第二章 - 犬猿の宣誓(B-2)
春季大会直前。
団体戦のメンバーを決める、練習後の大切なミーティング。
空き教室の中でおこなわれたそれは、この組織の調和を律するための断罪裁判へと変貌していた。
公式戦を想定した厳正なる部内対抗戦の果て、あたしはいつものように序列1位――『シングルス1』の位置におさまった。
顧問から淡々とユニフォームを受け取って軽く会釈をし、自分の席へ戻ろうとしたところで、あたしは聞いたのだ。
――また狗上さんがシングルス1かぁ。
――ちょっとは嬉しそうにしなさいよ。
妬み、嫉み、やっかみ。
室内から浴びせかけられる視線に、あたしがこんな答えを提示したのが事の発端だった。
部内戦であたしに勝てばいいだけじゃない――と。
抗いようのない真実を突きつけられた人間は、理解していても反発してしまうものだ。
あたしはこの時、はじめてそれを実感した。
『強い人が! 上手い人が! 努力していることなんてみんな分かってるよ! でも狗上さんは間違ってる。努力すれば報われるなんて、そんなの現実が見えてない理想論だよ!』
正選手入りを逃した部員の誰かが放った嘆きは、やがて空間を支配して。
『それ……これまで挫折したことがない人間にしか言えない言葉よね』
『ていうか、狗上さん。大会で負かした相手にも同じこと言えるの?』
『あんたの考えって独りよがりなのよ。まわりを見ようとしていない』
部内にあたしの居場所が無くなるまで、そう時間はかからなかった。
あたしは、すっかり見失ってしまっていた。
まっすぐ生きることの難しさに触れ、努力する理由、強くなるための意志を。
そんなときに出会った男の子は――燃えるような熱い視線で訴えてきたのだ。
「俺は――大学に行きてえんだ」
盲目になっていたあたしを導く、テニスに打ち込む所以を。




