廃校舎9 解散
智沙の友達は楽しそうにお喋りをしながら後片付けをしている。
どうやらこの後、この教室で朝まで飲むつもりらしい。
T男さんはリュックサックから、お酒を出していて、O子さんは大きめのバッグから、お酒のつまみを出している。
本当に此処で飲み会を始めるつもりみたいだよ。
此処で解散しちゃってもOKだよね?
まさか皆も『残って飲み会に参加する』な~んて言わないよね??
智沙は残りたそう━━じゃないみたい。
克慈に何かを言ってるからな……。
朝まで一緒コースのお誘いでもしてるのかも知れない。
克慈はどうするつもりだろう?
でもでも、私はそんな事はさせないもんね!
だって、克慈が居ないと私は家に帰れないんだから!!
惠美
「克ちゃん!」
私は智沙なんてお構い無しに、克慈の腕を掴んで引っ張った。
克慈
「どうしたの、惠美」
惠美
「克ちゃん、私は家に帰りたい。終わったんだから帰ろうよ!」
克慈
「帰りたいの? いいよ、帰ろうか」
あれ、何かあっさり帰れる事になったよ。
智沙は私を睨んでいたけど、そんなの気にしない。
よ〜しっ、私の運転手を取り返せたぞ☆
これで家に帰れる〜♪
一件落着?
克慈の腕に絡ませている智沙の腕は、克慈の手によって離された。
名残惜し気に克慈を見詰める智沙に片手を上げた克慈は、真っ直ぐ私の所に来てくれた。
惠美
「克ちゃん、智沙はいいの? 克ちゃんと一緒に居たそうだったけど……」
克慈
「みたいだね。いいよ、堪能したから」
惠美
「堪能って何を?」
克慈
「胸だけど? 帰るんでしょ、行くよ」
胸って……、まあ、いいか。
帰れるんだし、あまりツッコまないでおこう。
惠美
「蓉子〜、私は帰るけど、この後どうするの?」
蓉子
「うん……、季喜君はどうするのかなって……」
蓉子は余程、季喜が気になるらしい。
克慈が帰るから、一人になる智沙を季喜が放って帰るとは思えないんだよねぇ。
惠美
「朋ちゃんはどうするの?」
善朋
「俺は帰りたいよ。でもなぁ、季喜が帰りたがるか……」
惠美
「そっか、聞いて来るね。蓉子、トッキーの所に一緒に行こう! 帰るか残るか聞こうよ。
{親しくなれるチャンスじゃない?}」
蓉子
「惠美、応援してくれるの? 嬉しい♪ 行こ行こ!」
私は蓉子と季喜の元へ向かった。
話を聞くと季喜は案の定、残るらしい。
理由は勿論、智沙が残るから。
夜が明けたら杏菜と電車で帰るつもりでいる事を盗み聞きして知ったらしい。
それを伝えると善朋はガッカリしたみたいで、肩を落としてしまった。
善朋も家に帰りたいんだろうな……。
帰りたい気持ち、分かるよ。
蓉子
「善朋君、私も残る事にしたの。車で帰るから、季喜君を駅まで送ってもいいよ。ううん、送りたいの! 季喜君の降りる駅を教えてくれないかな?」
蓉子は勇気を出して善朋に話し掛けている。
そう言えば、蓉子と善朋ってマトモに話した事って無かったかも知れないな。
どっちかと言うと、蓉子と善朋の方が合いそうな気がするんだけど、本人達にその気が無いのは見ても分かる。
善朋と蓉子は季喜の傍に行き、季喜と話しをしている。
多分だけど『自分は帰るけど、蓉子ちゃんが最寄り駅まで乗せてくれるから』とでも話しているのだろう。
あの三人がどうなるか気になるけど、克慈から腕を掴まれてしまったから、私は此処までみたいだ。
教室から出たけど、戸を閉める暇も無くて━━。
私は戸を開けっぱなしにしたまま、克慈と廃校舎を後にした。
━━ってか、仕切らないで欲しいんですけどね!
掴まれてる腕が、何気に痛いんですけどね!!




