体育祭ダイジェスト 前編
『せんせーい!私たち全校生徒1202人は!』
「行進の点はどのブロックに入ると思う?あかね?」
「うーん、白が綺麗に見えたけど、後ろの方はだいぶしっちゃかめっちゃかだしな……平均的に見てよかったのは青じゃない?」
ブロック長たちが朝礼台前のマイクに向かって、背を逸らしなが選手宣誓をするのを尻目に、私とヒロ君はコソコソと入場行進の加点がどのブロックに入るのかを予想していた。病気で見学のヒロ君と、足を捻挫してまだ完治とは言い難い私と、そのほか様々な事情で見学の数名は、入場行進も応援合戦も免除された名実ともに完全な見学組だ。無駄にブロックTと帽子を買わされたのが若干虚しい。特に帽子なんかはずっとテントの下にいる私たちにはほとんど必要ないし、気分だけでもってことで一応ヘアアレンジにも気合を入れたから被りたくない。編み込みが崩れるのはだるい。
隣にいるヒロ君も同じで、いつも以上にヘアセットに気合が入っていた。本人曰く、いつも通りの髪型で登校したところ、なぜか教室で三年生の先輩たちが、シャンプーとドライヤーと、アイロンなどのヘアセットの道具を持って待ち構えていたらしい。
男子の先輩に部室棟のシャワー室に連行されて、髪を洗わされ、乾かすところまでは自分でさせられたけど、その際にも色々と指示が飛んできたらしい。多分、その後のヘアアレンジをしやすくするためだろう。
そしてそのまま、教室で女子の先輩たちに好き勝手ヘアアレンジされたらしい。曰く、こうすればうちのブロックの女子の士気が上がるからとのこと。確かに、この学校で誰が一番格好いいかってなったら、満場一致でヒロ君だ。だけどそこまでするかな。
三年生の先輩が、最後だからって、自分たちの好きな髪型してるヒロ君をみたかっただけのような気がする。そのせいで入場行進が始まる前からヒロ君はだいぶ疲れていた。
本人はここまでされたんだから、頑張ってもらわないと割に合わないと言って、入場行進の時に自分のブロックの女子にだけ笑顔で手を振ってた。女子の反応は、見学なのに体育祭マジック(そんなものなくてもこの人はモテているが)が多発してそうな反応だった。それで行進が乱れていたから逆効果な気もするけど。
開会式もコソコソ話してたらいつの間にか終わり、準備体操が始まった。一際やる気のない奴がいたから流石にやばくない?と話していたら、朔だった。ヒロ君と二人で笑いを堪えていたら、こっちを睨んできた。若干動きがマシになったのを見て、堪え切れずに吹き出してしまった。
開会式の後は、すぐスウェーデンリレー、走者が変わるごとにどんどん距離が伸びていくリレーが始まった。リレー系の種目は基本学年ごとに合計で三回戦行うけど、案の定陸上部が固まっているブロックが強かった。
二年生女子のアンカーなんて、元々あんまり距離がなかったとはいえ一番後ろにいたのに圧倒的な速さで一位まで順位を押し上げていった。
400メートルの全国大会ファイナリストらしい。そりゃ、アンカーとはいえ300メートルしかないスウェーデンリレーなど余裕だろう。
それでいて、リレー系の種目は点数が高いものだから、基本的に体育祭は陸上部が固まったところが勝つ。そういった意味での優勝候補は私のところの赤ブロックと、ヒロ君のところの青ブロックだ。行進の点数は予想通り青ブロックに入ったから、スウェーデンリレーが終わった段階だと青がやっぱり一位だった。出てないのに自慢げなヒロ君が若干鬱陶しい。まだ一種目しかやってないんだけど!
次は大縄跳び。割とどこのブロックもすぐ引っかかっていたけど、制限時間ギリギリで黄色ブロックが五十回の大台に乗り、ほぼ勝ち確で喜んでいた、けれど、白ブロックが制限が過ぎてから(私の高校大縄跳びのルールでは、飛んでる最中に時間が来ても引っ掛かるまでは飛び続けていい。)黄色ブロックの記録に迫り、会場のほとんどの人が手に汗握る展開になっていた。まあ、私もヒロ君も自分のブロックが最下位か下から二番目なのがわかってたから、あんまり盛り上がらなかったけど……。
次は男子のマスゲーム。各ブロックごとにそれぞれ披露をしていき、順位発表は閉会式までのお楽しみ。毎年の如く、真面目にやるターンとおふざけのターンがどのブロックもあった。
正直、おふざけのターンは失笑を受けることが8割、爆笑をかっさらうのが2割でみてるこっちも居た堪れなくなる。
青ブロックなんか滑りに滑り散らかしてたから、ヒロ君は心の底から見学でよかったと呟いていた。
また、朔がまたやる気なくダラダラとしてるんじゃないかみたいな予想も立てたけど、割と真面目にやってた。そのせいで見つけるのに時間がかかった。
反対に見つけやすかったのは樹。バレー部の中でも一番でかいぐらいに本当にでかいから見つけやすいことこの上なかった。石堂君も割と見つけやすかったな。樹までとはいかなくてもそこそこ大きいし、やっぱりこの学校にはそんなにいないハーフだから目立つ。
この後はリレーがここぞとばかりに二種目も行われる。一つ目は、学年別リレー。名前の通り、各学年ごとに代表者が同じブロックで二チームずつ出てリレーをする。スウェーデンリレーみたいに距離に差がないから、最初に逃げ切ったところが大体一位でそのまま帰ってくる。人数がそれなりに必要だから陸部以外の人も意外と走る。亜矢と翠もこの競技に出る。本当は大縄の時に瑠璃とか弥ちゃんも出てたけど人数が多過ぎて見つけられなかった。
亜矢は二年生の部の第一走者でとっても見つけやすかった。スタートの場所は見学席のすぐそばだったから、用意の合図が出るまで、全力で応援した。亜矢は緊張してただろうに、こちらに手を振り返してくれた。翠は声をかける前にこっちに手を降ってきた。全く、陸部の人とばっかと一緒に走るんだからちゃんと集中すればいいのに。
結果は、全学年の部で一位を掻っ攫った、私の赤ブロックが学年別リレーのトータルの成績でも一位だった。スウェーデンリレーの時の仕返しみたいに、ヒロ君に自慢げな顔をしたら宥めるように微笑まれた。いや、あんたもさっき同じようなことしてたからね!?なんか無駄に恥をかいた気分だ。
次はいろいろリレー。半周の障害物競走の後に、今度は二人三脚、三人四脚、四人五脚、と人数を増やしながらこれもまた半周ずつ走った上で、最後はムカデ競争。これは各学年、男女ごとに合計六レース行う。適当な競技名に見えて意外と、よくこの競技のことを表してる。余談だけど、去年翠は障害物競走の時に、マジックしながらトップで走るという行為を行ったため、この競技出禁になった。
障害物の撤去と翠が散らかしたトランプやらを片付けるのが間に合わなくなって、次のニ人三脚の人たちがニ人三脚障害物避け競争という無茶をする羽目になったから。
ここには弥ちゃんと優子がでる。二人三脚で。本当にあんな喧嘩していたのはなんだったんだってぐらい息ぴったりに一位を爆走していった。これには思わず、ヒロ君と顔を見合わせて苦笑い。まあ、雨降って地固まるってことで。
最後に女子のダンスがそれぞれ行われて、午前の部は一旦終わり。各ブロックテーマを各自で決めて、創作ダンスを行う。振り付けを考えるのには多少参加したし、見学だからこそ全体を常に見れたのでアドバイスもたくさんした。もちろん、三年生のダンス長からお願いされてやったことだけど、正直今年の体育祭に参加してたって言えるのはここだけだから、見学なのに緊張していた。
赤ブロックの演技順は一番最初。ドキドキ、ハラハラしながら見てたけど、目立ったミスなく終わったように思う。フォーメーションとかカノンとかも綺麗だった。その後他のブロックも見たけど、やっぱり赤が一番綺麗だった。心の中でガッツポーズをして、午前の部は一旦終わった。
昼休みは、いつものメンツと、お弁当をかき込みながら、ダンスのベタ褒めをした。もちろん、各競技にでた人たちも労わりながら。午後一発目は応援合戦なのと、集合時間に遅れるだけで減点されるので、あまりゆっくりはできなかった。日焼け止めだって塗り直したいし。途中、ニヤニヤした翠がこちらを見てきたのが気になったけど。男子が何話してるのはよく分からなかったけれど、絶対にあの人、何か企んでる。
若干の嫌な予感はしていたけど、集合時間が迫り、ブロック委員が教室から追い出しをかけてきたので問い詰めることはできなかった。
午後一発目は応援合戦。ここも結構ブロックごとの特色が出るところだ。全体通しての練習中は私たち見学組は、プログラムの印刷などの体育祭に関わる事務作業をさせられていたので、見学席から他のブロックも含めてちゃんと見るのは初めてだった。最初に披露したのは白ブロック。応援団は男女問わず学ランを着て、白手袋をはめて割と硬派な感じの応援だった。その次は黄色ブロック。さっきと真逆の方向で、応援団は女子はチアガール、男子は似たようなデザインの半袖短パンでダンスが多くて、まるではしゃいでいるような応援だった。
赤と青はどちらも袴で和風系の応援。若干テーマかぶりしたけど、赤は和傘を使って、青は扇子をメインに使っていて、どうにか差別化してた。
ここでは、ヒロ君と点数予想はしなかった。単純に声が出てたところが勝つわけでもなく、教職員やPTA会長などの好みによって点が決まる側面が大きいため滅多に予想が当たらないから。
次は、女の戦いこと、棒引きだ。男子の騎馬戦と対になる競技で、配点もリレー系に次いで高い。
後、女子の怖いところが出る競技。体育祭のリハーサルの時に予選をして、今回は三位決定戦と一位決定戦のみを行う形だ。私の赤ブロックは予選で無敗だったため、かなり勝つ可能性が高い。陸部の一本どり、相手が棒に触る前に取ってそのまま引き合いをせずに自分の陣地に掻っ攫うことができるメンツと、優子と亜矢たちの所属するソフト部所属の人、柔道部やレスリング部所属の女子がやたらと多いのが原因だ。予選では相手を引きずり回してた。案の定、体育祭本番の一位決定戦でもボロ勝ちしていた。そのおかげで、いい感じの勝負が多発していた青ブロと黄ブロの三位決定戦の方が盛り上がっていたぐらいだ。
そしてその次は、借り物競争と部活動対抗リレーの勝負というよりはお祭りの側面が強い競技が続く。この学校の借り物競走では漫画とかによくある「好きな人」とか「かっこいいと思う人」とかが本当に出てくるのだ。去年はそれで、好きな人を連れてきた同じ学年の男子が、見事に体育祭後にその連れてきた女子と付き合った。正直、そういうことに憧れがないかと言われたら嘘になるけど、現実でやられたら恥ずかしさの方が勝つ。




