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まだ言えない秘密


「俺ら言ったからじゃあ次、時計回りであかねな!」


「え?あ、えっと……。」


 自分が言いたいことだけ言って、私たちを混乱させるだけさせて翠は一通り満足してしまったのか、いつも通り瑠璃の隣に座っていた私に話を振ってくる。


 誰にも話してない秘密はあるけど、絶対に言えない。


『私、朔のことが好きだって自覚したの』


 なぜそうなったのか経緯を聞かれても困るし、隣に本人が座っている。


 待っててと言っておいて、こんな形で告白するなんて、あり得なさすぎる!


 翠が言ったことに混乱しているふりを装って、何かいい感じの秘密を頭の片隅から絞り出す。


 この際、うっかり寝坊して遅刻しかけたとか、宿題忘れて怒られたとかなんかそんな感じのしょぼい秘密でいい!なんかいいの考えろ!私!


 目を泳がせること数十秒。


 翠が多分、なんか言えよみたいなことを口に出そうとした時に、私はあることをみんなに言ってないことを思い出した。


「あ!夏休み中、ダンスで海外の大会に挑戦することになったの!……秘密っていうよりは言い忘れただけだけど。」


「えー!?そうなの?」


「樹に続いて先を越されたか……。」


 私の挑戦を素直に喜んでくれる瑠璃となぜか悔しそうな翠。


 先を越されたなんて私の方が言いたい。


 翠の将来の夢は、世界一のマジシャンなのもあって海外挑戦したいとは常々言っていた。


 ところがバレーボールのアンダーの日本代表にすでに何度か選ばれていた樹に先を越されて、その時もだいぶ悔しがっていた。

 それに続く形になった私のことがきっと羨ましいんだと思う。


「どこの大会出るんだ?ダンスだったらアメリカとかヨーロッパか?」


「アメリカ!」


「パスポートとか諸々の準備は大丈夫なのかい?」


「うん、先生――ダンスの先生とか親にも手伝ってもらいながら一通りの準備は終わったよ。」


「……全国は?」


「えーと、全国大会の後、八月のお盆ぐらいの大会に出るの。エントリーはとりあえず終わってる!」


 翠の爆弾発言に固まっていた他の人たちもようやく戻ってきたのか色々質問が飛んでくる。それにある程度答えていったところで翠がパンと手を鳴らした。


「あかねに対してはそこまで!全員分聞く時間なくなるだろ!てことで次、朔!」 


 朔は面倒くさそうに舌打ちをして、目を閉じて何か考えている。さっきの私みたいに、何かいい感じの秘密がないか考えているんだろう。


「最近、家に犬が増えた。次、樹。」


「俺か?俺は……。」


「おい、サラッと流すな朔!詳細もっと言えよ!」


「お前だって言ってないだろ。じゃあ、聞くけど、お前どんな告白の仕方したんだ。」


「ぐ……。」


 一言だけ言って流そうとした朔に翠が突っかかるけど、言い返されて黙り込む。


 それを話を続けていいと思ったのか樹が続けて話す。


 それにしても、犬か。全然知らなかった。朔がペットの面倒を見てるイメージがないから、悠月ちゃんあたりが拾ってきたのか、おねだりして朔が負けたんだろうか。


「どこかまでは流石にまずそうだから言わないが、実質大学が決まった。というわけで、ヒロ。」


「そうなんだ、一応おめでとうでいいのかな?私は、二学期のあたり短期だけど留学に行くことになったよ。体育祭は今年いないからみんな頑張ってね。」


 二人は流れるように自分の秘密を言って、一旦話の流れが止まった。


 反応する暇もないぐらいスムーズに流れてしまった。


 樹はきっとスポーツ推薦というか、大学側からスカウトが来ていないわけもないし、ヒロ君も留学に行くかもしれないと言っていたから、そこまで驚きはなかった。


 だいたい、翠が初っ端で飛ばしすぎた。あんなことに勝てるようなインパクトのある秘密なんて、みんながみんな持ってるわけがない。


 いつの間にかステーキもみんな食べ終わって、とうとう最後のデザートが運ばれてきた。


 食べながら話すことはさっきお互いに打ち明けた秘密について。


 ――とは言ってもほとんどが翠と瑠璃のとんでもないスキャンダルについてのことだった。


 みんなが問い詰める中、瑠璃が素直に答えようとすると、翠が恥ずかしいのか妨害してくるおかげで、全然何にも聞き出せなかった。


 夏休み中に女子会を開いて、事情聴取を開かないと。亜矢たちと予定合えばいいけなあ。


 そうこうしている間にデザートも食べ終わって、この会もお開きの時間になった。


「………。」


「………。」


 そして、店を出てから私はとんでもなく気まずいことになっていた。


 時刻はもうすぐ午後十七時。


 微妙に沈んでいる太陽が相変わらずジリジリと照りつけてきて熱い。


 あのあとお店を出て、最寄り駅がみんな同じだから、一緒に帰る流れになるかと思ったらそうはならなかった。


 樹はバレーボールの道具を見に行って、ヒロ君は企業の奨学生の関係で用事があって、瑠璃と翠はこれからデートなのと言って、家に帰る方向の電車に乗ったのは私と朔だけだった。


 ここまでは別にいいんだけど、最寄駅についてからもなぜか朔がついてくる。朔の家は反対側なのに。なんで?


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