職場8 想い
美加さんの手料理を毎日、食べれる悳司さんを羨ましく思う。
美加さんに毎日、想われている悳司さんが羨ましい。
美加さんの声が聞こえる度に、俺が悳司さんだったら良かったのに──と、思わない日は無いに等しい。
美加さんは『毎日だって来ていいんだからね☆』と言ってくれるけど、俺は行かない。
悳司さんと美加さんの仲睦まじい姿を目の前で見たくないから……。
相思相愛の二人を見るのは……辛い。
一人で居ると孤独感に押し潰されそうになる。
それから逃れる為に俺は、幼馴染みの惠美を“妹”だと思い、お構い無しに世話を焼く。
美加さん似で面影が強くても、悳司さんにも似ている部分のある惠美と一緒に居ると、無性に意地悪をしたくなる時がある。
悳司さんを嫌いな訳じゃない。
親父と幼稚園からの腐れ縁で親友の悳司さんを嫌う理由が無い。
夫の居る美加さんを好きな俺に問題がある。
悳司さんが美加さんと夫婦にならなければ、俺は美加さんと出会う事は無かった。
二人が居なければ、惠美に会う事も出来なかった。
悳司さんに感謝をすれど、妬む(羨ましいと思う事はあっても)なんて事は……、無い。
それなのに、心の奥底で渦巻く行き場の無い感情は何だ……??
俺自身、惠美に対する接し方は異常だと認識はしている。
いくら“妹”だからと自分に言い聞かせているとしても、普通ではしないような事をしている。
傍から見る人に“付き合っている”と誤認される程だ。
美加さんの面影が強い惠美が俺以外の男と仲良くするのは、どうしても我慢が出来ない。
美加さんにとって何より大切な(兄が亡くなり、一人娘になってしまった)惠美が、他の男のモノになるのは何としてでも阻止をしなければ気がすまない。
惠美は──、悳司さん,美加さんと俺の間に必要なクッションだ。
大事なクッションは、常に俺の手の届く距離に置いておきたい。
俺には惠美が必要だから。




