葬式3 交渉
克慈の家に再び戻り、キッチンで自分の分の朝食を食べる。
克慈は『休まない』って言ってたから、車に乗せて貰える。
車だから時間に余裕がある。
早起きして良かった〜♪
克慈
「戻って来たんだ」
二階から降りて来た克慈はスーツに着替えていた。
今はもう見慣れちゃったけど、初めて克慈のスーツ姿を見た時、変な感じだったんだよね。
……眼鏡をサングラスに変えたら間違いなく悪人ですな。
ヤの付く世界で幹部くらいやってそうな人に見えちゃうよ。
サングラスを掛けて歩いて欲しいなぁ〜。
惠美
「うん。お母さんから克ちゃんのお弁当預かって来たからね」
克慈
「ん……、ありがと」
うーん……、やっぱり克慈の様子は変だと思う。
何時もはムカつく程に色々言ってくるのに、今日はどうだろう……、何も言って来ない。
やっぱり調子が悪いんじゃないのか?
途中で事故るとか嫌なんですけど!!
朝食を食べ終えた私は、水に浸けられている食器と自分が使った食器を洗う。
克慈はソファーに座って新聞を片手にTVを見ている。
克慈が見ている番組は朝の連続テレビ小説『はるみなき』だ。
何が面白いのか私にはサッパリですよ。
そうそう、私の両親も朝の連続テレビ小説が大好きで、毎日欠かさず見ている。
お母さんは7時半から見るし、お父さんは八時から見る。
『一緒に見ろや!』って毎日思う。
克慈は毎日、七時半からと八時からの両方を見るらしい。
同じのを二回も見る必要あるの?
因に克慈の部署では、休憩中に必ず朝の連続テレビ小説の再放送を見るらしい。
三回も見て飽きないの?!
そんなに見る程、面白いのだろうか?
拭き終えた食器を食器棚へ戻し、私もソファーに座る。
克慈が読み終えた新聞を取り、四コマ漫画と番組欄をチェックする。
おお〜、今日は『迷惑探偵ロンドル』の三時間スペシャルがあるじゃないですか!
『迷惑探偵ロンドル』は視聴率が急上昇している人気の探偵ドラマなのです。
私のお気に入りのドラマの一つ。
惠美
「克ちゃん、一九時からドラマの録画してもいい? 今日ね、三時間スペシャルなんだよ」
克慈
「いいけど、何してくれるの」
惠美
「もう〜、交換条件出さないでよ! 克ちゃんは録画とかしないんだからいいでしょ?」
克慈
「嫌なら自分の家のTVで録画しなよ」
惠美
「出来ないよ! お母さんが録画しまくってるんだもん!! 意地悪言わないでさ、何時もみたいに録画させてよ〜」
克慈
「で、何してくれるの?」
惠美
「もうっ! じゃあ、クッキー買ったげますからお願いします!!」
克慈
「ふぅん? クッキーねぇ。何箱買ってくれるの」
惠美
「ひと──いや、二箱!」
克慈
「三箱ね。三時間スペシャルなんでしょ」
惠美
「──ぐっ!? ……いいですよ、買いますよ! 買わせて頂きますよ! 但し、安いクッキーだからね!!」
克慈
「クッキーくらい奮発出来ないの? まあ、いいけど」
惠美
「給料日前だから辛いんですぅ!! それに明日は蓉子のお葬式で香典も出さないといけないし……ピンチなんですぅ!!」
克慈
「漫画を買うの止めればいいだけなのにね」
惠美
「漫画は駄目! 漫画はね、私に元気をくれる大事な──」
克慈
「いいよ、言わなくて。八時のが始まるから静かにしてよ」
惠美
「さっき見てたじゃない。……もう、何がそんなにいいんだか……」
克慈
「惠美には分からないだろうね。別にいいけど」
惠美
「いいんですかい!」
でもさ、克慈には行きも帰りも車に乗せて貰うから我慢しないとね。
明日も乗せて貰うしさ。




