそう大声で叫んだ。


 

 To be continued



 ##############



 あれからしばらく経った。影村寿雄率いる妖気法使い達が居なくなっても復興は続き、現在は襲撃前と遜色のない生活を取り戻していた。


 彼は村の村長であり、この襲撃で全ての家族が死んでしまった。先祖代々守ってきた刀は出会って間もない少年にあげてしまった。受け継ぐ子孫はもう居ないから丁度よかったのかも知れないが、彼に渡したのはそれ以外に理由があったのかも知れない。

 

 彼に初めて出会った時にこの子を待っていたのではないかと感じた。だから、出来る限りの調査をした。物の記憶を読み取る妖術を扱う影村寿雄でも分からなかった刀の過去。

 結局、何も分からなかった。でも、もしかしたら彼はそれを掴むかも知れない。それが分かったら報告に来てくれるかも知れない。それか服が破れて修繕にかも、何にしろまた会う日が来るのならとても楽しみだ。


 そんな事を考えながら、今日も家族の墓へとお参りに向かった。孫娘の死体は頭部の原型こそ留めていなかったが、無事に帰ってきてくれた。だから、義娘と息子と同じ墓に入れてあげる事ができた。どうか、あの世の世界では三人で幸せな暮らしを送ってほしい。

 今日も今日とて墓を清める。いつか自分も入る墓を。

 

 赤鬼偏完結ッ!処女作として書き上げた本編。目標は文庫本一冊分の内容を目指しましたが、どうでした?要らない情報などは有りましたか?まだまだ心理描写が未熟な点もありましたが、楽しく読めたのなら嬉しいです。誤字脱字etcございましたらご報告下さい。ちなみに後日談で村人全滅エンドも考えましたが、あまりにも残酷すぎて没にしました。ps.再編集前までそうでした。


 次回より東京偏が始まりますが、私事でしばらく東京偏の執筆が行えないので、早くても再スタートが来年になってしまいます。必ず、続きを書きますのでお楽しみ下さい。もしかしたら息抜きで書くかも知れません。


 緑鬼 Lv.--

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ