克慈宅4 御褒美
克慈
「明日の夕方、先輩が来るから」
惠美
「へ? 先輩? えーと……何の先輩だっけ??」
克慈
「……酉頭。蒔邑寺社で会ったでしょ。蒔邑利樹先輩。此方で片付ける仕事が来たって連絡があったの」
惠美
「そうなんだ? ……そう言えば、そんな話をしたような……」
克慈
「明日から五日間、俺の家に泊まるから。惠美は家に帰って寝なよ」
惠美
「え……。う、うん。……そっか、そうだよね? 利樹さんが泊まるなら寝室……使うもんね?」
克慈
「そういう事。ああ、夕飯は三人前ね。朝食は──」
惠美
「一寸待ってよ! 朝食も私に作らせる気なの?! 克ちゃんが作ればいいじゃん! 克ちゃんだって料理が出来るんだから!」
克慈
「朝っぱらから先輩が男飯(おとこめし/男の手料理)を食べたがると思うの? 惠美は男心が解ってないね。しょうがないか、惠美だし」
惠美
「馬鹿にされてる? 私、馬鹿にされてるの?? 酷い!!」
克慈
「酷くないでしょ。兎に角、先輩は朝から男飯なんて食べないから。ちゃんと作りに来てよ。七時に食べれるようにね」
惠美
「私に何時起きしろって言うのよ! 酷い仕打ちだよ!!」
克慈
「何処が? 早起きは三文の得って言われるでしょ。美加さんは毎朝四時起でしょ。見習って早起きしなよ」
惠美
「──お母さんは主婦だもん!! 私は主婦じゃ無いんだよ」
克慈
「惠美もいつかは永久就職に就くでしょ。その練習を俺の家でさせてあげてるの。感謝しなよ」
惠美
「嘘だっ!! 巧いこと言って都合よく、コキ使ってるだけじゃんか!!」
克慈
「後々判るよ。──俺が妹思いのお兄ちゃんで良かったって感謝する日が来るよ」
惠美
「そんな日なんか来ないもんね!!」
克慈
「──ふはっ。言ってなよ」
もう〜〜〜っ!!
余裕ぶっこいた顔して、ムカつくぅぅぅうううう〜〜〜!!!!
克慈は詐欺師になれるよ!!
あっ、御褒美を貰わなくちゃだよ!
克慈めぇ、利樹さんの話題を持ち出して、御褒美をなかった事にする作戦みたいだけど、そうは問屋が卸さないんだからね!!
フフンっだ。
私は酉頭じゃないもんね!!
惠美
「克ちゃん、ほら、大事なモノを忘れてるよ!」
克慈
「は? 何を忘れてるって言うの?」
惠美
「もうっ! 私は誤魔化されないんだからね! アイスコーヒーを淹れてあげたんだからね、ちゃんと御褒美を頂戴!」
私は克慈の前に手を出して、御褒美を催促した。
さっさと私に御褒美を寄越せってんだよ、こんちくしょうめ!
克慈
「……ああ、それね。今、あげたでしょ」
惠美
「何も貰ってないよ?」
克慈
「俺の優しさ」
ふざけるなァァァァアアアアアアア!!!!
誰が克慈の優しさが欲しいなんて言ったかァァァアアアアアアア!!!!
惠美
「そんなの御褒美じゃないよ!! 目に見えない御褒美なんか貰ってもお腹は膨れないの!!」
克慈
「……。誰も食べ物をあげるなんて言ってないでしょ」
惠美
「御褒美って言われたら普通はお菓子とかだって思うでしょ!」
克慈
「……惠美、それは惠美だけ。今時の幼稚園児も、御褒美=お菓子だなんて思わない」
惠美
「そんなことないもん。御褒美=お菓子だもん!! 定番だもん! お約束だもん!!」
克慈
「あー……はいはい。分かった、分かった。惠美は年齢の割に幼稚園児よりもお子ちゃまだったね」
惠美
「お、お子ちゃま?! 子供扱いならまだしも、可愛い妹ちゃんをお子ちゃま扱い?! 酷いっ、最低だよ!!」
克慈
「可愛い妹……ねぇ。自分で言って恥ずかしくないの? まあ、惠美だし」
『まあ、惠美だし』とか、ムカつくわァァァアアアアアアア!!!!
惠美
「納得するなあっ!! そして笑うなあっ!!」
もうっ、アッタマ来たんだからね!!
私は両手を拳に変えて、TVに向き直った克慈の背中を思いっきり叩きまくってやった。
番組を見終わった克慈から何故か一〇〇円玉を貰っちゃったけど、意味が分かんない。
一〇〇円玉より、お腹を満たしてくれるお菓子の方が嬉しいんですけど……。
まあ、でも、くれた一〇〇円玉は貰ってあげる。
ちゃんと私の財布に入れて、私の一〇〇円玉にしちゃうんだからね。
返さないんだからね!!




