第四章 - 犬猿の決戦(D-10)
「――――ッ!?」
右肘に違和感を覚える。
嘘でしょ? どうして?
どうして、腕が上がらないの?
いや、違う。
理由は分かっている。
あの『笑う鬼』と、あたしは最後の最後まで打ち合っていたのだ。
筋力、球圧、遠心力……さまざまな負荷がかかっている。
でも、どうしてこのタイミング? 憎い。自分の身体が、果てしなく憎い。
じくじくと痛みはじめた肘を押さえつけ、あたしは決意を改める。
決勝戦、負けるわけにはいかない。こんなところで足踏みをするわけには――。
――と、葛藤するあたしに、申渡が心配そうな顔を見せる。
「なあ、狗上」
「なんでもない」
気取られてはならない。ここまできて、ドロップアウトするわけには。
「狗上。聞いてくれ」
「……なによ? まだ何か言い足りないことでも?」
肘の状態を悟られないように注意深く、平静を装って答える。
申渡は、熱が引いたように穏やかな口調で、その先を続けた。
「お前と組めて、お前を信じて、ほんとうに良かった。心からそう思ってる」
「――――ッ!」
「だから、お前も俺を信じてくれ」
グッと距離を詰められて、そう囁かれる。戦い抜いた戦士の、まっすぐな瞳。
「…………え、ええ…………」
その眼光に射抜かれて、思わずコクリと頷いてしまった。
「ありがとう。また一緒にがんばろうぜ!」
にっこり笑う申渡を見て、心の奥の、さらに奥。
あたし自身も知らない箇所が、じくりと疼いた。
「あれ……?」
こんなことを思うのはとても悔しいけど。
こいつ――こんなに格好よかったっけ?




