表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
test  作者: test
6/69

第一章 - 犬猿の邂逅(A-2)

 硬式テニスとソフトテニスは根本的に異なる。


 パッケージこそ似通っているけれど、蓋を開けてみればまったく別種の競技。ソフトテニスは日本発祥のスポーツなので、国内における競技人口は多い。


 けれどその実、高体連の加盟登録数を見れば硬式が軟式を上回っているし、ヨーロッパなんかではソフトテニス自体を知らない人が大半だ。


 そもそも世界基準で見れば『テニス』は硬式を指すわけで。

 上なのだ。

 ソフトテニスよりも断然に、硬式テニスのほうが。


 だからこそ、その鼻っ柱を叩き折ってやりたかった。軟式一本でやってきた人間が、硬式の世界に飛び込んで頂点を目指すなんて許されないから。


 しかし、一方で思う。


 たかまがはら……オープン? だったっけ。

 そんな大会があることなんて知らなかった。


 部活を辞めて以来――外部からの情報流入を断っていたから。

 皮肉なものだ。少し前までは勝負の機会に渇望していたのに。


 ――俺と、ダブルスを組んでくれねえか?


 あまりにも突然降って湧いた、理不尽な頼みごと。

 こいつと組んだところで、あたしにメリットはないはずなのに。


 それなのに、交渉の席についてしまったのは、いったいどうしてだろう?


 提案されたのは、硬式テニスの大会。出場資格は高校生以下、アマチュア限定。

 賞金が出る以上、全国各地から強者が集まってくるだろう。

 きっと、各々が抱える意地や矜持を引っさげて。


「…………くすっ」


 理由なんて、ひとつだけでいい。

 心のどこかで分かっていたんだ。


 ――こんなに面白そうな戦場に、立たないなんてもったいないから。


 しかし、目の前の男とペアを組むとなると、また別の問題が発生する。


 この選手は、あたしと共闘関係を結ぶに足る実力者なのか否か。


 証明する方法は実に単純。


 誰にだって分かるでしょう?

 あたしより強い男にしか、興味湧かないし。


 彼がアルバイトで受け持つ生徒たちが、10時30分から10時45分まで休憩を挟むタイミングで、その間に試合をすることになった。


 15分あれば充分。

 確実に殺せる。


「はじめのサーブ権はあなたにあげるわ。1ゲーム先取のタイブレークマッチ。ちなみに、タイブレークって知ってる? ソフトテニスにはないわよね?」


「もちろん知ってるぜ。実際にやったことはねえけど。コート入れ替えながら2本ずつサーブ変わるんだろ? いい予行演習だ。サンキューな」


「…………ぶっ潰すわ」


 あっけらかんと笑顔で答えるその様子に、あたしの中に眠る勝負師としてのプライドに火が灯るのを感じた。


「あなたがどんな問題を抱えているのかは知らないけれど、あえて今はなにも聞かない。あたしとペアを組みたいなら、それに足るものをコートの中で表現して見せて」


「望むところだぜ――硬式テニスにはないボール、お前に見せてやるよ」


「今のうちに余裕ぶっこいてなさい――翻弄して、叩き潰してあげるわ」


 空いたコートに足を踏み入れる。久方ぶりの感覚。

 太ももが熱を帯びて、駆け出す一瞬を待っている。


『せんせー、やっちゃえー』

『せんせーがんばれーっ!』

『おねえさんもがんばれー』


「おーう、ありがとうなー。お前ら試合見るのはいいけどちゃんと休んどけよー」


『『『は〜〜〜〜〜いっ!』』』


 コートの脇から無邪気な声援が聞こえてくる。

 対面に見える表情に、気合いが入った……ような気がする。


 良いプレーを見ることは、選手としての成長に大きな影響を及ぼす。

 それが若い頃であればなおさら。

 いくらブランクがあるとはいえ、無様なプレーは見せられない。


 精神を研ぎ澄ます。

 一本集中。


「ひとつ忠告だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()


 刹那、センターネットの向こう側からかけられた声。

 その真意に、あたしはまだ気づいていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ