異変7 車内
……会話が無い。
会話が無いのは珍しい事じゃないし、無言が続いても気まずい,辛いとは思わない。
もう、慣れちゃってるからね、苦痛に感じないんだよね〜。
私は窓から景色を見る振りをして、実は窓に映る克慈の顔を見てたりする。
運転中の克慈の顔、好きなんだよね(////)
詰まらなそうな表情,鬱陶し気な表情,何を考えてるか分からない表情,何処を見てるのか分からない表情……何れも好きだったりする。
たまに、窓から目を離して直に克慈の横顔を見詰めたりする。
あんまり見てると『なんなの?』って聞かれるから長くは見詰めないけど……。
克慈の車に乗ってる間、私は克慈を一人占め出来る。
恋愛対象の相手には思えないけど、克慈と同じ空気を共有出来るこの時間が私は好き。
このまま何時間でも飽きないくらいに。
渋滞にはまってしまったら、その分、克慈と同じ空間に居られる時間が延びるから内心は嬉しかったりする。
会話は無くても克慈の隣に居られるし、二人っきりだから、それだけでも十分に嬉しいんだ。
克慈がどう思ってるのかは分からないけど……、私にとっては夢のような時間なの。
私は何時まで、この夢のような嬉しい時間を楽しめるんだろう。
……はぁ、智沙と約束しなきゃ良かった。
……ってか、これじゃあ、まるで私が克慈を好きみたいじゃない?
克慈と同じ空気が吸えて嬉しいとか思っちゃって、私……変態みたいじゃん!
変態……いやいや、私は変態ではありませんよ!
断じて変態ではありませんっ!!
私にとって克慈は、幸裕兄の代わりなんですからね!
恥ずかしいけど、お兄ちゃん子なだけなんです!!
━━そうだ、今日の事を克慈に話してみよっと。
惠美
「あのね、克ちゃん。今日ね、O子さんと会ったよ! 事故が起きた飛行機にね、T男さん乗ってたんだって! 十月に結婚する予定だった彼女さんと一緒に……って聞いたよ」
克慈
「ふぅん、それで?」
惠美
「……ちょっ、克ちゃん! 何なのその反応はさ! 知り会った人が亡くなったんだよ、彼女と一緒に! 結婚する予定だったのにだよ!」
克慈
「……惠美、新婚旅行中に飛行機事故で亡くなる人も居るの。国外で結婚式を挙げる為に向かってる途中に飛行機事故で亡くなる人も居るの。その逆も然り。俺の言いたい事、分かるでしょ?」
惠美
「……っ、克ちゃん酷いよ! 何でそんな事が平気で言えちゃうの!!」
克慈
「そうだよ、俺は酷い奴だよ。惠美が知らないだけでね」
惠美
「━━えと、O子さんはね、◯メダ珈琲店で働いてるんだけど、あちこち応援に行ってるんだって。蓉子と入った◯メダで偶然、O子さんと会ったんだよ。明日から別の◯メダ店の応援に行くって言ってた」
克慈
「ふぅん? 惠美、それ何処の◯メダ店だった? 覚えてる?」
惠美
「え〜……、覚えて無いよ〜。初めて行った所だからさ。それに私は昔から地理とか詳しく無いもん……」
克慈
「そうだったね。ならいいよ」
はぃぃぃいいい??
どう言う意味ですかー?
惠美
「克ちゃん、何なの? 気になるよ! 教えてよ〜」
克慈
「……惠美を迎えに来る途中、大型トラックとバスの衝突事故を見たんだよ。それだけ」
惠美
「……は? 大型トラックとバスの衝突事故?? そんな事があったの? 何それ、◯メダは関係無いじゃん!」
克慈
「そう言ったでしょ?」
惠美
「言ってなーい! 意味あり気に聞いて来るから何か遭ったのかと思ったじゃん!!」
克慈
「そう……、悪かったね」
惠美
「反省してなーい」
克慈
「俺、悪くないから」
もうっ、克慈は〜〜〜!
でも、良かった〜。
O子さんの働いてる◯メダで何も起きてなくて〜♪
惠美
「そ〜だ! 折角だから、O子さんにメールしちゃおーと! 今日は……」
克慈
「惠美、打ち終わったらチェックしてあげるから見せて」
惠美
「何でよ? いいよ、そんなの」
克慈
「誤字,脱字があるまま送信したら恥ずかしいでしょ?」
惠美
「酷いっ〜! 私、そこまで馬鹿じゃないよ! 克ちゃん、国語の先生にでもなったつもり?」
克慈
「嫌ならいいけど。恥かくのは惠美だし」
惠美
「……ぐっ、嫌なこと言わないでよ〜。見せればいいんでしょ、見せれば!」
私は打ち終わったメール文を克慈に見せた。
脱字は無かったけど、誤字が三つあった……。
克慈に確認して貰って良かったかも。
克慈に合格を貰えたメール文をO子さんに送信した。
克慈
「惠美、明日の朝だけど、朝食を作りに来てよ」
惠美
「は? なんで?」
克慈
「メール文の確認してあげたでしょ? 恥かかなくて済んだお礼してよ」
惠美
「はぁ? 私は頼んでないよ! 克ちゃんが勝手に━━」
克慈
「此処で降ろそうか?」
惠美
「━━?! 狡いよ、克ちゃん! 私が一人で帰れないって分かっててそんなこと言うなんて!!」
克慈
「明日、来てよ」
惠美
「……分かりましたよ〜だ! 作りに行けばいいんでしょ!」
克慈
「楽しみにしてるから」
克慈は私の頭に手を置くと、私の髪をクシャクシャにした。
ム、ムカつく〜〜〜!!!!
克慈
「惠美、着いたよ」
何時の間にか眠っていた私は、克慈に揺さぶられて起きた。
車は克慈の家の車庫に停車していた。
惠美
「……ぅん? 着いたの? 早いね……」
克慈
「寝てたからね。ほら、降りなよ」
惠美
「……うん。……あ、そうだ。克ちゃんにこれ……」
克慈
「ケーキの箱?」
惠美
「何時も乗せてくれるお礼だから。近くにケーキ屋さんがあったから買ってみたの」
克慈
「ふぅん、ありがと。貰っとく」
惠美
「うん(///)」
克慈
「家まで手、貸すよ。掴まりな」
眠い私は克慈に支えられて車を降りた。




