外出1 喫茶◯メダ
克慈の運転で、◯メダの駐車場に到着した。
未だ昼前なのに、駐車場は車で埋め尽くされていて、停める場所があるのか不安になってしまう。
第一駐車場という大きな案内看板が立てられている事から、第二駐車場があるんだろうけど……、場所的に店から遠くなるんだろうなぁ。
無駄に広い第一駐車場が、車で一杯になるなんて何か特別な事でもある日なのかな??
克慈
「先輩、惠美と先に降りて下さい。俺は車を停めてから行きます」
利樹
「そうだな。よし、先に席でも取っとくか。降りよう、オノちゃん」
惠美
「あっ、はい」
言われて、利樹さんと一緒に克慈の車を降りる。
克慈は空いてる場所を探しながら第一駐車場をぐるりと回り始める。
停める場所が無いのか、第二駐車場へ車を走らせて行った。
克慈の車を見送ると、利樹さんと一緒に◯メダの店内に入る。
店内には、お年寄りやら主婦やらで賑わっていて、ほぼ満席状態。
店員さんが来てくれて、三人だと告げると空いている席へと案内してくれた。
惠美
「賑やかですね〜。この時間帯的って込むんですか?」
店員
「いえ、何時もは こんなには込まないんです。本当にどうしてなのか、私達にも さっぱりで……。御贔屓にして下さっているお客様のお蔭で、今日と迄はいかなくとも賑やかなんですけど……」
忙しなく動く店員さん達によると、予想外の来店の多さに戸惑っているみたい。
第二駐車場が有るくらいだから、来店客は多いと思うけど、この時間帯に来店客が多いのは珍しいみたい。
忙しいのに私の質問に答えてくれた親切な店員さんに、利樹さんはアイスコーヒーを、私はホットカルピスを注文した。
利樹
「──さてと、事故に遭う迄、此処で働いていたO子の事を聞こうか」
惠美
「はい……あっでも、どういう風に聞きますか? 今時は個人情報とかで簡単には教えてくれないんじゃあ……」
利樹
「まあ、其処は俺に任せてくれたらいいよ。お兄さんに任せなさい」
利樹さんはウインクして、そう言った。
利樹さんが何と言って、店員さんにO子さんの事を訊ねるのか気になる。
教えて貰えたらいいんだけど……。
利樹さんと他愛も無い話をしていると、店員さんが注文した飲み物を運んで来てくれてた。
店員
「お待たせ致しました。此方がアイスコーヒーとホットカルピスで御座います。ホットカルピスは熱くなっております。火傷しないよう、お気を付け下さい。ご注文は以上で宜しいですか?」
利樹
「若林さんは、此処で働いているO子を知ってるかな?」
利樹さんは店員さんの名札を見ると、苗字で呼んだ。
若林
「はい? O子さん? ……ああ、窩泙さんの事ですよね?」
惠美
「知ってるんですか?」
若林
「ええ、窩泙さんのお知り合いですか?」
利樹
「友人ですよ。この度、彼女と結婚する事になってね。知らせようと思った矢先に携帯が故障をしてしまってね……。連絡が付かないから、O子が働いていると言っていた此処に来てみたんだ。今日は出勤してるかな?」
け、けけけけ──、結っ婚っ?!
り、利樹さんと私が結婚っ?!
凄い理由、言われちゃったよ!!
若林
「ご結婚されるんですか? おめでとう御座います! ……でも、窩泙さんにお知らせするのは……」
利樹
「今日は休日だったか? なら、明日は出勤するかな?」
若林
「いえ! そうでは無くてですね、若林さんは……その、もう……此方では働いていないんです……」
惠美
「えっ? あの、働いてないって……、辞めちゃったんですか??」
若林
「……いえ、辞められたと言うより……あの、窩泙さんの事は少しお待ちして頂いても宜しいですか? 私、今日は11時上がりで……」
利樹
「ああ、そうか。今は勤務中だからな。すまないね、有難う。若林さんが上がるのを待たせて貰うよ」
若林
「いえ、此方こそ、有難う御座います。申し訳御座いません。ご注文が無ければ失礼致します」
惠美
「あっ私、選べるミックスサンドが食べたいです! 卵,ツナ,チーズ,サラミの入ったミックスサンドをお願いします」
若林
「はい。選べるミックスサンドで御座いますね? 具は卵,ツナ,チーズ,サラミで御座いますね。以上で宜しいですか?」
惠美
「は、はい。お願いします(////)」
若林
「失礼致します」
私の注文を受けた店員の若林さんはカウンターへ戻って行った。
惠美
「利樹さん、若林さんはO子さんの事を教えてくれるんですか?」
利樹
「そうだといいな。そんな訳で、俺の携帯は壊れてる。セットにそうメールしてくれるかな」
惠美
「分かりました」
バッグから携帯電話を取り出して、克慈にメールを送信する。
返信が来るか分から無いから、件名には『利樹さんから』と打った。
克慈からの返信を待ってる間に注文したミックスサンドを若林さんが運んで来てくれた。
惠美
「有難う御座います! わぁ、美味しそう♪ 頂きま〜す」
手を合わせて終えてから、サンドイッチに手を伸ばしたのに、私の手は後ろから伸びて来た小麦色の手にペチンと叩かれてしまった!
惠美
「──痛いっ! もう、何なの?!」
後ろを向いたら克慈が、何だか恐い目で私を睨んでいる。
何で私が睨まれてるの??
利樹
「セット、遅かったな。
{メールで内容は分かっただろ? お前は惠美の兄貴だ}」
克慈
「{……、何でまた結婚するなんて言ったんですか?}」
克慈は私を窓側に追いやって、私の隣に座ると、私が私の為に注文した私のミックスサンドを然も当然のように食べ始めた。
酷ぇ!!
惠美
「あ゛〜!! 私のカルピスちゃん迄ぇ〜〜〜!! もうっ、未だ一口も飲んで無いのにぃ!! 酷いよ!!」
克慈
「何 言ってるの? 妹の物は兄の物でしょ。結婚を許してあげるんだから、ケチ臭い事を言わない」
惠美
「何よ! お兄ちゃん面して──」
?
「クスッ。仲が良いんですね」
私が克慈に文句を言っていると、背後から声が聞こえた。
利樹
「ああ、若林さん。セット、彼女がO子の事を教えてくれる若林さんだ」
克慈
「それはどうも。初めまして、惠美の兄です」
克慈は私の頭の上に手を置くと、髪をクシャクシャとする。
惠美
「──うわっ! 酷いよ〜! 髪型が台無しじゃんか!!」
若林
「えと……初めまして、若林依里子です」
利樹
「悪いね、依里子さん。此方に座ってくれるかな?」
依里子
「はい(////)」
利樹さんに言われた依里子さんは、何故か顔を赤らめている。
緊張してるのかな〜??
窓側に移動した利樹さんと私は、向き合う形になった。
そうなると、自然と克慈と依里子さんが向き合う形になる訳で……。
私は目茶苦茶に乱された髪を整えながら、左横に座る克慈を睨み上げた。
克慈
「惠美、若林さんに自己紹介した?」
惠美
「あ……未だ。えと、薗野惠美です。宜しくお願いします、依里子さん」
克慈
「薗野克慈です。O子さんの事を教えて下さるそうですね」
依里子
「はい。……あの、惠美さんのお兄さんと婚約者さんの関係って……」
利樹
「気になる?」
依里子
「え? あ、いえ、その……親し気に見えたので……」
克慈
「利樹さんは、俺の仕事の先輩ですよ。妹共々、世話になっているので、そう見えたんでしょうね」
依里子
「仕事の先輩,後輩の関係ですか……。妹さんが先輩と御結婚される事になって、さぞ驚かれたでしょうね……」
克慈
「分かって頂けますか? 何時の間にそんな関係になっていたのか……。聞かされた時は自分の耳を疑いましたよ」
克慈はそう言うと私の頭を拳で軽くコツンと叩いた。
依里子
「妹さん思いなんですね。……窩泙さんに連絡をしたいと言う事ですが、……窩泙さんは此処の担当が終わって、次の◯メダ店へ行く予定だったんです。……窩泙さんのお疲れさん会が終わって、解散をして……。──私、窩泙さんは帰宅途中だったと思うんです。……翌日、窩泙さんが行く筈だった別の◯メダ店から連絡がありまして……」
その日の電話に出たのは依里子さんで……、丁寧にO子さんの事を教えてくれた。
依里子
「──と言う事なんです。残念ですけど窩泙さんとは……」
申し訳無さそうに依里子さんは謝ってくれたけど……。
惠美
「依里子さんは何も悪く無いんですから、謝る事なんて……」
利樹
「……そうか、O子が。……友人として線香を上げに行きたいな……」
依里子
「窩泙さんのアドレスは削除してしまって……。住所も身内の方の許可が無いとお教え出来ないんです。……御免なさい」
分かったのは、O子さんが亡くなった事と苗字くらいか──。
四人で◯メダ店を出ると、別れる前に教えてくれた依里子さんとに三人で御礼を言った。
依里子さんは私達に、『お役に立てなくて御免なさい』と一言、頭を下げると社員用の駐車場へ歩いて行った。
依里子さんと別れた私達も、克慈が車を停めた第二駐車場へ歩き出した。




