幼馴染と衝撃の衝撃の告白
全力ダッシュである程度学校から離れたところで、先に学校を出ていたであろう瑠璃に追いついた
息も切れていたけど、なんとか声を張り上げて瑠璃に話しかける。
「瑠璃!置いてかないで!」
「わ!あかねちゃん!?わざわざ走ってきたの?」
瑠璃はかなり驚いて足を止めていた。そのおかげでなんとか死にかけながらも瑠璃に追いついた。
「一応メールで先に行くって送ってたんだけど……。」
「ごめん、弥ちゃんと話し込んでた!」
「あと、朔ちゃんに会わなかった?昇降口ですれ違ったから、あかねが教室にいたら呼ぶように頼んだんだけど……。」
「え!?あ……先に行っといてって言っちゃたかも。」
瑠璃の言葉で、朔にとっても悪いことをしてしまったのに気づいた。
わざわざ迎えにきてくれたのに、激突した挙句、よく分からない喧嘩をふっかけてしまった。このあと会うのに一体どんな顔をすればいいんだろう。
ただでさえ、文化祭のことしたせいで、私は朔に会うたびに、内心、一方的に気まずくなってしまっているのに。
ギリギリ頑張って態度には出していないつもりだけど、今日はうっかり態度に出してしまいそうだ。
そういえば、瑠璃の姿を見るまでにだいぶ走ったのに、朔の姿を見ていない。私より先に学校を出たはずなのに。
……まあ、でも今はそんなことはどうでもいいや。今日は人一倍表情に気をつけないと。
楽しい楽しい、幼馴染だけのご飯会が今から始まるというのに、私は一人憂鬱になっていた。
楽しそうな瑠璃と対照的に心ここにあらずのような相槌を打ちながら、レストランの最寄りまで二駅。
電車を降りてちょっとしたら、着いた見るからに高校生が入っていいような感じじゃない、敷居の高そうなレストランにさらに憂鬱な気持ちで入り込んだ。
レストランに入るなり、「お連れ様がお待ちです。」と店員の人に案内されて、思わず瑠璃と顔を見合わせた。
一体どうして名前も聞かないのに、予約の客だってわかったんだろう。瑠璃とヒソヒソと話しながら、店員さんの後に続いた。
案内された個室にはすでに、翠、ヒロ君、樹が座っていた。
瑠璃は翠の隣に、私はさらにその隣に座った。私の左隣だけが空席になった。
このままだと隣に座るのは朔になるだろう。
本当にうっかりボロを出さないようにしないといけない。いつも通り過ごさないと。
このメンツ――特に翠にバレたら亜矢と同じぐらい、別の方向でめんどくさいことになる。
「なんだお前らこそこそして。」
ヒソヒソ話していた私たちの様子を翠が半目で睨みつけながら咎めてくる。別に悪いことをしているわけでもないから素直に答える。
「名前も言ってないのに、席に案内されたから不思議で……。」
「そりゃ、こんな店に来る高校生俺らぐらいしかいねえからだろ。」
翠にそう言われて初めてそのことに私も瑠璃も気づいた。
目を丸くしてしまったのをさらにバカにされて、言い返したくなったけれど我慢した。
こんなところで声を荒げようものならさらに「マナーって知ってる?」と煽られそうな気がしたから。いや、翠なら絶対にする。頑張って睨みつけるだけに抑えておく。
「あれ、そういえば朔ちゃんは?あかねちゃん、朔ちゃん先に行ったのよね?」
「そのはずなんだけど……学校出てから見てないんだよね。」
「なんだよあいつ遅刻か?」
「翠。まだあと五分あるぞ。」
「みんなで早めの行動しすぎたかもね。」
「あいつ遅刻魔だからな。」
「あんたがいうな。」
「翠が言えることじゃないよ。」
「お前がいうな。」
「あなたが言えることじゃないかな。」
「なんなんだよみんなして!」
瑠璃の一言で、話題がここにまだいない朔のことに変わる。
その話題も、翠が変なことを言ったせいで、一斉に翠をイジるターンになってしまった。
そうして盛り上がっていると、個室のドアをノックされて、部屋の中が静まり返る。自習中に先生がきて、慌てて黙った時みたいだ。
扉が開くのを尻目に、みんなと騒ぎすぎたかもーーとアイコンタクトをすると、店員さんは「お連れ様をお連れしました。」と行ってすぐに引っ込んだ。
代わりに入ってきたのは朔だった。それを見た私を含めて何人かの口から安心したようなため息が漏れる。
「おい、朔!遅刻してくるなよ!」
「一分前だし、お前に言われたくない。」
「うるせー!さっきその流れはやってんだよ!」
「翠うるさい。」
「声大きいかも。」
「静かにしろ。」
「声のトーン落とそうか。」
「………うるせえ。」
意気揚々と朔のことをからかうつもりだった翠は、朔に同じようなことを言われた上、みんなから注意されて声がめちゃくちゃ小さくなった。
ちょっと言いすぎたかもしれない。
けど、どうせ一分後にはケロッとしているだろうことが今までの経験からみんな分かっているから、誰一人として慰めようとしていない。
その証拠に、翠以外のみんなはもうすでにメニューを引っ張り出して、とりあえず何を頼もうか話し始めてる。今回はコース料理らしいから、注文するのは飲み物だけだけど。
それぞれ飲み物を決めて、注文して、ドリンクと一緒に前菜の料理が出てきたところで、いつの間にか復活していた翠が急に立ち上がった。
乾杯の音頭を取ってくれるんだろう。お酒なんてもちろん誰一人頼んでないし、飲める年でもないけれど、ちょっと大人っぽくこういうことはやっておきたい。クラスの打ち上げなんかでもとりあえず乾杯はしてるし。
「それじゃあ、えーと、なんの集まりだこれ?まあいいや、暁に感謝してかんぱーい!」
「「かんぱーい」」
なんとも閉まらない合図に笑いながら、乾杯をする。
ドリンクもお店がお店だからかやたらおしゃれそうな名前のものが多かった。
私が頼んだのはなんか桃とかの類のジュース。ちゃんとしたドリンクの名前は正直、覚えていない。
前菜もなんかすごい名前のサラダだったけど、私はとりあえずサラダだなということしか認識できなかった。
そのまま、いろいろなことを喋りながら、運ばれてきた料理をヒロ君以外のみんなが苦戦しながら食べることを繰り返して、いよいよ今日のメイン料理がやってきた。
メイン料理がステーキなことだけはなんとか把握していた。
きっと男子が多めなのと、私と瑠璃も結構食べる方なのもあって、弥ちゃんが気を利かせてくれたんだと思う。やっぱり、魚とかよりはテンション上がるしね。
おぼつかない手つきでステーキを切り分ける。
いつの間にか会話が途切れてしまった。やっぱりステーキとかはちゃんと温かいうちに食べておきたいし、みんな食べることに集中している。
「いや、黙食じゃないんだからなんか話そうぜ……。」
自分だってついさっきまで黙々とステーキを食べていたくせに、先にほとんど食べ終わったせいか、翠が文句を言い出す。
「それはそうだな。というわけで翠がなんか話題を考えてくれ。」
樹が翠に同調するようで、どこか突き放すような口調で言い放った。
本人的には、楽しく会話を回そうとしてくれたんだろうけど、もう少し言い方どうにかならないかな。ここにいるのが私たちじゃなかったら場が凍りついていそうだ。
もちろん、みんなそんなことには慣れきっているからいつも通りのままで、指名された翠に至っては、よくぞ振ってくれましたと言わんばかりにドヤ顔をしている。よっぽど何か言いたいことでもあるのだろう。
「じゃあ、みんなでまだ誰にも話してない秘密言おうぜ!とりあえず、俺から……いや、俺と瑠璃からな!」
待ってましたと言わんばかりに翠が胸を堂々と張る。
いつも通りの調子に乗りやすい態度に呆れつつも、翠の発言に違和感を覚える。
翠だけじゃなくて、翠と瑠璃から……?この二人に関係ある秘密って何?
「俺たち付き合いましたー!」
「えへへ。」
私はうっかりフォークをテーブルの上に落とした。
朔は飲んでいる途中だったせいで派手にむせた。
ヒロ君は机か椅子に足かどこかぶつけてすごい音を立てた。
樹はステーキを食べようと口を開けたままの状態で固まった。
私たちは翠の発言のせいで、それぞれ変な行動をした。それでも全員の表情は多分一致している。
『驚愕』の二文字に尽きる。
言い放った本人と、その共犯者とも言える二人は照れくさそうに笑っている。
それこそ付き合いたてのカップルみたい――というか本物だけど。
驚愕しすぎて固まってしまった私たちの中で一番最初に動けたのは私だった。まあ、頭は回ってなかったけど!
「は?え?いつ!?」
「昨日!」
「なん……どうして!?」
「俺から告白した!」
なんかこうもっと具体的に質問しないといけないはずなんだけど、単語しか喋れない。
瑠璃も翠も自信満々に答えてくれるけど、私が知りたいのはその詳細なのに!
それに、ようやくかっていう安心と、なんで今!?っていう疑問と、どんな告白したの?ていう好奇心と、先を越されたっていう焦りで頭の中はごちゃごちゃだった。
まさか、瑠璃と翠に先を越されるなんて思いもしなかったのだ。
くっつきそうでくっつかないを何年も繰り返していたから、なんのきっかけもないのに、いきなり付き合うだなんて思わなかったのかもしれない。
それとも、私が知らないだけで二人の間にきっかけはあったんだろうか。文化祭の私たちみたいに。
そんなしょうもない考えごとが浮かんでしまったせいで、翠たちに聞くべきことはたくさんあったのに、それ以上何も聞けなかった。




