寺社4 礼仁
惠美
「……木土さんですよね? お久し振りです」
礼仁
「よっす、惠美ちゃん♪ 元気そうだね」
惠美
「はぁ、お蔭様で……」
礼仁
「いや〜、俺は何もしてないけどね。で、克は惠美ちゃんを連れて何しに来たんだ?」
克慈
「ああ、先輩に会いにね。相談したい事が出来たから来たんだけど?」
礼仁
「先輩ならそろそろ帰って来るんじゃないか? 連絡あったしな」
克慈
「そう、サンキュ」
礼仁
「素っ気ないよな〜。惠美ちゃん、こんな素っ気ない男は放っといてさ、俺と飯でも食いに──」
克慈
「木土、惠美は俺のって前に言ったろ。手を出すなよ」
礼仁
「相変わらずケチだな」
克慈
「お前、女癖悪いだろ」
礼仁
「……ちぇっ、いいさ。女は惠美ちゃんだけじゃないしな」
克慈
「察してさっさと消えろよ」
礼仁
「嫌だね。察してやらねぇよ! 俺も先輩を待ってんだよ。惠美ちゃん、隣に座ってもいいよな?」
惠美
「え? はぁ、まぁ……どうぞ?」
礼仁
「よっしゃ♪ 惠美ちゃんの隣ゲッ──」
克慈
「駄目に決まってるだろ」
私の隣に座ろうとした木土さんの足を読んでいた雑誌で叩いた克慈は、私の腕を掴んで引っ張った。
引っ張られた私はバランスを崩して、克慈の胸に顔をぶつけてしまった。
ヤバッ、服にファンデーションがっ!!
惠美
「克ちゃん、ファンデーションが付いちゃったかも……」
克慈
「スッピンじゃないの?」
惠美
「違うよっ! 薄くだけど化粧してるから! 私って顔が赤くなり易いし、UV対策もしとかないと──」
克慈
「いいよ、ファンデくらい。クリーニング代は木土に出して貰うし」
礼仁
「はぁ? 何で俺が克のクリーニング代を出さなきゃならないんだよ!」
克慈
「誰の所為だよ」
礼仁
「克が惠美ちゃんを引っ張ったんだろ。克が原因だろ!」
克慈
「木土が惠美の隣に座ろうとしなければ、俺は惠美を引っ張らなかった。よって部屋に入って来た木土が原因だ」
克慈&礼仁
「「……、……」」
克慈と木土さんはジッと互いを睨み合ってる。
克慈……、そんなにクリーニング代を出したくないんだ。
……私のファンデーションだから、私が払わないといけないんだろうけど、金欠だから厳しいよ……。
幾らくらい掛かるのかな?
礼仁
「……分かったよ、幾らだよ」
克慈
「ん、一万」
礼仁
「ばっかやろ! ぼったくんなよ!! そんなにするわけ無いだろ! 五千でいいだろ」
先に折れた木土さんは財布を出して五千円を克慈に手渡した。
木土さんって、意外と太っ腹なんだ?
わりといい人なのかも。
礼仁
「たくっ、無駄な出費した所為でラブホに行けなくなったろ!」
文句を言いながら木土さんは畳にドスンと胡座を掻いて座った。
……ラブホってラブホテルの事?
なんか、前言撤回したい気分になっちゃいました。
木土さん、ラブホテルに行くつもりのお金だったんだ。
誰と行く気なのか分からないけど、あんまりいい人っぽくないかも?
克慈
「惠美、分かった? 木土はこういう奴だから。付いて行くと家に帰れなくなるよ」
惠美
「えー、……それは嫌だよ」
礼仁
「聞き捨てならないな。惠美ちゃんに変な事を吹き込むなよ」
克慈
「本当の事だろ」
礼仁
「まぁいいや。そうだ、聞いてくれよ〜。克、俺な〜、失恋しちまったよ」
克慈
「何時もの事だろ。珍しくない」
礼仁
「……聞けよ! 俺が住んでるマンションの、俺の部屋の隣で暮らしてた瀬名ちゃんがよ〜」
克慈
「ふぅん、良かったな」
礼仁
「未だ言ってねぇだろ! 結婚するってんだよ! 蒔邑茜バロスだろ!」
克慈
「誰? 俺の知らない奴だろ」
惠美
「ねぇねぇ、蒔邑ってこの寺社と同じだよね。克ちゃんの先輩じゃないの?」
克慈
「茜じゃない。先輩は利樹って名前」
惠美
「そうなんだ? 寺社の人なんじゃないの?」
礼仁
「彼奴は寺社じゃなくて茶店のマスターだよ」
惠美
「茶店? ……あっ喫茶店の事ですか? そう言えば最近、喫茶店に行ってないね」
克慈
「惠美、余計な事を言わない。脱線する」
惠美
「……ごめん」
克慈
「で、喫茶店のマスターがどうしたって?」
礼仁
「マンションが霊的に危ないとか言ってだな、瀬名ちゃんに部屋を解約させやがったんだよ!」
惠美
「霊的に危ないって?」
克慈
「惠美、口挟まない」
惠美
「……ごめん」
礼仁
「それで、自分の茶店に住込まさせバイトとしてコキ使ってんだよ! 俺の瀬名ちゃんをだぜ!!」
克慈
「……。そのセナって言うのが木土の女か怪しいな。妄想だろ?」
礼仁
「誰が妄想だっつたよ! 真剣に聞けよ、マジな話なんだぞ! 瀬名ちゃんは彼奴に弱味を握られてて逆らえないんだよ! それにつけ込んで彼奴は夜な夜な、嫌がる瀬名ちゃんに無理矢理ヤ──」
克慈
「木土、止めろ。惠美が居る」
礼仁
「……あ、悪い。つい興奮しちまって。──でな、この前、久し振りに瀬名ちゃんに会ったんだよ。そしたらなんて言ったと思う? 彼奴と『結婚する事になったの』って俺に泣き付いて来たんだよ! 誠実そうな面しやがって中身はとんだヤリ──」
克慈
「木土、もういい。内容は大体分かった」
礼仁
「おい、これからが本番だってのに止めるなよ」
克慈
「十分、分かった。暫く喋るな」
礼仁
「何だよ、その言い方は! いい加減に聞くなよ。俺は本気だって言ってるだろ!」
惠美
「木土さんはセナさんが好きなんですよね? セナさんが茜さんって人と結婚しちゃうのが嫌なんですよね?」
礼仁
「そうだよ、惠美ちゃん!」
惠美
「木土さんはどうしたいんですか?」
礼仁
「どうって?」
惠美
「祝福したいのか、邪魔したいのか……とか」
克慈
「惠美、構わなくていいから」
惠美
「でも……気になるし」
克慈
「木土の言う事は大半が脚色されてるんだよ。真に受けるだけ無駄」
惠美
「そうなの?」
礼仁
「脚色なんかしてねぇよ! 惠美ちゃんが勘違いするだろ! いい加減な事を言うなよ!!」




