11話 馬飼琉助
注意、前半少しグロイです。
健と赤鬼の戦闘が始まってから既に十分程経過して、何やら戦況が大きく変化した。
健がなまくら刀をキューブから取り出したという事はこの刀が必要になったという事か。
「おっと、そこを動くなよ。リュースケ・ウマガイ」
どうやら俺が健の戦闘を観戦していた間に接近されていたみたいだ。
攻撃されなくて良かった。
「なんだぁー。最近人の名前を海外風に言うのが流行っているのか?」
それを言うや否や俺は横に大きく飛んだ。先程まで俺の立っていた所を小百合さんを殺した時の様に素早く通り過ぎてその後ろに生えている樹に凹みを生み出した。
「一昨日よりは反応出来ているじゃないか」
「それぐらい可能でなければ、端からここには来てねぇよ。荼鬼野郎」
今はコイツに構っている時じゃない。
ささっと健にこの刀を渡さなければ。てか、アイツ最初から自分で持っていろよ。
「その武器使えよ。お前の刀だろ?」
「そうだな。だが、お前に使う筈がないだろ、雑魚荼鬼野郎」
「調子に乗るなよ。二度俺に負けている分際で」
「聞いた話によるとお前は三回健に負けているらしいな。敗北回数で競おう点ならお前の負けだぜ」
肝心なのは煽り具合だ。適切に怒らせなければ、相手の行動が読み辛くなる。
後言うが俺はお前に負けていない。両方不意打ちによるものだ。
「でも、お前は能力も無い足手まといだろ?どうしてここに来ているんだ、荷物持ちかぁ?」
少し煽りに負けそうになったが負けじと無視する。
そして、コイツに最も聞く煽りが分かった。
「影村のおっさんから聞いたらお前は赤鬼よりも軍人としての位が低いんだろ?」
「ッ!」
掛かったな釣り針に。
コイツは自分の軍人としての位にコンプレックスを持っている。
「足手まといはどっちだよ?なぁ」
「ウマガイィィィィッ!」
「さんを付けろよデコ助野郎!」
一度言ってみたかった。このセリフ。
下処理はこのぐらいで良いかな。
「死ねェェェェェェェェェェェェェェェェエエエエッ!」
赤鬼は勢いよくこちらに突っ込んできたので、俺はコートを大きく広げて裏地に貼ってあるキューブ陸の中身を放出した。長さ二メートルと五十センチの重い洗濯竿の先端が荼鬼の腹部に突き刺さった。
「ウゲェーーーーーーッ!」
「戦は事前準備が肝心だぜ」
「調子に乗るなよ、雑魚がッ」
「あらよっと!」
俺はそのまま選択竿を大きく振り上げて荼鬼の頬を殴った。
これで時間は稼げたな。ここまで約一分。健の方に目をやるとなまくらで何とか赤鬼に抵抗出来ている。急がねば。俺は洗濯竿を地面に叩き捨てて刀を抱えて走った。
流石に近づきすぎるとあの戦いに巻き込まれる可能性がある為、タイミングを見計らい刀を投げ渡そう。
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さてと、どうしたモノか。
このなまくらじゃあ全く攻撃にならない。
赤鬼の悪魔の様な爪の備わった手甲と火花を散らすのが精一杯である。
「グギギギィィィ。硬すぎだろその装備!」
「特殊合金だからな。それにしてもやはりその刀は本命ではないな。刃が立っていない」
赤鬼は俺の事大きく薙ぎ払った。
そして、赤鬼は地面に転がった俺のなまくら刀を拾い上げた。
「やはりな、ただのなまくらだ」
赤鬼はそう言ってその刀を真っ二つにへし折った。
だが、その隙に俺は琉助の下へダッシュッ!
「琉助それ寄こせッ!」
「あいよ。それとこれ使って関節固定しろ」
そう言って琉助は包帯二個と刀を投げ渡した。
「後は俺の隙に暴れさせてもらう。お前も頑張れよ」
俺は半身を剝き出しにして右肩から手首までを包帯で血管を締め付け過ぎない様に固定した。これで自由に動かせる。痛いけど。
「待ってくれてありがとうな。赤鬼さんよ。ここから反撃の改進だぜ」
俺は刀を鞘から抜き、鞘を後ろに放り投げてから刀を構えた。
赤と赤が衝突した。
##############
さてと健に刀と包帯を届けたのでキューブ拾漆を開封してしまった。
残るキューブは沢山あるが、消費のタイミングを見誤れば敗色が濃厚。
「さてと、荼鬼野郎はどこに居やがる?」
先程、荼鬼をぶん殴った所には既に荼鬼は居なくなっていた。
姿を晦ましたとしたなら警戒が必要だ。
周囲を見渡す感じは何処も異常はない。と考えると山のどこかに潜んでいるという事が可能性として高い。ならばキューブ玖に収納した市販で販売されている斧を取り出した。割と小さい。
これで草木を搔き分けながら山の中を下る。
どこに居やがる。既に三分と二十四秒程経過しているが、襲って来る気配が感じられない。こうしている間にもち一秒、また一秒時は刻んでいる。まだ陽が沈んでいないが完全に沈みきるまでのリミットは二十分未満だ。それまでに見つける事が出来なければ闇の中奇襲を受けて完全に敗北する可能性が高い。
一応、キューブ伍に懐中電灯が収納されているが余計に危険が上がる。
「・・・・・・・・」
息を殺しながら二分と三十三秒程彷徨っていると謎の洞窟を発見した。というより明らか不自然な穴だた。天然モノでは無く人工的に作られた様な入口もご丁寧に装飾されているし。
「俺達の隠れ家がどうかしたか?」
「ッ!グッ!」
突如、後方から話しかけられてそのまま横に蹴り飛ばされた。俺はとっさに俺は右腕を使ってガードした為、内臓へのダメージは無かった。
「硬ッた!俺の脚が逆に痛ぇじゃねぇか」
「当たり前だろ。俺は防御力が乏しいからよ。ちょっとしたアーマーを服に仕込んでいるんだよ」
これは笹原さんが事前にくれたモノで、健にも分けてやろうと思って聞いたら動きが鈍るから要らんと言われた。
一応は、フルアーマーで臨もうとしたが動けなかったので腕と脚だけ付ける事にした。そのおかげである程度の防御力を確保出来た。まぁ顔と腹がやられたら終わりだが。問題ないだろ。
「ちぃっ。本当に対策してきているんだな。なら、ゾンビ共は対策したか?」
しまった。
警戒はしていたがどうやら俺の周りをゾンビに囲まれていたらしい。これは二桁じゃ済まないな。百体は居るんじゃないか?
しかも数体は武器持っているじゃん。これが映画ならR十五ぐらいだな。
「お前がさっきみたいに武器を自由に取り出せるなら、先にそれらを潰させてもらうぜ。それか、ここで死ぬか。高みの見物させてもらうぜ」
荼鬼はそう言ってゾンビの大群の中に入って行き消えて行った。
「クソがァ!」
やるしかないな。
「掛かって来いよッ腐肉共ッ!」
まず俺は斧で正面のゾンビの頭を叩き割った。頭部からは死体とは思えない程の血が噴出して顔から眼玉が両目とも飛び出した。
「うーん。どっか行け」
そのまま胴体を蹴り飛ばして、後ろのゾンビ達三体を巻き込んでドミノ倒し状態にし手転倒させた。
「いっちょ上がり。次は」
キューブ肆の笹原さんから貰ったコンヴァットナイフを取り出して、横に居たゾンビの喉に突き刺す。ナイフを抜くと大量の返り血を浴びてしまったが、気にせずにそのまま押す様に後ろのゾンビを倒す、そして倒したゾンビの頭にナイフを突き刺して抜き、喉に刺したゾンビの方にも頭にナイフを突き刺して抜く。この間約三十秒。直ぐに立ち上がった。
「悪いがお前は早めに死んでくれ」
近づいて来るチェーンソーを持ったゾンビの頭部にナイフを投げた。ゾンビはナイフで樹に固定されて絶命した。その口からは舌が垂れさがっている。
次に取り出したのはキューブ弐の雑草刈り用の小さな鎌を二本。健に聞いた話だとゾンビは脳を破壊しない限り死なない為、喉を切っても効果は無いとの事だが、切断してしまえば問題ない。
「どりゃッ!」
向かって来るゾンビの喉を右の鎌で一太刀。血を噴き出しているが、まだ首は完全につながっているので左の鎌でもう一太刀。ゾンビは膝から崩れ落ちてその首の断面から土地面に倒れた。そのまま完全に首を斬り落とした。最初にドミノ倒しにして転ばしたゾンビ達が起き上がったので、先程の首を蹴り飛ばして再びドミノ倒しで転倒させた。
「数が多いんだよッ」
次に大きな斧を持ったゾンビがそれを振りかざして来たが、動きが鈍すぎたの余裕で回避して、ゾンビの正面と後ろから鎌で切断。
「あらよっと」
そのままブーメランの要領で鎌を投げて起き上がったドミノ倒しゾンビの一匹の首を切断。ついでにもう片方も反対側に居る鍬を持つゾンビを首を刃で引っ掛けて、切断しながら倒す。
「はぁーはぁー。ちょっとタンマ」
流石に数が多い。SAN値回復させてくれ。
今何体殺した?まだ一桁だろ?さっきので鎌の刃がイカれちまった。
「借りるぞ」
まずゾンビの持っていた鍬を持ち上げて、ゾンビの顔の側面に叩きつけて、そのまま顔の皮を剥いだ。
「グロッ!」
そのまま、鍬で剥き出し顔面の上に耕す勢いで叩きつけた。
「やっぱ使い辛いな」
鍬を放り捨てた。次に拾ったのは大きな斧。
これなら首も一太刀でいけるだろ。
「重ッ!これは振り回しにくいな」
と言ってもちょっとは腕立て伏せとかで鍛えているから、問題ないッ!
俺は大斧でまず一番近くに居たゾンビの首を切断した。切れ味は抜群でスッパリと切断できた。そのせいか、血が噴き出るのは少し遅れた気がする。
「まだまだ行くぜ」
ゾンビが五体まとまってこちらに向かって来る。
俺は大斧でまず一体に一気に振りかざして、胴体を真っ二つに切断する。そのまま、もう片方から向かって来るゾンビを一体蹴り飛ばす。
「あっち行けッ!」
後ろに回り込んだゾンビにはキツイ肘打ちで鼻をへし折る。
「お前はこっそり来るんじゃねぇよ!」
そのまま腕を持ち上げて、最後のゾンビに背負い投げして倒す。とどめに大斧を抜いて二体の重なる胴の真ん中を切断して、行動不能にする。その際に大量の臓物から出血があった。残る蹴ったゾンビは頭を本気で踏みつけ頭部を粉砕した。グロイ。
「今更言うけど俺ってスプラッター苦手なんだよね」
というよりもそういう娯楽に疎いんだよね。健がビビッて一緒に行ってくれない。
という事で耐性が無いため、既に精神的にキツイ。まだ八十体以上残っている。絶望。しょうがねぇな。俺はキューブ壱のガスガンを取り出した。もしかしたらおっさんなら実銃持っていてもおかしくないが、日本には平和の象徴の様な法律のおかげで銃が禁止されているので、仕方なくガスガンを用意した。もちろん殺害能力は皆無だが、眼玉を撃ち抜けば行動不能には出来るだろ。
「どりゃぁ!」
まず一発、正面のゾンビの右眼を潰した。
今ので大体の弾丸の軌道が把握出来た。イケる。
「カモンッ!」
今回用意した段数は五十発分だけ、だから全滅は狙えない。目的は道を開けて荼鬼を見つけ出す事だ。
俺は流れる様にゾンビの目玉を潰して道中でゾンビに刺さった武器を使いながらも山中を駆け巡った。
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馬飼家とは江戸時代から馬の育成に関わって来た一族だと聞いた。当時の馬は人や物資を運ぶ際に役に立つ生き物であり、馬を育てるという事は関節的に人々の生活を支えて来たという事だと、かつて親父が語っていた。
肝心の俺の名前の由来についてもその時に聞いたが、『忘れちまった』とタバコを吹かしながら一言そう言った。子供ながらお前は何を言っているんだと思っていたが、今思えばあの頃からあの親父のいい加減さが分かる台詞だった。だが、それと同時にあの親父はこうとも言った。『お前の名前の由来は忘れたが、大切なのは名前の意味では無いさ。嫌なら変える事もできるしな。大切なのは名乗っているその名前に誇りを持てるかどうかだ』格好つけやがって、今の俺ならそう言うだろうな。
でも、俺はあのクソったれの親父から貰ったこの名前を変えるつもりもなく、背負って生きていくつもりだ。理由は後付けでもいいからな。
長々と自分語りをさせてもらったが、今の俺にはするべき事がある。そう思いながら俺は血に濡れたポケットから血で湿気った煙草を取り出しそれを口に咥えた。そして、火をつけた。突然、火は付かないがそれでいい。
ぺっと地面に吐き捨て、俺は目の前を睨み付けた。
「見つけたぜ荼鬼野郎ッ」
俺はナイフを後ろにノールックで投げて追手のゾンビの頭部に刺した。
「マジかッ。本当にここまで来やがったッ。ゾンビ共はどうした?」
「半分以上ぶっ殺して来た。丁度いい所にチェーンソーが落ちていてな利用させてもらったよ」
もう二度したくない。臭えし汚ねぇしでうんざりだ。結局、村とかに降りられたら困るから、なるべく駆除する羽目になった。お気に入りの紺色ロングコートが真っ赤に染まってしまったし、髪も血を浴びたせいで大分痛んじまったよ。
「だが、雑魚ゾンビ共のお陰でお前の体力が減ってくれた。ここまで来たミスター・リュースケ・ウマガイにはボスを進呈しよう。こちらの三体になります」
荼鬼がそう言うと荼鬼の後ろの木陰から三人の人物が現れた。
「ッ!」
そのうち二人は見覚えがあった。
あの荼鬼クソ野郎ッ!
「右からうら若き女子高校生沢渡紗弓、今回の作戦の副責任者の我らが上司楼鬼、麗しき村長の孫娘秋山小百合のお三方の登場だッ」
紗弓ゾンビはあの時切断された右脚が丁寧に糸で縫われているし、小百合さんゾンビは顔が縫い跡で数十本あった。
完全に彼女らの死体を使ったらしい。
「ふざけんなよッ!テメェッ!」
「いやー、沢渡紗弓の死体をこっそり回収してここまで運ぶの大変だったんだぜッ、じっくり楽しんでくれよなッ」
さっきのゾンビと違い、動きが早いッ。
キューブ参の二本目のコンヴァットナイフを取り出した。ナイフは同時に使うと扱い辛いと思って分けておいた。
「ひゅー、カッコいね」
動きは素早いが行動が単純だから回避は容易だ。
まずは鬼ゾンビをぶっ殺そう。二人のゾンビをどうするかはその後だ。
「同じ作業は慣れるけど疲れるんだ、よッ!」
俺はゾンビの攻撃を搔い潜りながら、鬼ゾンビの首元にナイフで切り裂きながら後ろに回り込む。そのまま、流れる様にナイフで首を斬り落とした。そして胴体の部分は蹴り飛ばして地面に転がした。
「あらま、流石の高鬼様もゾンビになれば小鬼と同じか。せっかくバラバラの死体を縫ったのに。あと二人も頑張ってな」
「いや、お前をぶっ殺せば終わる話だッ!」
俺は二人のゾンビを振り払い荼鬼までの距離を一気に縮めた。
ナイフを腹部に刺そうとした。
「良いのか?俺を殺しても彼女らはゾンビのままだ」
俺はその言葉を受けてその場に急ブレーキを掛けた。その余波で少量の土が荼鬼のズボンに掛かった。
「ちぃっ、止めろよ。お気に入りのズボンなんだぜ」
「こっちもお気に入りの服がオジャンした、それでお相子だッ」
今ブレーキを掛けたのは感情に任せて近づくと、嫌な予感がした。
冷静な行動を取らなければ、いつ殺されるか分からない。
「いや、俺はここで殺すからお相子じゃない。ツケはお前の家族に請求する事にしよう」
「お前の言っている事は間違っているぜ」
「何言ってんだ、オメェ」
俺は馬鹿だよ覚悟を決めたっていたじゃねぇか。
「俺に家族はもう居ないし、俺はここで死なない」
キューブ漆の金属バットを取り出して、後ろに居た小百合さんゾンビの頭をフルスイングでぶん殴った。
元々荼鬼によって頭部を破壊されていて縫い糸で修復された頭は簡単に吹き飛んだ。吹き飛んだ脳みそや目玉が周囲に散らかるが俺は気にしない。金属バットにはたっぷりと血がついてしまったが、ポケットに入れておいた血で少し湿ったハンカチで拭った。
「え?」
荼鬼はその光景を見て絶句していた。
俺の圧倒的な隙に攻撃する事なく、完全に動揺でその場で静止している。
「言っておくが俺は覚悟を決めてここに来た。それはお前もだろ?荼鬼」
今、俺が荼鬼に勝つには容赦なしでは不可能だ。
誰の死体を使ったゾンビだろうと俺は容赦なく殺す。例え、俺の家族の死体を使用したゾンビであってもだ。
「沢渡紗弓ィィィィイッ!リュースケ・ウマガイを始末しろォッ!」
「だから、俺の名前を海外風に呼ぶんじゃねよ」
俺は紗弓の脚の骨をバットでへし折って、その場に転ばした。
「お前に人の心はあるのかッ!彼女らの家族がその死体を見たらどう思うか、考えられないのかよッ」
俺はバットを握り直して。
荼鬼の顔をフルスイングでぶん殴った。
「どの口が言ってんだよッ!この荼鬼クソ野郎ッ!」
「ウゲェェェェェェッ!」
荼鬼は被っていた仮面も外れて、その場に大きく吹き飛び転がった。
これで流石に大ダメージが入ったはずだ。
「貴様ァァァァァァァァァァァッ!この雑魚人間がァァッ」
荼鬼の顔は傷一つない普通の顔だった。もっと不細工だと思ったのに。
「黙れよ。お前の話は聞いてない」
俺は容赦なく起き上がりかけの荼鬼を顔を蹴り飛ばした。
そのまま、転がりながら荼鬼は俺との距離を取る。その姿はまるで滑稽だ。
「ハァーハァー。よくも、よくも俺にこんな無様を晒させたなッ!」
荼鬼は口元から血を垂らしながらも、大声で叫んだ。
「喋らなくて良いぞ。元からお前は無様だ」
「調子に乗るなよッ!お前なんて俺の足元にも及ばないカスなんだよッ!生き残っている全てのゾンビ共ッ!ここに来て、コイツを始末しろッ!
荼鬼は俺から距離を取りながら生き残っているゾンビを呼び出した。
「結局、他人だよりか荼鬼。とことん無様を晒すなぁ」
「いいや、貴様ごときを俺が手を下す必要が無いんだよッ。お前はここでゾンビ共の餌になるんだなッ」
「言っている事全部ダサいぞ」
「うるさいッ!餌は静に食われるのを待つんだな」
荼鬼はそう言って再び逃亡した。
そして、ゾンビ達がノロノロとこちらに集まって来た。
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約一か月前
「お前は赤鬼が我々のスパイをしていた事を知っているのか?」
俺は兄に本土に呼び出されていた。
現在赤鬼は楼鬼様達と共に影村寿雄殺害計画の為に岩手に居る。俺もその場に居たが妖気法使いに居る内通者から赤鬼が情報を流しているという事を報告され、俺は赤鬼と最も長く付き合いがある為、事情聴取を受けていた。
「いいや、俺は知らない。アイツの裏でやっていた事なんて」
「そうか。それは本当だな?もしも、お前もスパイであるなら俺が直接お前を殺すぞ」
いや、実際に知らなかったし。スパイみたいなリスキーな事はしない。
「で、スパイと分かった赤鬼をどうすんだよ。兄貴ィ」
「勿論、処刑するだろうな」
妥当だな。
スパイは発覚すれば処刑される。いつの時代も同じだ。
「兄貴ィ、禁固刑に出来ないか?懲役は長くても良いから」
「後生、お前何を言っているのか分かっているのか?」
鬼の中の文化には相手の本名をフルで言ってから、相手に親愛を込めた意味になる。
「先生兄貴ィ、勿論、理解している」
親愛には親愛を返す。それがこの文化だ。
「なら、あの人に直談判するんだな」
「黒鬼様か?」
現在、鬼の全軍を指揮しているのは高鬼・黒鬼様だ。
「君が荼鬼(弟)君だね」
突然、背後から話し掛けられた。
俺は咄嗟に後ろに振り向こうとするが肩をがっしりと掴まれて、振り向くなと無言の圧を感じられた。
「君は私の顔を見るにはまだ若い」
「貴方は、、、、、」
俺もこの軍に所属してから結構時間が経つが初めて聞く声だ。
一体、何者なんだ。
「私は紅鬼。位は高鬼だよ」
初めて聞く名前の高鬼だ。
「私は情報部に所属していてね。赤鬼君がスパイという情報をもらったのも私だ」
情報部に所属している高鬼なんて聞いた事がないぞ。それに高鬼のランキングにも名前を聞いた事が無いぐらいだ。
「私は大鬼と高鬼を行き来するから、その度にランキングも振り出しでね」
つまり俺がランキングを見た時は大鬼に所属していたという事か。
「話を戻すけど。それで、赤鬼君の罪に対する我々の判断を改めて欲しいと」
「そうです」
俺は短くそう答えた。
「良いだろう。なら、彼を我々が処刑する事はしない。その代わりに条件がある」
そんなあっさりと、どの様な立場なんだよ。
「条件って何ですか」
「簡単に言うと『御恩と奉公』だよ。君は私にその事を恩として、私の命令を聞いてくれれば良い。別に背いても良いけど、その時は、ね」
甘い声で耳元に囁かれる。
その言葉で俺の周りに蛇が巻き付かれた感覚に襲われた。それはいつでも俺の事絞め殺せるという圧だ。
「命令はその時になったら伝えるよ」
「貴方は一体何なんですか?どういう立場なんですか」
この人が優しい人であると思えたので、疑問だった事を聞いてみた。
「うーん。難しいけど、今は次期鬼王候補かな。それじゃあ、よろしくね」
そうして、紅鬼の気配が消えた。
「兄貴ィはあの人の顔知っているんだよな」
それを聞いた兄は答えを返さずにどこかに行ってしまった。
それから数日後、紅鬼から連絡があり山門健の乗っている船を単独で襲撃しろとのことだった。
##############
「よぉ、荼鬼野郎。ハァーハァー、追いついたぜ」
俺はゾンビ残党軍団と熾烈な戦いを制して、ようやく二つ目の隠れ家的な洞窟を発見した。
「しつこい奴だな。そんなに俺に殺されたいのか。貴様は」
「いや、お前をここで倒す。それだけだ」
それにしても俺の今の身体は大量の臓物とか血を浴びたから異様に臭い。それでも、この洞窟の臭さは気付いた。
「気付いたか、お前が倒して来たゾンビの殆どはこの洞窟で殺された鬼達だ」
「決着にはピッタリな場所だな。仲間と同じところで眠らせてやる」
さっきの戦闘でほとんどのキューブを消費してしまった。戦闘に使えるのは残り五個だ」
「来ーーーーイッ!リュースケ・ウマガイッ!」
俺はキューブ拾参のスタンロッドを取り出した。
電源を作動して構えた。
俺は荼鬼の間合いまで一気に詰め寄った。荼鬼も身構え近づく俺に蹴りのカウンターを喰らわせようとしたが、俺はそれを見切って腕をクロスして防いだ。
だが、荼鬼はそのまま脚を一気に上に蹴り上げた。
「ッ!」
腕の下側だ軽度であるが切られた。
幸いにも腕にアーマーを付けていなかったら腕がバッサリ持って行かれた。
「運が良いな。結構切れ味を誇っているんだぜ」
荼鬼の靴の踵から短いナイフが伸びていた。
船の頃から疑問に思っていた、どうやって紗弓を切断した方法が分かった。
だが、一つ弱点がある。それはナイフを仕舞わない限り脚を下げれないという事。
その隙を着いて俺は荼鬼の脇腹にスタンロッドを当てた。そのまま、スイッチを入れて大量の電気を一気に流し込む。
「ウギギギギギギギィィィィッ!」
荼鬼は直ぐに手刀でスタンロッドをへし折った。
それを受けて俺は直ぐに後ろに飛び、荼鬼との距離をとった。だが、荼鬼がそれを見逃すはずもなく、俺の腹を思いっきり殴られた。
「グッ!」
思わず口から血を吐いてしまった。そのまま後方に勢いよく吹き飛ばされたが、追撃を躱す為に急いで行動した。キューブ拾伍の点火された家庭用打ち上げ花火を取り出し、荼鬼に向かって発射した。
「フッ」
荼鬼がそれを見て俺が間違えたと勘違いして、鼻で笑ったが一瞬で青ざめた。
俺はこの打ち上げ花火を改良していて、中に仕込んだのは大量の爆竹だ。
「ッ!」
発射された爆竹は発射の際の日で点火されていて荼鬼の目の前で爆発した。
詰め込んだ爆竹が量なだけあってこっちも爆風が来たが、荼鬼に与えたダメージに比べれば大した事は無い。
「貴様ァ!」
流石の耐久力だな。
だが、完全に余裕がなくなっている。服は焦げて、身体はボロボロになっている。
俺は冷静にキューブ捌の野球のグローブを両利き用取り出してそれをはめた。
「まだまだゼ!」
俺は怯んでいる荼鬼の頭部の角にグローブの穴を通して抑え込んだ。
「何をするんだァ貴様」
「キツイの行くぜッ!」
悶える荼鬼の顎に向かって俺は本気の膝蹴りをお見舞いした。
「うガァァッ!」
もう一発お見舞いしたかったが、そろそろ反撃を受けそうなのでグローブから手を抜いてささっと離れた。
即座にその場から離脱して二、三歩程大きく後ろに下がる。
「舐めやがって貴様ァァァァァァァッ!」
叫びながら荼鬼は角に引っ掛かっているグローブを取り地面に投げ捨てた。
お互い体力はもう殆ど残っていない。
互いの立ち位置が直線上に並ぶ。そして、睨み合う。先に動き出したのは荼鬼の方だ。
「だがなァッ!貴様がどう足搔こうがッ、貴様の敗北は決定事項だァーーーーーーーーーーーーッ!」
荼鬼はそう叫びながら俺に向かって走って向かって来た。
俺はキューブ零を取り出して、荼鬼に向かって投げた。
それを投げるや否や俺は勝利を確信したかの様に後ろを向いて立ち去ろうとした。
「ッ!貴様ァまさかァまた爆竹をッ」
そう読んだ荼鬼は反射的に勢いを殺し後ろに下がろうとしたが、キューブ零から出現したのは大量の爆竹などでは無く別のキューブであった。それに荼鬼は気付くが既に反射行動は始まっている為、無防備な状態になっていた。
「これで終わりだッ」
俺はそれを計算通りに事が進んだと背中で確信して、即座に振り向き完全に無防備になっている荼鬼の顔面に向かって、本気のパンチをお見舞いした。
「ウギィィーーッ!」
それによって荼鬼は奇妙な叫び声を上げながら完全にノックアウトした。
「お前が爆竹を恐れずに突っ込んできたら、俺の負けだった。要するにお前の覚悟が俺よりも少なかった。それがお前の敗因だ」
俺は気絶した荼鬼を見下しながらそう言った。
その後、荼鬼の身体をキューブ拾捌に入れていた縄で強固に縛りあげた。
俺は一仕事を終えてから、キューブ拾玖に仕舞っておいたスマートフォンを手に取った。そして影村寿雄に電話を掛けた。
「もしもし影村さんですか?」
『あ~琉助君かい。良く生きていたね』
こっちは死闘を繰り広げていたのに影村のおっさんは呑気な声で電話に出た。
「こっちは荼鬼を捕縛しました。それと小百合さんの死体も取り返しましたので回収お願いします」
『君はどうするんだい?』
「俺は健の戦いを見守りに行きますよ。それと回収を急いだ方が良いですよ。キツく縛りましたけど目が覚めたら逃亡される恐れがありますから」
俺は長話をしたくないから淡々と情報だけ告げて一方的に電話を切った。
それから数分間山を彷徨いあるところに着いた。
「お待たせ紗弓。殺しに来た」
脚の骨を折って放置した紗弓ゾンビの前にしゃがんで話しかけた。
本来なら彼女の死体も両親に返してあげたいが、それも出来そうにない。
だから、俺の心の中だけで彼女の死を受け入れる事にした。
「ごめんな。俺のせいで」
俺はそう言いながら紗弓ゾンビにとどめを刺した。その方法は語らないでおく。
そして、彼女の死体は穴を掘ってそこに埋葬した。
最後にその場に手を合わせて、健の元へ向かう為に立ち上がった。
さてと、琉助の戦いは終わりました。
あのゾンビ共は基本雑魚ですが、百体全部倒した時点で彼普通に強いですね。弱体化させなきゃ。
次回、赤鬼戦の後半です。決着です。乞うご期待!




