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紅の赤  作者: 青階透
鬼殺し偏赤鬼偏
19/61

12話 紅の赤 その一


決着です。


 太陽は徐々に沈む準備を始めていた。

 その景色を準備を終えた俺は眺めていた。木々の隙間から橙に染まる前の太陽をしっかりと眼に焼き付けたいと思って。


「荼鬼。本当にお前も来るのか?」


 俺は後ろに立っている荼鬼に最終確認をした。

 俺はこれから山門健との決闘へ向かうのだが、荼鬼は金魚の糞が如く付いて来ると言い出した。

 はっきり言って荼鬼は弱いから来て欲しく無いのだが、どうせ止めても無駄だろう。


「当たりまだろ。お前が死んだら仇を打つのが俺の役目だ」


 自信満々に言うが荼鬼が山門健に負けるとは到底思えない。何なら一般人にすら敗北する気がする。


「それは俺に一度でも勝利してから言うんだな」


「そうか、なら俺はお前に一度勝利しているぜ」


 荼鬼はそう言い返してくるがこちらには全くもって身に覚えていない。


「記憶に無いな。いつの事だ?」


「お前がドイツから日本に来た時の事だよ。あの時に簡易組手で俺が勝っただろ?」


「それの事か、忘れてたよ。すまんな」


 あの時は父と別れてから傷心していて、その当時の事はあまり覚えていない。

 そうか、俺と荼鬼の付き合いはそんなに長いのか。


「荼鬼、俺の名前はマテウスだ。マテウス・アルベルトだ」


 十年以上の付き合いがあるのにコイツに名前を一度も教えていなかった事を思い出した。

 だから、教える事にした。これが最後になるかもしれないからな。


「そうか。俺は抱山後生(だきやまこうせい)だ」


 俺が名乗るとお礼とばかりに荼鬼も名乗ってくれた。

 そうか、そんな名前をしていたのか。初めて知ったよ。鬼の仲間から名前を聞くのは。


「マテウス、死ぬなよ。最悪の場合は俺も協力する」


「後生、それは必要ない。俺はアイツと正々堂々と戦うつもりだ。だからお前は決闘の邪魔をする奴を見張っていてくれ。それと無理はしすぎるなよ」


「お前は俺の保護者かよ」


「いや、親友だ」


 俺達は互いの健闘を祈る様に拳を合わせてから、俺達は山の頂上へ向かった。


 荼鬼には悪いが俺はここで死ぬ。頼むから追って来ないでくれよ。



 ##############



 金属と金属が互いにぶつかり合い戦場に火花を散らす。

 赤鬼の燃える手甲から舞い散る火の粉が月下の夜空に赤い装飾を施した。


「うりゃあっ!」


「フンがァ!」


 俺の持つ刀は妖気こそ纏えないがその高度切れ味は異常だった。

 この薄い刃の刀にどこにその耐久度が来ているのだろうか。


「掴んだぞッ。」


 俺の右から振りかざした刀は赤鬼を容易も掴んでへし折ろうとしてきたが、ビクともしなかったので、俺はそのままい一気に振り切った。

 掴んでいた右手の手甲の掌部分に薄い傷を付けたが、こちらの刀には刃こぼれ一つすらない。


「いい得物だな。その刀ッ、どこで手に入れた?」


「あれ?アンタらの目的ってこの刀じゃねぇの?」


 確かにそれは憶測だけと聞いていたが、違っていたのか?

 俺は刀を左から振り上げて左拳で受け止めって大きく弾かれた。


「俺は影村寿雄を消す為の作戦だと聞いていた。他の話は聞いていない」


 あの人を狙っているじゃねぇか。

 色々の諸悪の根源なんじゃねぇか?


「そうかいッ!」


 上から一気に振り下ろしたが、赤鬼は手をクロスして防いでみせた。

 それに構わず一気に下まで振り下ろした。


「何ッ!鋼鉄のアーマーにヒビがッ」


 今の一撃で赤鬼の腕の部分の装甲にヒビを入れる事に成功した。ヤベェ、前半戦の苦労が嘘みたいに感じる。だが、右腕に結構な負担が掛かる。


「まだまだ行くぜェェエ!!」


 俺は腕に妖気を纏い更に刀を振るった。

 刀を弾かれながらも、俺はどんどんと赤鬼との距離を詰めた。最終的に俺の刀は赤鬼のアーマーの左肩の箇所を切断した。今度は結構深く切り赤鬼の白い肌が細く露出した。


「見事ッ」


 それを受けて赤鬼はバク転を五回しながら俺との距離を取った。それに対して俺も赤鬼からのカウンターを恐れて反射的に後ろに大きく飛んでいた。

 まだ相手に全然ダメージを与えられていない。


「行くぞッ!炎鞭腕(えんべんわん)ッ」


 赤鬼は腕を鞭のようにしならして地面に叩きつけた。それによって俺まで一直線上に炎のラインが地面を焼きながら向かって来た。


「ウワぁっ!」


 俺の身体は一瞬にして炎に包まれてしまった。

 俺は肺が燃やされない為に呼吸を止めた。

 ヤバい早く対策を考えなければ、これだけで敗北が確定してしまう。


「・・・・・・・」


 赤鬼は無言で俺の行動を伺っている。一向に次の一手を打つ気配は無い。

 炎で焼かれながらも次の一手を考えていたら背中を力強く殴られた。俺は驚きの声を上げそうになったがそれをすれば炎を飲み込みそうになってしまったが何とか耐えた。


「後ろだッ!間抜け。お前の見ていたのは俺の生み出した蜃気楼だッ」


 完全にしてやられた。俺は地面に転がりながら現在の状況を整理していた。

 蜃気楼で作った虚栄は完成度が低いが炎の目眩ましによって気付かなかったんだ。

 今の一撃で猫背気味の背骨が矯正されてしまったじゃないか。それと、収穫があった。さっき赤鬼は俺の背中を妖気を纏って殴ったはずで、その背中で燃えていた炎は消えていた。

 

「気付いた様だが反撃をさせないぞッ」


 赤鬼は次の攻撃を仕掛けて来たが俺はそれよりも早く全身に妖気を纏って、バク転をする様に起き上がりながら、右足に妖気を重点的に集めて赤鬼の顎を蹴り上げた。

 おっさんから言われたのだが、妖気は使いすぎると蓄積が底を尽いてしまって一定量溜まるまで使用出来なくなるらしく、残量は常に気にして戦えと言われたていた為、攻撃するときや防御する時以外はあまり纏わない方が良いと思っていた。


「残念、俺の妖気を纏う速度は激早だぜ」


 全身に妖気を纏うのを十分の一秒で出来る為、攻撃が視認出来たのなら直ぐに妖気を纏って対応出来る。


「お前の炎は妖気で消火出来る違うか?」


「そんな事は頭を少し捻れば分かるだろ。妖気法は妖気法で打ち消せる」


 確かにそれもおっさんから聞いてた気がする。

 ダメだな、授業は眠気マックスで聞くと半分以上忘れてしまう現象に誰か名前あるのか?


「悪いな。冷静じゃなかった。だがここからは気をもう一度引き締めさせてもらうぞ」


 せっかくの服も少し焦げてしまったじゃないか。これ直るのか?

 世界に一つのプレミア物だぞ、コレ。てか、俺の刀が赤鬼の足元に転がっているぞ。ヤバめ。

 

 俺は観念して大きく飛んで赤鬼に殴り掛かった。

 赤鬼は俺の目的が地面に転がっている刀だと判断したのか、刀を拾い上げてそれを飛び掛かる俺の右肩に目掛けて突き出して来た。俺は即座に妖気を肩に集中させたが、それを意に介さずに俺の肩を貫通した。


「あががぁぁぁッ」


「この刀、やはり妖気を纏っていない様だな。だがいい刃だな。こうやって振り下ろせばッ」


 赤鬼は容赦なく俺の右肩に振り下ろして切り裂いた。関節が完全に切られた。コレでは持ち上げるのも困難だ。

 その際に俺も地面に叩きつけられた。


「いとも簡単に肉骨を切れる。だが、妖気を纏えない武器は必要ないな」


 赤鬼は俺の血の付いた刀を後方に放り投げた。


「オメェェなぁ、人の右肩ばっか狙うなよ」


 俺は右肩を抑えながら立ち上がりながらそう呟いた。

 赤鬼を睨む。赤鬼も少しガッカリしている様に見下している。


「これがお前の全力か?それならば、俺が今すぐに楽にしてやる」


 その一言で俺の心が吹っ切れた。

 赤鬼は俺に向かって本気の拳を振りかざして来た。

 俺はそれを右手で受け止めた。切られた関節部まで妖気の鎧を纏う。コレで無理やり繋げる。


「これが俺の全力だ」


 そのまま左手の拳で赤鬼の腹をぶん殴った。その威力は赤鬼の腹部の装甲に砕き後ろ大きく吹き飛ばされていた。


「ッ!」


 俺の今までの妖気の纏い方はなるべく広範囲に広く纏っていたが、今のパンチは違う。

 全身に均等に纏える分の妖気を拳の先に一点集中で集めたものだ。

 その威力は赤鬼のアーマーの装甲を容易に砕ける程の威力を誇るが、こちらにも腕に負担が掛かるし何度も使うと一気に妖気の消耗が物凄い。しかし、

 これが俺の覚悟だ。


「今のは良いパンチだッ。だが、もう少し磨ければ、強力な能力になるかもな」


「一つ質問して良いか?さっきの装甲含めてお前のアーマーの強度はそこまで無いだろ?防弾チョッキぐらいだ」


 よく考えれば、ミサイルにすら耐える事の出来る装備がそんなに薄い筈もない。

 あと、今の俺のパンチも高威力ではあるものの絶対にミサイルを超える事はない。


「そうだな。このザマ見れば馬鹿でも分かるか。なら、こっちも質問良いか?今、どうやって俺のパンチ止めた?その右肩は持ち上がらないだろ?」


「それなら簡単だ肩に妖気纏って支えているだけだ。それだから結構痛むぞ」


 妖気を纏うというよりも着るに近い。まぁこれするのに右肩に集中させる必要があるから。早めに決着付けたいんだが。もうこの戦い色々辛い。


「そうか、お前本当に色々凄いな」


「だろ?もっと褒めてくれて良いんだぞ」


 俺は拳をゴキゴキと鳴らしながら、俺は赤鬼に近づいた。


「来るかッ!」


 赤鬼は俺の攻撃を迎え撃つ鬼で満々でいるが俺は、赤鬼を無視する様にその横を通り過ぎて行った。

 そして、先程赤鬼が地面に投げ捨てた俺の刀を拾った。


「その刀が何だと言うのだ?妖気法使い同士の対決のおいて妖気を纏えぬ武器は無意味だぞッ」


 赤鬼はそう言ってくるが、俺はその事を無視して刀の状態を確認していた。

 俺はある事に気付いた。赤鬼は常に手甲に炎を纏っていたが、刀を握った瞬間、炎が消滅していた。その事からある可能性を考えていた。


 つまりこの刀は、、、、、、。



 ##############



 去年の今頃 ドイツ ベルリン


「アルベルト先生!先生にお客さんです」


 そう連絡を受けて、彼は応接室で待機していた。


 彼は息子を日本に旅立させてからも医師として活躍を続けて、結構な地位まで上り詰めていた。

 そんな彼にお客さんが来るという事は大体賄賂を渡しに来ることが多い。

 彼は毎回、それを断っていた。


「ハァーッ。患者は皆平等に扱うつもりだし。来られても対応が大変なんだよな」


「先生、お客様をお連れしました」


 そして、扉から長身の男が入室して来た。

 彼はその入室して来た男の顔にどこか見覚えがあった。


「お久しぶりです。お父さん(ファータ)


 彼は結婚をしていない為、血縁状の息子は居ない。

 彼が息子と呼べる存在は一人しか居ない。


「マテウスか!ビックリしたな。すっごく大きくなった」


 彼の身長が百六十八センチメートルあるがマテウスはそれよりも遥かに背が高い。二百三十二センチメートルぐらいある。座りながらだと、顔を見るのに結構上を見なければ目線も合わせる事も大変だった。

 

「そうだよ、日本で結構背が伸びたんだ」


「そうだ。マテウス、立ちぱなしは何だから椅子に座ったらどう?」


「そうさせてもらうよ」


 彼はそう言ってマテウスに席に座る様に促した。マテウスはそれに応じて席に着いた。

 彼がマテウスと話すのは十七年ぶりだ。それまで度々手紙は届いていたが、顔を見るのは本当に久しぶりだ。


「マテウス、お前角を仕舞える様になったんだな」


 今のマテウスは身長こそ人間離れしているが、角が生えていないから辛うじて背丈が異常な人だと認知されていて、鬼だとは夢には思わないだろう。


「ああ、緑鬼様からみっちり仕込まれて、半ヵ月で身に付いたよ。同期の奴は五ヵ月ぐらい掛かっていたけど」


「そうか。日本で友達出来たんだな」


 それを聞いて、ホッとしたのか彼の目元から自然と涙が零れていた。


「おいおい、そこかよ。まぁ、出来たよ」


 マテウスは笑顔でそう答えた。

 それを受けて彼は更に涙を溢れさせた。


「良かった。本当に良かった」


「でも、今日はこんな事を話しに来たんじゃないんだ」


 マテウスはポケットからハンカチを取り出して、彼に渡した。


「ありがとうね。グスン、あのマテウスに友達が」


お父さん(ファータ)。今日は『さよなら』を言いに来たんだ」


 静かにマテウスはそう言った。

 マテウスのその一言で、彼の涙はピタリと止んだ。

 


 ##############



 この刀は妖気を纏えないのではなく、妖気を喰らうんだ。原理など知らんが、そう考える事しか出来ない。なら、喰らってどうなる?


「無意味かどうか分からないが、やってみる価値はある」


 腕に纏う妖気を全て刀に流す。

 纏えている感覚は無いが何かいける気がする。


「行くぜェ!」


 握った刀をゆっくりと横に振るった。

 何かヤバいと感じたのか赤鬼は後ろに飛ぶが刀の先端が赤鬼の装甲を斬り傷を付けた。


「ッ!」


 俺は続けざまに刃の向きを切り替えて赤鬼の胴を斜めに一太刀。

 赤鬼の装甲をハサミがコピー用紙を切るようにバッサリと斬れて、刃が赤鬼の皮膚まで到達した。薄皮一枚程度の傷だが、血が滲み出て来た。


「面白いッ。この装甲を斬るかッ!それでいいッ!それでこそ真の戦いだ。


「ああ、そうだな。だが、俺は武器の性能でお前に勝ちたいんじゃない。ただ、お前の馬鹿にした刀の力を証明したかっただけだッ」


 俺はそう言って、地面に刀を突き刺して。

 拳を構えた。


「どちらでも良いッ!行くぞッ炎鞭腕(えんべんわん)ッ!」


 赤鬼の右腕の装甲が消滅して右腕が鞭の様にしなり、燃える拳が俺の背中を捕らえたが俺は、左拳に一点集中妖気を纏い、赤鬼の顔の装甲を攻撃した。

 

「ッ!」

「ッ!」


 互いの攻撃はほぼ同時にヒットして、二人して前に吹き飛ばされた。

 赤鬼の顔のシールドを破れ、赤鬼の顔が露出する。


「もう要らんッ!」


 赤鬼はそう言って、頭の装甲を消滅させた。更に左腕の装甲も消滅させて、両腕での能力発動を容易にした。

 俺はその隙を狙い、赤鬼の懐に飛び込んだ。タックルする様に、右肘に妖気を一点集中させる。しかし、赤鬼の腹の装甲はゴムの様に柔らかく俺の攻撃の衝撃を全て吸収して、抑え込んだ。


炎鞭腕(えんべんわん)は腕だけに在らず。俺の全身や触れたモノ全てを軟化させる事が出来るッ」


 そのまま、赤鬼は俺の腹に妖気を込めた膝蹴りを喰らわせた。無論、俺は腹に一点集中の妖気を纏いダメージを軽減させてから、頭部に妖気を纏って赤鬼の腹に頭突きを喰らわせた。

 その衝撃で赤鬼は俺を抑えていた両腕を離すが、俺は空中で一回転する様に右足に妖気を纏い、赤鬼の右肩を蹴った。

 

「グッ!肩が外れたッ」


「お返しだッ。」


 今の一撃は骨を破壊する程ではないが、肩を脱臼させる程の力はある。

 こっちは粉砕されているからこっちの方がまだ優しいほうだ。


「外れたのなら、嵌めれば良いッ」

 

 赤鬼は左手で簡単に右肩を嵌めてしまった。ズルいッ。

 そして、赤鬼は炎鞭腕を使い、拳を地面に叩きつけて大量の火柱を俺達を中心にサークル上で生み出した。


「そして、互いに体力も残り少ないだろ。もう決着を付けようッ。この火柱と俺達の距離は一秒に一センチずつ近づいて来る。この炎は特別性だ、俺が死ぬまで決して消滅しない」


「お前も影響するのか?この炎」


「ああ。触れれば一瞬で灰だッ。俺もお前も」


 ブラフかもしれないが、試す余裕も無い。


「そして、これが俺の真の能力、伸・炎鞭腕(ファイアーエムブレム)だッ」


 赤鬼の腕がまるでゴムの様に伸びた。

 赤鬼は右腕を伸ばす勢いを利用したとても素早いパンチで攻撃して来る。俺は回避しようと行動するも、自動追尾弾の様に俺の後ろを一ミリメートルの狂いなく、追跡して来る。

 こういう場合は本体はその場から動けないと相場は決まっているが、赤鬼も普通に動いてらっしゃる。


「このサークルの中、どこまで動けるかなッ」


 だが、この能力には決定的な弱点がある。

 それは、腕を伸ばせば伸ばす程にその分、力が分散されるから、速度分しか威力が無いから簡単に抑え込める。

 俺は身体を翻して、赤鬼の拳に反撃のパンチをかました。

 俺の拳と赤鬼の拳は正面衝突し、押し返す事に成功したが。


「後ろがガラ空きだッ」


「ッ」


 いつの間にか背後に回り込まれており、俺の背中を蹴り飛ばした。

 クソッ!更に追撃の様に左腕の伸・炎鞭腕(ファイアーエムブレム)で俺の胴を殴られた。そして、伸ばした右腕で俺の首を締めあげた。


「妖気法能力の有無は戦いにおいて、勝敗を分ける大事な原材料となる。それがお前の敗因だ」


「うっっっっっうっっっッ」


 息が出来ない。どんどんと締め付けがキツくなっている。

 このままでは窒息してしまう。


「このまま絞め殺す事も可能だが、お前に戦士としての戦いに敬意を払って頭を割って楽に殺してやる」


 俺の意識が途絶える寸前に、赤鬼は腕を緩めた。

 そのチャンスを俺は見逃すはずも無く、俺は脚蹴りしてその場から脱出した。そして、片手で地面にブレーキを掛けながら、火柱のギリギリの所で静止した。


「助かったぜ。意識の有無の確認は戦いにおいて、勝敗を分ける大事な全材料となる。それがお前の敗因だ」


 俺はお返しとばかりに赤鬼の台詞に被せてそう言った。


「もう一度聞くぞ、今降参すればお前の戦いに敬意を払い、楽に殺してやる」


「俺は死ぬまで、死なないぜ。俺には生きて帰る覚悟があるッ」


「その眼、その精神未だ死なずっか。ならば来いッ!お前の最後の最後の悪あがきを見せてみろッ!」


 赤鬼は伸・炎鞭腕(ファイアーエムブレム)を使い、腕を伸ばすパンチを繰り出してきた。

 カーブなどで起動が分かりにくい攻撃ではあるが、確実に俺の背中を狙って来る。だから、俺は大きくジャンプして、更にそこから後ろに迫る赤鬼の拳を土台として、追加で大きく前へ飛んだ。目的地は勿論赤鬼だ。赤鬼は腕を伸ばしている為、直ぐには防御の態勢にはなれないし、妖気を伸・炎鞭腕(ファイアーエムブレム)に回しているので、妖気で防御も出来ない。


「喰らえッ!一点集中の俺の拳をッ!」


「うっぐッ!」


 赤鬼はなすすべも無く俺に顔面をぶっ飛ばされた。

 赤鬼は吹き飛ばされながらも腕を収縮させているが、俺はそのうちの右腕の方を掴み、そのまま赤鬼の身体ごと火柱の方まで投げ飛ばした。


「飛んで行けッ!」


 赤鬼は火柱のギリギリの所で右手で地面を掴んで踏み止まったが、左腕だけが火柱に突っ込み燃えて灰になった。


「アアァァッ!」


 本当にヤバい火力じゃねぇか。赤鬼の左腕に点いた炎は肩の直前で消火されて、もう二度と使えなくなっていた。


「ハァー、ハァー。本当に素晴らしい覚悟だな」


「ハァー。俺ももうすぐ限界だ。お互い、次が最後か?」


 正直、俺の右腕も限界に近い。

 妖気も残り残量が少なくなっていると感じる。気のせいかも知れないが。

 赤鬼は立ち上がり、最後の攻撃の態勢を取った。きっと全力の妖気を右手に送っているのだろう。俺も負けずに右手に一点集中の更にその先、もっと妖気を身体から捻り出して拳に纏う。


「正真正銘伸・炎鞭腕(ファイアーエムブレム)だぁーーッ!」


「おりゃァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッ!」


 俺は特に技名が無いので兎に角叫ぶ事にした。

 赤鬼は腕を伸ばす事も無く、パンチを繰り出し俺のパンチと正面衝突した。

 奴の狙いは腕の軟化による衝撃の吸収であろう。だが、奴の妖気を俺が上回れば、能力を無効化し突破できる。


「グギギギィィィィッ!」

「リャアアアァァァァァァッ!」



 二つの妖気の衝突は雷撃の様に周囲を輝かした。きっと麓の村の人たちもこれに気づいているはず。何をしてるのだろう?祈りか、傍観か。今は気にしている場合ではない。

 神々しくも荒々しい衝突。


「お前と俺の関係はどうでもいいッ!この闘いに勝ってッ俺は俺の過去を超えていくッ!」


 永遠に続くと錯覚する程の長い膠着時間が動きだす。俺は徐々に力負けして後ろに押されてしまう。だから、俺はもっと身体から妖気を放出させて拳の更に先端に集中させる。その結果、再び長い膠着状態が始まるが俺は更に妖気を送り続ける。

 

 拳が、腕が真っ赤に変色して見えた。腕全体の筋肉が肥大し一気に硬質化した。まるで物語の赤鬼のように。

 だからこう名付けた。俺の始まての能力を


赤鬼(レッド・デーモン)ッ!」


 ピキッ!


 赤鬼の手甲にヒビが入った。そして、その鋼鉄の拳は砕け散り、その先の赤鬼の右腕の骨全てを粉砕し、そのままやつを吹き飛ばした。

 赤鬼は両腕が破壊され、もはや戦える姿ではない。

 完全勝利を確信した俺は赤鬼を見つめながらこう言った。


「ハァー、ハァー。俺の勝ちだ。・・・俺の勝ちだぁぁァアアアアアッ!」


 俺の絶叫は山全体に響き渡った。

 身体がふらついた。もはや、体力はほとんどない。立っているのがやっとだ。


「ああ。お前の勝ちだ山門健。良い戦いだった。俺の完敗だ」


 赤鬼は地面に膝を着き。弱った声でそう言い、首を下げた。

 その意味は、理解出来ないほど俺は馬鹿じゃない。


「一思いに殺してくれ。出ないと、お前が死ぬのだろ?」


 躊躇いが無かった訳ではない。だが、敗者の覚悟を愚弄するほど、俺は薄情でもない。それに俺の命のために戦ったんだ。


「分かった」


 俺は一言そう言ってふらつく足取りで刀を取りに行った。

 こうしている間にも火柱は刻一刻と迫って来ているが俺はゆっくりと刀を地面から抜き、赤鬼の元へと戻った。


「最後に何かあるか?俺はアンタに戦士としての敬意を払ってから殺したい。何でも聞くぜ」


 敬意を払うには最後の頼みを聞くのがいい。俺はそうか確信していた。


「分かった。最後に俺の名を言ってくれから、さよならを言って欲しい」


 俺はそれを無言で受け止めた。

 そして、


「赤鬼、さよならだ」


 そう言って赤鬼の首を刎ねた。

 その瞬間、周囲の火柱は消滅した。それで、赤鬼が死んだことを確定した。

 赤鬼の首は地面に転がり、首からは大量の血が噴き出した。その血を大量に浴びたせいか、眼に入ってしまったせいか。俺は泣いていた。



 ##############



 俺の一言で父は大きく動揺していた。


「さよならってどういう事だ。マテウス」


「俺はこれから大変な仕事に就く。命の危険もある」


 緑鬼様から日本の妖気法使いの為のスパイとして、紅鬼陣営に潜入せよと仰せられた。

 紅鬼は次期鬼王の座を狙っており、先月の斉藤近十郎の暗殺作戦も紅鬼が計画したらしく、これ以上の残虐な作戦は阻止しなければならないとの事。


「それって、あの緑鬼がそうしろと言ったのか?」

 

 父は明らかに怒りを感じている。言葉の端々にそれを感じ取れる。


「確かに、緑鬼様から頼まれたがこれはあくまでも俺の意思だ。悪いが止めても無駄だ」


「本当にマテウスの意思なのか。緑鬼が洗脳しているとかではなく。私を人質に取られているとかでもなく、お前の意思なのか」


 疑いの目を止めない父に対し、俺は態度を緩めずに自分の覚悟を伝えた。


「ああ、俺はより多くの命を守る為に戦うと決めている」


 その俺の覚悟が伝わったのか、父は疑いの目を止めた。


「分かった。マテウス、お前の覚悟はよく伝わったよ」


 父は俺に抱きついて来た。顔は見れないが泣いている音だけが俺の耳に伝わる。


父さん(ファータ)


 俺は父に抱き返す。

 そして、父の背中を優しく撫でた。


「本当に大きくなったな。マテウス」


 それから数分間、無言で抱きしめ合った。


「マテウス。もう帰るのかい?」


 父はすっかりと泣き止んで、そう尋ねて来た。


「いや、あと数日はドイツに居て良いって、緑鬼様が仰っていたから、しばらく居るよ」


 三日間、休日を満喫して来いと、言われたので大人しくそうさせてもらう。

 俺が今回、緑鬼様の話を受けたのは山門健と出会えたからかもしれない。アイツに出会わなかったら、他の人間に対して無関心のままだった。


「そうか、なら家に泊まって行け。美味しいティーがあるんだ」


「お言葉に甘えさせて貰うよ。元よりそうする予定だったし。それに酒にだって付き合うぜ」


「いや、医者から止められていてね」


「アンタが医者だろ」


 そうして、俺は父の家に泊まる事になった。

 夜に一緒に紅茶を飲んだりお菓子を食べながら、日本での事を父と楽しく談話していた。

 父が管理しているベルリンにある鬼の子供たちの保育施設に案内してもらったりと、二人でドイツを満喫した。

 そして、出発の時になった。


「行ってきます父さん(ファータ)。どうかお元気で」


「マテウスの方こそ、元気でな。病気にはなるなよ」


 俺は父と最後にもう一度抱きしめ合った。


「手紙、送りますから。そして、全て終わったら絶対に帰ってきます」


「ああ、待っているよ。おかえりを言えるのを」


 そう言って俺は父から離れ日本行きの飛行機へ向かった。

 


 ##############



 俺が山頂に戻って来た時には、既に戦いは終わっていた。

 赤鬼は首から上が無くなっており、健が勝ったという事が一目で分かった。


 だが、何故だ?健の後ろ姿はどこか悲しそうだった。

 一瞬、声を掛けるべきか悩み、もう少し見ている事にした。


 健は何かの気配を感じたのか、俺の居る方を向いた。

 その姿は赤鬼の血で真っ赤に染まっている。


 その姿を見て俺はある下らない事を思いついた。言ったら、絶対にアイツに馬鹿にされる。

 ()に染まって()を斬る。

 

 正に紅の赤(アカレッド)だ。


 やっぱりダサいなこれ。アイツには黙っておこう。


「ッ!?何だアイツは」


 俺がそう考えていると健の目の前に別の鬼が突然、姿を現した。



 多少のご都合は何のその。

 いかがでしたか?赤鬼戦。まだ健が能力を身に着けていない為、物凄く書きずらかったです。

 こんな残酷なタイトル回収になるとは、、、、。その内もう一度回収させたいな~。

 赤鬼の能力名は適当に付けたので、特に理由はありません。もしかしたら、変わるかも~。


 そんな訳で今回ここまで、次回で赤鬼偏最終回です。お楽しみに。短めの予定です。


 最後に登場人物が大体どのぐらいの強さなのかをレベルで表してみます。コレが今後の戦闘の際の基準になると思います。


 山門健            Lv.31

 馬飼琉助           Lv.18

 影村寿雄           Lv.48

 笹原文和           Lv.24

 茜月夜海           Lv.--

 天山緋麿           Lv.--

 マテウス・アルベルト『赤鬼』 Lv.28

 抱山後生『荼鬼』       Lv.23

 斬空寺春太『桜鬼』      Lv.63

 本名不明 『青鬼』      Lv.--

 荼鬼のゾンビ  Lv.17


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