寺社7 電車
利樹さんに駅まで送って貰った克慈と私は電車の中。
ガタゴト揺られながら、私はウトウト……。
本当なら寝ちゃ駄目なのに、善朋に返信しないといけないのに……私は酷く眠い。
近々、御葬式がある。
……行きたくない。
行ってしまったら、現実を受け入れなければいけなくなるから……。
克慈や利樹さんの言う通り、お祓いは気休めでしか無いのだろうか?
支払ったお祓い代を返してもらう事は出来ないのだろうか?
神主さんや巫女さんを詐欺罪で訴えるとか出来ないのだろうか?
……神主さんや巫女さんが悪くない事は、私だって一応は分かってる。
訴えて、仮に逮捕されたって──、死んでしまった人間が生き返ってくれない事だって、私はちゃんと分かってる……。
それでも、誰かや何かの所為にしないと気持ちを保てない弱い私は、本当に嫌な奴だ。
人って、そうなんだろう……。
受け入れたくない事が起こったら、取敢ず誰かや何かの所為にしないと気が済まないんだ……。
それを心の拠り所にして……。
克慈
「……同じだな」
惠美
「──へ? 何が? 克ちゃんどうしたの?」
克慈
「ん、別に……」
何なのさ急に、気になるんですけど!
明後日の方向を見たまま(明後日の方向って何処?)呟いた克慈は私以上に眠たそう。
惠美
「もう〜、気になるじゃんか〜。言い掛けて終わらないでよ〜」
克慈
「順番が同じだって言ったの」
惠美
「順番?? 何の順番? お祓いを受けた順番?」
克慈
「違う、椅子取りゲームの順番。覚えてないの?」
惠美
「椅子取りゲーム? ああ、あれね。意外と楽しかったよね」
克慈
「惠美には期待してなかったけどね……」
惠美
「期待って何の?」
克慈
「覚えてないだろうなって事だけど」
惠美
「覚えてるよ〜、ちゃんと! 参加したの一二人でしょ。意味の無い雰囲気作りまでさせられてさ、皆で◯ンパンマン◯ーチを歌いながら──」
克慈
「そこはどうでもいいよ。敗者の順番は覚えてる?」
惠美
「……負けた人の順番? ……別に覚えてないけど?」
克慈
「そう言うだろうと思ってた」
惠美
「そんなの誰だって覚えてないよ! 私だって何番目に抜けたかなんて、いちいち覚えてないもん。克っちゃんは覚えてるの?」
克慈
「そう言ってる。酉頭だね、惠美は」
惠美
「はあっ?! 酉頭って酷いっ! 鶏冠なんて付いてないのに!!」
克慈
「中身が酉並って事だよ。酉年なだけあるよ」
惠美
「ちょっ、酉年だから中身が酉並って──、やっぱり酷いよ!! 克ちゃんは今、日本中の酉年の人を敵に回したからね!!」
克慈
「俺は惠美だけに言ったつもりだけど」
惠美
「ちょっ、『だけ』って! 強調して言わないでよ!!」
克慈
「惠美と話してると全然先に進まないな。俺が話終わるまで黙ってなよ」
惠美
「ムッ、克ちゃんが失礼な事を言うからでしょ!」
克慈
「いいから黙って。一抜けしたのはT男、原因不明の飛行機墜落事故で亡くなった。二抜けしたのはO子、大型トラックと衝突したバスの事故で亡くなった」
惠美
「あっ!」
克慈
「三抜けしたのは誰だったか覚えてる?」
惠美
「ええっ……三抜けした人?? えーと……、誰だっけ??」
克慈
「覚えて貰えてないとか不憫だな」
惠美
「あっ、そうだよ! アナちゃんだよ、克ちゃん!! ほら〜私、ちゃんと覚えてたでしょ?」
克慈
「……惠美。残念だけど、杏菜ちゃんが抜けたのは俺の後だよ」
惠美
「ええっ?! ちょっと待ってよ! だってアナちゃんは自殺未遂で──!!」
克慈
「でも未だ“生きてる”でしょ? 例え意識不明でも生きている事には変わり無いよ」
惠美
「……そう、か。そうだよね。三人目がアナちゃんじゃないなら、誰が三人目なんだろう? ……ねぇ、克ちゃん、おかしくない?」
克慈
「何がおかしいの?」
惠美
「O子さんが亡くなる前に……、もしかしたらT男さんが亡くなる前かもしれないけど──、アナちゃんが自殺未遂したのはどうしてなのかな?」
克慈
「俺が知るわけないでしょ。意識が戻ったら聞いてみたらいいよ。真相は本人しか知らないんだから」
惠美
「……うん。アナちゃん、話してくれるかな?」
克慈
「俺が分かるわけ無いでしょ。──三抜けしたのは季喜君だった。三番目に亡くなったのもね」
惠美
「あっ、そう言えばトッキーの御葬式に行ったもんね。その後に、舜也さんだったね。……遺さんも……」
克慈
「……惠美。……五抜けしたのは蓉子ちゃんだったでしょ」
惠美
「……うん、……御葬式に行かなくちゃだよね……」
克慈
「此処まで抜けた順番通りとはね。……気味が悪いな」
惠美
「……じゃあさ、蓉子の次は誰なの? 誰が犠牲者になるの?」
克慈
「誰って──、順番通りなら智沙ちゃんでしょ。その次はD男,善朋君,惠美,俺,杏菜ちゃん,U子──」
惠美
「克ちゃん……、偶然だよ! 全部偶然っ!! 今迄が順番通りだったってだけでさ、これから先は判らないよ? 抜けた順とか関係無くなるかも知れないし!」
克慈
「……惠美、この世に偶然なんて無いんだよ。あるのは必然だけ。順番通りに亡くなってるのは偶然なんかじゃない。必然だよ」
惠美
「……克ちゃん! 何でそんなこと言うの?! 見も蓋も無いこと言わないでよ!! 克ちゃんの言う通りなら、皆が抜けた順に死んでくって事なんだよ! 認めちゃうの?! お祓い迄してもらったのにだよっ!!」
克慈
「……惠美も善朋君もお祓いしてもらってないでしょ。俺もだけどさ」
惠美
「でもっ、智沙,U子さん,D男さんはお祓いしてもらってたよ! お祓いしてもらったのに死んじゃうの?? 神主さんを信じてお祓い迄してもらったのに、それってあんまりなんじゃないの?」
克慈
「惠美、お祓いは絶対じゃないんだよ。どんなに大金を叩いてお祓いしてもらってもね。“気休めだ”って言ったでしょ?」
惠美
「順番通りに智沙が死んじゃったら、私、神主さんを訴える!!」
克慈
「惠美、馬鹿なこと言わないの。神主にも巫女にも罪は無いよ。例えあっても詐欺じゃなければ裁かれないから……。神主と巫女の所為にしたら駄目でしょ」
惠美
「……それは、そうだけど……。ねぇ、皆が死ななくて済む方法ってないのかな? このまま何もしないで黙って死んでくなんて嫌だよ!! 生きてる間に抵抗したいよ!!」
克慈
「そんな方法があるなら皆とっくに実行して──、そうか!」
惠美
「克ちゃん? どうしたの急に?」
克慈
「惠美、帰ったらノーパソ持って俺の家に来なよ」
惠美
「えっ、何で??」
克慈
「俺は先輩と木土に理由を話して協力してもらえないか話してみる。惠美は未だ無事な四人に連絡しなよ」
惠美
「四人? アナちゃんはどうしたらいいの?」
克慈
「杏菜ちゃんには目覚めてから話せばいいでしょ」




