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紅の赤  作者: 青階透
鬼殺し偏赤鬼偏
17/61

10話 燃えよ鬼拳


 本格戦闘回の開始です。三話にまたがる予定ですのでお楽しみに。


 俺は垂直に吹き飛ばされて、地面に仰向けに転がった。

 だが、既に身体に妖気を纏っていたので大したダメージは無い。


「その様子だと、妖気法はある程度身に着けているな?」


 俺はゆっくりと起き上がり、再び近づいて行く。琉助は俺が吹き飛ばされたと同時に後方に下がった為、入れ替わる様に横をすれ違った。


「今のもキツイとか言うなよ?」


「安心して、お前は後ろで解説でもしていろ。お前の戦いはまだなんだろ?」

 

 琉助は何か作戦があるそうなので、この場では援護に回ってくれる。らしい。そして、俺が琉助に刀を持たせたのは、素手でどこまで対応出来るのかを試したかったからだ。


「ああ、そうだな。負けそうになったら加勢しても良いぜ」


「アホぬかせ。俺一人で十分だ」


 さっきの赤鬼は軽いボディタッチ程度のつもりだと思うし、本番はここからだ。

 俺は赤鬼の正面まで戻ってきた。


「お待たせ。おかげで新品の服が泥草まみれだよ」


 破れてはいないがこれは洗濯が大変そうだ。声はクリーニングに出さなきゃ。


「別に必要は無いだろ?これが終われば俺が火葬してやるからな」


「それはご丁寧にお断りしますね。俺の死体は棺に入れて欲しいな。欧風に」


 俺の発言と共に眼を切り替え、姿勢を低くする。そのまま赤鬼の脚の脛に目掛けて足蹴りをしたが、それを即座に予測した赤鬼は俺の蹴り上げた脚を抑え込む様に飛び上がった。


「詰めが甘いぞ」


 脚に妖気纏ってなかったら完全に折られていたな。それでもクソ痛いけど。

 赤鬼は俺の脚をがっしり握り俺の身体を片手で持ち上げた。


「うわぁぁぁぁぁあああああッ」


 赤鬼は片手で俺の事を振り回してくる。

 これは酔うやつだ。

 

「ほらッ飛んでいけ!」

 

 赤鬼はそのまま俺の事を空中にハンマー投げの如く放り投げた。

 俺は空中で体勢を整えて、地面で綺麗に受け身を取った。そのまま横に大きく飛び、赤鬼の追撃を回避した。

 赤鬼は両拳を俺の着地した地面に叩きつけて大きなクレーターを作り出した。吹き飛ばされた土や草が辺りに散らばった。


「威力やべぇな。正直ドン引き」


 俺はその一瞬の隙に赤鬼との距離を縮めて、全力の妖気パンチを繰り出した。その拳は赤鬼の横腹に当たったが、赤鬼はその場で微動だにしなかった。


「ふぇ」


「この装備は一世代前の物だが、お前ごときの軟弱な拳ではその衝撃を全て吸収するぞ。ミサイルレヴェルなら俺は無傷だ」


 ズルッ!

 その場に居ればカウンターを喰らいかねないのでその場から後ろに多く飛びのいた。

 奴のあの戦闘用スーツが厄介だな。それにアイツ拳に手甲付けているから生身で受けたら物凄いダメージを喰らいそうだ。それもズルいと思うが素手での戦闘においては手甲は有利だ。最初にそれに気付いた奴はきっと今世紀最大の天才に違いない。


「残念だったな。今のパンチは本気じゃないぜ。俺の本気はメイウェザーを凌駕するんだぜ!」


 絶対に無理だけど、戦闘はブラフの掛け合いだから。

 心理戦が大事だ。ここは騙させてもらおう。


「別にお前のパンチが世界チャンピオン以上だとしてもそれがミサイルよりも強い筈がないだろ」


「あっ!確かに」


 完全に盲点だった。

 後ろの琉助監督も頭を抱えているよ。


「相変わらず、賢いのか間抜けなのか分からん奴だ」


「どこかでお会いしましたっけ?」


 と言っても船で遭遇してるんだけど、ここはお前なんて覚えていないって煽ってやった方が良いだろう。


「そうか。・・・ふぅん。仕方ない」


 赤鬼は俺との距離を一気に縮めてきて腹を思いっきり殴られた。


「あっぅが」


 しかもその場から飛ばない様に調整された威力なので、その場からあまり動かず第二第三の連続攻撃を受けた。腹に一発、顔に一発喰らい俺は唾液と血を同時に吐いた。最後に脇腹を横に蹴り飛ばされてその場に叩きつけられた。これらの攻撃は妖気を纏っても相当なダメージになってしまった。


「言っておくが真剣勝負に情けはないぞ」


「それは分かってるって。よぉっ!」


 俺は両手で身体を上に持ち上げ赤鬼の肩に両脚を蹴り飛ばした。この角度なら、油断している赤鬼のバランスを崩せるはずだ。

 俺はそのまま地面で一回転して受け身を取ってそのまま起き上がる。この間約二秒ッ。俺は即座に振り向き地面を蹴って後ろに倒れそうな赤鬼の装甲の無い顔面に膝蹴りをしようとするが、赤鬼は俺の攻撃が届く直前でバク転をして回避した。

 そのまま、俺へのカウンターを取る事無く後ろまでバク転して下がって行った。


「おっと初めてビビったか?」


「いいや、お前の事だから何か策があるのだと思ってな。戦闘で警戒を怠る奴は荼鬼だけで十分だ」


 いや何も考えてないんだけどね。

 現在、俺は赤鬼にまだダメージを与えていないが、俺が受けたダメージは五分の二程で、少々しんどい。あの装甲を如何に突破するかが鍵だな。見た感じエネルギー式だから、時間経過で効力が失われると思うけど、最近のバッテリーは長持ちするからな~。ぶっ壊した方が早い。


「・・・・そうだな。無策では行動しないぜ」


「今のでお前が無策だと分かった」


 へへ、バレちまった。

 コイツは勘が鋭いな。琉助かよ。


「さぁーどうだろうね。俺が策も無しにお前に挑むとでも?」


「いや、お前は策を戦闘中に即興で考えるタイプだ」


 そうだけれども、オセロとかも最初は考えずにやって場が整ったら本気出す派だし。このせいで大抵負けるけど。こういう長期戦に持ち越せるなら、何とかなりそうだが。


「ならばその隙を与えなければ済む話よ!」


 赤鬼は俺の方へと走って向かってくる。だが、距離を取ったのはお前の方だぜ。俺は脚に妖気を纏ってその場から大きくジャンプした。相手の装甲を壊すには弱点を探す事が肝心だ。こういう場合は後ろにあるってのが相場だぜ。


 真上から赤鬼の背後を覗いたら、うなじ部分に何やら四角い突起が見えた。おそらくそこに起動用のスイッチがあるに違いない。

 それを確認してそのまま着地しようとしたが、何か違和感を感じた。

 思考時間を与えない言ったくせに俺が明らかに考えているはずの俺を攻撃してこない。おかしいぞ。

 そのまま、地面に足を降ろした瞬間。

 グニャリッ!俺は地面がゴムの様な柔らかさを帯びていて、その場で足を踏み外した。


「うわぁッ!」


「引っかかったなァ!アホめッ!」


 その場にすってんころりんしてしまった俺を赤鬼は胴を厚底のブーツで踏みつけ押さえつけた。

 

「それ負け、る奴が言う、セリフだ、ぜッ」


 肺の方を押さえつけられているからしゃべりにくい。

 俺は赤鬼の脚を如何にか退かそうするもメイウェザー以下の俺の腕力で持ち上がらない。読書系男子はこういう力が弱いんだよ。


「このまま火葬されるか?」


 赤鬼がそう言った後、急に胸が熱くなってきた。てか、燃えてない?


「は、離せ。胸焼けすんだろよ」


「駄目だ。情けは無いと言っただろ」


 そのまま更に踏む力を強める赤鬼。このままでは完全に肺が焼けちまう。どうする。

 そうだ!良い事を閃いた。俺は拳に全力の妖気を纏って、そのまま地面に叩きつけた。さっきの赤鬼の作ったクレーターを作る訳ではなくあくまでも地面を揺らせば少しはふらつくだろ。

 読み通り赤鬼は一瞬体勢を崩した。

 

「なッ!」


 その一瞬の隙で俺は身体を転がしてその場から逃れた。

 折角の服がちぃと焦げちまったじゃねぇか。


「もう同じ手には引っかからないぞ」


 今まで忘れていたが、これは妖気法を使う戦いなのだ。個別能力を使うに決まっている。こっちは妖気法能力ないから、圧倒的に不利なんだよ。

 今の俺に出来る事は全身に妖気を纏う事と物に纏うぐらいしか出来ない。それらの精度は鍛えたが、やっぱりまだ足りない。


「お前ならこの程度脱出出来ると分かっていた。さぁー来いッ!」


「ああ!遠慮なく行くぜ」


 俺は地面の土を抉り取って握り固めた。そして、それに妖気を纏ってアンダースローで赤鬼に飛ばす。その土は赤鬼の装甲に当たったが、あっちに損傷はない。

 名付けて泥石投げ。これは土を石並みの硬さで攻撃できる。

 明らかに警戒している。


「・・・・・・・」


 俺の突然の行動に困惑している。きっと意味を考えているのだろう。

 無論、そんな事で足止め出来る相手ではないのは確かだ。赤鬼は俺の方に近づいてくる。そこで第二第三の泥石を握って作り投げる。


「ちぃッ」


 赤鬼は両手を前にクロスしてその攻撃を防ぐ。そのタイミングで俺は前方に猛ダッシュを掛ける。赤鬼ガードを解いた瞬間俺はその無防備な顔面を本気のパンチで殴り飛ばす。


「喰らえッ!」


「何ィッ!」


 完全に油断していた赤鬼はそのまま地面に倒れた。その際にうなじ部分に手を当ていた事を見逃す事無く、そこが弱点だと確信した。

 そこさえ破壊すればあのスーツは機能が止まって俺の攻撃が通じる様になるはずだ。


「このまま、決着を付けてやるッ!」


「そう簡単には反撃させんッ!」


 俺が飛び掛かる様に追撃しようとした、次の瞬間俺の胸が再び燃え上がった。


「ッ!」


 その一瞬の動揺による行動のブレを突き赤鬼は、手甲を纏った拳で俺の右肩をぶん殴った。その衝撃で肩骨を粉々に粉砕された。


「ウガァァッ!」


「まだだッ!」


 赤鬼はその状態で更に拳に力を込めた。俺のもう片方の肩を掴み、奥へ吹き飛ばない様にした。

 赤鬼の手甲にエネルギーがチャージされていく。そのまま追撃の衝撃が右腕に入り右腕の骨を全て粉砕した。腕が千切れる程の痛みが走った。


「クッがァアッ!」


 俺は粉砕された腕を抱えて、その場で絶叫した。


「間髪入れずにさらなる追撃だッ!」


 今度は俺の右肩から腕に掛かって燃え上がった。それに続き腹部にパンチッ、そしてそのまま蹴り飛ばされた。

 ちょっと不味い。体力がジワジワと消費してきた。炎症に加えて右腕の骨が粉々。これは敗戦濃厚ムーヴなんだが、俺でなきゃ立ち直れないね。


「その程度かよ!まだ俺はピンピンしているぜッ!」


 俺は持ち上がらない右手を降ろしていて左手だけ挙げて虚勢を張った。

 そのまま赤鬼の傍まで近づいて行く。


「威勢だけは立派だな。だがッ!お前の身体は既にボロボロッ、せいぜい拳を握る程度だろ?」


 そうだな。

 でも、こっちはガッツがあるから負ける事はない。


「行くぜッ!」


 俺は走り出した。そのまま大きくジャンプして、赤鬼の真正面まで向かう。

 赤鬼はカウンターの構えになるが俺は空中で横回転を掛け赤鬼のカウンターパンチを躱して骨が無くなってしなやかになった右腕を鞭の様に赤鬼のうなじを叩きつけた。


「ッ!やったな」


 スーツの性能を停止させた。と思ったのだが、うなじから大量の空気が放出された。そして、スーツにあった青いエネルギーラインが赤色に染まった。


「これで機能が大幅に向上された。アタックモードだ。防御は下がるが機動力は上がったぞ」


 まさかのブラフッ!俺にワザと攻撃させる為の演技だったのか。

 やられたッ!あんにゃろう。だが、防御が下がったって言っていたからダメージは通る筈だ。つか、そろそろ刀用意した方が良い気がするぞこれ。だが、この物凄く痛い右腕どうしよう。


「第二ラウンドだッ!行くぞ」


 さっきまでのスピードとは向上していた。

 対応出来ない事は無い。赤鬼の全力パンチを紙一重で躱して、俺はある場所に走った。最中、赤鬼からの追撃も妖気レーダーで探知、そして躱す。

 

「どこへ行く気だ?そんなに腕をぶらぶらさせてッ」


 俺が向かう場所は先程俺が足を踏み外した地面ッ。

 おっさん曰く妖気法能力で干渉した場所は解除しない限り残り続けるらしい。だが、それには主に三つの型に分類出来るらしい。

 本人の定めた制限時間の間や定められた条件が満たされるまでの時間、発動し続ける長期型。本人が発動と解除を自由に扱える代わりに妖気の消費の激しく長時間は使えない短期型。これらは本人の意識が途絶えると強制的に能力が効力を失うが、最後の永続型は発動の際にとてつもなく重い条件に加えて使用する妖気が莫大な代わりにとてつもなく強力な効力が使用可能で発動後は能力が決して消える事が無く永遠に残り続くらしい。永続型を最強と目する人も多いらしく、リスクの大きさから使える者はごく僅かである。

 これらの中でさっきの地面を軟化させた能力は長期型だと思われる。その予想が当たっていたら、まだあの土は柔らかい筈だ。


「そ、れ、はッここだァッ!」


 そして俺が作った小さなクレーターの土を取った。そして以上に柔らかい土を布。を脱いで右腕の関節部分と肩に妖気で馴染ませて、腕を復活させた。関節だけだけどね。関節が曲がるだけで腕は滅茶苦茶痛いけどね。


「それどういう原理だよ」


 赤鬼は謎の溜息を吐いたが、俺も原理は分からないまぁくっついたんだからしょうがないね。後は時間が過ぎないことを祈る。


「ここからは反撃だッ!」


 俺は拳を構えて戦闘態勢を取った。



 ##############



 遡る事半日前


 俺が宿の外で刀を研いでいると、秋山さんが俺たちの宿までやって来た。


「どうぞ、お納め下さい」


 そう言って水色と黄緑色、黄色の柄の綺麗な風呂敷を手渡された。


「これは何ですか?」


「戦いに行くのであればこれを着て行って下さい」


 服って事か。確かに高校のジャージで挑もうと考えていたから、丁度良いかもしれない。


「中身見ても良いですか?」


「どうぞ。大したモノでは無いですよ」


 そう言われたので俺はその場で俺は風呂敷を開いた。

 そこには色鮮やかな染色の施された綺麗な袴が畳まれていた。その仕事はとても丁寧で色の濃さも均一で職人技として素人から見ても素晴らしい仕事だ。

 だが、一つ言いたい事があるッ!それはッ、


「真っ赤っ。ですね」


 その生地全体は真っ赤に染色されていて大口の袖の方には淡い桃色の柄の桜の花弁や金色(こんじき)の刺繍で炎を表現している。因みに馬乗りというズボンも先まで真っ赤。これを着れば全身真っ赤の男性が完成ッ!


「好きな色と聞きましたので。せっかくなのでその色を中心にしてみました」


 これ着るの?マジ?ダサくね。失礼だけどダサくね?しかも戦闘においてこんな薄い生地で大丈夫?これならまだ高校の指定ジャージの方が幾分かマシなんだけど。


「お気に召しませんでしたか?」


「いえいえ。そんな事はカッコいいですね。はい、、、格好良い。これって秋山さんが作ったんですか?」


 これでダサいから着ませんとか言ったらドクズになっちまうからここは興味深々なフリをしよう(ドクズ)。


「そうですね。私が一から染色して。刺繍もしました。これでも昔は染め物を職としていましたので。これを人生最後にして最高傑作です」


「そうなんですね。大事にさせてもらいます」


 まぁ、着て戦うしかないわな。

 破れたりしたらごめんなさいね。


「では、頑張って来てください。あとそうだ。次いでに足袋も要りますか?」


「大丈夫です。流石にサイズが無いと思うので。遠慮しておきますね」


 俺の足のサイズは平均よりも大きい為、流石にこの村には無いはず。そもそも履きなれないモノを履くと動き辛いと思うぞ。


「そうですか。分かりました」


「最後にこの服の着付けって言願い出来ますか?イマイチ分からないんですよ」


 そうして、早朝から着付けの練習をしたのであった。 



 ##############



 まずはダッシュで赤鬼の傍まで走る。

 赤鬼は何か警戒した様で身構える。そこを直前に横に飛ぶ。ほんの一瞬赤鬼も反応したが俺はカウンターを打つよりも先に赤鬼の横腹を左腕で殴り飛ばした。

 だが、一番最初の攻撃した時と装甲の防御力はあまり変化が無い気がした。


「さっきと防御力変わってないんじゃないか!」


「ミサイルから銃弾までダウンしているよッ」


 クソッ変わってねぇ。だがそのまま押し続ければ吹っ飛ぶ!はず。


「どうりゃあァ!」


「グッ!」


 勢いに負けた赤鬼はその場に押し倒れる。

 だが赤鬼は倒れる方向に側転とバク転をして向きを直しこちらに飛んでくる。


「まだまだァまだァ!」


 赤鬼はそう言って二つの拳を重ねて手甲をドリルの様に高速回転を掛ける様に向かって来る。

 それに対し俺は右拳に一点集中の全ての妖気を集中して迎え撃つ。もちろん勝てる筈は無いが無いッだが、両手の手甲が粉々に吹き飛んだ。


「ッ!」


「大成功だァ!これでお前の攻撃力は大幅にダウンだぜ」


 アイツの機械仕掛けの武器手甲に泥岩を投げた時に短い隙間に侵入させておいた。そんな状態で機械を作動させた場合どうなる?そう故障が起きる。その状態に回転の負荷が掛かるはず。そこに適切な角度に強い衝撃を与えれば、壊す事が出来る筈だ。俺はそこを狙ったのだ。右腕痛い。

 砕けた手甲の中から毛も生えていない綺麗に手入れの行き届いた綺麗な白い肌の手が露出した。


「だからどうした?俺にダメージを与えられないままなら、俺の方が有利だぞ」


「それもぶっ壊すから安心しろよ」


 今の所あのスーツを壊す算段が思いつかない。どんなに拳に妖気を纏っても先程の様子からだと、より鋭いモノに妖気を纏ってぶっ刺したら突破できるはず。という事で琉助から刀を回収したいのだが、琉助の場所が遠いのよ。マジで。


「赤鬼さん。俺武器取って来て良い?」


「別に構わないが、俺の攻撃をかいくぐって取りに行けたらな」


 ダメだったわ。ならば、代案を考えよう。


「おっけいだ。なら今は必要ないね」


 俺は大きく後ろに飛び更にそこから左手だけでバク転して赤鬼との距離を取る。

 バク転人生で初めてやってみたけど意外と出来た。


「逃げるだけでは俺には勝てんぞ」


 赤鬼はそう言うが戦略的撤退という手段を取れない者は戦には勝てないのだよ。

 と言っても俺は逃げないけどね。


「逃げてくれてホッとしてるんじゃねぇの?」


 ここぞとばかり煽りを入れてみる。俺の下手くそな挑発に乗ってくれればうれぴーな。


「逃げるのも勝手だが。ここで逃げる様な人間ではない事は理解している」


 あらま信頼されているのね。

 上手く返されたな。


「俺の事良く理解してるじゃん。もしかしてあの船で俺と何かあった?」


「ッ!お前は、、、、、、。さあな。なんとなくそういう風に思っただけだ。また近づいて来るのであれば覚悟があるという事で良いんだな?もう一度言うが俺は今回は容赦はしないぞ」


 赤鬼が言う通り俺はせっかく取った距離を歩いて詰めていた。

 何故かって?ぶっ飛ばす準備が出来たからだよ。


「覚悟が無い奴はここには居ないだろ」


「それもそうだな。覚悟を持たない奴はあの船では生還出来ないしな」

 

 俺は大きくジャンプして赤鬼に飛び掛かって顔に張り付いてポコポコと殴る赤鬼は俺の事を剥がそうとするがそこで俺は赤鬼の角を掴んで離れると同時に顎を蹴り飛ばした。


「喰らえッ!」


 そしてそのまま角を掴んだまま裏側に回り込んでうなじに向けて両手を握り合わせて叩きつけた。

 一番最初に叩いた時よりも数十倍の威力の為、何らかの制御装置を破壊出来る筈だ。


「クッ!お前ェ」


 スーツ全体が機械の壊れる様な音を鳴らしながら、そして大量の煙と共に光のスーツに有った赤いラインが七色に点滅しながら消滅した。


「これでほとんど同じ条件だな」


「いや時間切れだ。その土に掛けた能力のな」


 その瞬間、さっきまで関節部分に馴染ませたゴム土はただの土に戻ってしまった為、その場にガクッと落ちた。マジか、ここまでか。


「さてと、ここからお前はどう抵抗するんだ?」


「拳で。と言いたいところだけど、刀でッ」


 俺はポケットからあるキューブを取り出した。それにはある物が入っている。それは刀だ。なまくら刀だけど。俺はキューブを作動してそれを取り出した。


「それがお前の武器か?それではあの男が持っている刀は何だ、ブラフか?」


 明らかに怪しんでいるな。

 だが、あの刀を回収するには時間を稼ぐ必要がある。琉助にはあらかじに俺がキューブから何かを取り出したら刀を寄こせの合図だと伝えておいた。それに気付いてくれるマジで感謝。


「普通に考えろよ。武器を他人に預けておく馬鹿が居るか?アンタが卑怯な手を使った場合の手段としてあらかじめ準備させてもらっていた」


 本当はあの刀をキューブに仕舞いたかったが、何故か拒否反応を示されて無理だった。

 だから、こういう形になった。

 俺はなまくら刀を鞘から抜いたが、なまくらでもしっかりと鋼で作られているので重い片手で練習通りに扱えるかしら。


「そうか、だったら俺も予備を取りださせて貰おう」


 赤鬼はそう言うと突然赤鬼の両手を紅い金属が覆った。最初に装備していた丸みを帯びた手甲よりも指などの繊細な動きがしやすいように各関節部分が金色に装飾されている。大きさは手首と肘の中間部分までを覆っておいて防御力も高そうだ。

 

「更にまだあるぞ」


 赤鬼は徐に今まで着ていた壊れた戦闘スーツをいとも容易く引きちぎりその色白な肉体美を露にした。だが即座に何かのデヴァイスを胸に張り付けてそこから真っ黒な戦闘スーツが出現して肌全体を覆った。


「これで俺も準備が完了だ。これは最新式のナノ戦闘スーツ。今までの俺とは訳が違うぞ」


 マジすか。ナノテクノロジーって完成していたのね。

 それ本当にズルくない?変身している間に琉助から刀回収すれば良かった。


「あのー俺のこの腕も振り出しに戻せませんか?」


「残念だが、生物の傷を治癒させる妖気法能力はこの世に存在しない」


 赤鬼がそう言うと顔全体もスーツで覆われて、真っ黒だったスーツ全体が真っ赤に変色した。

 今までの姿よりも赤鬼という言葉が似合うだろう。


「ちょい待てよ。これって不利じゃね」


「事前の準備の差だ。俺はお前に全力を出すと決めた」


 赤鬼の両手が燃え上がった。


「この装備は俺の能力を使う事に最適な改良を施した。この炎鞭腕(えんべんわん)を使う為にな」


 まさに燃える鬼拳(きけん)で危険だな。

 あの感じから考察するに奴の能力は触れた箇所に火をつける事が出来る。というモノ。描写から察するにこちらも長期型。おっさん曰く短期型は最長でも一分以上は持続して使えないらしい。俺の事を踏みつけた時に使った際は脚が離れた時に能力が消えていた為、制限時間以外の解除方法があるはずだ。つまり弱点はある。


「しょうがないからやるしかないな」


 俺は片手でなまくら刀を持って赤鬼に向かって行った。



 ##############



 遡る事、一日前 深夜


 荼鬼が既に眠ってから一時間程経過した。


「健君と会ったのかい?」


 影村寿雄が俺達の潜伏している洞窟に現れた。


「ああ、会いましたよ。アンタの能力のせいで俺の事はほとんど覚えていないようでしたけど」


「それに関しては君には関係の無い事だと思うよ。我々の内輪の話だからね」


 影村は白スーツのポケットからあるデヴァイスを取り出した。


「これを」


「何ですこれは?」


「アメリカで開発された新型の妖気法兵士用アーマーさ。笹原君の能力を再現した向こうの軍が制作したどこでもスムーズに装着出来るらしいよ。性能は君たち鬼陣営の軍の使用しているのはもう旧式だね」


 笹原の能力の物質を縮小する能力を発展させた、特殊な素材で作られたキューブに縮小して閉じ込める技術を利用したのだだが、笹原のモノと違う点は使い捨てではない点、装着と着脱部位の選択なども装着者の自由に選択できる為、十年間はこれを超える装備は製作出来ないと言われている。


「こんなものを俺に渡しても良いんですか?ただでさえ俺と健では実力差が掛け離れているですよ。それにその事がバレればアンタもヤバいんじゃ」


「その点は問題は無いよ。これぐらいの試練を突破できなければ彼は役に立たない。バレたとしても彼にワシをどう出来ると?」


 そこには圧倒的な自信が垣間見れて赤鬼は少し恐ろしさを感じ見をこわばらせた。

 

「最後にもう一度聞くけど、君は健君と殺し合うのは良いのかい。君は死ぬよ」


「どちらにしろ殺される。鬼を裏切ってスパイ活動をしているのだからな」


 赤鬼はスパイとして天山にスカウトされていて一年前から行動していたが、日本の妖気法陣営の裏切り者により彼がスパイであるという事が漏れてしまい、いつ処刑されるか分からない状況なのだ。その為、妖気法陣営で保護する事も考えていたが、天山の提案で山門健の実力の確かめる試験として利用される事になった。

 影村も当初は反対していたが、天山の硬い意志と本人に負けて、現在に至る。


「一つ言っておくと天ちゃんが君が健君に勝利して殺害した場合はこちらの陣営にスパイとしてではなく戦闘要員として引き入れて安全を保障しよう。だが、健君に対して本気で戦わなければ、ワシが健君を殺す事になってしまう」


「ッ!聞いていないぞ。そんな事」


「本気の君に勝ってない時点で必要ないからね。これはワシの独断だけど」


「アンタらは本当にいい性格してますね。分かりましたよ。すればいいんですね。どっちも上は屑だ」


「争いは同じレヴェルでしか起こらない。だから、必然上に立つ者は合理主義の屑になるのさ」


「ロクな死に方しねぇぞ」


「知ってるよ。それくらい」


 そう言って影村は洞窟から出て行って闇の中に消えて行った。



 やらかしました。

 健を追い詰め過ぎたかもしれません。ですが、頑張って書きます。

 今更言いますが、僕が書く時って内容を大方決めてから書くことが多いのですが、書いている最中にテンションが上がっていきあたりばったりで本編内容の追加があります。だから、偶にそのせいでピンチになってしまいます。

 因みに赤鬼があの装備をナノテクと言ったのは、装備の提供者が特定されない様にする為の配慮です。後、妖気法能力の説明はもう少し先に説明しますね。

 最後に次回は琉助VS荼鬼の戦い一本でやる予定です。

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