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第七話 「『暴食』、覚醒」

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 町に無数に広がる路地裏の一角である宝石が輝きだした。その光に反応した男が一人路地裏を歩いている。基本的に路地裏に近づく人間は三種類に分かれる。一つ目は不良、二つ目は裏社会の人間、そしてもう一つ。

 それは人生における敗者、『負け犬』だ。この男はそれである。

 人生を諦めると路地裏という閉じられた世界へと訪れ、誰に知られることもなくひっそりと死んでいく。それが普段からあるこの町の路地裏の光景だ。

 そしてこの路地裏にはいくつも噂が流れている。町の表通りと一切干渉しない上に光があたりにくいこの場所は、この町の『闇』を表していると言われている。入ったが最後、五体満足で出て来られる可能性は限りなく低いとも。実は別の世界につながっているのではないかとすら言われているのである。

 その男は光り輝く宝石の前へと行くと、光を放っている元である宝石をもう何日も洗っていないような汚れた手で拾い上げた。

 なんだこれ? 売れるのか、と内心自分の生活の足しになるんじゃないかと考えていると突如として男の頭の中に声が響いた。 

 その声は陽気な男の声で、しかしその明るい声とは対称にとても心に深く刻みつけるようなどこか不思議な威圧感のある声だった。

(おれ、セブンズシード『暴食』を司るグラトニーだ。お前、名前、何?)

「何だよ、この声は!! どこから話しかけてきやがる!!」

(おれ、お前が手に持ってる宝石だ。もう一度聞くぞ、名前、何?)

「俺の名前は斬島漸

きりしま ざん

だ」

 訳が分からないまま自分の名前を告げる男、漸。しかし意味の分かっていない男のことはどうでもいいのか、はたまた説明する気がないのか、グラトニーと名乗った宝石は名前を聞いてからずっと黙りこくっていた。そのまま時が過ぎ、漸は気のせいだったのではないかと思った瞬間、現実であることを告げるように再度グラトニーの声が頭の中へと響いた。

(お前面白い欲望を持ってるな。どちらかというとおれよりも『強欲』の方があってそうな感じがするけど、いいや。おれ、お前と契約する)

 なにが、というよりもはやく男の額に激痛が走った。あまりの痛みに叫ぶこともできず、意識を失うことすらできないという地獄のような状況に陥った。口や鼻、目から液体が流れ出すのも構わずに男は必死に痛みに耐え続けた。

 こんな理不尽な世界なんかぶち壊してやると強く思いながら。

 耐え続けること数分ほど、ようやく痛みが治まってきたので漸はその場を離れることにした。先ほどの叫びで路地裏の人間たちが集まってくる可能性がないとも言い切れないのだ。歩きだそうとして、漸は自分の手の中にあった宝石がなくなっていることに気付く。

「そうだ、さっき見つけた宝石はどこ行ったんだ」

(おれは、お前の、額の所。触ってみるといい)

「額…?」

 おそるおそる自分の眉間の少し上、ちょうどおでこの真ん中へと手を伸ばした。そこには確かに人の肌では感じられない、鉱物特有の硬さと滑らかさがあった。

「ひっ!!」

 しかしそれは普通の人間であれば耐えられるものではない、普通ならばどうにかして取ろうと考えるものだ。漸とて例外ではなかった。

 必死にどうにかして取ろうと頭を中をフル回転させ思考を張り巡らせる。だがその思考はグラトニーの次の一言で、一変することになる。

(お前は、他人への、この世界への、復讐が目的のはずだ。おれは、その願いをかなえるもの、だから、お前と契約を交わした。おれはお前に力を与える、代わりにお前のその強欲さで俺の目的を、手伝ってもらう)

「力…? 俺は俺を見下していた連中に復讐できるのか?」

(もちろんだ、そのための力が、おれだ)

 漸はその言葉の意味を理解した瞬間、その顔を狂喜へと歪ませた。

 そして漸は、路地裏の闇へと姿を消した。



*****



「セブンズシードが発動した?本当か、ノア!?」

「本当。ここから北西の方向に2kmほど先にある」

「どうする?今から回収に向かうのか?」

「当然、それが私たちの使命であり、私にとっての義務」

「了解だ、俺の雇い主はノアだからな。基本的にはノアの決定に従おう」

 じゃあ行こう、と言おうとしてふと頭に引っ掛かることがあった。しかし一瞬のことで何に引っ掛かったのか、それを思い出すことはできなかった。

「どうかした? 大地」

 彩花の声で我に返ると、ノアが不思議そうな顔でこちらを見ていた。なんでもない、と手で制して春菜と彩花に伝言を頼んだ。

「春菜・彩花、龍王とスタンを頼む。あと院長に言っといてくれ。『例の宝石集めにちょっと行ってくるから今日は遅くなるかもしれない』って」

「分かったわ」

「気を付けてくださいね、大地さん」

 了解、と背を向けながら手を振り再度ノアへと向き直る。もう大丈夫、行けるという意思をこめて頷くと、伝わったのかどうかは知らないがノアも頷き返し走り出した。大地もそれを追うように全力で足に力を込める。

 超能力者と天使が走っている頃―――


 鉄雄と穂香は学校からの下校途中で鉄雄が感じ取った異様な気配の元へと足を運んでいた。二人とも先ほどから一言も言葉を発せずに沈黙を保っている。別に二人の仲が悪いわけではない。ただ単純に――

 そこらの道端に血だまりができていて、死の気配が漂っていたからだった。

 二人は警戒を解かずに歩みを進める。鉄雄は自身の能力『念話

テレパシー

』の応用で周りに人の気配がないかを探りながら、穂香は大地に連絡を取ろうと携帯を操作しながら、歩みを止めずに前へと進んだ。

 鉄雄は何かが来ることに気付き、同時に穂香を連れて横へと飛んだ。少し遅れて地面が何の前触れもないまま抉れた。

「そこにいるのは誰だっ!!」

「へぇ、俺に気付くのか。お前、ただの人間じゃないな?」

「誰だ、貴様―――」

「はーはっはっはっは。楽しいねぇ、愉快だねぇ、最っ高だねぇ、おい!!ついてるな俺は最高についてるぜ。ちょうど一般人を殺すのには飽きてきたところだ、なあお前、俺に殺されろよ!!」

「ふざけるな!!人の命を何だと思っている!穂香、離れていろ。あいつとは俺がやる」

「そんな!?危ないよ、鉄ちゃん!!」

「大丈夫だ、それより大地に連絡をしてくれ」

 鉄雄の真剣な表情に穂香も自分がわがままを言っていられるような状況じゃないこと を理解する。そして鉄雄から離れた穂香は、携帯を取り出し大地へと電話をかけた。


「待ってくれるとは意外だな、てっきり話の最中に攻撃を仕掛けるものかと思っていたよ、このゲス野郎」

「クックック、初めて会った力あるものだからな、丁重の扱わないとな」

(……力あるもの。超能力者のことか?)

 鉄雄は多少疑問に思うも今は関係ないと頭の隅へと思考を追いやった。そして戦闘へ と意識を切り替え、構えをとった。 

 それと相対する人のようなもの(・・・・・)は、構えを見ると同時に鉄雄へと駆け出した。



*****



 走っている途中にかかってきた穂香の電話によりおそらく鉄雄がセブンズシードの所持者との戦闘を行っていることが判明した。急がないといけないと思う反面で鉄雄なら何とかしのげると楽観視している自分にイライラが募っていた。

「大地、落ち着いて。イライラしても何も変わらない」

「分かってるさ、落ち着かなきゃいけないことぐらい。でもな、友達が今危険な目にあっていると分かっているのにすぐに助けに行けない俺の弱さが嫌でしょうないんだよ」

 分かってはいた、理解してもいた。おそらく鉄雄と穂香は自分の意志でその存在へと近づくことに決めたのだろう。ならば自分に言えることなどあるわけがない。理屈では分かっていても感情とはどうにもならないものなのだ。

 それを少しずつだが理解し始めているノアも、これ以上かける言葉が見つからずにただ無言で走り続けた。しかしノアは突然走るのを止め、戦闘の構えをとる。

自問自答をしていた大地もノアのただならぬ気配を感じ取り走るのをやめた。

彼らの行く道の先で一人の少年が立ち塞がっていた。その少年は大地たちへとまるで昔からの知人であるかのように親しげに話しかけてきた。

「やあ、久しいな。天罰神の部下、上級天使ノア。そして一応この姿では初めましてか。霧島大地君」

親しい友人を諭すかのような口調で少年は語り続ける。

「とりあえず一つ言っておこう。

 『暴食』の邪魔はさせないよ。この『傲慢』のプライドがね」





急を要する事態の中、物語は加速を始める。

行きつく先は明るい未来か、はたまた暗い絶望の闇か。

遅れてすいませんでしたm(_ _)m

テストがあってテスト勉強に追われていたのでマジで死にそうだったんです(汗


次回からはしっかり水曜日に更新できると思うんで、これからもとある超能力者をよろしくお願いします(`∇´ゞ

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