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第四章 - 犬猿の決戦(Ⅳ-8)
1秒が1億秒にも濃縮されたような時間のなかで、真澄は驚愕に目を見開く。
「――――そん、なッ!?」
「勝ってやる……ッ! 勝って、狗上も、真尋も――お前も、みんな救ってやるッッッ!」
ぎりぎりぎりぎりぎり、と振動がこちらまで伝わってくるかのようだった。
わずか数瞬の膠着を断ち切ったのは――からん、という間の抜けた落下音。
「ぐ、ぅ、ああぁぁッ!」
俺のサーブが、真澄のラケットを弾き飛ばした音だった。
しかし、真澄が命懸けで繋いだレシーブは、勢いを失ってもなお、高い、高い弧を描いて、こちらへと返ってくる。
まるで勝利への妄執に突き動かされるかのごとく。
「…………ちィッ!」
思わず舌打ち。
数えきれないくらい打ち込んできた、山なりのボール。
ここで決めれば勝利――だというのに。
「クッソ! ちくしょう――ッッッ!」
腕が上がらねえ。
脚がもつれる。
情けねえ!
ーーでも!
急速に思考がクリアになっていくのに、身体が追随を拒んでいる。
動け――。
動け、大丈夫だ。
コートに立ってるのは、俺ひとりじゃないから。
「任せたぞぉぉ――ッ! 優姫ぃぃぃぃぃぃ――――――――――――――――ッ!」




