第二章 - 犬猿の宣誓(II-2)
着崩したビッグシルエットのTシャツに、膝上のショートパンツ。
茶色がかったボブカットが小さく整った相貌を引き立てている。
小動物を思わせる女の子がそこにいた。
「ああ……うん。びっくりしたのは間違いねえけど、大丈夫」
すっくと立ち上がって向き直る。
背丈は俺より少し低いくらいだった。
第一印象よりもやや背が高い。
そんなことを考えていると、女の子はグイッと俺に身を寄せてきて。
「ねえ、きみソフトテニス出身者だよね?」
「――驚いたな。見ただけでわかるのか?」
「グリップに違和感あるし、インパクトの時の手首の返しとか……他にもいろいろあるけど。でも、すごいよ。あんなぐちゃぐちゃのフォームで打てるなんて! 一九〇キロは出てたよ!」
「あれ……俺、ナチュラルにバカにされてない?」
「そんなことないよぅ、ちゃんと褒めてるって」
にひひ、といたずらっぽく笑う。
「気を悪くしたならごめんね。ひさしぶりにコートに来たら、ひとりで黙々と速球打ち込んでる男の子がいるんだもん。ちょっと興味湧いちゃってさ――あっ、そうだ」
ポンと手をついて。
「お詫びといったらあれだけど、フォーム矯正、手伝ってあげるよ。ここで見ててあげる」
それはありがたい申し出だ。
……だが、俺はそこで逆提案を試みる。
「お前もテニスやるんだろ? だったら余ってるコート使ってラリーしないか。俺、普段ここでバイトしてるからそこらへんの融通は利くぜ」
壁相手の断続的な練習では本番と環境があまりにも異なるし、打球がネットを越えたか否かでしか打球の精度を測れない。
俺がもっとも求めているのは対人練習だった。
しかし、女の子は少し困った様子を見せる。
「やー、あはは……僕、ラケット持ってきてないや。あとシューズも。ごめんね?」
「受付に言えば貸してくれるぜ? 道具一式レンタルできるし」
「ううん、今日はいいや。それに――壊しちゃうといけないし」
壊す? ラケットをか? よほど荒っぽく使わなければ壊れることはないけどな……?
「……っと、そうだ。まだ僕の名前、言ってなかったよね」
それ以上、話題を掘り下げることを拒むかのように、目の前の女の子は自己紹介した。
「僕は真澄。鬼頭真澄……えーっ、と……?」
まあ、なんか理由があるんだろう。俺はそれ以上踏み込まず、端的に名乗る。
「申渡悠希。好きに呼んでくれて構わないぜ」




