《SET BREAK - 2》
「もしもし、ねえさん――練習に入れるの、明日からってことでよかったよな?」
『うん? ……ああ、練習な。おーけーおーけー。明日は狙いたい台もねえし』
「ギャンブルもほどほどにしとけよ。おじさんとおばさんが見たら泣いちまうぞ」
『ざんねんでしたー、親父もお袋ももう諦めてるっつうの』
「残念なのはねえさんの生活リズムのほうだろうが。ちゃんと昼間動けるんだろうな?」
『当たり前だろ任せとけ。ウチのことは心配すんな』
「……これでも申し訳ないと思ってるんだぜ。いくら小さい頃から仲良くしてたからって、もともとテニスでメシ食ってた人間に指導をつけてくれって頼むなんてな」
『余計な心配すんなって。悠坊にテニス教えたのはウチだし、力貸すって約束しただろ?』
「……ありがとう、ねえさん」
『それに、これはいわば先行投資だからな。悠坊が高天原オープンで実績作って大学に進学して、プロになるにせよ、一般企業に就職するにせよ、なにかしらのお礼はしてくれるだろうし』
「もちろん、それは約束する」
『ゆくゆくはウチのことを養ってくれるだろうし?』
「そこまでの約束はできねえわ!」
『なんでだよー、たしかにウチの見た目は悠坊の好みにぜんぜん掠ってねえけどさ』
「そういう理由じゃねえんだよ! ずっとそんな生活してるつもりかよ自立しろ!」
『ていうか逆に聞くけど、お礼ってなにしてくれんの? 扶養以外なくね?』
「あるだろ色々! メシ奢るとか、旅行連れてくとか、あとは……」
『結婚するとか?』
「違うわ!」
『まっ、それは成果報酬ってことで期待しておくとするか。……で、用件はそれだけか?』
「いいや、もうひとつある。……『笑う鬼』って聞いたことあるか?」
『笑う鬼ぃ? んー……いや、心当たりねえな。それ女テニの話?』
「男子テニス。鬼頭真澄って子の別称なんだ。鬼頭雄真プロの息子らしいんだが」
『あー、あのオッサンか。後輩へのアタリが超厳しいって有名だった。ウチがプロ入りした頃にはもう引退してたけど、たまに集会に来てたから顔は覚えてる』
「……その息子。ちょっとした縁で仲良くなってさ。かなり強い。漫然と練習するだけじゃ勝てねえと思う。だから、ねえさんに知恵を貸してほしい」
『メニューも考えろってことだな、了解。――さて、どんなお礼をしてくれるんだろうな?』
「婚姻と扶養以外で、できることならなんでもするさ」




