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神城千嘉の述懐

すみません、ep19「伊藤あかねは進路に悩む」と、ep21「進路相談」の間に1話抜けていました。


抜けていた分のep20「幼馴染たちの進路」を本日追加しています。


「やあ、待たせてしまったね。」


「待たせてしまったねではないんですよ!だいたいあなたはいつもいつもーー」


 駅前のロータリーに待たせておいた車に乗り込んだ瞬間、かけられた小言を聞き流す。小言が流れ出すと同時に運転手はまた始まったとでも言わんばかりの顔をして、アクセルを踏んだのを後部座席から見ていた。運転手を務める彼は私が小言なんぞ聞きやしないことをとっくの昔に諦めているのに、隣に座る人はいまだに諦めていないようだ。最も、しばらく聞き流していたら、疲れたのか、呆れたのか、ため息を吐いて、言うのをやめてしまった。


「本当に昔から変わりませんね。あなたは。また、女性の方を口説いていたのでしょう。」


「おや、心外だな。ただの進路相談に乗っていただけだよ。」


 隣の男は、私より年上。それでも敬語も使わず、ただの友人のような言葉遣いで接しても怒らない。ずっと昔からそうだった。


「また、そんなことをーー」


「いいわけじゃないさ。今世(いま)の友人、幼馴染が大層悩んでいそうだったからね。助けてあげただけだよ。大人としてね?」


「……はあ。あなただって、大学受験は初めてでしょう。前世(まえ)はそんなものなかったでしょう。」


「忘れたのかい?悩める部下たちの相談にはよく乗っていいただろう?」


 前世の記憶がある。今よりも何百どころじゃない、紀元前近くまで昔の記憶が。隣に座る男も、運転手を務める男も、その時から見知った顔だ。最も転生なんてしたのは私だけで、この二人は不老不死で、正体は人間ですらないのだけれど。

 前世の子供の頃はまあまあ最悪だった。人ではない血が混じっていたせいで、もうなんだったか覚えていないが、何かの儀式の生贄に最適だったらしく、両親ごと村を焼かれ、よくわからない模様が描かれた地面の上で、死にかけていた。その時たまたま通りかかったあの方が助けてくれたおかげで、それなりに恵まれた人生を送ることができた。病にかかってしまったせいで、長生きはできなかったけれども。この二人にもその時出会って、一緒に色々なことをした。


 まあ、今世でも似たような理由で、両親は殺され、私もとうとう殺されかけた。その時ちょうど前世の記憶が戻ったのだった。

 そのあとなぜかまた、梧桐のよく似合うあの方に助けられた。それどころか、あの方は自分の経営する企業の奨学生にしてくれて、衣食住まで面倒を見てくれている。住に関しては、朔のお母さんのご好意によって、大家をしているマンションに住まわせてもらっているから少し違うかな。まあ、なんにせよ、生活のほとんどの面倒をあの方に見てもらってる。

 もちろん、私だって何もしてないわけじゃない。前世から変わらずに出来だけは良かった頭を使って、貢献はしている。変わらなかったことといえばもう一つ、前世の死因の病にまでかかるところまで同じとは思わなかった。

 最も現代では、治療法が見つかっているのと、病が悪化した原因のハードワーク(生き急ぎ)をする必要がないから、数年大人しくしていれば治るはずだ。


 正直、学校に行く必要なんてなかった。それでも、高校まで通わせてもらっているのは、僕(私)のわがままだ。大きな事件に巻き込まれてしまったと思ったら、一人称も、口調も、性格も変わってしまったのに、変わらず接してくれた、幼馴染と学友たちには頭が上がらない。

 ほとんどが前世(私)のことに引っ張られてしまったけれど、今世(僕)だってまだ残っているのだ。今世(僕)の人生だって無くしたくはないし、続けていきたい。たとえ、どれだけ前世の影響が強くても。


――だから、どうか、せめて僕が死ぬまでは、君たちとの縁が続きますように。


 前世も今世の友人たちには絶対に聞かせられない願いをかけながら、あの方に会うため、車に揺られていた。



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