克慈宅2 部屋
食事を終え、後片付けを終えた私は、克慈の部屋に居る。
克慈と向かい合わせになり、ノートパソコンを広げ、◯oogleで検索をしている。
検索しているのは勿論、ここ最近で起きた被害者が多く出た大きな事故について、目を通してチェックしている。
当時の事故を偶然に撮っていた誰かが、その動画をアップしていて──、それを見てみると、いたたまれない気持ちになる。
惠美
「……こんなに酷い事故だったんだ……」
民間ヘリコプター三機が墜落し、サービスエリアが炎上した動画を見ていた私は、想いを寄せていた遺さんを思い出した。
アイスクリームを買う為に行列に並んでくれていた遺さん。
あの時、偶然見た舜也さんの後を付けないで遺さんを待っていたら──。
遺さん,舜也さん,舜也さんの浮気相手(?),克慈,私は、一体どうなっていたんだろう?
事故に巻き込まれて死んでしまっていただろうか。
それとも何も起きなかったのか……。
馬鹿みたいだよね、そんな事を考えるなんてさ……。
克慈と私がサービスエリアを出なくたって、事故は起きていたんだよね?
私は克慈に助けられた……。
運が良かっただけ──、なのかも知れないよね?
そうだ、今更だけど、私は遺さんと一緒にサービスエリアの中で、大事故に巻き込まれて死んでいたかも知れないのだ。
克慈が私をサービスエリアから連れ出してくれなければ、きっと確実にあの日、私は死んでいた。
兄を亡くしてから、未だに立ち直れていない両親が、私まで亡くしてしまったら……と考える。
惠美
「……壊れちゃうかな?」
最愛の子供を亡くしてしまう親の心情は私には解らない。
強そうに見えても、脆くて弱い──私の両親。
私は克慈に未だ、お礼を言っていなかった。
惠美
「克ちゃん、あのね──、来てくれてありがとね。克ちゃんが私を連れ出してくれなかったら、私はあの日に……」
克慈
「何、急に? 明日は空からウニが降って来るかもね。それか、食べたカレーが当たった?」
惠美
「そんな訳ないし!! 何で克ちゃんはそんな事ばっかり言うの? 私は、お礼を言ったんだよ!」
克慈
「何か悪巧みでもしてるんでしょ? 俺への仕返しとかさ」
惠美
「……自覚あるんだ? 仕返しされるような事してたって自覚が! 吃驚なんですけどっ!!」
克慈
「そりゃね、俺は惠美と違って善人だからね。自覚くらいしてるよ。当然でしょ」
惠美
「私は善人じゃないって言うのっ?! 言っときますけどねぇ、克ちゃんよりも私の方がずうぅ〜〜〜っと善人さんなんですぅ!!」
克慈
「はいはい、そういう事にしとこうか? 俺は優しいイケてる男だからね」
惠美
「何処にイケてる男が居るの? 私には見えないんですけど? 性悪男しかね!!」
克慈
「惠美は幾つになっても子供だね。あんなに些細な事を未だに根に持ってるなんて……。相変わらず過ぎて俺は悲しいよ。惠美が残念な子過ぎてね」
惠美
「私は残念な子じゃないよ!! 断じてっ!!」
克慈
「そうだね、そういう事にしとこうか」
むきゃきゃきゃきゃ〜〜〜〜!!
ムッカつく〜〜〜!!
何でこんな奴に『早く会いた〜い!』なんてチラッとでも思ったんだろう!!
信じらんないっ!!
……阿呆らしっ、克慈に話し掛けるのは、もう止めよっと。
検索の続きしよ〜と。
……、……、……、ふ う〜、肩が凝って来ちゃったよ。
目もチカチカして来たし……、ちょっとだけ休憩しようかな。
惠美
「……ねぇ、克ちゃん」
克慈
「……うん?」
はうぅっ!!
もう声掛けないって決めたばっかりだったのに、話し掛けちゃったよ〜。
馬鹿だな、私は……。
克慈
「なに?」
惠美
「え〜と……あの、そのぅ……、呼んでみただけ……なんちゃって?」
克慈
「ふざけるなよ」
惠美
「──違っ、嘘です! 冗談ですぅ!! ちゃんと用事ありますから怒らないで下さい〜!!」
克慈
「で、なに?」
ううっ、克慈めぇぇぇっ!
さっきとは打って変わって、シレッとしてるぅぅぅっ!
惠美
「もうっ、嫌だなぁ、克ちゃんったら〜。そんなに恐い顔しないでよ。何か食べる? 画面とにらめっこしてるとお腹空くよね?」
克慈
「……ああ」
惠美
「……何さ、生返事しちゃってさ! 私と話すより画面の方が大事って言うの〜?!」
克慈
「惠美、キンキン煩い。黙って」
惠美
「ああ、そうですか! いいですよ、私の分だけ作るから! 克ちゃんなんか賞味期限切れのレトルトカレーでも食べて寝込んじゃえっ!!」
私は部屋のドアを開け、勢いよく閉めると、一階に降りた。




