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☀ イストリゲ~ム  作者: 雪*苺
   【 職場 】
120/156

職場11 行方知れず

 

「──つぁ〜〜〜!! 今日も仕事、終了〜〜〜ッッッ!! 定時で帰れる〜〜♪♪♪」

 

克慈

「壱可、お疲れ」

 

「瀬戸瀬も、おっつ〜。──あれ? 八崗は?」

 

克慈

「ああ……、そう言えば見てないな?」

 

「まさか──、サボり?!」

 

克慈

「さぁな。昼休みから戻ってないならサボりかもな」


 

 八崗が居ようが居まいが俺には関係無い。

 

 俺は早々と机の上を片付けると鞄を持った。

 

 これから雑務課のある九階へ行く。

 

 定時に終われれば、俺は必ず惠美を呼びに行く。


 

克慈

「九階に行くついでに深江さんに八崗の事を聞いみるか」

 

「薗野さんの所に行くんだろ? 俺も行く! 八崗の事も気になるしさ」 

 

克慈

「八階で降りろよ。俺は九階へ行くから」

 

「一緒に八階で降りようぜ。あ、薗野さんも一緒の方がいいよな。先ずは九階、次は八階だな☆」

 

克慈

「……勝手しろ。俺は行く……」

 

「一人で行くなよ~! 仲良く行こうぜ~」


 

 壱可は陽気に俺の背中を叩くと、俺の隣を歩く。

 

 エレベーターに乗り込み、九階のボタンを押す。

 

 九階へ着くと俺はエレベーターから降り、雑務課に向かった。


 

克慈

「薗野さん、帰るよ」

 

 雑務課に顔を出した俺は、惠美の姓を呼ぶ。

 

 同僚とお喋りをしていた惠美は、俺に気付くと同僚に手を振り、駆けてきた。


 

惠美

「瀬戸瀬さん、お待たせしました」

 

克慈

「もういいの?」

 

惠美

「うん。話は明日の確認してただけだから。あれ、えと……壱可さん??」


 

 惠美が壱可に気付いた。

 

 気付かなくてもいいのに。


 

惠美

「どうしたんですか? 雑務課に用ですか?」

 

「薗野さんに会いたくて来ちゃったんだよ」

 

惠美

「え? は、はぁ……」

 

克慈

「ほら、行くよ」


 

 俺は惠美の鞄を持つと雑務課を出る。

 

 そうすると惠美は慌てて俺を追い掛けて来る。

 

 まるで親ガモの後ろをついて歩く子ガモだ。

 

 この様子だと壱可は車までついて来そうだ。

 

 三人でエレベーターに乗り込むと、壱可が八階のボタンを押す。


 

惠美

「八階? 八階にも用があるんですか?」

 

「ちょっちね。八崗がさ、午後の仕事をサボったんだよね。深江さんに聞きに行くんだよ」

 

惠美

「深江さん? デザイン課の深江夕美さん?」

 

「あれ、階が違うのに知ってるんだ?」

 

惠美

「雑務課は色んな課へ出入りしますから。深江さんは男性社員から人気ありますよね。『清楚で可憐な感じがそそるね〜』って話してるのをよく聞きます」

 

「……へぇ、よく聞くんだ? 女の子の前で言う言葉じゃ無いな〜。薗野さん、耳栓をした方がいいよ……」

 

惠美

「そうなのかな〜」

 

克慈

「八階に着いてるんだけど。壱可、さっさと降りろよ」

 

「おい、瀬戸瀬も行くんだろ? 深江さんに会いたくないのかよ?!」

 

克慈

「興味無い。行くよ、薗野さん」


 

 俺は壱可をエレベーターから押し出すと、扉を閉じるボタンを押す。

 

 壱可が何かを言いたそうな顔で俺を見ていたが、無視する。

 

 俺は早く帰りたい。


 

惠美

「……克ちゃん、良かったの?」

 

克慈

「いいよ。壱可に任せる。それより、車に乗る迄は“瀬戸瀬さん”でしょ」

 

惠美

「……ごめんなさい」

 

克慈

「お詫びに俺の夕飯、作ってよ」

 

惠美

「えぇっ?! 昨日も作ったじゃんか。何で今日も克ちゃんの夕飯を作らないといけないの〜!」


 

 案の定、物凄く嫌な顔をする。

 

 そんな惠美をその気にさせるのは割りと簡単だ。


 

克慈

「ほら、また言った。決め事もちゃんと守れない薗野さん、作ってくれるでしょ?」

 

惠美

「うぅ……。分かりましたよ〜。作ればいいんでしょ〜」

 

克慈

「いい子だね。楽しみにしてる」


 

 俺は如何にも“期待してる”という笑顔を惠美に向け、頭を撫でてやる。

 

 そうすれば、嫌そうな惠美は満更でも無い顔をして『もうっ、しょうがないな』と折れる。

 

 単純な惠美は扱い易い。


 

克慈

「玄関で待ってな」


 

 惠美の頭に手を乗せ、髪をワシャワシャしてからエレベーターを降りる。

 

 惠美は髪を直しながら小言を言うが、聞こえない振りをする。

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